ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~掃討開始~

早まる大氾濫

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~街(前哨基地)完成から3日目・街を中心とした各人の配置~



・王都国立大学院生ゼーヴィス、スカーレット、アリッサ:ヴァリエンテ領の宿に宿泊

・類人猿クラン『エイペス』200人:3時と9時に位置する森林エリアで野営

・『筋肉達磨』の3人:『エイペス』と談笑中

・冒険者パーティ約30組、【義賊】・【盗賊】クラン約200人:4時~8時の方向に位置し野営

・フリアダビア所属のクラン約100人:10時の方向でノアと共に談笑

・肺魚人族:その辺を散策





~冒険者パーティ・【盗賊】・【義賊】クラン野営地~


「あ、そ~れ『ヒヨケノカサ』~。(クリストフ)」

ズボッ!『『モコモコモコ!』』(植茸→成長。)

「「「「「「「お~。」」」」」」」

「傘の内側に居れば、周りと比べて僅かに体感温度が下がりますので日除けにお使い下され。(クリストフ)」

「ねぇねぇキノコさん、さっきから立てまくってるけど、これもしかして防衛の役割も担ってる?(冒険者1)」

「そうですな。
この『ヒヨケノカサ』はそこそこの耐久性がありますので、有事の際は遮蔽としても良いですし、モンスターの侵入を阻む防壁ともなりますな。(クリストフ)」

「「「「「「「ほー。」」」」」」」


辺りがすっかり暗くなって以降、数百人単位の者達が野営を始めた。
それを確認したクリストフは、彼らの周囲に1~2本の『ヒヨケノカサ』と言う茸を次々に植え出した。

クリストフが説明した様に日除けにもなるし、防壁にもなる。
しかも『ヒヨケノカサ』の範囲内にポーション類を撒けば、ミスト状の薬液を散布し、短時間ではあるが周囲の人達にも効果が及ぶ優れものである。


「おいおい…何つう代物だよ…(冒険者2)」

「ね、ね!他に何か効果のある物とかあったりしない?(【弓】冒険者)」

「そうですな、見た所【弓】の様ですから『キュウシノヤヅツ』等どうでしょう?(クリストフ)」

「何それ何それ!(【弓】冒険者)」


そこから周囲に居た冒険者達はクリストフに対して幾つか要望を出す。
それに対して完璧とはいかないまでも、要望に沿う様な茸を提示し、冒険者達を支援するのであった。


「流石【鬼神】のクランの一員だわな。
俺達のパーティにもあんな有能なパートナーが欲しいぜ。(冒険者2)」

「ああ。(冒険者3)」


初見ではどう頑張ったって色物枠に捉えられそうなクリストフだが、優秀な能力を数々披露した事で冒険者達から一目置かれる事となった。





~類人猿クラン『エイペス』と『筋肉達磨』の3人が居る森林エリア~


『『『ザクッ!』』』(街の子供達製焼き菓子(携行食)を頬張る音。)

 「むっ!?イケるっ!(『エイペス』リーダーのゴーラ)」

「美味ぇっ!(『エイペス』1)」
「穀物と木の実だけで、だよね…中々に美味いわ…(『エイペス』2)」

「何でも【鬼神】が考案した携行食なのだとか。(バルク)」
「この軽さで栄養豊富、腹持ちも良いので小腹が空いた時に良いとか。(スクワ)」

「材料は穀物と周辺で豊富に生っている木の実のみ。慣れれば子供だけでも作れる故、街の食糧の1つとなっているそうですぞ。(パンプ)」

「確かに先程子供達と共に作ったが、初見の我等でも作成出来たからな…(『エイペス』リーダーのゴーラ)」

「ゴーラ、これ″ソイ豆″入れてみても良いんじゃないかしら?(『エイペス』4)」

ザクザク…「うむ、確かにな。(ゴーラ)」

「む!?″ソイ豆″?
ゴーラ殿は″ソイ豆″を知っておるのか!?(バルク)」

ニヤリ。

「勿論さ、我々の体を維持する為には必要不可欠だからなぁ。
肉よりも低脂質で高たんぱく質。王都の方じゃまだ安定供給はなされていないと聞いたが?(ゴーラ)」

「うぬぬ、確かにその通り…(バルク)」

「ここで会ったのも何かの縁だ、安価で入手できる方法を教えてあげよう。(ゴーラ)」


ムキムキマッチョの『筋肉達磨』とゴリゴリマッチョの『エイペス』は、何かにつけて筋肉談義に華を咲かせ、急速に仲良くなっていった。

今現在和気あいあいと筋肉談義を繰り広げる両者だが、『筋肉達磨』は筋肉とフットワークを生かし、『エイペス』達は人間離れした握力でもって前哨基地内を縦横無尽に駆け巡り、技術職達の予想では半日掛かると思われた迎撃設備の建設が僅か3時間で終える事が出来、工期短縮に大きく貢献したのであった。





<何と!そんな手が!?(バルク)>

<ふっふっふ、意外であろう?(ゴーラ)>


(かれこれ2時間も筋肉談義…
馴れ合いし過ぎるのはどうかと思ったけど、案外良い組み合わせだったなぁ…)


ノア自身一目置く程の働きっぷりを見せた『筋肉達磨』、『エイペス』双方の会話を聞きながらも、ノアは別の者達と行動を共にしていた。





~ノアとペルディーダ(フリアダビア所属のクランリーダー)~


「落ち着きましたか?」

「ズビッ…済まない…
クランリーダーとして皆の見本にならなければいけないのに…(ペルディーダ)」


ノアと比べ大分背が高く、年齢的にも一回り位上の白髪の女性ペルディーダは、フリアダビア所属のクラン『失郷』のリーダーである。

背中には大剣を2本担いでいるが、重量を感じさせない程しっかりとした佇まいをしていた。

良く見れば顔や肌が露出している腕や手足には薄らと古傷の痕が浮かび、如何にも歴戦の女剣士を彷彿とさせていた。

だがそれはあくまで街の住人からの感想であって、ノアの見立てでは別の【適正】の様に思えた。


「…付かぬ事をお聞きしますが、あなたの【適正】って…」

「あ、やはり分かりますか?
私の【適正】が″剣″に関連しないモノであると言う事を…(ペルディーダ)」

「何と無くですがね。
担いでいる大剣の重量に体が流されている様に見えますし、手元付近に傷が目立つので、大剣の扱いで出来たものなのかと…」

「流石【鬼神】さん!
実は少し前までショートソードを扱ってたのですが、それだけだと仲間に危機が及んだ時に守れないので【鬼神】さんの戦法を真似てみたんです。(ペルディーダ)」

「え?僕の?」

「はい。時に幅の広い剣を盾の代わりに扱ったり、投擲物として扱ったりと、故郷の皆が口々に言ってました。(ペルディーダ)」


ペルディーダは元々フリアダビアではとある貴族家の生まれだったらしいが、シエストラバードを頭とする軍勢に襲われ避難を余儀なくされた。

共に故郷を失った者同士でクランを結成し、いつの日か故郷を奪還するべく活動していた。

そんなペルディーダの適正は【万能】で、故郷を失うまでは剣にすら触った事が無かったらしい。

大剣を担いでいるのは、ノアの戦闘を参考にして盾の代用としても扱えるから、との事。

ノアによって故郷が奪還された今、帰郷しようとも考えたが、身寄りが無いのでクランが第2の家族なのだとか。





~街から3ケメル・山の麓(窪地の最深部)・繭~


『……』

『『『…ボコボコボコ…』』』(巨大な繭が鳴動)
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