孤高の女王の国と狂戦士。そして傍若無人の若き王。

DAKUNちょめ

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狂戦士の咆哮。

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死を覚悟した王の顔に、生暖かな血がかかる。


王は思わず目を閉じた。


生暖かな鮮血の飛沫が王の全身を濡らして行く。

だが、痛みはまったく感じない。



「??」



刻まれているのは自分ではないのか?

王はソロソロと目を開いた。

   

途端、ビシャっ


顔面に肉片が飛んできた。

視界が緋色で塞がれる。



そして耳をつんざく様な獣の咆哮。



「グゥアアァオォ!!!」


   

「な、何だ!?」





腰を抜かしたように地面に尻をついたまま、王は後ずさった。


そして目の前の光景に驚愕する。


身の丈が3メートルはあろうかという熊のような大きな男が累々と屍の山を築き、嬉々として吠えていた。



褐色の肌に黒いザンバラな長い髪、隆々と盛り上がった筋肉に包まれた大きな体躯は返り血を浴び褐色の肌を赤色でまだらに染め、爛々と光る金色の瞳に細い月を映したその姿は、もはや人の物ではない。


化け物と呼ぶに相応しい、まさにバーサーカー。





「おう!傍若無人の若き王たぁ、お前の事だな!」




狂戦士は屍の山の一番上に、手にした死体を軽々と投げた。


そして若き王の方を向くと手にした大斧を肩に担ぎ、王の方へと歩み寄る。

   



「女王を獲りに来たのか?無理な話だな。
お前はここで死ぬ。
どうだ、命乞いでもしてみるか?」




傍若無人と言われた若き王は血にまみれた姿で、同じく血にまみれた狂戦士の姿を見上げ、見つめ、ジワッと目を潤ませた。




「…う、美しい…!何て美しいんだ…!」





「………えぁ?」





狂戦士から、間の抜けた思わぬ声が漏れる。




「あなたの…!あなたの名前が知りたい!」




血まみれになった王が、血まみれになった狂戦士に駆け寄った。

狂戦士の腹の辺りに王が抱き着いた。



狂戦士、ちょっと引く。



   

「ま、待て!待て!
命乞いでもしてみるかとは言ったが、何かが違う!」





「名前を教えてくれ!いや、下さい!
美しいあなたの!」





「待てやー!何か色々、想像越え過ぎて処理出来ん!」




混乱した狂戦士が、うるさいとばかりに片耳を塞いだ。

若き王は狂戦士の胸の下に縋ったまま、腹を空かせた雛鳥のように、けたたましく狂戦士の名を訊ね続ける。




「教えて下さい!教えて下さい!教えて下さい!
美しいあなたの名前を!教えて下さい!」





「どわー!うるせぇ!オブザイアだ!!」





狂戦士は圧され負けた。


オブザイアの腹に抱き着いたまま、満足げに微笑む若き王と、グッタリと脱力しきった狂戦士。




「ちょ、ちょい待てや…お前…。
女王を獲りに来たんだろうが…。」




「え?ああ、ソレもう、どうでもいいです。」




血まみれになった王はオブザイアの顔を見ながら目を輝かせている。



オブザイアは考えた。

これが、王の策略だとしたら?

女王を手に入れる為の小賢しい謀略だとしたら?

   


憂いは無くしておくべきだ。

やはり、殺しておくに限るな…。




狂戦士は大斧を片手で軽々持ち上げ、大きく振りかぶった。





「…オブザイア殿、どうか俺を…

あなたの物にして下さい!」





「ブフー!!」





オブザイアは思い切り噴き出してしまった。

驚き過ぎて。

斧が振りかぶったままドスンと背後に落ち、地面を深く抉った。




「お、お前、ナニ考えてる!!
俺を騙して「彼の国」に入り込むつもりか!
「彼の国」を、お前の国の物にするつもりか!!」




「俺はもう…王ではないと思います。
俺の側近たちは俺が死んだと思ってるでしょうし…。」




「まあ…そうだとしても…だな。
お前は無類の女好きだと聞いている。
男が好きだなんて話、聞いた事がねぇ。」




「男も女も好きではありませんよ?
女は性欲処理の為に使うだけです。
男なんて触るのも嫌ですよ。汚ならしい。」




汚らしく血だらけのオブザイアは、美しいと言われて困惑した。

      


「…分かった、一回女王に会わせよう!」



「…は?…なぜです?必要無いですけど。」



「いいから会ってみろや!」




オブザイアは、今まで国外の者は誰一人立ち入らせた事のない頂きの城に王を連れて行く事にした。





    
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