【R18】熊の様な45歳の近衛隊長は、22歳の美貌の皇帝に欲しがられています。

DAKUNちょめ

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国外逃亡を企てる者。

リスクィートと隣国との国境近くの暗い森の中を、小さな灯り一つを頼りに若い男が若い女の手を引いて歩いて行く。

男の足取りは速く、その場から去りたいとばかりに急くのだが、身重の若妻の身を案じ無理をさせる事が出来ない。

慎重な足取りで男に手を引かれて歩く若い女は、暗い森の中で若い男に不安気に声を掛けた。


「ねぇフェイン…私たち、どこに向かっているの?
お義父様とお義母様が心配だわ…家に戻った方が…」


「駄目なんだ!もう、あの家には戻れない!」


フェインという名の若い男は数日前、国王が実妹カリーナを幽閉した尖塔に行った際に同行した騎士の1人だ。
同僚の騎士が国王の命令に従うのを躊躇ったため、フェインの目の前で国王の手によって処刑された。

その瞬間を目の当たりにしたフェインは、処刑された騎士と同じく家族を処刑するために捕らえるよう国王に言われ、承諾したフリをしてその場をやり過ごした。


フェインは城から飛んで帰り、誰にも何の説明も無しに妻の手を掴み、拐うように手を引いて家を飛び出した。

馬車や馬を乗り継ぎ、三日目にしてようやく隣国との国境が見える場所にまで来た。

その安堵からか、フェインは今になってようやく妻のドナに本心を打ち明けた。

身重の妻に精神的な負担を掛けるのではと躊躇いはしたが、これ以上隠しておく事は出来なかった。


「そんな…!陛下が………
フェインのお義兄様の事で、私達家族全員を処刑すると命令を…」


ドナはショックを受け青ざめたが、夫の選択が両親を犠牲にしてでも自分を守る為の苦渋の決断であった事を知り胸を痛めた。


「両親の事は諦める…だが、だが!君は駄目だ…!
君と、君のお腹にいる俺の子だけは死なせたくない!」


「フェイン…」


「全てを救うのは無理だって分かっている、俺は死ぬかも知れない…だけど、君だけはどうしてでも守りたいんだ…!」


森を抜ければ、すぐ隣国との国境だ。

国外逃亡は重罪だが、見つかる前に国境を越えて妻だけでも隣国に保護して貰えたら…若い騎士のフェインがそう考えたように、逃がすまいとする側も同じ考えを予測した。

国境の門に続く森の出口付近には六人の騎士が並び立ち、フェインたちを待ち構えていた。


「ハハハ!マジで来やがった!」


「陛下のおっしゃった通りだな。
王都から一番近い国境の門に先回りして正解だ。」


「国を裏切るドブネズミ、覚悟はいいかぁ?」


口々に罵る言葉を投げ付けてくる六人の騎士に対し、フェインは妻を背に隠すように庇いながら剣を抜いた。

が、一人で妻を守りながら六人を相手に立ち回るのは無理がある。
何とか妻のドナだけでも、この場から逃がす事は出来ないかとフェインが注意深く辺りを見回した。

下卑た笑い声をあげる騎士達の中で一人だけ神妙な顔をしている騎士にフェインが気づいた。

その騎士の顔に見覚えのあったフェインは必死で呼びかけた。


「クータ!?クータ!!
頼む!妻だけは見逃してくれ!」


クータと名を呼ばれた若い騎士はビクッと緊張したかのように身体を強張らせ、ぎこちない動きでフェインの方を向いた。

クータとフェインとは親友の間柄だった。

クータは親友フェインを捕らえるために、国王直々に命令され、この場に来たのだ。


「ッッ…すまない…フェイン…僕は王命に逆らう事が出来ない…。
僕たちは君を捕らえて王都に連れ帰るよう任命されている…。」


フェインが親友に懇願し縋る事も、クータが親友を救えず苦悩する事も予想した上での国王からの命令。

国王の命令が自分たちの苦しむさまを楽しみたいだけだと真意が分かっていても、クータにはどうする事も出来なかった。

断れば、その場で自分が処刑される可能性もあった。


「クータ!頼む!俺は捕らえられてもいい、王都に戻って処刑されても…だがドナだけは!」


「駄目だ!二人とも王都に連れ戻す!!
陛下の命令は絶対なんだ!」


クータとフェインのやり取りを見ていた騎士の1人が、耳の中に小指を突っ込んで耳垢をほじくり、その小指の先をフッと吹いてから横から口を出す。


「盛り上がってるトコ悪いんだがよ、その夫婦を王都まで連れ帰るつもりはねぇんだわ。クータさんよ。」


「……えっ…何を言ってるんだ、お、王命は2人を連れ戻す事だろ!」


騎士の言葉にクータが耳を疑う。

驚きの余り、クータは素っ頓狂な表情になった上に言葉を噛んでしまった。

別の騎士が、そんなクータの様子にせせら笑いながら口を挟んできた。


「陛下はよー、連れ戻せたらって言ってたなー。
抵抗するなら、その場で処刑してもいいってさー。」


「ぼ、僕が抵抗なんてさせない!」


「いや、めんどくせぇんだわ。
2人を拘束した状態で馬で引いてチンタラ王都まで戻るなんてよぉ…首だけになりゃ王都に持ち帰るだけだし早いだろうがよ。」


「…めんどくさいって……」


クータはフェイン以上にショックを受け、顔面蒼白状態で言葉を失った。

クータの中には、騎士とは少なからず騎士道を重んじる物だと信心めいたものがある。

その様な「面倒くさい」との理由で、騎士が騎士道にもとる行為をする事が信じられなかった。


「なあ、どうせ殺しちまうんだったらよー女、ヤっちまおうぜ。」


「そりゃいいな!死ぬ前に気持ち良くなってもらってな!」


背後に控えていた別の騎士の会話が聞こえたクータは後ろの二人を睨むように振り返った。


「なっ!!騎士道どころか人道にももとる行為じゃないか!人の尊厳を踏みにじり辱める行為は、僕が許さない!」


フェインより先に激昂したクータが声を荒らげた。

が、クータの背に剣の刃が斜めに振り下ろされた。


「ぐうっっ!!」


「クータ!!」


背中から血を流し、地面に膝を付いた親友の姿にフェインが声を上げるが、フェインも騎士の1人に斬り掛かられ対峙しており、親友に駆け寄る事も出来ない。


「さっきからウザってぇんだわ、クータさんよ。
アンタはダチの逃亡を助けようとしたって事で、一緒に処刑したって事にするわ。」


騎士達のリーダーらしき男は、膝を付いたクータを思い切り蹴り飛ばした。

背に怪我を負ったクータは抵抗が出来ず、呻き声を上げながらゴロゴロと地面を転がった。

その隣に、同じく騎士二人によって怪我を負わせられたフェインが突き飛ばされて来た。


「いや…!やめて!来ないで!いや!」


離れた場所で、騎士達がドナに群がるようににじり寄る。
ドナは護るように両手で膨らんだ腹部を押さえながら後ずさる。


「おい、この女孕んでやがるぞ。」


「そりゃぁ父親が可哀想だな、我が子を抱く事も出来ずに死んじまうなんてな。」


「なぁに、愉しんだ後は女の腹をかっ捌いてガキを取り出し、父親に抱かせてやるさ。
親子三人で楽しい死出の旅だ。」


フェインにも、その妻ドナにも、そしてクータにも
この場所は地獄以外の何ものでも無かった。

3人の目は絶望により光が消え失せ、この場から逃げ去る手段を考える事さえ出来ない。



騎士の一人がドナの腕を掴み無理矢理、地面に押し倒そうとした。


「泣き喚いても構わないぜ、旦那の目の前でハメまくってやらァ!」


「いやぁあ!やめてぇ゙!!」


が、彼女の身体は押し倒される前に、引き寄せられるようにスイっと横に移動した。

彼女を押し倒そうとした男は触れていたハズのドナが急に消えてバランスを崩し、前につんのめって頭が地面の方に下がる。


「アレ…?ふごっ!!!」


男の視界に地面が映った瞬間、後頭部に強い衝撃が走り脳が揺れた。 

下がった頭を上から強く打たれた男は意識を失い、そのままドサッと地面にうつ伏せに倒れた。

暗がりの中で何が起こったのか誰もが理解出来ず、皆が地面に倒れた男と、その前に立つドナを凝視した。


少ない光源の中、茫然と立ち尽くすドナの背後に、謎の人物が立っている姿がぼんやりと滲み出るように現れた。

謎の人物の姿を認識した騎士達は咄嗟に身構え、怒声をあげる。


「誰だ!てめぇは!!!」


辱めを受ける寸前だったドナを、暗がりから滲み出るように現れて助けた男は騎士達の怒号を無視し、真剣な顔でドナに向かって話しかけた。



「奥さん…………大きいね。おっぱい。」



話しかけられたドナも、怪我を負って地面に伏した状態のフェインとクータも、不意に現れた謎の人物に警戒し臨戦態勢となった騎士達も、その場に居る全員が謎の男の言葉に唖然となった。



━━━━は?━━━━



皆、幻聴でも聞いたのではないかと我が耳を疑う。


「奥さん、おっぱいも大きいけど、お腹も大きいね。
身ごもるとお腹もおっぱいも大きくなるのは女体の神秘だよな。素晴らしい。うん素晴らしい。
美しいおっぱいは神のつくりたもうた美の極致、最高の傑作だと思うんだよ…。
ああいつか、おっぱいを讃える詩を世に出そう。」


黒い騎士服を着た謎の男は、フェインの妻の両肩に手を置き、ウンウン頷きながら意味不明な熱弁を振るう。

皆がしばし呆然となり、誰も言葉を発せない。


「今こそ名乗ろう!
その美を蔑ろにする輩は、おっぱいマスターと呼ばれる、この俺が許さない!成敗してくれる!」


男に対し「誰だ!」と問いかけた騎士達は、図らずもその答えを「おっぱいマスター」だと知る事となったが、「違う、知りたかったのはソレじゃない」感が強過ぎて困惑した。


「おい、ギャリー!お前は、また首を突っ込んで…!
コイツらは国王が雇った傭兵崩れの騎士共だ!いくらお前が強くとも五人を相手にするのは分が悪い!」


「マンダン殿…確かに…貴方が心配なさる通り、俺はそんなに強い男じゃない。
だが………
おっぱいを守る戦いでは、負ける気がしない!!」


キラキラな満面の笑みを浮かべ五人の騎士達の輪の中に飛び込むギャリーは男達の攻撃をものともしなかった。


フェインとクータ、ドナの目に映るギャリーの姿は、『すんごく強い変態』だったが、対峙する五人の騎士達にとってのギャリーは自分達の攻撃を歯牙にもかけず、笑いながら自分達に致命傷を与えてくる不気味で恐ろしい化け物にしか見えなかった。

ギャリーの鋼鉄製の手甲と足甲は防具としてだけではなく、武器としてもその威力をいかんなく発揮する。

ギャリーは拳を、あるいは足の爪先を、敵の口目掛けて容赦なく振るう。

ヴィーヴルの拷問官としての知識も持つギャリーは、尋問する敵の自死を防ぐ為にまず先に歯を折る癖がある。
そのせいで、即死させるべき敵にも不必要な苦痛を与えてしまう。

そしてギャリーは、それを趣味のひとつのように楽しんでいる。



ギャリーに殴り飛ばされ、あるいは蹴り倒されて地面に倒れた騎士達は、全て口から血の泡を吹きながら悲壮感漂う程の情けない呻き声を上げていた。

ドナを押し倒そうとしてギャリーに気絶させられていた男も、その状態で口に拳を突っ込まれた。

騎士達のリーダーだけが、まだ剣を構えた姿勢でギャリーと対峙している。


「…ってめぇは化け物か…! 
こんな事して、ただで済むと思うなよ!覚えてやがれ!」


リーダーは吐き捨てるように悪態をつくと、踵を返して瀕死の部下たちを置いたまま馬の方に走り、その場から逃走しようとした。


「いや、なんで生きてこの場を離脱出来ると思った?
しかも仲間を捨てて。」


騎士達のリーダーの前に、突然影のような人物達がユラリと現れて立ちはだかる。

同時に、ギャリーの後ろで地面に横たわり呻き声を上げていた騎士の仲間達が次々と影達によってトドメを刺されて「うっ」「ぐぁっ」と短い断末魔をあげ息絶えていく。


「な…なんなんだよ…お前ら何なんだよ!
いきなり現れやがって好き放題やりやがって!
一体どこの誰なんだよ!!!」


影達に行く手を遮られ退路を断たれたリーダーに、笑顔のギャリーがゆっくりと近付いてゆく。

リーダーは戦意を喪失し、ヘナヘナとその場にへたり込んだ。

ギャリーはニコニコと微笑んだままリーダーの胸ぐらを掴み、右手の拳を高く上げる。


「おっぱいの味方、おっぱいマスターです。」







フェイン、ドナ、そしてクータの前にあった絶望を伴う地獄の光景は無くなった。

今、目の前には顎が外れる程血だらけの大きな口を開けた死体が4つ転がっている悲惨な光景が広がっている。

黒い装束に身を包んだ人物達が複数いて、死体を一箇所に集めたり、騎士達の乗って来たであろう馬を回収したりと忙しなく動き回っていた。

やがて、数人の黒い装束の人物がフェイン達の側にやってきて怪我の手当てを始めた。


「あ…あの…妻を助けて頂き…ありがとうございます…
その…我々の怪我の手当ても…………。」


手当てを受けたフェインは言葉を詰まらせながらギャリーに礼を述べた。
言葉を間違えれば、目の前で行われた残虐な行為が自分にも向けて行われるかも知れない。

フェインより重傷を負ったクータも無言のまま頷くように礼をする。


この終始輝く笑顔のおっぱい好きな変態は、片手に切り落とした騎士達のリーダーの首をぶら下げて持っていた。

例に漏れず、それもまた歯の無くなった大きな口から血を滴らせており、眼球はグリンと上を向いたままの状態だ。


「お礼なんて要らないよー!
罪無きおっぱいの為にした事だから!
だけど、君たち二人はリスクィートの騎士だよね。
俺にとっては、罪有りし者なんだよな。」


ニコニコと微笑みながら、ギャリーは手にした生首をゴミを捨てるように後方に放り投げた。

暗い森の中に、鞠をつくようなテン、テン…と首が地面を転がってゆく音がする。

フェインらに向け一歩足を踏み出したギャリーをマンダンが慌てて止めた。


「待ってくれギャリー!恐らく、こやつらは国を捨て隣国に亡命しようとしていたのだろう。
あの王の呪縛に逆らったんだ!大目に見てやれ!」


「あー、恐怖心を植え込まれているから兵士たちは王に逆らえないとかゆーヤツ?
そんなの本当にあるのかねー。」


この場において、生殺与奪の権利は間違い無くギャリーが持つ。

それに気付いているドナは涙ぐみながら両手指を組み、祈る様な目でギャリーを見ていた。

死を覚悟していた所を助けられた。

命を失わないで済んだのだから、自分の身体を差し出す位の事で夫の命が助かるならば━━と。


「うん…美しい母体は、まず健康、健全な環境からだよね。
旦那さんを心配するあまり、お母さんの精神が追い込まれるのは赤ちゃんの健康にも良くない。
赤ちゃんには、美味しいおっぱい飲んで貰いたいしね。
……なら、このまま国外逃亡する気なら手伝うけど?」


ギャリーはフェインとクータに向かって良い笑顔で言った。

フェインはドナと顔を合わせて頷き、ギャリーの助力をありがたく受ける事にした。


クータは悩んでいた。


自分は国を裏切った犯罪者ではない。

あのならず者のような騎士達に、犯罪者に仕立てあげられそうになっただけだ。

だが━━国王はクータが騎士達に殺される事も織り込み済みで、あの場に行かせたのではないかと疑念が湧く。


「………若い騎士ならば尚さらに国の呪縛に取り憑かれているかも知れんな……。
ワタシも…国王が娘と孫に手を掛けるまでは…国のため、陛下のためだと全てを差し出す覚悟だった。」


「…!マンダン…様…?陛下の愛妃様の父の……?
カリーナ様についてベルゼルトに行っていた…?」


クータが思い出したようにハッと顔を上げた。

一番長く、国王陛下の愛妃だった者が不義の罪により死罪となった。
同時に、フォアン王子が行方をくらませた。

彼らは絵に描いたように、国王に従順である妻と子であった。

誰もが真実は別にあるのだろうと思いはしたが、皆、口を閉ざした。

国王に異を唱える者は、この国では生きていけない。


だが、罪も無い者の無念を晴らすのは、残された者にしか出来ないのだ。

娘と孫の無念を知り、何かを成そうとしている男が目の前に居る。


「見て見ぬフリをし声を閉ざし続けるのはもう嫌だ…!
僕も…!僕も国を捨てます!
どうかフェインたちと一緒に連れて行って下さい…!」


背中の傷が痛む身体でクータが力強くそう言い切った。
フェインは親友の英断に喜び、フェインの妻のドナも泣いて喜びを分かち合う。



ギャリーは三人の様子を見て微笑み、影たちに指示を出して怪我人を運ぶための馬車を二台用意させた。


「新しい追っ手が来る前に、一旦ここを離れよう。
そっちの馬車には、おっぱいちゃんと旦那さんが乗ってね。
こっちの馬車には、重傷のお友達くんを乗せて…心配だから俺が同乗するね。」


森の出口の向こうにある国境の門に向かって二台の馬車が走り出す。

背中に深い傷を負ったクータは荷台に寝かされ、木々に覆われた暗い空を見上げながら揺れる馬車の中で苦しげな呼吸を繰り返した。

ギャリーは汗ばむクータの額に、熱を冷ますかのように冷たい手甲の着いた手を当てた。


「大丈夫かい…?かなり無理をしたんじゃないかい?」


「……おっぱいマス……いや、ギャリーさん……
心配してくださり…ありがとうございます……。」


「うん……俺、巨乳が好きなんだ。」


「……………………はい?」


心配から、いきなりの巨乳フェチ宣言。

何の脈絡もなくそんな話を振られたクータは、困惑の表情を見せてから、ヘラッと口を開いて愛想笑いを浮かべた。


その刹那、額に当てられていたギャリーの手甲がグボッとクータの口の中に深く入り込んできた。

口の端の皮膚が切れ、頬にまで亀裂が入りそうな程に口を無理矢理こじ開け、口の中を抉る様に容赦なく手甲は口の中に入って来る。

反射的に噛もうとするが歯は既に数本折られ、硬い手甲に何の影響も及ばせない。


「グボッ…!!ゴッ…!!」


「ん~君は中々に俺好みの巨乳だね。
胸の内側に、どんだけ黒くて大きな汚いモノ隠し持ってるのかなぁ君は。分かってるよ。
ホントは君、おっぱい夫婦と俺たちの敵なんだよね。」


ニコニコと楽しげに微笑むギャリーに対し、「オェッ」と何度も嘔吐しそうになりながら口から血を流したクータは、涙目で何度も小刻みに顔を横に振って違うとギャリーに訴えた。


「実は仲間なのに正体バラせないもんだから斬り掛かられたりしてさ、命張ってるよなって感心していたんだ。
確かに、敵を欺くにはまず味方からって言うしね。
いやぁエライエライ、ソコまでして使命を全うしようとするなんて騎士の鑑だね。

……ん?もしかして…俺の勘違いだったりした…?」


クータの目の焦点が合わなくなり、口の中を満たした血が鼻からも出始め、クータは窒息しそうになりながらもギャリーの言葉に対し、一回だけ頷いた。


「そっか…俺の勘違いだったか…ゴメンな……

って、舐めんなよ?
マンダンのオッサンが現れた事とおっぱい夫婦の居場所を記した紙を途中で茂みに投げていたよな。
後続の追っ手に拾わせ国王に報告するつもりだったんだろ。」


にこやかに微笑むギャリーの目は笑っていなかった。

クータが書いた紙を証拠とばかりに本人に見せた後、ギャリーはクータの口から手を引き抜き、恐怖に震えるクータの首に横向きにした剣の刃を、首が綺麗に斬れるように真っ直ぐに当てた。


「ひっ…ひがぅ!ぼりゅ…敵じゃ…ボクはっ…ボクッッ」


「ナニ言ってるか分かんないや、あはは」


ギャリーは剣の柄と刃の背に体重を掛けた。

ドン!と剣の刃が荷台に到達し、ギロチンの様に綺麗に落とされたクータの首が荷台を転がる。

ギャリーは首無しのクータの身体を荷台から捨て、荷台を転がる首を掴むと、それも荷台の外に投げ捨てた。

勢い良く投げられた首は、テンテンテンと何度も弾んで見えなくなった。


ギャリーは広くなった荷台に仰向けに寝転がると空を見上げた。
森の木々は見えなくなり、満点の星空が視界に広がる。


「もう国境だな。
さて……おっぱい夫婦には親友の死を、何て説明しようかな。」


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