蒼き英雄

雨宮結城

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最終章 The Final

Part3

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「スレイヤー?」

「ええ」

「アンタ、この世界の人間じゃないだろ」

「あら、どうしてそう思うの?」

「俺の名前は雄也だ。アスタって呼び名を知ってるのは、この世界では限られている。その中にアンタはいない」

「あら、じゃあ呼び方を変えた方がいいかしら、宮村雄也」

「!?」

「ふ」

「アンタ、ホントに何者だ」

「…私が何者か、確かに知りたいわよね。でも、それはじきに分かるわ。だから、今は、貴方にいい情報を渡すわ」

スレイヤーはそう言うと、アスタの肩に手を置き、アスタの耳元で囁いた。

「!?それは、どういう」

「これは事実よ。あと、貴方には少し、私に協力してほしいの」

「協力だと」

「ええ、断ればどうなるか。察しが良い貴方なら、分かるんじゃない?」

「…」

「あと、この事は内密にしなさい。秘密をバラせば、取り返しのつかない事になるわよ」

「…」

「じゃあ、話は終わり。また会いましょ、アスタ」

「…!待て!」

スレイヤーの後を追うとするが、道に出た途端、スレイヤーの姿は消えていた。

「ハァ、ハァ……ん?連絡?サオリからだ」

アスタは、サオリからの連絡を受け取った。その内容は、ソウルワールドの危機についてだった。

連絡を受けとり、アスタはもちろん、ユキとミユキも、施設へと来た。

施設に着き、ユキはサオリに聞いた。

「サオリちゃん、話したいことって、なんなの?あの世界の危機かもしれないって」

「それは、向こうに行ったら話すわ。皆に説明したいから」

「分かった」

「行きましょ」

「はい」

「…」

「ん?どうしたのアスタ」

「あいや、なんでもない」

「…」

ユキは少し気になったが、アスタ本人から言わない以上、ひとまず気にするのを止めた。

「行くか」

「うん…」

そしてアスタ達は、カプセルの中に入り、意識をソウルワールドへと飛ばした。

「…」

ソウルワールドへと着いたアスタ達は、サキ達がいる、第二十階層のミレイユ姫のお城へと向かい、そしてお城へ着いた。

「お待たせしました」

「たく、やっと来たか」

「ユウヤ、口が悪いですよ」

「サオリさん、お久しぶりです」

「はい、久しぶりです。メイさん。ユウヤさんも、お久しぶりです」

「ふん」

「サキさん、全員揃いました。話しましょう」

「はい」

サオリとサキは、牢獄であった出来事、そして、脱走した者等の話を始めた。

「皆さん、集まってくれて、ホントにありがとうございます。この件は、是非皆さんの協力が必要不可欠だと思いました」

「で、俺らを集めた訳はなんなんだ?」

ユウヤが聞く。

「はい、カインと言う男を覚えていますか」

サオリの次に、サキが話し始める。

「俺が殺さなかった異世界人の事か」

「はい、そのカインですが、カインは、牢獄で何者かに殺されました」

「!?」

驚く一同。

「え、殺されたのか。カインが」

アスタがサキに聞いた。

「はい」

「殺したヤツは、検討ついてるのか?」

「はい、アスタさん。私達が殺したと思ってるその人物の名前は」

「…」

「スレイヤー」

「!?」

「と言う者です」

「スレイヤー…」

アスタはここで初めて、スレイヤーが何者か、サオリとサキを除き、一人理解した。

「スレイヤー、ソイツは今どこにいるの?サオリちゃん」

「分からないの」

「申し訳ない事に、私とサオリさんで、逃がすまいとしていのですが、突然の出来事に、スレイヤーを取り逃してしまいました」

「何があったの?」

「私がスレイヤーと話をしていたら、突如牢獄の警備員の一人が、腕輪の封印を解除し、罪人達が暴れ始めたんです。そして、その騒ぎを利用し、スレイヤーは逃げました」

「腕輪?」

ユキがサキに聞いた。

「はい、罪人達が魔力を使って暴れないように、罪人達には、両腕に魔法の腕輪を付けているんです」

「その腕輪が、一時的に解除されて、スレイヤーは逃げたってこと?」

「はい」

「私も、スレイヤーを止めようとしましたが、瞬間移動で逃げられてしまいました」

「サキちゃんやサオリちゃんでも敵わないなんて、何者なの、スレイヤーって」

「私達も、詳しくは分からないの」

「ですが、スレイヤーについて、ある組織の人達と調べる事にしたんです」

「ある組織?」

疑問に思い、口に出したユキ。

「ええ、連合会の人達よ。ミレイユ姫様や私達、そした連合会の人達で、スレイヤーの情報を集める事になったの」

「連合会の方々は、情報を集める達人の方々が多い組織なんです。その人達とミレイユ姫を含めた私達で、スレイヤーの情報を調べます」

「ボク達は、それまで待機ってこと?」

「ええ、スレイヤーの居場所が分かり次第、突撃するわ」

「なんだよ、待機かよ」

「まあまあユウヤさん」

「何か質問がある方はいますか?」

「…」

「あれ?珍しいねアスタ、何も聞かないの?」

「え、あ、うん、サオリとサキさんの話で大体は分かった。俺達は待機して、機会を伺う、そういう事だろ」

「ええ、アスタの言う通りよ」

「それなら、俺は何も言うことはない」

「…じゃあ、ひとまず解散にします」

「また何かあれば、皆さんを呼びますので」

「分かった」

代表して返事をするアスタ。

そして話を終え、おのおのが家に戻って行った。

そして、アスタも、フェイと過ごした宿へと帰った。

「…」

ベットに寝っ転がるアスタ。

そんな中、ユキがアスタの部屋の前まで来た。

「アスタ、入っていい?」

「ユキか?どうぞ」

ドアを開け、入るユキ。そしてアスタがいるベットに座った。

「急にどうしたんだ?」

「…アスタ、何かボクに隠してない?」

「え、そんな事は…」

「分かるよ、ボクの勘だけど」

「…」

「そんなに話したくない?」

「いや、…そうだな。ユキには言っておくよ」

「うん、話して」

「俺、現実世界の、リアルワールドの人間じゃないかもしれないんだ。そう思い始めたのは、カインと戦っていた時だ、カインが俺に、覚醒の力をいつ使えたか聞いてきたんだ。その時はよく分からなかったけど、カインを捕まえて、アイツと話していく内に、俺は、リアルワールドの人間であるのか、怪しく思ってきてな。俺の本名って、宮村雄也だろ?青山さんに、宮村家について調べてもらったんだ。そしたら、結婚をした記録は残っていたけど、子を産んだ記録が見つからなかったんだ。この事は、神田貴志さん、父さんにも話した。そして今、君に話している。でも、最初は、話すのが少し怖かった。いや、考える事そのものが怖かったんだ。俺って、一体何処で生まれて、誰に育てられて、そして、ユキが俺の事を…」

「アスタ」

「!」

「ボクは、アスタが何者でも、君を受け入れるよ」

「…ユキ…」

「ありがとね、話すことどころか、考える事すら怖かったのに、こうしてボクに話してくれた。ボクは嬉しいよ。ボクは、アスタが何者であろうとも、君を好きに、ううん、大好きになった君を、否定したりなんかしない。ありのままの君を、ボクは受け入れるよ。ボクの人生において、アスタ、君が必要だから。これからボクは、君と共に戦い、君を守り続ける。だからアスタ、君は、ボクを守ってね」

「ああ、約束する。俺は、ユキ、君と共に戦い、君を守り続ける。そして、絶対に離さない」

「うん」

アスタとユキは、ほぼプロポーズの様なセリフを、さも普通に話した。こうして、二人の絆は深まった。

その夜、連合会は、スレイヤーの情報を出来る限り集め、それをサオリとサキに話す約束をしていた。

〈連合会は、とある飲み屋で、サオリとサキを待っていた〉

「スレイヤーと言う者の情報はこんな所か、ご苦労だった。これだけの情報があれば、ヤツに勝てる」

「ええ、ですが、これだけの情報、集めるのが簡単すぎやしませんでしたか」

「まさか、これが罠だと?」

「いえ、そこまでは、ただ、調べれば調べるほど謎ですね。スレイヤーと言う女は」

「…」

その頃、店のドアの前で見張りをしていた二人は。

「…」

「…ん?」

見張りの内の一人が、店と店の間で、音がしたので、そこに向かった。

すると、そこにいた何者かに、その見張りの一人が引っ張られた。

「ん?あれ」

隣にいたはずのもう一人がいない事に気づいた見張りは、音のした方へ向かった。

「なんだ、!おい!」

するとそこには、見張りをしていた一人の男が、斬られ殺されていた。

「…ん?」

もう一人の男は、上から音がして、上を向いた。

「!」

すると、壁にくっついていた一人の少女がいて、その見張りの男も、斬られ殺されてしまった。

店と店の間から出てきたその少女は、マキだった。

そしてマキは、店の中へと入っていった。

その頃、会議をしていた者達は。

「スレイヤー、一体何者なんでしょうか」

「…ひとまず、この事を一刻もサオリ様とサキ様に伝えなくては」

「そうですね。時間まであと少しですか」

そして、そのお店に向かっていたサオリとサキ。

「連合会の人達、どれだけの情報を集めたのかしら」

「きっとスゴい数の情報ですよ。何せ情報屋が集まってくれた方々ですから」

「…そうね。ん?あれは」

サオリは、サオリとサキの方へと来ていた一人の男を見つける。

「ハァ、ハァ、ウッ」

「!大丈夫ですか」

サオリとサキは、倒れた男の方へ駆け寄る。

「ハァ、大変です。連合会が」

「え、何があったんですか」

「それが、一人の少女に、外にいた見張りが殺られてしまったんです」

「!?貴方は、すぐに治療できる者の所へ向かってください」

「はい」

「サキさん」

「はい」

サオリとサキは、嫌な予感を抱きながら、連合会が待ってる飲み屋へと、走って向かった。

同じ頃、飲み屋の二階では。

「…!」

「ア、ア…」

一人の男が、階段から二階に上がってきたのだが、その男は、マキの剣に、顔の後ろから口にかけて、貫かれていた。

「貴様、何者だ!」

「ア、!」

マキは、その男を、剣を持った数人の見張りの男達の方へと突き飛ばした。

「ウッ!」

「ウワッ!」

「グッ!」

「ウワッ!」

そしてマキは、剣戟を余裕で制して見せた。

「ん?なんだ」

「ウワッ!」

そして、マキの剣技に突き飛ばされ、ドアを突き破り、会議していた連合会の元まで辿り着いたマキ。

「貴様まさか、スレイヤーの右腕の」

「…」

マキは、部屋の片隅の方に、状況の一部を録画できるキューブを投げた。

そして、録画が開始された。

「アー!」

一人の男が、剣を握り、マキへと挑んだが、呆気なく斬られてしまう。

「!」

「ウワー!」

キューブには、連合会の人達が、マキの前に無惨にも斬られていく映像が記録されていった。

そして、サオリとサキが、連合会がいた飲み屋に到着した。

「…」

「ここですね」

中へと入る。

「…」

そこには、剣で斬られたであろう死体があった。

「キャー!」

「!」

サオリとサキは二階へと向かう。

「…!」

二階の、会議していた部屋には、既にマキはいなかった。

だが、殺された連合会の人達が倒れていた。

「…?」

サキは、部屋の片隅に置かれていたキューブを発見する。

「これは」

「サキさん?どうしたんですか?、!?これは」

「録画用のキューブですね」

「これに、記録されていると言うのですか」

「おそらく」

「一体、誰が…ん?」

サオリは、地面に落ちていた紙を発見する。それは、連合会が集めた情報だが、マキによって、一部はビリビリに破かれていた。

だが、その中でも、有力な情報もあった。

「これは」

「連合会の方々が集めてくれた情報でしょうか」

「ええ、おそらくは、!?」

サオリは、連合会が集めた情報の紙を目に通していた。と、その中に、驚くべき内容が書かれていた。

「?どうしたんですか、サオリさん」

「これは…」

サオリは、連合会が書いた情報の中に、マキが後付けで書いたであろう事に、衝撃を受けた。

マキがそこに書いたのは、一人の少年の名前だった。

その名前は、フェイ。
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