2度も転生したラノベヲタの貴族騎士~外道な悪役貴族に転生した俺は、2つの人生で得たスキルとヲタ知識をフル活用し、2度目の異世界で満喫する!~

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プロローグ

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俺の名前は坂本さかもと 瞬一しゅんいち 38歳。
何処でもいるような平凡な普通の……と言いたいが、重度のラノベヲタのITエンジニアである。
家族を第一に考え、夫としても父親としても家族から愛されているヤサ男だ。

会社で有給休暇を取った俺は年末に家族と一緒に温泉旅行に出掛ける事になった。
新潟県にある老舗旅館に2泊3日宿泊する予定だ。
老舗旅館は新潟県の山奥にある秘湯の宿であり、昔ながらの古風な温泉旅館である。
その老舗旅館に向かう為、夜の山道を車で走行していた。
助手席には妻の幸恵ゆきえ、後部座席には娘の美紀みきが乗車している。
そんな2人はウキウキで燥いでおり、家族全員での旅行が久々なので浮かれているのだ。

「パパ♪ 写真撮るよ♪」
「撮るならかっこよくな?(笑)」
「美紀! 運転の邪魔をしちゃダメでしょ」
「は~い。ごめんね、パパ」

ごく普通の何処でもいるような仲睦まじい家族だ。
そんな家族に俺はある秘密を隠している。

その秘密とは俺がこの世界とは別の世界からの転生者という事だ。
前世の世界での記憶があり、前世の俺の名前はロイス・アルバードと呼ばれていた。
歳は28であり、魔法が使えない、魔力がない、魔法ヲタクの最弱な魔法考古学の魔導教師だった。
見た目も華奢きゃしゃな体格をしていて、頼り無さそうな雰囲気を醸し出しているへたれ教師だ。
ある理由で友達が1人もいない陰キャな男だ。

魔導教師でありながら魔法が扱えないものの、魔法に関する知識量はどの魔導教師や上位の魔導師よりもずば抜けていた。
但し、前世の世界ではどんなに魔法に関する知識が優れていても、魔法が扱えない者が生存するには厳しい世界だった。

同時の俺は名門校と呼ばれていたガーディアス魔法学院の魔導教師を勤めており、魔法考古学科で講義をしていた。
魔導教師としては生徒には慕われていた。
が、学院の全教師からは給料泥棒と罵倒され、嫌悪を抱かれていた。

ある日、アーセルド学院長から緊急招集の任意を受ける。
緊急招集された場所は学院長が居られる学院長室。
室内は【魔空間】で拡張された特殊な空間だった。
床は近世ヨーロッパ時代の洋館の床に酷似しており、真っ白なペンタゴンタイルであり、壁も真っ白に覆われていた。
つまり上下左右に真っ白な空間だって事だ。
その空間に巨大な近世のイギリスの椅子があり、そこに老人が一人座席していた。
見た目は貴族の貫禄があり、教会の大司教のような服装を身に纏っていた。
長い白髭も生やした渋いご老人こそがガーディアス魔法学院のアーセルド学院長である。
椅子の席から学院長は、不機嫌な表情で俺の事を白眼視で睨み付けていた。
沈黙を続けていた学院長が口を開く。

「君を本日持って解雇処分とする」
「ど、どういう事ですか?」
「言葉の通りだ・・・・君はクビだ」

学院長から解雇処分の通告を躊躇ためらいもなく言い渡された。
学院長の発言に呆然とし、思考が停止した俺は内容を処理出来ずにいた。
そんな俺を置いていくかのように学院長は話を進めていく。

「魔法の実技が出来ない教師はこの学院には必要ないのだよ。幾ら魔法に関する知識が優れているとは言え、魔法の実技が出来ないのでは話にならんのだよ」

俺は何も言い返せなかった。
魔法が使えないのも、魔力が無いのも事実だ。
そんな教師を学院側が雇っている自体そもそもおかしな話だ。
アーセルド学院長が下した決断は間違っていない。
適切な見解で解雇処分を通告された俺には、何かを発言をする権利はない。
通告を受け止め、俺は学院長室を後にした。
職員室に戻った俺は荷造りをし、「今までお世話になりました」と教師達に挨拶をするも、誰一人と俺に返答してくれなかった。
視線も合わせず、聞く耳も持たず、俺は完全に孤立していた。
寂しく荷物を持って職員室を退室し、その場から少し離れると職員室から微弱な声音で教師達の声が聞こえてきた。

「やっと解雇されましたね(笑)」
「辞めてくれて清々するわ(笑)」
「正直、存在自体が傍迷惑でしたもんね(笑)」

聞こえてきたのは、職員室にいた職員達の嘲笑う声と陰口だった。
俯いて怒りを堪えるしかなく、その状態で俺は校舎を出た。
こんな惨めな姿を生徒達に見せたくなかった俺は、逃げるように学院を去った。
最後に出来れば、生徒達にお別れをしたかった。

「生徒が卒業するまで見届けたかったな……」

寂しい背中を見せながらガーディアス魔法学院を後にし、王都の方へと足を進めた。
魔法が扱えない俺にはこの国にも、他の町にも職は見つからないだろう。
事実上、無職になった俺は路頭に迷う事になった。

そんな時にある事件が起きた。

ガーディアス王国の王都エスティアの人々は普段と変わらない日常の生活を送っていた。

バタバタ……

と、上空から翼を羽ばたく轟音が聞こえるまでは……。

「……何かしら、この音?」
「近付いてくるように音が大きくなってるわ」
「ん? あれは何だ?」

音に気付いた街の人々は上空を見上げると、その一人がある異変に気付き、血相を変えた表情でその方角に指をさした。

「ド、ドラゴンだああぁぁぁ!!!!!」

男性の叫声と竜種と思われるその姿を上空で目撃した瞬間、誰もが驚愕した。

『ガアオオオオオォォォォン!!!!!!!』

上空から竜種の咆哮を放つ最上位の火炎竜フレイムドラゴンが飛翔して来たのだ。
見た目は大型の火竜であり、深紅クリムゾン色の鱗を纏っている。
通常の竜種の鱗よりも数段硬いと言われており、爪も牙も断然鋭い。
炎属性の魔法も桁違いのレベルの破壊力を持っている。
その最上位竜種である火炎竜フレイムドラゴンが突如、王都の上空に飛来したのだ。

火炎竜フレイムドラゴンからだだ漏れの魔力が王都の魔力探知マナセンサーに感知し、緊急避難警報が王都中に発令した。

「緊急避難警報! 緊急避難警報! これは訓練ではありません! 直ちに市民は避難シェルターに避難して下さい! 繰り返します! これは訓練ではありません! 直ちに市民は避難シェルターに避難して下さい!」
「う、嘘だろ?・・・に、逃げろ!!」
「皆、ここから逃げるんだ!!」

火炎竜フレイムドラゴンの襲来に王都の人々はパニックに陥った。
緊急避難警報を聞いた市民は直ぐ様に各区の避難シェルターへと避難した。
咆哮の叫びと共に荒れ狂う火竜。
火炎竜フレイムドラゴンが解き放った火炎息フレイムブレスが王都エスティアを一瞬にして火の海へと変えた。
そこに数名のSランクの魔導師が火炎竜フレイムドラゴン討伐の為、転移魔法で災害地である王都に転移してきた。
指揮官らしき人物が現状を把握し、瞬時で対策を練り、他の魔導師達に攻撃チーム、救助チームに分割し、作戦の指示を出していく。


「我と数名でこの火炎竜フレイムドラゴンを食い止める! それ以外の者達は逃げ遅れた者達の救助にあたれ!」
「了解! 救助に向かいます!」
「よし、残った者は我と一緒に【氷結の檻】フリージング・ケージで奴を凍り付けにする!皆、かかれ!」

魔導師達は火炎竜フレイムドラゴンの弱点と言える氷属性魔法【氷結の檻】フリージング・ケージの詠唱を唱え始めだ。
身体の芯まで氷結させる氷属性の上位魔法だ。
街の被害を食い止める為に、一気に火炎竜フレイムドラゴンを氷結させる作戦に実行を移した。

「た、助けて!」

計画は順調だったが、火炎竜フレイムドラゴンの前方に逃げ遅れた一人の少女が迷い込んできた事で戦場の状況が一変した。

「逃げ遅れか!?」
「逃げ遅れた一般人の少女を発見! これより作戦を一時中断とする! 繰り返す、作戦は中断だ!」

逃げ遅れた市民を確認した魔導師の指揮官は、【氷結の檻】フリージング・ケージの一斉攻撃を一時中断と各チームに報告していく。

「このチャンスを逃したら、第2波の火炎息フレイムブレスを王都に撃ち込まれるぞ!」
「魔力が上昇!? ま、不味いです!? 次の火炎息フレイムブレスが来ます!!」

魔力の流れが津波のように押し寄せて溢れ出している事に魔導師の一人がその事に感知した。
かなりの速度で魔力が上昇し、灼熱の業火の熱気が口内の牙の隙間から漂っていた。
火炎竜フレイムドラゴンは次の火炎息フレイムブレスを解き放とうと体勢を整えていた。
このままでは火炎息フレイムブレスで少女もろとも王都を焼き尽くされてしまう。

「危ない! 逃げろ~!!」

その事に瞬時に気付いた俺は迷う事なく地面を強く蹴り上げ、少女の元へと駆け出していた。
間に合うかどうかも分からないし、正直言って間に合う自信もない。
それでも少女を守らないといけないと思った俺は、無意識に反射的に少女のいる方角へと駆け出していた。
少女と俺の気配を感知した火炎竜フレイムドラゴンはギロッと視線をこちらに向け、口内をゆっくり開けていく。
標的を王都ではなく、確実に俺と少女に切り替えたようだ。

「ん? あれは……ロイス!」

俺の事を知る魔導師の一人が、俺が少女を救助しようとしている事に気付いた。
その行為を制止しようと離れた距離から俺に叫び続ける。

「馬鹿やろっ! 魔法が使えないくせに出しゃばるんじゃねぇ!」
「こんな時に魔法が使えるか使えないかは関係ない!」

俺は魔導師の制止の声を振り払い、直進で少女の元へと駆けた。
火炎竜フレイムドラゴンの口内から灼熱の業火の熱気と赤い閃光が眩しく輝き出し、俺と少女に目掛けて火炎息フレイムブレスを噴出した。
灼熱の業火である火炎息フレイムブレスは王都の半分を飲み込んでいく。
俺は何とかギリギリの所で少女に抱き付く事が出来た。

「もう大丈夫だ! しっかり掴まって!」
「え? う、うん!」

既に背後には解き放たれた火炎息フレイムブレスの灼熱の業火が迫っていた。
背後を振り向いた時にはもう遅く、下半身は火炎息フレイムブレスの灼熱の業火に飲み込まれてしまった。

「ぐあっ!」

俺は少女を抱き抱えながら地面へと転落した。
身を呈して地面に強く強打し、少女を抱き抱えながらコロコロと転がった。
しっかりと抱えていたおかげで少女は擦り傷で済み、大怪我までは至らなかった。

「お、お兄ちゃん。怪我、大丈夫?」
「え?」

少女が俺の安否を心配してくれていた。
大丈夫だと安心させる為に声を掛けようとすると、下半身から何か違和感を感じた。
下半身から痛覚を全く感じないのだ。

「だって、お兄ちゃんの足が無いんだもん」

少女の発言で下半身の違和感の理由が分かった。
痛覚を感じないのは、下半身が熱気で溶けたからだ。
火炎息フレイムブレスの灼熱の業火をギリギリで回避したが、熱気までは完全に回避出来ていなかったようだ。

「····大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

俺が少女を救出した事を確認した指揮官は火炎竜フレイムドラゴン【氷結の檻】フリージング・ケージの一斉攻撃の指示を各チームに伝えた。
攻撃チームの魔導師達が火炎竜フレイムドラゴンを包囲し、詠唱を唱え始めた。
火炎竜フレイムドラゴンの周囲に複数の碧色の輝きを放つ魔法陣が展開された。

「準備は整った! 今度こそ、終わりだ! 【氷結の檻】フリージング・ケージ!!」

複数の魔法陣から【氷結の檻】フリージング・ケージが解き放たれた。
その結果、火炎竜フレイムドラゴンは咆哮と共に一瞬で身体の芯まで完全に氷結した。
まるで氷の彫刻のように。

討伐の代償として王都の半分が壊滅的被害を受け、数百以上の死人が出てしまった。
王国は多くのものを失った。
討伐を終えた魔導師の一人がロイスの傍に転移魔法で転移し駆け寄った。

「ロイス! しっかりしろっ! 何てこんな無茶な事を!?」
「・・・ただ、この子を守りたがった・・・それだけだ」

意識が朦朧とし、視界が霞んできた。
先程までは身体が熱感を感じていたのに、今は悪寒を感じる。
下半身の痛覚は全く感じないが、上半身の痛覚は感じる。ただ、その感覚も徐々に無くなりつつある。
痛覚の先に視界が完全に見えなくなった。
魔導師や少女の声がほぼ聞こえなくった。
痛覚も感じなくなった。

この瞬間、俺は死ぬのだと直感した。

「おい! しっかりしろっ! ロイ……」
「…………」

もう何も見えない、聞こえない。
もう死んでしまったのだと思ったその瞬間、どこからともなくある声が聞こえて来た。

『ロイス・アルバードの死亡を確認しました。条件がクリアされた事により、神スキル【転生】が発動されました』

・・・・何を言ってるんだ?

『【地球】という世界の【人間】の肉体の構築を開始致します』

【地球】?
肉体を構築?

『肉体の構築を完了致しました。これより肉体と魂との融合を行います』

肉体と魂の融合?
本当にさっきから何を言ってるんだ?

『肉体と魂の融合を完了致しました。只今よりあなたを【地球】という世界に【人間】として転生を開始致します』

【地球】という世界に転生するのか?
生まれ変わるという事か?

『転生を完了致しました。【地球】に転生した事によりスキルを獲得しました』


 NEWスキル

 【転生スキル】

  スマホ
  エンジニア
  データバックアップ
  課金
  霊力


 前世スキル

 【ユニークスキル】

  考古学

 【エクストラスキル】

  次元収納

 【スキル】

  気配遮断
  身体強化


は? 転生スキル?
聞いた事がないスキル名だ。
ユニークスキル、エクストラスキルとも違うようだ。
考古学者としては興味深い。

【地球】という異世界に転生する事で数多のスキルを獲得した。
前世ではほぼ聞き覚えのないスキルばかりだ。
元々習得しているスキルはそのまま引き継がれたみたいだ。
が、多少変化もしているスキルもあるようだ。

試しに【考古学】の解析鑑定をしてみるか……。



 転生スキル【スマホ】の効果

    アプリ:数多のアイコンを使用可
        アイコンには特異スキルが付与
        されている
        追加機能あり

    カメラ:写真・動画機能あり
        データ保存可

インターネット:PCなしでネット接続可
        全世界ネットワークの情報を共有
        
    メール:メッセージを相手に送信
        自身をデータ化させ、送信先に
        転送

     電話:相手と電話可
        念話での電話も可

    Wi-Fi:どのような環境下でも通信可

     防水:外界から水が入り込まないように
        加工

    耐久性:外部からの物理的な影響に対し、
        長く抵抗する

    初期化:肉体が損傷、まだは異常状態に
        なった場合、通常の状態へと
        復元する




 転生スキル【エンジニア】の効果

プログラミング:スマホアプリ、技術などの開発
        プログラムを組む

  データ開発:スマホアプリのデータを作成
        技術開発のデータ作成

   技術開発:武器・機械を作成

   分析鑑定:対象のデータを分析

   思考加速:通常の1000倍に知覚速度を上昇

   並列計算:分析したい事象を思考と切り離
        して計算を行う。

 バックアップ:記憶を保存


  転生スキル【課金】の効果

  マーケット:【地球】の全ての物を購入可
        スキルの購入可

ステータス強化:自身のステータスを課金で強化可

     売買:物を売り、資金を得る

    ガチャ:課金100万でSランク以上の
        スキルを獲得可



  転生スキル【霊力】の効果

     霊力:魔力に似た力
        霊と妖怪に触れる事可

     霊感:霊と妖怪の霊気を感知
        霊と妖怪を見る事が可

     結界:自身の身を守る結界を展開
        但し、自身以外に結界を展開し
        ている場合、自身を守る事は出
        来ない

   絶対徐霊:悪霊を強制的に成仏させる



 ユニークスキル【考古学】の効果

ステータス鑑定:対象のステータスを鑑定

   解析鑑定:対象の解析及び、鑑定

    宝感知:眠る宝を感知

     翻訳:あらゆる言語・文字を理解
 
 異世界図書館アカシックレコード:この世界の、過去、現在、未来の
        情報の全てを網羅する。 



 【ユニークスキル】

   次元収納:次元内にあらゆる物を収納する
        事が可
        生物も腐敗させずに保存する
        事も可

  

 【スキル】

   気配遮断:自身の気配を消す
        忍びながら行動する事が可

   身体強化:自身の身体を20倍に強化
        ONとOFFの切り替えも可


全部、規格外すぎるだろ……

獲得したスキル全てが規格外だった。
想像を斜め上にいっていた為、規格外のスキルを獲得した事に自覚がない。

そう言えば、さっきから真っ暗なのは何故だ?
意識ははっきりとしているのに?
瞼を閉じているのか?

意識もハッキリしている上、五感の感覚もちゃんとある。
視界が真っ暗な理由を確認する為に、俺はゆっくりと瞼を開ける事にした。
光が眩しくて視界がぼやけて何も見えなかったが、徐々に視界がハッキリと見えるようになってきた。

「・・・ここは・・・どこだ?」

さっきまで王都にいたはずなのに、視界に入ったのは見覚えのない見知らぬ部屋の中だった。

火炎竜フレイムドラゴンの襲撃に巻き込まれ、少女を守って命を落とした事までは記憶にある。
死後の事もはっきりと覚えている。
本当に【地球】という異世界に転生したのなら、この状況が納得いく。
周囲を見渡しても初見の物ばかり、部屋の風景、建造物の構造、何から何まで異様としかない。
自身も見回すと初見の異様な服を着用していた。
他にも情報を得たかった俺は、ベッドから降り、この部屋の中を探索した。
部屋の中には幾つもの扉がある事を知った俺は、その一つの扉を開ける事にした。
扉を開けると洗面所らしき場所を発見する。
洗面所にも初見の物ばかりだった。
が、目の前に貴族が愛用していた道具の鏡を発見した。
ただ、これ程の大きな鏡は見た事がない。
隅から隅まできっちりと鏡があるのだ。
恐る恐るその鏡を覗くと、俺の前に立っていたのは見知らぬ男だった。

「俺の前に立っているのは誰だ? 何故、俺の姿が鏡に映っていないんだ?」

俺は何度も何度も自身の顔を手で触れながら鏡で確認した。
鏡の前に映っている男は30代後半の男性だ。
顔も容姿も全く違う、別人だ。

「‥‥あなた、どうしたの?」
「だ、誰だ?」
「あなた、何を言ってるの? 大丈夫?」

この瞬間、走馬灯のように別の人物の記憶が一斉に頭の中に流れ込んできた。
この女性は俺の妻、坂本 幸恵だ。
そして、俺の名前が坂本 瞬一という事も瞬時に理解した。

「・・・君は、俺の妻の幸恵か?」
「何を言ってるの? 私はあなたの妻でしょ? 本当に大丈夫なの?」

間違いなく俺の記憶と坂本 瞬一という男の記憶が混合した。
こんな現象は初めてな為、正直困惑している。

転生に成功したのなら、普通は赤ん坊からではないのか?
なのに、何故大人になってから前世の記憶が蘇ったんだ?

いくら思考をフル回転しても答えが出なかった。

「ん? なんだ、あの光……」

ある光が俺の視界に入った。
様々な色の光が輝いているのが気になり、その光が見える大きな硝子のある場所へと近寄った。
硝子の外側を覗くと、上下左右に点々と光輝く見た事も無い夜景だった。

「なんで美しいんだ……」

硝子越しから見える異様な程までの光、俺がいる場所も相当な高さはあるはずだ。
こんな夜景は前世の世界でも見た事がない。
紛れもなくここは【地球】という異世界だ。

「・・・ママ、どうかしたの?」
「ごめんね。起こしちゃったわよね」
「美紀、起こしてすまない。大丈夫だから、寝なさい」
「うん、分かった」

確かに俺は死んだ。
坂本 瞬一として転生したのも理解した。
が、解せないのは何故転生したのか、だ。
何かの条件を満たしたのは間違いないはずだ。
だとすれば、一番可能性が高いものはあの声だ。
あの声は神スキル【転生】が発動したと発言していた。
俺はその神スキル【転生】に心当たりがあった。

昔に読んだ古の書物の文献に神スキル【転生】に関する情報が
記載されていた。
神スキルとは神のみが持つスキルの事。
神スキル【転生】は所持者が【死亡】すると【転生】の能力効果で異世界で別の存在として転生すると書かれていた。

文献通りなら、神スキル【転生】の効果で俺はこの異世界に転生した事になる。
なら、何故記憶は遅く蘇ったんだ?
それだけがどうしても疑問に感じてしまう。

まあ、まだ時間はたっぷりある。
慌てず、ゆっくりと解明していけばいいか……。

「……あなた、本当に大丈夫?」
「え? あぁ、大丈夫だ。君にも心配かけてすまない。寝室に戻ろう」
「それなら良いんだけど……」

ここから俺の第2の人生がリスタートする訳か。
坂本の記憶はあるとは言え、この世界の事、新しく獲得したスキルの事を学ばないといけない。
意外とやる事が多忙にありそうだ。

この世界の生活に馴染むまでに思った以上に時間を費やした。
坂本の記憶があるとは言え、かなりの苦労をした。
前世とこの異世界での生活があまりにも違いがあったからだ。
それでも家族の支えで何とか乗り越えられた。

俺がこの異世界に来てから、長い年月が経過した。

俺は今の生活に愛しく感じていた。
この家族との生活を失いたくないと思える程に。

家族の仲をよりいっそう深めようと有給休暇を取り、温泉旅行へと出掛けたのだ。

……だが、再び運命の歯車が狂い出すとはこの時の俺は知る由もなかった。


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