ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

やれる事をやろう。

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「ヴァリエンテ・ルルイエ伯爵殿、新領主殿、お食事中ですが、少し良いですかな?(建設班モルドー)」

「む。(ルルイエ)」
「…はい?(カルル)」


「【鬼神】殿、宜しいですかな?(建設班モルドー)」

「はい、良いですよ。」


食事の最中、モルドーと言う建設班のリーダーから各人に声が掛かった。

どうやら″街(前哨基地)建設に際しての要望″を聞きに来たらしい。


「よ、要望…?
要望か…こういった大戦に出た事が無いから何が必要かなんて…(カルル)」


「取り敢えず地下の避難先は必要だな。
万が一だってあり得るからな。(レドリック)」

「備蓄庫はマストね。食糧・武器その他諸々。
避難経路も確保出来たら良いわ、ヴァリエンテ領に通じる様な。(アミスティア)」

「確かに避難経路が無いと厳しいものね、フリアダビアでも似た様な状況があったし。(美幸)」

「その際は地下に井戸が欲しいですね、人数的に考えて最低3基程。(ラインハード)」

「街の正面、大氾濫時にモンスターの侵攻方向に塹壕なんかあれば良いですね。
上ががら空きだと何なので、パイル等を設置したりして。」

「パイルですか。
ならば私に幾つか案がありますぞ。(クリストフ)」

「皆が出してる様な案は出せないけど、出来る限り協力しよう。
テイムしたモンスター達に出来る事・出来ない事の区別を付けとくよ。(悠)」

「出現が予想されるモンスターの種類が割れてるのでしたら、罠を仕掛けるという手も。(ヴァンディット)」


「おお…(ルルイエ)」
「何でこうもスラスラと案が出てくるんだ…(カルル)」


建設に際しての要望を聞かれたカルルが悩む中、ノアやノアの両親やクランの者達からは次々と案が出てくる。


「え、えーっと…広域殲滅魔法を…
いや、でも地形の影響で術式が発動しないかも…(カルル)」

「こういう時は″実現可能・不可能に関わらず″一先ず案を出すのが大切よ。(美幸)」

「最初から選択肢を絞った状態では良い案なんて出ませんから。(悠)」

「な、なる程…では…(カルル)」


元の世界ではお互いに高校生であった美幸と悠は、授業で習った事をカルルへと伝える。

こう言った手法の狙いとしては、心理的に安心して忌憚の無い意見が出せるから、らしいが、新領主として色々と考えなければならなくなったカルルにとっては効果覿面だった様で、その後は他の者達同様に意見を出していた。


「【鬼神】殿、先程の塹壕の案なのですが、確かに有効だとは思いますが、今から各所を掘り起こすとなると…(モルドー)」

「勿論対策案はあります。
建設班の方には後の補強をお願いしたいのです。」


600人以上が住まう大きな街の周りに大氾濫を見越して塹壕を掘るとなった場合、人員を総動員しても間に合わないと言えるだろう。

ノアの案と言うのは、塹壕をグリードに掘って貰おうというものであった。


「悠さんが先程言ってましたけど、テイムしたモンスターの出来る事・出来ない事の区別を付けて貰う中で、いの一番に″跳躍力″を調べて貰いたい。」

「オーケー、任せてよ。(悠)」


「技術職の中に【植物】に詳しい人居るかしら?さっき見回りした時に目ぼしい″モノ″を見つけたから確認を取りたいの。(アミスティア)」

「分かりました、掛け合ってみましょう。(モルドー)」


「それに先立って、そろそろ個人個人の力量を見てみたい。
それによって隊を分け、本領を遺憾なく発揮して欲しいからな。(レドリック)」

「分かりました、代表の者に言って順次伝えて貰います。(兵士)」


「……。(カルル)」


気が付けばノアやノアの両親が中心となって大氾濫に対しての準備・話し合いが行われている状況に、カルルは少し落ち込んだ表情をしていた。


「どうしたカルル?(ルルイエ)」

「…いや、領主っていうのは、ああいう風にリーダーとしての能力が必要なんだろうな…ってね…
今も状況に流されてるだけで、彼等の様に音頭を取る訳でも無い。
…本当に領主としてやっていけるのかな、ってね…(カルル)」

「…おいおい、まだ

「得意な分野でのみ頭が働いてるだけですよ。」

「え?」

「僕は両親に″戦闘のいろは″を叩き込まれたので″戦闘″に関する事はどう動いたら良いか、どう考えたら良いかが自然と出てくるだけ。
その他の事はてんで頭が働かない。
それをクランの皆に補って貰っているだけです。
カルルさんも得意な分野で頑張れば良いじゃないですか、適材適所適材適所。
その為にルルイエさんや家族の協力があるのでしょう?」

ウンウン。(ルルイエ)


大氾濫の様な大戦に際し、ノアの様に腕っぷしがめっぽう強い者も居れば、頭脳を、知略を働かせて戦う者も居る。

カルルも貴族の子息故それなりに教育を施されていただろうから、そちらの面で戦って貰いたいモノである。


「それか、戦闘はこっちに任せて″後の事″に注力してくれるでも良いと思いますよ。」

「…″後の事″…か…(カルル)」

「それにまだ就任初日で儂の方からなーんも教えられとらん。挫折するにはまだ早いだろう?(ルルイエ)」

「そ、それもそうだね…(カルル)」


先程まであたふたしていたカルルであるが、ノアとルルイエからの助言もあってかその表情は幾分和らいでいた。





~翌日~


『『『モリモリモリモリ…』』』(迷路の様に地面が掘られていく。)

「…すっげぇ…トレ○ーズみたい…(悠)」

「何ですかそれ?」


翌朝、街(前哨基地)建設予定地から少し離れた場所の地面に迷路を描く様にモリモリと通路が掘られていく。

これは勿論グリードにお願いし掘って貰っている訳だが、土を体の中に取り入れて排出する事はグリード曰く″デトックス″になるらしく、定期的に行っているらしい。


(よーし、その辺りで折り返して開通させるんだ。)

(《畏まり。》)

「ねぇノア君、こんな溝掘ってどうするっちゃ?相手は虫タイプのモンスターっちゃろ?
上から来られたら一堪りも無いんじゃ…?(ミダレ)」

「それについては母さんから良い案があってね…
あ、来た来た。」

「えっと…″篝火台″か何かっちゃ?(ミダレ)」


塹壕を製作中のノア・グリード班の下に2メル位の長さの木の棒を3本紐で纏めた三脚の様な物が運ばれてきた。

見ようによっては″篝火台″に見えなくもない。


「取り敢えず試作として造りました。
『ブスブス』の木を使った″置き罠″で、一定以上の圧を加えると刺さっちゃいますよ。(【木工】)」

「え、えぇっ!?そんな危ない物なんちゃ!?(ミダレ)」

「母さんが『ブスブス』の木らしき物を見付けて【植物】の人に確認を取って貰った。
これを塹壕の上に配置して蓋をする感じかな。」
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