ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
957 / 1,117
取り敢えず南へ編

不穏と日常

しおりを挟む
~ドワーフ国『フェレイロ』・国王シトルベの私室~


「消えた?(シトルベ)」

「あぁ、消えた。
魔力枯渇状態から回復した後、平原からは【魔王】も数千人規模の【勇者】軍も全てな。(【諜報】1)」

「一部戦闘で出来たと思われる血溜まりと複数の穴が確認出来たが、死体なんか残っちゃいなかった。
ただ…生存者は居た…(【諜報】2)」

「ならばその生存者から何か聞き出せんか?(シトルベ)」

「その生存者なんだが、色々と分からん事があってな。
【勇者】パーティなんじゃよ。(【諜報】1)」

「何?【勇者】パーティ?
こん騒ぎの中心人物じゃねぇが。
丁度良ぇ、各国から100を越える罪が発生しとるんじゃ。序でに聴取取っとけ。(シトルベ)」


ドワーフ国フェレイロでは現在、【魔王】vs【勇者】軍による戦闘報告を国王シトルベへと伝えられている所であるのだが、監視していた【諜報】が全員魔力枯渇状態に陥り、事の顛末が不明なのであった。

その上双方共に姿を消し、平原には【勇者】含めた4人組パーティしか残っていなかったと言う。

だがその【勇者】パーティに関して不可解な点があった。


「まぁ聞けシトルベよ。
その【勇者】パーティの近くにゃ切断された『隷属の首輪』が落ちとったんじゃ。(【諜報】2)」

「あ?何でヒュマノ製の魔導具がんな所にあるんじゃ?
まさか【勇者】の持ち物か?(シトルベ)」

「いや、どうやら【勇者】パーティに着けられていた様だ。手足に跡が残っちょるし、【勇者】パーティの″状態″から判断しただけじゃがな。(【諜報】3)」

「″状態″…?…おい、まさか…(シトルベ)」

「そのまさかだ。
4人共に強姦された痕があった、男女問わずな。
それに空腹と脱水症状で心身消耗状態だ。
恐らく【魔王】討伐宣言辺りから奴隷同然だったと推測される。(【諜報】1)」


【魔王】の件も気になる所ではあるが、【勇者】パーティの状況証拠から察せられた状態があまりにもあんまりであった事に、国王が更に頭を抱える事になる。


「…一先ずはイグレージャ・オシデンタル本国に伝書を飛ばして連絡を取れ。
【勇者】軍の報告も含めて諸々な。(シトルベ)」

「その事なんだがな、さっき【勇者】軍消失を受けてイグレージャ・オシデンタルに鳩(伝書鳩)を飛ばしたんじゃが、引き返して来よったんじゃ。(【諜報】2)」

「…何?(シトルベ)」





~アルゴダ・工房区画~


「あの【鬼神】殿、女性方から目を離さぬ様にお願い致します。
ここに居ると危ういかも知れませんので。(衛兵)」

「え?この工房区画って何かあるのですか?」

「えぇ、まぁ…(衛兵)」


4日振りの昼食を終え、商人見習い(メルカドール)のミリアと合流したノアが工房区画を散策していると突然衛兵が不穏な事を口にし出した。

数区画進んだ辺りでそんな事言うなよ、と思いたい気持ちもあるが、その後に続く衛兵の言葉で何のこっちゃ分からなくなった。


「何せこの工房区画では″辻ドレス″に遭われる方が多数居られますので…(衛兵)」

「…え?辻ドレ…え?」

(『辻ヒールとかは聞いた事あるが、″辻ドレス″なんて聞いた事ねぇな。』)


″辻ドレス″という聞き慣れない単語が飛び出し、混乱するノア。
衛兵も恐らく分かっていないだろうと見越して言葉を続ける。


「まぁ見ていて下され。
あちらの方々なら間違いなく″辻ドレス″に遭われると思いますので…(衛兵)」

「は、はぁ…」


″辻ドレス″について未だに何のこっちゃ分からないノアだが、衛兵に促された通り、目を輝かせて散策している女性陣を見守る事にした。

すると直ぐに


ザッ…

「…お嬢ちゃぁん、中々良い体付きしてるじゃなぁい…(コーディ)」

「え…?は、始めまして、っちゃ…(ミダレ)」


可愛らしい服を見回していたミダレの背後から、金髪頭で筋骨隆々、パツパツのシャツを着込んだ大男が忍び寄ってきた。

その姿に思わず息を飲むミダレ。



「ちょ、助けに行かないと…」
「大丈夫です、奴は男にしか興味ないので御安心を。(衛兵)」

「…え?」



何か不穏な言葉が聞こえた気がしたがそんな事言ってられない。
ミダレの対面に居る金パツ(金髪で筋肉パツパツの略)はドンドンとにじり寄っていく。

そして


グァアアッ!(ぶっとい腕をミダレに伸ばす。)

ピタッ!(ミダレから離した所に黒地のスカートを宛がう。)

「やっぱり!
あなたフード被っててもスタイルの良さが分かっちゃうんだからもっと露出した方が良いわ!勿体無いわよ!
肌を出すのが嫌なら私が作ったこの『スリットスカート』とか如何?
飛んだり走ったりしない限りは露骨に露出はしないわ!(コーディ)」

「わぁ!このスカート可愛いっちゃね!
白地はあったりするっちゃが?(ミダレ)」

「あるわよぉ!黒地も良いけど、白地は小麦色の肌が映えるからあなたにピッタリよぉ!(コーディ)」



「…あ、あれ?」

「奴は″【ドレスアップ・バイオレンス】のコーディ″…
気に入ったスタイルの娘に服を勧める金髪の″奇行子″さ。(衛兵)」

「【ドレスアップ…】何て?」

「おぉっと、そんな事言ってたらまた別の奴が来やがった…!(衛兵)」

「ねぇ聞いて?」



取り敢えず害は無さそうなので次に移るとしよう。今度は作られた布地をマジマジと眺めていたミリアに忍び寄る影が。


「お嬢ちゃん、もしかして【商人】かな?ハァハァ…(チュニク)」

「え?あ、はい!そうです!良くお分かりで。(ミリア)」

「手帳片手に布地を眺める子なんて【商人】位と相場が決まってるよぉ。
そんな君に、誂え向きな服があるんだけどどうだい?<観察>系スキルに補正が掛かる様に誂えたモノなんだけどね?ハァハァ(チュニク)」

「え?そんな品があるのですか?(ミリア)」



「ちょ、ちょっと、あの人ミリアちゃんを見る目付きが何て言うかこう…″キマッて″ますよ…!」

「奴は【ペド・フィギュア】のチュニク。
13才以下の子をまるで着せ替え人形の様に代わる代わる服を着させる子供服専用商店の4代目。(衛兵)」

「ちょ、それって大丈…」

「安心してくれ、奴は男の子にしか欲情しない。(衛兵)」

「…ん?」



「おや娘っ子、その歳で作業服にご興味があるのか…?(サムエ)」

「あ、はい。よく機械いじりをするので…(ラインハード)」

「なる程…だったら油汚れに強く、解れ難い『オーバーオール』はどうだ…?
多少はサイズの擦り合わせを要すが御安くしとくぞ…(サムエ)」

「本当ですか?
それなら黒と紫の物を2着ずつ下さい!(ラインハード)」

「慌てるな娘っ子、ゆっくり選べ…(サムエ)」



「おぉ、今度はマトモそう…」

「あのおっちゃんは【露骨】のサムエ。
女性相手には堅物な印象だが、好みの男の子には流暢

「そんなんばっかだな、この街。」


個性的な店主と出会いつつ散策は続く。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...