ソードマスター

雨宮結城

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第一章 学園編

Episode 4

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 峰村涼太はサラ・ツインベールことサラを追いかけ、あてもなく探していた。

 教室や体育館などをまわったが見つからず。 ひとまず休憩しようと、峰村本人もよく行く屋上へと足を運んだ。

 「はぁ……はぁ……いない、どこに行ったんだよ。 いかん、疲れた。 (ひとまず休むか、こういう時は、落ち着く屋上だな)」

 ドアノブをさわろうとした時、ドアは少し開いていて、声が聞こえた。

 耳をますと、なにやら独り言のようで、その声の主はサラだった。

 「またやっちゃった。 どうして私はいつもこう……カレンの事、ホントは尊敬してるのに。 私って、最低ね。 自分優先で、私の問題なのに、その八つ当たりを、会う度にカレンにぶつけて。 カレン、きっと私の事、嫌いよね。 むしろ憎いまであるわよね。 はぁ……どうしよう、正直チームのあてなんかないし、というかカッコつけて、チーム勧誘かんゆう全部断っちゃってるしな、カレンと同じチームになりたくて、なのにもぉー! どうして私はいつもいつも!」

 峰村涼太は、話したいと思いつつも、今はそっとしておこうと、というより気まずさでその場から離れようとした時、サラに気配けはい察知さっちされた。

 「! 誰!」

 「……」

 気まずいと思いつつ、峰村涼太はドアを開け、姿を現した。

 「なんだ……アンタか」

 「すいませんね、カレン先輩じゃなくて」

 「ふんっ……別にそんな……え?」

 「あ……」

 「アンタ……今、なんて?」

 「いや、なんでも、失礼しましたぁ~」

 立ち去ろうとしたが、サラに制服をつかまれ、逃げられなかった。

 「コラ待ちなさいよ! 逃がさないわよ! アンタどこまで、というか……いつからいたのよ!」

 「わ……割と初め……から」

 「でしょうねぇ!! もう我慢できない、やっぱり貴方は変態、てかストーカーよ! なんでここに来るのよ変質者そのものじゃない! いくら私が美少女で! 魅力的でも! やってはいけないラインぐらい分かるでしょ!」

 「おま! そういうのは、自分で言わないからこそ魅力的だと言うのにぃ~」

 「ふんっ! そんなのアニメの見すぎよ! あれは男に都合の良い女の子が出てきて、しかも皆可愛くて、なんで自分が主人公でもないのに、モテた気になっているのかしら、全く理解できない!」

 気づけば二人はお互いの両手を掴み、取っ組み合いなり、ひたすら激しく語り合っていた。

 「それ以上は聞き捨てならないなサラさんよぉ! アニメは日本の文化! いや世界に誇れる最大最高級のエンターテイメント! それを! お嬢様なのに知らないのかよ!」

 「あら馬鹿にしないでくれます! こちとらアニメは小さい頃からずっと見てるわよ! なんならクッションとかアニメグッズだらけですよ私の部屋! でも! 私は! お嬢様だから! コミケに行けない! ホントはいかなる手段しゅだんを使ってでも行きたいと言うのに! あぁ! 全く美少女お嬢様は大変よ!」

 「あぁそうですかい、俺はニュースは見ないが、アニメは見てるぞ! 特に美少女がたくさん出てくるアニメなんて推しを選びきれない毎日さ!」

 「男なら一途に一人を愛しなさいよ! なにが推しよ! 推しは一人でしょ! なに他のアニメ見て推し変えてるのよ! これだから男は!ていうかそもそもアニメの女の子が可愛いなんて当たり前じゃない! 皆魅力的すぎて私なんか一時期自分がみじめに感じて泣いちゃったわよ! 皆素敵すぎよもぉ!!!」

 アニメの語り合いを始め、気づけば十分経っていた。

 「はぁ……はぁ……なかなかやるじゃないかお嬢様、まさかアニメをご覧になっていたとは」

 「私だって、お嬢様と言えど女子ですから、というか一人のアニメが好きな乙女オタクですから、BLも百合も、なんだって大好物。 でもまさか貴方と話が合うとは、予想外だったわ」

 「俺も……そうだよ」

 「ふぅ……疲れた。 こんなに激しく話しのはいつぶりだろうか、貴方のお陰で、気がまぎれたわ、ありがとう」

 「いえ、こちらこそ。まさかこうなるとは、予想外だったけど」

 「というか、なんで貴方は屋上へ? 話に夢中で忘れてたけど」

 「あぁ……その件だが、さっきの続きだよ」

 「アニメの?」

 「いやそっちじゃない、その前だ」

 「……あぁ、なるほど」

 「あぁまで思ってるのに、どうして」

 「峰村涼太君、だったわよね」

 「うん」

 「少し、聞いてくれない?」

 「うん」

 「私、サラ・ツインベールは、ツインベール家の人間として、トーマスランド家同様、天才であることが、当たり前なのよ。 天才でなければ、意味がない。 そう教わってきた」

 「(そう言えばカレン先輩も、言ってたな)」

 「でも私は知ってる。 修行で満足いかないと思った時、私はいつも修練場しゅうれんじょうに行くんだけど、そこには必ずカレンが誰よりも早くいて、毎日一人で黙々もくもくと木剣を振るっていた。 手がボロボロになろうが、いつもいつも。 凄かったわ、そのストイックさに、正直尊敬すらあった」

 「なら、どうして」

 「自分でも分からない。 でも、原因は私よ」

 「サラさんに?」

 「私は天才剣士なんて言われてるけど、正直言われたくなかった」

 「どうして?」

 「怖いのよ。 皆が、皆の目が、皆の期待が、確かに私は、人の何倍も魔法の適正はあるし、器用だとも感じている。 でもそれ故に、失敗は絶対に許されない、失敗なんてすれば、きっと私の価値なんてない。 だから私は、カレンには絶対言えないけど、羨ましかった。 失敗を恐れず、何度も木剣の振るい方やわざの練習を、何度も何度も積み重ね、その上にカレンの強さがある。 カレンとはよく勝負するんだけどね。 引き分けなのよ、絶対、カレンの方が、強いに決まってるのに。 私なんかより、カレンの方が、天才であるべきよ、そしてカレンならきっと人類最強剣士ソードマスターにだってなれる。 ソードマスターが世に現れたのはたった一度だけ、それほどの名誉と実力なのよ。 それに初代ソードマスターは、魔法の適正がなかったって噂だし、きっとそういう事なのよ」

 「サラ……」

 「なのに私は、見苦しい嫉妬しっとで、いつもカレンに当たって、ホント……最低」

 サラ・ツインベールは、天才と呼ばれた特別な剣士。 だがそれ故に彼女は周りの目が怖かった。 失敗が絶対に許されない。 カレンと勝負して、勝敗以上に、彼女はただ純粋に、カレンとたくさん勝負したい。 それこそ自由に、彼女の心は、ひたすらに自由な、決闘を求めていた。

 「ホントはカレンのチームに入りたい。 でも、こんな私は、そんな資格も、価値だって……」

 「入りたいんだな、チームに」

 「そりゃあ」

 「じゃあ、それでいいじゃん」

 「え?」

 「正直、サラのつらさを、分かるなんて、そんな事は口にできないし、できるもんでもないと思う。 名家の事情だって、俺はよく知る訳でもない。 でもサラ、君は、【ミスト】に来た。 それだけで、答えは出てるさ」

 「!」

 「学園の生徒である前に。 サラは、サラ・ツインベールという一人の女の子の人生は、なにをするにも、全ての決定権は君が握っている。 他の誰でもない、君なんだ」

 「私が……でも、ホントに……良いのかな」

 「うん、ここには、君の気にする視線もなにもかもない。 君にあるのは自由だ。 障害があっても、その時は俺が取り除く。 だから、したいこと、していいんだ、サラ」

 「どうして、そこまで」

 「俺がそうしたい、それだけだよ」

 「お人好しが過ぎるわね、バカなやつ」

 選択の自由、それに味方であるという宣言。峰村涼太の言葉は、確かにサラ・ツインベールの心に響き、涙を流す。

 「私、決めたわ。 カレンに謝りたい、これまでのこと、そして入りたい、カレンのチームに」

 「じゃあ、行こうぜ」

 手を差し伸べる峰村涼太。

 「えぇ」

 その手をとり、カレンの所へと向かう。
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