ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~掃討開始~

大氾濫発生は約5日後

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~街(前哨基地)内の工房区画・ヴァンディットと技術職(主に【錬金術】)達~ 


「え?″蘇生薬″を作れるのですか?
…確か品質に関わらず、″聖霊銀(ミスリル)″の使用が絶対条件。
なので【司祭】か、それ以上の適正を持つ一部の国でしか作れないハズでは…(【錬金術】1)」

「確かにそうです。
が、″聖霊銀(ミスリル)″は持ち合わせがありますし、最終調合に必要な″聖水″もノア様のお陰で用意が出来ます。(ヴァンディット)」

「「「「おおおっ!」」」」


街(前哨基地)内に設けられた工房区画のとある一室に、大勢の技術職と共にヴァンディットの姿があった。

今ここでは″蘇生薬″の製造に着手する所であった。



蘇生薬…文字通り死者を蘇生させる事が出来る希少な薬品。但し、死後″1時間以内″という制限はある。

実は作り方は何種類か存在するが、最低でも3種の薬品を調合する事で完成となる。

品質に関わらず死者を蘇生させる事が出来るが、最高品質なら体力まで完全回復し、最低品質なら酷い衰弱状態で蘇生する事になる。

製作時に″聖霊銀(ミスリル)″の使用が絶対条件である為、一部の国や高位の神聖適正でしか作れないとされている。



「でも大丈夫ですか…?
″蘇生薬″製造を知られれば、利権を握っている国から目を付けられません…?(【錬金術】3)」

「人の命には変えられません。
早速製造に取り掛かりましょう。安定性と生産性を考慮して″5種類の薬品調合″、最終品質を″2~4″を目指しましょう。(ヴァンディット)」

「「「「「は、はい!」」」」」


前述した通り″蘇生薬″は数種類の薬品を調合する事で作成出来る。

最低でも3種類と言ったが、この場合その3種の薬品はどれも″最高品質″である事が求められ、種類が増えれば多少の品質低下であっても他の薬品が高品質なら最終的な品質を引き上げる事が可能である。

日頃から【錬金術】に携わり、各種依頼をこなして得た収入で最高品質の器具を揃えているとはいえ、″最高品質の蘇生薬″を製造する事は困難を極めるであろう。

ましてや今回、技術力未知数の技術職達が居る事や時間的余裕も無い為、安定性重視で″5種類の薬品調合″、最終品質を″2~4(蘇生:可、状態異常:衰弱)″を目指す様子。


「一先ず皆さん指定された薬品で、品質が6~8の物を抜粋又は製作お願いします。
その他に大釜に大量の水を汲んできて下さい。
私は″聖水″を得る為にノア様を呼んで来ます。(ヴァンディット)」

「「「「「はい!」」」」」


一際大きな声を上げ、ヴァンディット指示の下″蘇生薬″製造が開始された。

その結果大氾濫開始時点で約50本もの″蘇生薬″が製造され、大いに役立つ事になる。

1本でも市場に出回れば大きな金の動きを生む″蘇生薬″は、″とある国″が基本的に製造・販売を行っており、今回の様な大氾濫が発生するとなれば最低でも数本は出回るものなのだが、全く依頼が来ずに首を傾げる事になる。

物語の展開上察すると思うが、ヴァンディットによる″蘇生薬製造″はその″とある国″にバレ、また面倒事に繋がってしまう。

ちなみに、街(前哨基地)の技術職や住人、冒険者達はヴァンディットが製造に関わっている事は堅く口を閉ざすのだが、意図せず″別方向″の者達が口に出してしまい、情報が出回ってしまうのだった。





~街から3ケメル・山の麓(窪地の最深部)・繭~


『『『ボコボコボコ…』』』(巨大な繭が鳴動・肥大。)

ズボッ!ドボッ!『『モコモコ…』』(繭から木の根の様に糸の束が延びる。)





~観測所~


「…また巨大な繭の鳴動と肥大化か…
これで何度目だ?(ルルイエ)」

「1度目はドラゴネウラ出現時、2度目はそこから約17時間後、そして今回はそこから更に約16時間後に観測されています。(観測班1)」

「明らかに規則性がありますね…(観測班2)」

「…では約15時間後に再び鳴動と肥大化が観測されれば、大氾濫発生の具体的な日数が算出出来るな…(ルルイエ)」

「その通りであった場合、大氾濫発生は″約5日後″…
当初聞いていたよりも明らかに早いな。(レドリック)」


街(前哨基地)から離れた場所にある観測所では、随時巨大な繭の観測を行っていた。

先日、巨大な繭からドラゴネウラが出現した事から端を発し、規則性のある鳴動と繭の肥大化が発生。

最初は街から点の様にしか見えなかった小さな繭は、直径40メルを超え、目を凝らさなくともハッキリと視認する事が出来る。

秋頃に発生すると思われた大氾濫は、仮説として立てた規則性のある鳴動から、″約5日後″と、当初の予定よりも1ヶ月以上早かったのである。


「有志が集まりはしたものの、熱が冷めては士気を上げるのに苦労すると思ったが、こりゃ冷めやらぬ内に開戦出来そうだ。
ルルイエ殿、俺の方から虫系モンスターに対する対処を皆に伝えようと思う。
兵士の方には貴方から伝えてくれ。(レドリック)」

「あぁ、分かった。(ルルイエ)」


あくまでまだ仮説の段階だが、レドリックは街(前哨基地)に集結した有志の者達へと戦いが近い事を伝えるのであった。





~最後の来訪者達・ヴァリエンテ領正門~


「む?そこの者達、こんな夜分に何用か!(門兵)」

「この服では少し悪目立ちしてしまうな…
我々は南に位置するアンテイカー所属の教会関係者だ、ここにノア殿…【鬼神】殿が居ると聞いてな。(シンプソン)」

「我々はこの地で起こる大氾濫に加勢しに来た。夜分訪れたのは、ここに来るまでの道中【勇者】軍の被害を受けた亡者達の対処をしていたからなんだが、大丈夫だろうか?(ヒューガ)」


夜も更け、闇に染まったヴァリエンテ領へと通じる正門前、不意に人の気配を感じで声を上げた門兵の視界に20人程の黒服の集団が目に入った。

良く見れば教会等で見るカソックに身を包んだ教会関係者であった。

彼等は元々アンテイカーに拠点を置き、少し前にノア達の噂を耳にして加勢にやって来たのだった。

その中心人物として神父のシンプソンと修道士のヒューガも一緒であった。

その後彼等は各々身分証明を行いヴァリエンテ領へと入る事になるが、その途中


ザッ…

「…と、間に合った様だな。
済まない、私も加勢に来たのだが中に入れて貰えないだろうか?(ザラット)」
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