ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

ご飯ご飯。

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~夕方~ 


「″乗れ″スティルダー!畳み掛けろ!(戦闘職1)」

「おぅっ!(スティルダー)」

ダッ『『ガォンッ!』』(戦闘職1が構えた大盾を足場に対象上に飛翔。)

ギュルッ!『『ガギッ!』』(刃を下に向け、体に引き寄せて固定。)

ヒュッ!『『ドズッ!』』(『花束鉄蟷螂(ハナタバテツカマキリ)』の背後に落下しつつ首の付け根に剣を突き立てる。)

ギィイイイイッ!

『『ズシャッ!』』

街(前哨基地)建設予定地から少し離れたエリアで狩りを行っていた戦闘職パーティは、本日6体目の『花束鉄蟷螂(ハナタバテツカマキリ)』を討伐。



『花束鉄蟷螂(ハナタバテツカマキリ)』…全身に何かしらの花を咲かせた人間サイズのカマキリ。
全身の花から独特な香りを発し、餌さとなる獲物を誘き寄せる。

カマは鉄等の金属、翅を構成する外殻は自重を支える為、薄くても非常に丈夫で特殊な加工を施せば防具に転用可能。



「大分勘を取り戻してきたんじゃないかスティルダー?
本当に結婚してから剣握ってなかったのかよ?(戦闘職1)」

「あぁそうだよ。
それより暗くなってきたから、死骸の簡単な腑分けして街(建設予定地)に戻るぞ。
使えそうな物は全部持って帰らねぇとな。(スティルダー)」

「へいへい。(戦闘職1)」


スティルダーと言う戦闘職は、最近までとある村で家族3人仲睦まじく過ごしていたのだが、その村を【勇者】軍に襲われ、家族を連れて命からがら逃げ延びてきた。

だが飢えを凌ぐ為に盗みを働き、家族揃って奴隷商へと引き取られる事となった。

現在この地にはそういった経緯で奴隷落ちした者達が数十世帯は居り、何れ建つ街の住人としてこの地に集められている。


ザッ!ザフッ!(腑分け中。)

「カマは関節部分からな?(戦闘職1)」

「流石に6体目ともなれば分かるわよ~(回復職)」

「この花集めてどうするの?
食べれ…はしないだろうし、香料とか?(戦闘職2)」

「銀髪のお嬢さん(ヴァンディット)の所に持っていけば、モンスターを誘き寄せる為の薬品を作ってくれるらしい。
余さず持って帰るんだ。(戦闘職1)」

「身体の方は…?
可食部は良いとしても他は良いでしょ…?(戦闘職3)」

「何でも、特殊な薬品に浸けて一時的に柔らかくすれば防具に使用出来るらしいってさ。(スティルダー)」

「そんな特殊な技術持ってる生産職、ウチに居たっけ?(回復職)」

「居ない、それは断言出来る。
だから今【鬼神】の伝手で職人を要請しているらしい。
何でも今彼が装備している防具や武器を作成した職人らしい。(戦闘職1)」

「生産職達が噂してたよ?彼の武器防具の説明、殆ど伏せ字になってて見えなかったらしく、未知の素材使ってるとか…(戦闘職3)」

「そりゃ新種族の王が伝手に居るから…(回復職)」

「やっぱ本物の【鬼神】なんだなぁ…(戦闘職1)」

「だから俺達はここに来たんだ、皆もそうだろ?(スティルダー)」

『『『『コク。』』』』


腑分けを行いながら雑談に興じる一行。

今更だがここは開拓地のど真ん中、帰る家所か街の基礎すらまだ建っていない非常に不安な状況であるハズだが、パーティの面々にそういった暗い表情の者は只の1人も居ない。


「よし!街に戻るぞ。(スティルダー)」

「「「「おぅ。」」」


腑分けを終えた一行は、街建設予定地を目指して歩みを始める。
街灯や篝火の類等は一切立っていないものの、別の理由で煌々と光輝く場所を目指すのだった。





~街(前哨基地)建設予定地~


『『『『パチパチパチパチ…』』』』

「熱ぃ~…(獣人の技術職1)」

「火を絶やすなよ?
比較的気温の低い夜の内に″大量の貝殻″を焼いて明日には基礎の着工に移らねばならんからな。(技術職2)」

「それと同時進行で″井戸″に適した場所も割り出さんとな。
このままじゃ暑さと熱さにやられて皆参っちまうからな。(技術職3)」

「「「だなぁ…」」」



「ふむ、暑さか…」

《暑さがどうかしたのか?》

「うーん、あなたにとってこの気温は大丈夫かも知れないけど、人間にとってはこれ位の暑さでも結構しんどいものなんですよ。
体温の高い獣人や子供なんかは特にね。」

〈子供は体温高いから大変なのだわさ。
リューさん、″島″に『涼虫(スズムシ)』居たじゃない?
夏の間だけでもここに連れてきてあげたら良いんじゃない?〉

《ふむ、それが良いかもな。》

「『涼虫(スズムシ)』?」

(『…ってか″島″って何処の事だ?
あの山の裏にでもあるのかね?』)


鉄火場の様な熱波と光を放ちながら大量の貝殻焼き、石灰の生産を行っている焼き場を眺める一同。

この地にはまだ篝火等も碌に無いので、自然とこの場に人が集まってくる。

亜龍が佇んでいる時点で既に注目の的ではあるが、もう1つこの場に人が集まってくる理由があった。


〈リューさんって氷の亜龍だから、こういう時は近くに居ると嬉しいのだわさ。〉

《私を避暑地にしないで貰えるかな?》

「まぁ皆それが目的で集まって来てるみたいだけど…」


「「「「「「スズシイナァ…(周りの人々)」」」」」」


四季龍インヴェルノは氷の亜龍である為、何もしなくとも身体から冷気を発している。
目の前で鉄火場の如く火を焚いていてもその冷気は人々を癒していた。
(鉄火場の人もたまに涼みに来る。)


《ふむ、それ程困っているのならステラの提案通り『涼虫(スズムシ)』を寄越すとしよう。
それまでは氷柱でも置いていくので凌いでくれ。》

「…アンタ、案外世話焼きなんだな。」

《…あの山の上にはステラ程ではないが、手の掛かる者達が多いのだ。
誰だって自然とそうなる。》

〈ちょっと!私の事そんな風に思ってたのだわさ?〉

「まぁまぁ。
さて、取り敢えず人が集まってきた事だし、ご飯にしよう。
丁度さっき良い魚が幾つか手に入った事だしね。」

〈にゃっほい!魚!私は焼きが良いのだわさ!〉

《な?》

「ね。」


魚と聞いた途端、掌を返した様に上機嫌となるステラ。
腹が減っては何とやらなので、先程海神(ワダツミ)から頂いた鮮魚を振る舞う事にした。





タッタッタ!

「お父さん!(シエル)」
「お帰りなさい、あなた。
ふふ、ここからあなたの事見てたわ。
昔を思い出すわね。(ハンナ)」

「何だ、見てたのか。
気恥ずかしいな。(スティルダー)」


狩りに出ていたパーティの面々が各々の家族の下へと散っていく。
その中1人【軽業師】のスティルダー。
彼はどちらかと言えば戦闘向きでは無いが、【適正】上中々身軽である為、囮やモンスターの翻弄、撹乱として非常に役立っている。

此度の大氾濫に於いて、後にかなりの戦果を挙げる者の1人となる。
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