ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

情報は出揃った。準備も出来てる。でもその前に

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「考える時間はあったろ!知ってる情報を吐けっ!」

「し、知ら「そのやり取りは求めてないんだよ!」『ゴボボボボ…』っご!?っぶぁ!?『ガボボボボボッ!』(間者4)」


逆さ吊りとなった間者4がごねた為、ノアは近くに溜まっていた″黒い液体″に間者4の頭部を沈めていた。

実はこの″黒い液体″は″濃縮された排水″で、ノアや間者達が居るこの薄暗い場所は、現在使用停止中の地下排水路である。

直上ではドワーフや街の【石工】や【大工】、ストーンゴーレム達が工事をやっている為、間者3が悲鳴を上げようが叫び声を上げようが誰にも聞こえないのである。

間者となる者は、万が一捕らえられた場合を想定し、ある程度拷問の類に耐えられる様に訓練を重ねている。

その中には″水責め″も勿論含まれているが、″汚水責め″は想定外であった事だろう。


どぷんっ。

「どうだ!吐く気になったか!」

「ぉげぇえ″え″え″っ!ぶぁあ″あ″あ″あ″っ!(間者4)」
 
「″そっち″じゃねぇ!情報を吐けってんだよ!
おいお前(間者5)!ボサッと見てんじゃねぇぞ!
次はお前で、今までの流れ踏襲しやがったら″全部乗せ″だからな!」

「え…?(絶望の間者5)」


″全部乗せ″を告げられた間者5は、結局今までの流れを踏襲して本当に″全部乗せ″を経験する事になる。

違う点としては、″(ピーー)を生やしたガサガサに襲われる″のでは無く、″襲いたくて堪らない″側に回ったと言う事だろう。





~とある宿~


「えー、″ご協力″の甲斐あってある程度情報は出て来たね。
間者共を差し向けてきたのは『ロウバンド』と言う、同じく綿花栽培を生業にしている小規模な商家らしい。」

「『ロウバンド』?その者、知ってる。(ミコト)」

「え?知り合いなの?」

「以前、不作が続いて、綿花栽培に関する、技術支援、求めて来た者。
私達が暮らす、『アルゴダ』の南に位置する街、居る。(ミコト)」


間者から聞き出した情報によると、シトラの父親であるファマス同様、綿花栽培を生業としている『ロウバンド』と言う商家が間者を差し向けてきており、大雑把に言えば″家業の乗っ取り″を企んでいるのだとか。

どうやら『ロウバンド』が行っている綿花栽培は上手くいっておらず、収穫が不安定な状況が続いているらしい。

そこで間者経由でファマスの家に宜しくない連中を差し向けて脅しを入れたり、内通者を潜り込ませ、シトラに毒を盛って家業の弱体化を図ろうとしていた様だ。

ファマスが弱体化すれば、他に経験があるのは『ロウバンド』だけになるので、土地をそっくりそのまま頂き、我が物にしようとして様だ。

何故シトラに毒を盛ったのかというと、実は元々家長のファマスを狙ったのだが、手違いでシトラに盛られてしまったらしい。

弱体化を図ったものだったが、却って内通者の炙り出しや兵の増員、隣領からの補助を得る等の強化が施されてしまった。

そんな時に治療と避難を目的として街を離れていたシトラの情報が流れてきた為、人質に取って強行手段に打って出ようとしたらしい。


「…って言ってたけど、そんな上手くいくモノかねぇ。家長の父親を1人潰す位で家業が傾くとは到底思えないけど…」

「現在は街単位で綿花栽培を行っている。
手順等も、最適化されていて、教育も行き届いている、あり得ない。(ミコト)」

「だろうねぇ…
まぁ一先ず状況は分かった、準備が整い次第『アルゴダ』へと向かうとしよう。」


ある程度の情報が出揃ったので、情報収集は一旦止めて『アルゴダ』へ向かう為の準備をする事に。

一応シトラとミコトによる誘き寄せは継続して貰い、随時捕縛は続けると言う。





~更に2日後・新保養施設前~


パン!パパンッ!(花火)

「えー、先日前領主代理のやらかしにより休業しておりました『美肌の湯』が、多数の方々の協力で本日再開となりましたー!(ガネメ)」

「「「「「おおおおー!」」」」」


保養施設が崩壊して5日後、ドワーフ3人組が言った通り再建が成された。
何なら4日目の午後に湯を入れ、完全では無いものの、内装・装飾を配置。
増設に増設を重ね、まるでダンジョンと化していた地下排水路はすっきりと整備され、排水能力も問題無しと判断された。

ちなみに、突貫工事ともなれば莫大な費用(主に人件費)が掛かるものだが、ドワーフ3人組は樽数十個分の酒を所望し、街の職人方(【石工】【大工】)への報酬はシルヴィオが貯めに貯めた″置き土産″を使わせて貰ったと言う。


「凄ぇ…(【石工】)」
「今でも信じられねぇ…(【大工】)」
「本当に完成に漕ぎ着けたな…(【大工】)」
「ドワーフってやっぱ凄ぇわ…(【大工】)」
「当のドワーフ達は酒盛り始めてるし…(【石工】)」


ドワーフとゴーレム、街の職人方による恐ろしい程の建設スピードは、観光と保養で訪れていた人々の目を引き、一種の観光名所と化していた。

普通こういった騒動が起こった場合、集客はガクンと減り、元の状態に戻るのにはかなりの時間を擁すが、観光名所と化していた新保養施設前には既に人だかりが出来、集客は以前以上であった。


「「「「「いやぁ、良いのかにやぁ~?
私達一度楽しんだのに招待されて。(猫獣人族の団体客)」」」」」

「お楽しみの途中で騒動に巻き込まれたのですもの、当然ですわ。(ガネメ)」

「はい、皆さーん笑って笑ってー。(【記者】のラビッツ)」

「「「「「はーい。」」」」」


ヴァンディットやラインハード等女性陣達と共に崩壊する保養施設から避難した猫獣人族の団体客全員が招待され、その様子を記事にすると言う。

そこにやって来たのは、獣人国編で出会った【記者】で兎獣人のラビッツであった。


「えーそして今回、前領主代理によって街から閉め出されていたにも関わらず、街の危機に颯爽と駆け付け、巨大な敵に対し大幅な弱体化を図ってくれた【鬼神】君も招待致しました。
何でも元々この保養所目当てで訪れたのですよね?(ガネメ)」

「えぇ…ただひたすらにのんびりするつもりだったので…あはは…(くたくたのノア)」

「ゆっくり休めー。」
「寝ろー。」
「風呂ん中では寝るなよー。」


疲れ過ぎて目の下にうっすらクマが出来ているノアがガネメからのコメントに答える。

5日前に街の外で仮眠を取って以降、何だかんだ眠っていないノアの口からは乾いた笑いしか漏れなかった。

そんなノアに街の人達からは労いの声が上がっていた。


「ちなみに【鬼神】君には、新たに新設された『マッサージ地獄』を体験して貰おうと思いますが如何でしょう?(ガネメ)」

「いいよー。(疲れ過ぎて脊髄で話すノア。)」
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