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理解出来ない肉親の情。
ベルゼルト皇国の王城の敷地は広く、幽閉の塔からキリアンの居城までは暗い森を抜けた後もそれなりに距離がある。
来る時は、ランプひとつぶら下げて月を眺めながら長い距離を歩いて来た2人だったが、帰りはガインがヘトヘトになっており、薄汚れた荷馬車とは言え歩かないで済むのは有り難いと城まで送って貰う事にした。
馬車の荷台の隅に2人が並んで腰を下ろすと、御者がゆっくり馬車を走らせる。
ガタガタと揺れる荷馬車の板張りの荷台にはクッションになる物は無く、馬車が悪路でガタッと大きく揺れる度に身体が傾き、硬い荷台の上でガインが何度も腰回りや臀部付近を撫でさすっていた。
「ガイン、お尻痛いの?俺が撫でてあげようか?」
「いらん!」
残念がるキリアンにキッパリと断ったガインだったが、視線がそぞろに動き、尻だけでは無く他の何かに気を取られている様子が窺い見れる。
「むっちりなお尻の他に何か他に気になる事でも?」
ガインの様子が気になったキリアンが、隣に座るガインの太腿に手を置いて訊ねた。
太腿に置かれたキリアンの手に、ガインがビクッと警戒したように身を強張らせ、キリアンの手から逃れるように足を引いて位置をずらす。
「なんつー言い方よ……ってか、お前には言えねぇ。
気になった事を口にしただけで、また嫉妬なんかされたら溜まったモンじゃないからな。」
嫉妬するかも知れない人物に関して何か気になる事があると、もう言ってしまってるようなガインの態度にキリアンは噴き出しそうになるのを堪えた。
一見、ガインが天然っぷりを発揮したようにも思えるが、これはガインが胸騒ぎを覚えた事を口にしても良いのかと悩んでいるのだとキリアンは悟った。
「今、ガインが気になる事とやらは騎士として看過出来ないような事なのだろう?
ならば、騎士として皇帝である私に告げるべきだ。
嫉妬などしない、申してみよ。」
皇帝として命令するのは狡いと分かっていても、ガインには胸の内を全て晒して欲しい。
それは恋愛感情に関するだけではなく、騎士として、あるいは臣下としての意見も全て含まれる。
キリアンは何事であってもガインの胸の内にあるものは全て共有したい。
憂いがあるのならば、自分が取り除いてあげたい。
一方で騎士であるガインにとって皇帝の命令は絶対であるため、口に出すべきかどうかと悶々としていた気持ちが命令という形で後押しをされ、隠し事や黙り続ける事が苦手なガインは吐露出来る事に小さく安堵の溜め息をついた。
「実はな……最近、料理人見習いの坊主……いや、フーさんの姿が食堂に無くて……ただの里帰りとかかも知れないのだが……
何かこう、変な違和感と言うか胸騒ぎがすると言うか………気になっててな。
変な意味に捉えるなよ。」
「…………ああ。」
念押しするガインにキリアンが思わず苦笑した。
ガインは鈍感なようで、そういった勘は鋭い。
料理人見習いの青年と身分を偽っていたフーがヴィーヴルの者だと知り、しかも隊長を務める人物が姿を消した事にただならぬ雰囲気を感じている様だ。
「実はね…彼には今、遠いところにお使いに行って貰ってるんだ。」
「遠いところ…国の外か?」
「うん、大陸の外。海を渡ったトコ。」
キリアンは言葉少なく、ガインにヒントだけ与える。
ガインは少し考え、やがて納得したと顔を上げたが、その表情は強張っていた。
「…キリアン…よその大陸と戦争をおっ始める気か?」
「違う、戦争を始めさせない為の布石なんだよ。」
大陸一の強国ベルゼルト皇国に対し、この大陸内に内心はどうであれ、表立って戦争を仕掛けようなどと考える国はほぼ無い。
だが虎視眈々と獅子を狙う小物は確実に存在する。
現状、それらのネズミが徒党を組んでも、まだまだ獅子の喉元には届かない。
だが大陸の向こう側にはベルゼルトに対抗し得る大国が存在する。
「先日、フーの方から海の向こうに行く許可を取りに来た。理由は言わなかったけど、まぁ想像はつく。」
戦争なんて、互いが正義を掲げて理想を押し付ける、究極に度が過ぎた我儘なのだとキリアンは考えている。
ベルゼルトはその我儘を貫き通し、揺るがないほどの大国となった。
この大陸内の国々が大国ベルゼルトに牙を剥くのは本来ならばデメリットしかない。
「あの国はケンヴィーの死と義母上を使って戦争を起こしたがっている。
自分達に正当な理由があるとでも言うつもりなんだろうな。
だからって勝ち目のない戦争なんて普通はしないよね。」
「リスクィートが海の向こう側に助力を求めた可能性があると?」
キリアンは頷くと、馬車の御者の背に目を向けた。
フーの部隊は先々代皇帝の時代から陰となりベルゼルトを支えてきた。
フーがキリアンに正確な理由を告げなかったのは、フー達の依頼主がキリアンではなく亡くなったキリアンの祖父であり、その契約がまだ生きている事を示していた。
「詳しい事は分からないけど、お祖父様たちは…その頃から未来を見据えていたのだろうね。
リスクィートを、いつかは滅ぼさなければならない国だと考えていたのだろう。」
「親父たちの時代からか……」
自らが掲げる正義という名の我儘を通す。
そうやってキリアンの母セレスティーヌ皇妃の掲げる正義の我儘によって消された国のひとつがドナウツェードルン。
ヴィルムバッハにてケンヴィーの護衛を務めるルンルンの生国だ。
「20年以上前、母は手っ取り早く戦争を起こして早期決戦で戦争を終わらせたと聞いたけど。
今、ベルゼルトから先にリスクィートに手を出す事は出来ないし、そもそも戦争を起こしたくない。
戦争が起きてしまえば、どうしても人命に被害が及ぶ。
俺はそうは、させたくない…。」
「……………そっか。俺はキリアンを信じる。
お前が選んだやり方なら、それが最善なんだろう…。
仮に戦争が起こってしまっても、俺が必ずお前を守る…。
俺が死んでも、必ずお前を守るから………。」
揺られる荷馬車の荷台で、ガインがキリアンの頭に自分の頭を寄りかからせるように身を寄せた。
命を賭して守るべき君主であり、何者にも代え難い愛しい人。
この命果てるとも、必ず守り抜く━━ガインはそう誓うと、愛するキリアンの身体をそっと抱きしめた。
ガインに包まれるように抱き締められたキリアンは、ガインの身体を抱き締め返し、ゆっくりと顔を上げた。
「で、ガインはなにを言ってんの?
だから戦争は起こさないんだってば。
それに死んでも俺を守るとか言ってるけど、ガインが死ぬなんて、死んでも絶対に許さないし。」
ガインに抱き締められたまま顔を上げたキリアンは、不満タラタラの顔で口を尖らせた。
「馬鹿野郎!せっかくいい感じだったのにぶち壊しだ!
死ぬ事を死んでも許さねぇって意味分からん!
それに俺に主君を護るという騎士としての矜持を捨てさせる気か!」
「ガインは騎士としての矜持より、もう俺の妻としての矜持を持った方がいいよ!
いつまでも側に居て絶対に離れないで、夫のためにいつでも何処でも抱かれて気持ち良くなりますみたいな!」
「そんな矜持があるかぁ!!この馬鹿野郎が!!」
「あるよ。
城に戻ったら、分からせてあげようか?」
「おっ死んじまうわ!!!」
荷馬車が居城の前に到着するまで、2人の押し問答は延々と続いた。
▼
▼
▼
「まぁ陛下。
このような所にまでわざわざ足を運んで下さるなんて。」
リスクィート国の王城の一部、東の尖塔に軟禁状態となったカリーナは、自分を守らせるように騎士を4人連れ王城外の居城から自分を訪ねて来たリスクィート国王に対し、喪に服するように黒いドレスを身に着けた姿でカーテシーをした。
「厭味ったらしい真似を………
いつまでダラダラと時間を無駄にするつもりだ。
偲んだ所でケンヴィーは還っては来ない。
憐れな死を迎えた我が子を思うならば、その仇を討ってやるのが親ではないのか?」
「母が我が子の死を悼む事の何がいけませんの?
それに…こちらにどんな正当な理由があろうと、ベルゼルトは強国ですわ。
近隣諸国が共闘を申し出たとしても、ベルゼルトに戦いを挑むなど無謀ですわよ。
わたくし唯一の肉親である兄上まで失いたくはありませんわ。」
カリーナは無表情でそう告げる。
口から出る言葉が本心ではない事を隠さないカリーナにリスクィート国王が鼻で嗤った。
「お前に肉親の情など有りはしない。
我が子のケンヴィーに対してもだ。
お前が懸念しているのは、居心地の良い自分の居場所を失う事だけだろう。そんな心配は無用だ。
ベルゼルトを倒す為の勝算はあるのだからな。」
「まぁ…。」
欲深いリスクィート国は、遥か以前よりこの大陸全土を手中に治めたいと画策してきた。
表向きは強国に従う体を見せ、大陸の覇権を握る日を虎視眈々と狙って来た。
そんな中、20年以上前にリスクィートは初めて強国ベルゼルトと血縁を結んだ。
唐突に舞い込んだ王女カリーナのベルゼルトへの輿入れは、リスクィートに計画の転向をさせる事になった。
リスクィートはカリーナの輿入れを条件に、同盟を組みベルゼルトに対する共闘を確約をしていたドナウツェードルン国を、あっさりと切り捨てた。
ドナウツェードルンはベルゼルトに攻め入られた際にリスクィートに軍事援助の要請をしたが、リスクィートは承諾の意だけを示し、一切何もしなかった。
その上、リスクィートに向けられていた「ベルゼルトに対し宣戦布告の意志あり」との世間からの嫌疑の目をドナウツェードルンに向けさせた。
結果━━ドナウツェードルンはベルゼルトによって亡国となった。
「この大陸に、ベルゼルトに対抗しうる軍力を持つ国はもうありませんわよ。
そう言えば、父上は海の向こうの国と親交を深めようとしてらっしゃいましたけど、父上がお亡くなりになった後は兄上が?」
リスクィート国王は返事はせず、ニッと不敵な笑みを浮かべた。
カリーナは無表情を変えずに小さく頷いた。
「それでしたら…この戦い、負けそうにありませんわね。
兄上が本気でベルゼルトに戦いを挑むならば、わたくしは正式な場にて皆さまの前でそう宣言致しますわ。
この国の行く末を決める大事な事ですものね。
兄上…我が国の貴族の皆を集めて下さい。」
「ならば、20日後に戦略会議を開くとしよう。
貴族籍にある者たち全員に招集をかける。」
カリーナが宣戦布告をすると言質だけ取った国王は、踵を返し早々と尖塔を後にした。
尖塔の部屋にはリスクィートの侍女2人と、衛兵2人が残された。
カリーナはこの尖塔に幽閉の身となってから常にカリーナの側に居る侍女2人と、部屋の前に居る衛兵たちに監視をされている状況にあり、セドリックをはじめとするヴィーヴルの者誰一人とも交流をしていない。
━━セドリック…貴方なら、わたくしの成したい事を分かってくれていると信じているわ。━━
カリーナは長椅子に身を横たえ、侍女に茶の用意をさせた。
運ばれて来た茶器に口を近付けた時、今まで無表情を貫いて来たカリーナが僅かにほくそ笑んだ。
「わたくし…呪い殺したい位に父を嫌っておりましたけど…初めて父に感謝を致しますわ。
兄上を自身の分身の様に慈しんで下さった事に、本当に心から感謝致しますわ。」
カリーナの尖塔を後にしたリスクィート国王は、馬車に乗る前に尖塔を見上げた。
国王は尖塔に閉じ込めた我が妹を、幼い頃から感情が見えず何を考えているか分からない気味が悪い存在だと疎ましく思い続けていた。
籠の鳥のように外界との接触を遮断したというのに、まだ何か大きな災いを生みそうな気配を感じてしまう。
「気味の悪い女だ。……あれには、ベルゼルトとの戦争のさなかに生命を落として貰う事としよう。
非道なる若きベルゼルト皇帝が第二皇子に続き、その母であり義母のカリーナ皇太后をも惨殺したとなれば、我が国に与する者も増えるだろう。」
国王は護衛騎士二人と共に箱馬車に乗り込み、席に座ると誰に言うとも無しに言葉を口にした。
国王は自身が口にした言葉を聞いて不意に『第二皇子の所在』が気になり出した。
実の子であるフォアンを第二皇子として死なせたものの、本物の第二皇子ケンヴィーの所在は不明なままだ。
生存が確認されカリーナに知れたら、ベルゼルトに戦争を仕掛ける事が出来なくなるどころか、別人を第二皇子に仕立ててまで戦争を起こそうとしたと、大陸全土から強い糾弾を受けるかも知れない。
リスクィート国は、あくまで正義に則ってベルゼルトに戦争を挑んだという絵図でなければならない。
「ケンヴィーの行方はどうなっている。」
国王は向かい側の席に座った同乗させた護衛騎士の二人に訊ねた。
唐突な問い掛けに、王の向かい側の席に座る二人の騎士は慌てたように席から下りて床に膝をつくと頭を深く下げ、一人が王の問いに答えた。
「は、ハッ!いまだケンヴィー皇子の行方は分からぬままにございます!
ベルゼルト国内外に諜報員を送り込み情報を収集しておりますが………その………ベルゼルトから帰らぬ者が多く…
情報の収集が難航していると聞いております……。」
「恐らく、ベルゼルトにて捕らえられたか……命を絶たれたかと…。」
多くの諜報員が捕らえられ…いや、既に死んでいる━━この報告はリスクィート国王を苛立たせた。
諜報員である以上、見つからない事、正体がバレない事、情報だけでも国に持ち帰る事が必須だが、これらが全く機能していない。
先日、自らの腕を切り落とした上で城から逃走した、男の使用人に扮していた若い女の間諜とのレベルの差があまりにも大きくリスクィート国王が歯噛みした。
「我が国の諜報員は二流、三流か……」
リスクィート国王は苛立ちに顔をしかめボソッと呟いた後にスッと真顔になり、言葉を発した。
「恐らく━━その者たちは国を裏切り任務を放棄し、逃亡兵となったのだろうな。」
「えっ…いや、違います!
彼らは国のために働き亡くなったのです!」
リスクィート国王は護身用の小剣を抜き騎士の首に突き付けた。
もう一人の騎士が慌てるが、国王を止める事は出来ない。
「国のために死んだだと?
結果を何一つ残す事なく無駄死にしたゴミに、国のために働いたなど言われたくはない。
……奴らは死んではいない。逃亡兵となったのだ。
分かるな?」
「へ…陛下………はい…………。」
二人の騎士はリスクィート国王に逆らう事が出来なかった。
小剣を引いた国王に対し、黙って頭を下げ続ける。
「逃亡兵は重罪だ。本来ならば捕らえたのち処刑となる。
だが本人たちが見つからないのでは仕方あるまい。
奴らの家族に責任をとって貰うとしよう。
帰らぬ者たちの家族を全て捕らえよ。」
小剣を突き付けられていない方の騎士が青ざめた顔を上げた。
「お待ち下さい陛下!
諜報員の中には私の弟もいるのです!
弟はまだ…きっとまだ生きております!
必ず良き報せを持ち帰ります!他の者たちもきっと……!
ですから…どうか猶予を…!
どうか、もうしばらくお待ち下さい…!」
国王は困ったように眉尻を下げ、考える仕草を見せた。
「………そうか…お前の家族も居るのか………
それでは考えを改めねばなるまいな……。」
国王は手にしていた小剣で突然、騎士の喉を貫いた。
「えっ…?」そんな表情をした騎士の目から光が消え、
喉元から血飛沫を飛び散らせながら絶命した。
もう一人の騎士は、同僚の喉から噴き出る血を浴びて茫然となった。
「お前の弟が諜報員としてベルゼルトに入っており、いまだ帰ってない事は知っていた。
お前だけには温情をくれてやろうかと思っていたが……お前の態度を見て気が変わった。
やはり遺恨の種を残したくないのでな。」
喉を貫かれた騎士は箱馬車の中で床に膝を付いた状態で反り返り、頭を座席に乗せた姿勢で骸となった。
国王は顔に付いた返り血を衣服の袖で拭い、床に尻をつき茫然としている騎士に声を掛けた。
「おい。」
「はっ…はいっ!」
「いいな、そいつの家族を全員捕らえて処刑せよ。
親兄弟、幼い弟妹も全てだ。
ああ…そう言えば…お前の兄も帰らぬ諜報員の中に居たな。
ならば、お前の家族も全員捕らえて処刑だ。
だが、お前にだけは特別に温情をくれてやる。
生きる事を許してやろう。」
「……は…はっ………ありがたき…幸せ……」
リスクィート国王と血を浴びたまま茫然自失状態となった騎士を乗せた馬車は、国王の居城へと入って行った。
来る時は、ランプひとつぶら下げて月を眺めながら長い距離を歩いて来た2人だったが、帰りはガインがヘトヘトになっており、薄汚れた荷馬車とは言え歩かないで済むのは有り難いと城まで送って貰う事にした。
馬車の荷台の隅に2人が並んで腰を下ろすと、御者がゆっくり馬車を走らせる。
ガタガタと揺れる荷馬車の板張りの荷台にはクッションになる物は無く、馬車が悪路でガタッと大きく揺れる度に身体が傾き、硬い荷台の上でガインが何度も腰回りや臀部付近を撫でさすっていた。
「ガイン、お尻痛いの?俺が撫でてあげようか?」
「いらん!」
残念がるキリアンにキッパリと断ったガインだったが、視線がそぞろに動き、尻だけでは無く他の何かに気を取られている様子が窺い見れる。
「むっちりなお尻の他に何か他に気になる事でも?」
ガインの様子が気になったキリアンが、隣に座るガインの太腿に手を置いて訊ねた。
太腿に置かれたキリアンの手に、ガインがビクッと警戒したように身を強張らせ、キリアンの手から逃れるように足を引いて位置をずらす。
「なんつー言い方よ……ってか、お前には言えねぇ。
気になった事を口にしただけで、また嫉妬なんかされたら溜まったモンじゃないからな。」
嫉妬するかも知れない人物に関して何か気になる事があると、もう言ってしまってるようなガインの態度にキリアンは噴き出しそうになるのを堪えた。
一見、ガインが天然っぷりを発揮したようにも思えるが、これはガインが胸騒ぎを覚えた事を口にしても良いのかと悩んでいるのだとキリアンは悟った。
「今、ガインが気になる事とやらは騎士として看過出来ないような事なのだろう?
ならば、騎士として皇帝である私に告げるべきだ。
嫉妬などしない、申してみよ。」
皇帝として命令するのは狡いと分かっていても、ガインには胸の内を全て晒して欲しい。
それは恋愛感情に関するだけではなく、騎士として、あるいは臣下としての意見も全て含まれる。
キリアンは何事であってもガインの胸の内にあるものは全て共有したい。
憂いがあるのならば、自分が取り除いてあげたい。
一方で騎士であるガインにとって皇帝の命令は絶対であるため、口に出すべきかどうかと悶々としていた気持ちが命令という形で後押しをされ、隠し事や黙り続ける事が苦手なガインは吐露出来る事に小さく安堵の溜め息をついた。
「実はな……最近、料理人見習いの坊主……いや、フーさんの姿が食堂に無くて……ただの里帰りとかかも知れないのだが……
何かこう、変な違和感と言うか胸騒ぎがすると言うか………気になっててな。
変な意味に捉えるなよ。」
「…………ああ。」
念押しするガインにキリアンが思わず苦笑した。
ガインは鈍感なようで、そういった勘は鋭い。
料理人見習いの青年と身分を偽っていたフーがヴィーヴルの者だと知り、しかも隊長を務める人物が姿を消した事にただならぬ雰囲気を感じている様だ。
「実はね…彼には今、遠いところにお使いに行って貰ってるんだ。」
「遠いところ…国の外か?」
「うん、大陸の外。海を渡ったトコ。」
キリアンは言葉少なく、ガインにヒントだけ与える。
ガインは少し考え、やがて納得したと顔を上げたが、その表情は強張っていた。
「…キリアン…よその大陸と戦争をおっ始める気か?」
「違う、戦争を始めさせない為の布石なんだよ。」
大陸一の強国ベルゼルト皇国に対し、この大陸内に内心はどうであれ、表立って戦争を仕掛けようなどと考える国はほぼ無い。
だが虎視眈々と獅子を狙う小物は確実に存在する。
現状、それらのネズミが徒党を組んでも、まだまだ獅子の喉元には届かない。
だが大陸の向こう側にはベルゼルトに対抗し得る大国が存在する。
「先日、フーの方から海の向こうに行く許可を取りに来た。理由は言わなかったけど、まぁ想像はつく。」
戦争なんて、互いが正義を掲げて理想を押し付ける、究極に度が過ぎた我儘なのだとキリアンは考えている。
ベルゼルトはその我儘を貫き通し、揺るがないほどの大国となった。
この大陸内の国々が大国ベルゼルトに牙を剥くのは本来ならばデメリットしかない。
「あの国はケンヴィーの死と義母上を使って戦争を起こしたがっている。
自分達に正当な理由があるとでも言うつもりなんだろうな。
だからって勝ち目のない戦争なんて普通はしないよね。」
「リスクィートが海の向こう側に助力を求めた可能性があると?」
キリアンは頷くと、馬車の御者の背に目を向けた。
フーの部隊は先々代皇帝の時代から陰となりベルゼルトを支えてきた。
フーがキリアンに正確な理由を告げなかったのは、フー達の依頼主がキリアンではなく亡くなったキリアンの祖父であり、その契約がまだ生きている事を示していた。
「詳しい事は分からないけど、お祖父様たちは…その頃から未来を見据えていたのだろうね。
リスクィートを、いつかは滅ぼさなければならない国だと考えていたのだろう。」
「親父たちの時代からか……」
自らが掲げる正義という名の我儘を通す。
そうやってキリアンの母セレスティーヌ皇妃の掲げる正義の我儘によって消された国のひとつがドナウツェードルン。
ヴィルムバッハにてケンヴィーの護衛を務めるルンルンの生国だ。
「20年以上前、母は手っ取り早く戦争を起こして早期決戦で戦争を終わらせたと聞いたけど。
今、ベルゼルトから先にリスクィートに手を出す事は出来ないし、そもそも戦争を起こしたくない。
戦争が起きてしまえば、どうしても人命に被害が及ぶ。
俺はそうは、させたくない…。」
「……………そっか。俺はキリアンを信じる。
お前が選んだやり方なら、それが最善なんだろう…。
仮に戦争が起こってしまっても、俺が必ずお前を守る…。
俺が死んでも、必ずお前を守るから………。」
揺られる荷馬車の荷台で、ガインがキリアンの頭に自分の頭を寄りかからせるように身を寄せた。
命を賭して守るべき君主であり、何者にも代え難い愛しい人。
この命果てるとも、必ず守り抜く━━ガインはそう誓うと、愛するキリアンの身体をそっと抱きしめた。
ガインに包まれるように抱き締められたキリアンは、ガインの身体を抱き締め返し、ゆっくりと顔を上げた。
「で、ガインはなにを言ってんの?
だから戦争は起こさないんだってば。
それに死んでも俺を守るとか言ってるけど、ガインが死ぬなんて、死んでも絶対に許さないし。」
ガインに抱き締められたまま顔を上げたキリアンは、不満タラタラの顔で口を尖らせた。
「馬鹿野郎!せっかくいい感じだったのにぶち壊しだ!
死ぬ事を死んでも許さねぇって意味分からん!
それに俺に主君を護るという騎士としての矜持を捨てさせる気か!」
「ガインは騎士としての矜持より、もう俺の妻としての矜持を持った方がいいよ!
いつまでも側に居て絶対に離れないで、夫のためにいつでも何処でも抱かれて気持ち良くなりますみたいな!」
「そんな矜持があるかぁ!!この馬鹿野郎が!!」
「あるよ。
城に戻ったら、分からせてあげようか?」
「おっ死んじまうわ!!!」
荷馬車が居城の前に到着するまで、2人の押し問答は延々と続いた。
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「まぁ陛下。
このような所にまでわざわざ足を運んで下さるなんて。」
リスクィート国の王城の一部、東の尖塔に軟禁状態となったカリーナは、自分を守らせるように騎士を4人連れ王城外の居城から自分を訪ねて来たリスクィート国王に対し、喪に服するように黒いドレスを身に着けた姿でカーテシーをした。
「厭味ったらしい真似を………
いつまでダラダラと時間を無駄にするつもりだ。
偲んだ所でケンヴィーは還っては来ない。
憐れな死を迎えた我が子を思うならば、その仇を討ってやるのが親ではないのか?」
「母が我が子の死を悼む事の何がいけませんの?
それに…こちらにどんな正当な理由があろうと、ベルゼルトは強国ですわ。
近隣諸国が共闘を申し出たとしても、ベルゼルトに戦いを挑むなど無謀ですわよ。
わたくし唯一の肉親である兄上まで失いたくはありませんわ。」
カリーナは無表情でそう告げる。
口から出る言葉が本心ではない事を隠さないカリーナにリスクィート国王が鼻で嗤った。
「お前に肉親の情など有りはしない。
我が子のケンヴィーに対してもだ。
お前が懸念しているのは、居心地の良い自分の居場所を失う事だけだろう。そんな心配は無用だ。
ベルゼルトを倒す為の勝算はあるのだからな。」
「まぁ…。」
欲深いリスクィート国は、遥か以前よりこの大陸全土を手中に治めたいと画策してきた。
表向きは強国に従う体を見せ、大陸の覇権を握る日を虎視眈々と狙って来た。
そんな中、20年以上前にリスクィートは初めて強国ベルゼルトと血縁を結んだ。
唐突に舞い込んだ王女カリーナのベルゼルトへの輿入れは、リスクィートに計画の転向をさせる事になった。
リスクィートはカリーナの輿入れを条件に、同盟を組みベルゼルトに対する共闘を確約をしていたドナウツェードルン国を、あっさりと切り捨てた。
ドナウツェードルンはベルゼルトに攻め入られた際にリスクィートに軍事援助の要請をしたが、リスクィートは承諾の意だけを示し、一切何もしなかった。
その上、リスクィートに向けられていた「ベルゼルトに対し宣戦布告の意志あり」との世間からの嫌疑の目をドナウツェードルンに向けさせた。
結果━━ドナウツェードルンはベルゼルトによって亡国となった。
「この大陸に、ベルゼルトに対抗しうる軍力を持つ国はもうありませんわよ。
そう言えば、父上は海の向こうの国と親交を深めようとしてらっしゃいましたけど、父上がお亡くなりになった後は兄上が?」
リスクィート国王は返事はせず、ニッと不敵な笑みを浮かべた。
カリーナは無表情を変えずに小さく頷いた。
「それでしたら…この戦い、負けそうにありませんわね。
兄上が本気でベルゼルトに戦いを挑むならば、わたくしは正式な場にて皆さまの前でそう宣言致しますわ。
この国の行く末を決める大事な事ですものね。
兄上…我が国の貴族の皆を集めて下さい。」
「ならば、20日後に戦略会議を開くとしよう。
貴族籍にある者たち全員に招集をかける。」
カリーナが宣戦布告をすると言質だけ取った国王は、踵を返し早々と尖塔を後にした。
尖塔の部屋にはリスクィートの侍女2人と、衛兵2人が残された。
カリーナはこの尖塔に幽閉の身となってから常にカリーナの側に居る侍女2人と、部屋の前に居る衛兵たちに監視をされている状況にあり、セドリックをはじめとするヴィーヴルの者誰一人とも交流をしていない。
━━セドリック…貴方なら、わたくしの成したい事を分かってくれていると信じているわ。━━
カリーナは長椅子に身を横たえ、侍女に茶の用意をさせた。
運ばれて来た茶器に口を近付けた時、今まで無表情を貫いて来たカリーナが僅かにほくそ笑んだ。
「わたくし…呪い殺したい位に父を嫌っておりましたけど…初めて父に感謝を致しますわ。
兄上を自身の分身の様に慈しんで下さった事に、本当に心から感謝致しますわ。」
カリーナの尖塔を後にしたリスクィート国王は、馬車に乗る前に尖塔を見上げた。
国王は尖塔に閉じ込めた我が妹を、幼い頃から感情が見えず何を考えているか分からない気味が悪い存在だと疎ましく思い続けていた。
籠の鳥のように外界との接触を遮断したというのに、まだ何か大きな災いを生みそうな気配を感じてしまう。
「気味の悪い女だ。……あれには、ベルゼルトとの戦争のさなかに生命を落として貰う事としよう。
非道なる若きベルゼルト皇帝が第二皇子に続き、その母であり義母のカリーナ皇太后をも惨殺したとなれば、我が国に与する者も増えるだろう。」
国王は護衛騎士二人と共に箱馬車に乗り込み、席に座ると誰に言うとも無しに言葉を口にした。
国王は自身が口にした言葉を聞いて不意に『第二皇子の所在』が気になり出した。
実の子であるフォアンを第二皇子として死なせたものの、本物の第二皇子ケンヴィーの所在は不明なままだ。
生存が確認されカリーナに知れたら、ベルゼルトに戦争を仕掛ける事が出来なくなるどころか、別人を第二皇子に仕立ててまで戦争を起こそうとしたと、大陸全土から強い糾弾を受けるかも知れない。
リスクィート国は、あくまで正義に則ってベルゼルトに戦争を挑んだという絵図でなければならない。
「ケンヴィーの行方はどうなっている。」
国王は向かい側の席に座った同乗させた護衛騎士の二人に訊ねた。
唐突な問い掛けに、王の向かい側の席に座る二人の騎士は慌てたように席から下りて床に膝をつくと頭を深く下げ、一人が王の問いに答えた。
「は、ハッ!いまだケンヴィー皇子の行方は分からぬままにございます!
ベルゼルト国内外に諜報員を送り込み情報を収集しておりますが………その………ベルゼルトから帰らぬ者が多く…
情報の収集が難航していると聞いております……。」
「恐らく、ベルゼルトにて捕らえられたか……命を絶たれたかと…。」
多くの諜報員が捕らえられ…いや、既に死んでいる━━この報告はリスクィート国王を苛立たせた。
諜報員である以上、見つからない事、正体がバレない事、情報だけでも国に持ち帰る事が必須だが、これらが全く機能していない。
先日、自らの腕を切り落とした上で城から逃走した、男の使用人に扮していた若い女の間諜とのレベルの差があまりにも大きくリスクィート国王が歯噛みした。
「我が国の諜報員は二流、三流か……」
リスクィート国王は苛立ちに顔をしかめボソッと呟いた後にスッと真顔になり、言葉を発した。
「恐らく━━その者たちは国を裏切り任務を放棄し、逃亡兵となったのだろうな。」
「えっ…いや、違います!
彼らは国のために働き亡くなったのです!」
リスクィート国王は護身用の小剣を抜き騎士の首に突き付けた。
もう一人の騎士が慌てるが、国王を止める事は出来ない。
「国のために死んだだと?
結果を何一つ残す事なく無駄死にしたゴミに、国のために働いたなど言われたくはない。
……奴らは死んではいない。逃亡兵となったのだ。
分かるな?」
「へ…陛下………はい…………。」
二人の騎士はリスクィート国王に逆らう事が出来なかった。
小剣を引いた国王に対し、黙って頭を下げ続ける。
「逃亡兵は重罪だ。本来ならば捕らえたのち処刑となる。
だが本人たちが見つからないのでは仕方あるまい。
奴らの家族に責任をとって貰うとしよう。
帰らぬ者たちの家族を全て捕らえよ。」
小剣を突き付けられていない方の騎士が青ざめた顔を上げた。
「お待ち下さい陛下!
諜報員の中には私の弟もいるのです!
弟はまだ…きっとまだ生きております!
必ず良き報せを持ち帰ります!他の者たちもきっと……!
ですから…どうか猶予を…!
どうか、もうしばらくお待ち下さい…!」
国王は困ったように眉尻を下げ、考える仕草を見せた。
「………そうか…お前の家族も居るのか………
それでは考えを改めねばなるまいな……。」
国王は手にしていた小剣で突然、騎士の喉を貫いた。
「えっ…?」そんな表情をした騎士の目から光が消え、
喉元から血飛沫を飛び散らせながら絶命した。
もう一人の騎士は、同僚の喉から噴き出る血を浴びて茫然となった。
「お前の弟が諜報員としてベルゼルトに入っており、いまだ帰ってない事は知っていた。
お前だけには温情をくれてやろうかと思っていたが……お前の態度を見て気が変わった。
やはり遺恨の種を残したくないのでな。」
喉を貫かれた騎士は箱馬車の中で床に膝を付いた状態で反り返り、頭を座席に乗せた姿勢で骸となった。
国王は顔に付いた返り血を衣服の袖で拭い、床に尻をつき茫然としている騎士に声を掛けた。
「おい。」
「はっ…はいっ!」
「いいな、そいつの家族を全員捕らえて処刑せよ。
親兄弟、幼い弟妹も全てだ。
ああ…そう言えば…お前の兄も帰らぬ諜報員の中に居たな。
ならば、お前の家族も全員捕らえて処刑だ。
だが、お前にだけは特別に温情をくれてやる。
生きる事を許してやろう。」
「……は…はっ………ありがたき…幸せ……」
リスクィート国王と血を浴びたまま茫然自失状態となった騎士を乗せた馬車は、国王の居城へと入って行った。
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