【R18】熊の様な45歳の近衛隊長は、22歳の美貌の皇帝に欲しがられています。

DAKUNちょめ

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ガチムチタマノコシ。

「キリぁッ…ンンッ!ゴホッ!
…へ、陛下までご一緒に…!?」


寝起きな為にボサボサに乱れた頭にシワだらけになった衣服でドアを開けたガインは、この場に居るはずが無い父親が目の前に居る事に混乱し慌てふためく。

咳払いをし、何かを取り繕うと無駄に髪を撫でたり服を撫でたりと手を動かしつつ、父親の背後にしれっと立っているキリアンに「なんで!?」と訴えるような眼差しを向けた。


「フフッ私が将軍を案内してここに連れて来たのだ。
なぜなら将軍が、兵舎側にあった以前のガインの部屋に向かおうとしたのでな。」


━━そんな得意げに言われても!━━


混乱続くガインの前、ヴィルムバッハ将軍は確認するように、部屋の中、廊下側と何度も身体を移動させてガインの部屋の位置や扉を見た。

そして、紛れも無く元が皇妃の私室であった部屋の中にガインが居るのを見て、深く重い溜め息を吐いた。


「紛れも無く、この場所は亡きセレスティーヌ皇妃殿下の御部屋……
それが今、お前の部屋だと?…噂は本当だったのか…。
なんて事だ……。」


将軍は信じられない物を見たと言わんばかりに、目と額を覆うように手を当てて何度も頭を左右に振った。


「…親父…今まで黙っていて悪かったが…
俺と陛下は実は……。」


「ミーシャから、ガインに若く美しい好い人が出来たと聞いて安堵していたんだが…上手くいかなかったのだな。」


将軍はガインの声が耳に入ってないのか、ガインの言葉には反応せずに、顔を手で覆ったままで苦悩するかのように天を仰いだ。


「いや親父、そうじゃなくてだな…その人こそが…」


「だがな…だからと言ってな…男やもめが過ぎたからと言ってな…これはいかんだろう…。
確かに陛下は美しい。思わず触れたくなるのも理解出来る。
実際、陛下に触れようとした身の程知らずな輩は多く居た。
だからと言って、まさかお前までもが…
敬愛すべき陛下に手を出すなど、何たる不忠者か。」


「え…?いや、親父違うって…
むしろ俺が、手を出された方…」


どうも、将軍はガインがキリアンに手を出したと勘違いしている様子。
元々が、この城の中でもそんな風に見られていたのだから、そう思われても仕方がないのだが━━とガインは将軍の後ろでにこやかに困り顔を見せているキリアンに目をやった。 


ガインの父親である将軍はガインに似て天然であり、変な方向に思い込むような所がある。 

今はにこやかに微笑んでいるキリアンだが、将軍がいらん地雷を踏む前に、何とか黙らせないと……

そう考えたガインだったが、時すでに遅し━━


「ハァ…こんな事なら相手を見繕って、早めにこちら側で縁談でも進めておくべきだったな……。」


キリアンは将軍の背後でにこやかに微笑んだまま、ブワァっと全身から殺気にも似た怒気を立ち昇らせた。

なんだったら、そのまま背後から将軍をブスーッと刺してしまいそうだ。


「ちょっ…!待て!親父、その発言はヤバい!
過去にそうしとけば、の例え話だったとしてもヤバい!
想像するから!こいつ想像でキレるから!
『もし、そうなっていたら』が原因で、親父が反逆罪で処刑されるとか、自領までの帰り道で不慮の事故で他界するとか、そんな事になりそうだからやめてくれ!」


「ンあ?」


背後のキリアンが激しい怒気を放っている事に全く気付いていない将軍。

ガインだけがワタワタと慌てふためき、一度ゴクッと唾を飲み込む。


「とにかく!!入り口で立ち話も何ですから中へ!
二人とも、とにかく中へ!!」


ガインは将軍とキリアンの手首を掴み、力任せに二人を部屋の中に引きずり込んだ。

二人を小さなテーブルの前に立たせたガインは「はよ座れ!」とばかりに椅子を引く。


少し落ち着きを取り戻したキリアンは先に椅子に腰を下ろした。
将軍もキリアンに一礼をしてから、向かい合うように椅子に腰掛ける。

まだプチパニック状態のガインは二人に茶を淹れようとして茶器を用意したが茶葉を床にばら撒き、悪戦苦闘中だ。


将軍は席に着いたまま部屋の中をキョロキョロと見回した。
皇妃の部屋として寝室も兼ねて造られた部屋は広く、大きなベッドや豪華な家具が並び、華やかさがある。

ガインはその部屋を持て余した状態にあり、実際にはベッドと小さなテーブル周りしか使ってはいない。


「皇妃殿下の部屋に入るのは初めてですが、広くて豪華な部屋ですな…調度品も豪華ですし。
ですが、息子の部屋で見慣れたこの小さな丸テーブルと椅子がなぜここに…。
何とも、この部屋には不釣り合いでありますが。」


「ガインをこの部屋に移らせた時に、このテーブルだけは、とこちらの部屋に移動させたんだ。
なにしろ、俺がガインを初めて抱いた思い出のある大事なテーブルだからね。」


「キリアーーン!!!!!!」


こぼした茶葉をチマチマ拾いながら二人の会話に聞き耳を立てていたガインが、両手の親指と人差し指の先に茶葉を摘んだままテーブルに向かって大きな声をあげた。


「どうしたのガイン。
面白いポーズとってるけど、両手の指でも鳴らすの?」


ニコニコと微笑むキリアンとは対象的に、テーブルを挟んでキリアンの向かい側に座るヴィルムバッハ将軍は、目を真ん丸く開き下顎が少しシャクれた状態で、石化したかのようにカチコチに固まった状態になっていた。

置き物のようになった父親の姿に焦ったガインがキリアンに突っかかった。


「な、な、何も!何も今ここで!
そんな事を言わなくてもいいじゃないか!」


「俺とガインが身体を重ねる関係だと、もう将軍は知ってるんだろ。
後はガインが俺の妻の立場である事と、それは絶対に揺るがない事、これを将軍に知っていて貰う必要がある。」


「なんでだよ!
どうでもいいだろ!どっちがどっち側とかなんか!!
なんで、そこまで深く説明しとかなきゃならん!
付き合ってます、愛し合ってますで充分だろうが!」


指先で茶葉を摘んでいたガインが手の平を開き、バン!と強くテーブルを叩いた。

キリアンは叩いたテーブルの上にあるガインの手の平に自身の指先を重ね、それぞれの指股にスルッと指先を潜らせた。


「駄目、将軍には俺たちの関係をちゃんと理解して貰いたい。
…それにしてもさぁ…ガインの口から愛し合ってますなんて言われたら…嬉し過ぎて興奮する。
…今すぐこのテーブルでガインを抱きたい位だよ。」


指先を絡ませながら甘い声音で囁くキリアンに、ボッと火が点くように顔を赤くしたガインが慌ててテーブルから手を引いた。


「だ、だからっ…そ、そういう事を親父の前で言うなって…。」


赤面したガインは声が小さくなり、たじろぐような仕草を見せる。

その様子を愛しげな眼差しで見つめるキリアンは、幸せだと言わんばかりの微笑みを浮かべた。


「…………ガイン…いや、陛下。
無礼を承知でお聞きしたいのですが。」


「うん、何を聞きたい?」


二人のイチャイチャを見せつけられていた将軍は目を真ん丸く開いて髭の生えた下顎をシャクれさせたまま、そっと挙手してキリアンに問いかけた。
キリアンは挙手した将軍に質問され、静かに頷く。


ガインは置き物のようになっていた父親が急に動いて喋り出したので、「そう言えば親父居た!置き物でなくて生きてるのが!」的に驚き、在る、と居る、の認識違いを改めて把握し、思わず将軍を二度見した。


「うちの愚息が陛下を…その…女性のように扱ったのではなく……陛下がうちのアレ……息子を……
女性として扱い…抱いている…という認識で合ってますでしょうか?」


将軍は自分で口にした言葉にすら「自分はなんて可笑しな事を聞いているんだ」と疑心をいだき、キリアンに問いかけながらも、自分は馬鹿げた事を言ってるのでは?と何度も首を傾げて複雑そうな表情を見せた。


「少し違うな。
私はガインを女性として扱っているワケじゃない。
最愛の妻として抱いて愛し尽くしている。ほぼ毎晩。」


将軍の質問に対し、全くためらう様子を見せずに返したキリアンだったが、黙ってられるか!とガインが割って入る。


「何も違わないだろ!親父が聞きたかったのは、どちらが抱く側、抱かれる側かなんだから!
妻だとか毎晩だとか!そんな余計なトコまで言わんでもいいから!」


「女性として扱ってるのとは全然違う。
男女の別なくガインはガインで、扱っているなんて表現もおかしく…正しくは、抱いて愛し、抱いて可愛がり、抱いて苛め…とにかく毎晩これでもかって程、抱きまくって…

そう言えば今朝なんか、ガインが私に「穴が塞がる暇が無い」とか可愛い不満を言ってた位で…」


「お前はもう黙れ!何も言うな!」


ヴィルムバッハ将軍を置き去りにして痴話喧嘩のように目の前で揉める二人を見て、将軍が「ブッ」と吹き出した。


「グワッハッハッハッハッハ!!そうか!なるほど!
ガイン、お前は『玉の輿』に乗ったんだな。
これは「でかした!」と褒めてやるべきか?
に、しては『玉の輿』の相手が皇帝陛下とは…輿がデカ過ぎるが…。」


「玉の輿とか言うな!!貴族令嬢じゃあるまいし!
変な解釈すんじゃねぇよ!親父!」


豪快に笑い出した後に「状況を把握した」と言いたげな物言いをした将軍をガインが全力否定する。

ムキになるガインを見た将軍は益々笑いが止まらなくなり、口を抑えながらもずっと喉の奥からクツクツと笑い声を漏らし続けていた。


「クックック…お前は我が国の令嬢たちと、その親が欲してやまなかった、皇帝の最愛の人ってぇ地位を獲ったんだぞ?
この国で陛下の寵愛を受けているのはお前一人だ。
まぁ、孫の顔を見るのは諦めなきゃならんようだが…」


「何を言ってるんだ将軍。
ガインは俺の子を身ごもるに決まってるじゃないか。」


キリアンの真顔での返答に、将軍の笑い声がピタリと止まった。
「え?」と言わんばかりの顔は、何ならキリアンがガインを抱く側だと知った時より驚き過ぎて虚無顔に近い状態になった。


「……サニーの孫は頭が良いと聞いていたんだがな。」


「親父、先々代サニエン皇帝陛下の孫であらせられるキリアン皇帝陛下は賢王と呼ぶに相応しい立派な方だが、キリアン個人はアホだ。
特に俺が絡むと、どうしようもなく残念な人になる。」


ボソボソと小声で話すガインと将軍を見たキリアンが「フッ」と小さく笑った。


「ヴィルムバッハ将軍、私がガインに注ぐ愛の深さを、もっと語り尽くしたい所ではあるが、今は先に遠方への旅の話を聞かせて欲しい。」


ヴィルムバッハ将軍は「そうでしたな」と、テーブルの向かい側に座るキリアンに向かって頷いた。


「そうですな。
彼の国に久しく参った所、私が知っていたジジイ…老爺は既に居らず、代わりにそこに居たのは若い娘さんでした。
恐らく、ジジイの孫娘なんでしょうが。」


「孫娘か…その若い娘とやらは、こちらの話に興味を持ってくれそうか?」


「いやーそれがちょっと面倒な事になっておりまして。
娘さんの想い人がここしばらく顔を見せなくなったらしいんですわ。
若い娘さんですからな、想い人の事で頭の中がいっぱいだそうで。
今はそれどころじゃないと、こちらの話を聞く余裕は無さそうでしたな。」


ガインは二人の旅の話を聞きながら、これは雑談ではなく報告なのだと気付いた。

普段、自領から出る事など滅多にない父親が知らぬ間に外に出ており、何処かの何かの情報を得て報告のために城に来た。

老爺が若い娘に代わった…どこの何の話をしているのやらガインには見当がつかない。

そう言えば最近、誰かが同じように国を出たとキリアンが話していた気が……。



「さて…陛下の御顔を見て挨拶も出来たし、久しぶりに息子の面も見れた。
わしは、とっととヴィルムバッハに帰りますか。」


ガインが考え事をしている間に、将軍が椅子から立ち上がった。

キリアンはテーブルに着いたまま、立ち上がった将軍に声を掛ける。


「将軍、ノーザンに会って行くか?
可愛い孫娘ミーシャの婚約者の。」


将軍は困ったように頭を掻き、苦笑した。


「ハハハ、意地の悪い言い方をしますな。
そいつの面を拝んでやりたい所ですが、それは今度の楽しみにとっておきます。
こちらでも色々と準備をせにゃならん事もあるでしょうし、隠居した老兵は大人しく田舎に帰りますよ。」


━━準備…親父がこんな言い方をするなんて戦争の準備か?やはり戦争は始まってしまうのか…?━━


先ほどのキリアンと将軍、二人の旅先についての会話といい、ガインの頭に戦争が起こるのではないかとの不安がよぎる。

それと同時に、先ほどの会話が自分には分からなかった事に、蚊帳の外の扱いをされたようでズクンと胸が重くなった。


席を立ちドアに向かう将軍の後について行くように、ガインもドアの前に立つ。


「親父、門まで送って行く。」


「そうか、そいつは有り難い。」


キリアンは、肩を並べてドアの前に立つ二人の剛健な騎士の背中を見ながらニコリと微笑む。

世間では熊と灰色熊と呼ばれる二人だが、キリアンにとっては嫁と義父である。


「きっとまた近い内に会う事になるね…お義父さん。」






「親父……今さらだが、すまん。
孫を抱かせてやる事が出来ず…。」


ガインは将軍と並んで城の中を歩きながら、ボソッと呟いた。


「謝るような事じゃない。
お前の人生だろ、お前が幸せになれると選んだ道だ。
わしがどうこう言えるモンじゃない。」


「だが…俺がヴィルムバッハの血を途絶えさせてしまう事に…。」


ガインは自分で口にした言葉に胸が痛くなった。
キリアンも同じ立場なのだと再認識させられてしまう。

自分たちが愛し合う事は、ベルゼルト皇族とヴィルムバッハ伯爵家の跡継ぎがいなくなる選択なのだと。


「そんな事をお前が気にせんでもいい。
陛下に愛されて幸せなんだろう?」


ぶっきらぼうではあるが、父親の思わぬ言葉にガインは歩みを止め、噛み締めるように頷いた。


「ああ…この上なく。」


幸せかと問われ幸せだと答えただけで、先ほどまで重かった胸の内側が羽根のように軽く温かくなる。

表情筋が緩み、自分の顔が花が咲いたように赤らみ綻ぶのが分かる。


━━俺はキリアンに愛され、この上なく幸せだ━━


「ハハハ!陛下相手に、そんな恋するオンナみたいな顔をするお前を責める理由なんぞないわ!
何より我が子の幸せが一番だからな。」


「親父…………」


「お前は生涯、あの方を信じ支えてやれ。
あの方は、お前を愛するあまり、お前に負担を掛けまいと多くを語らずに一人で重荷を背負い続けようとなさる。
お前を信用してないワケじゃないんだろうが、愛しさが募るゆえか、お前が一人の騎士であり配下である事を失念する傾向がある。」


それはガインも強く感じていた事だ。

キリアンは、悩みも苦労も全てをガインと共有すると言った。

なのに時々こうやってガインの心配をよそに、ガインが知らない何かを一人で推し進めようとする。


「もし、戦争が起こるなら…俺はキリアンを守り抜くつもりだ…なのに俺に全てを話しては下さらない…。」


「……それが原因じゃないか?
お前、なんで戦争起こるかもなんて言っちゃってんだ。
陛下は戦争を起こさないと断言してらっしゃるし、そうならない為に力を尽くしてらっしゃる。
そんな陛下を信用してないみたいじゃないか。
騎士として、そう心構えがあるのに越した事は無いが、恋人に隠し事はしないと思ってるからって、ソレを陛下には言っちまってんのか。馬鹿正直か。」


将軍は呆れ顔をしつつ、正直な我が子の不器用な面を嫌いではない、と笑った。

そしてエントランスに着いた将軍は、見送りのガインの肩を拳で軽く叩いた。


「ま、お前はお前のままが一番だ。 
モヤモヤするならモヤモヤしとけばいい。
無理して変わろうとする必要はねぇ。
じゃあまたな。」


大扉を開き、城の外に出た将軍を城の騎士や兵士が囲む。

ガイン同様に鬼神や軍神といった多くの二つ名を持ち、もはや伝説となりつつあるヴィルムバッハ将軍は騎士達の憧れの的でもある。

若い兵士は特に、伝説の英雄とまで言われた将軍本人を初めて見た者も多く、周りでわぁわぁと熱狂的な声をあげている。


「隠居した老兵とか言うが、親父はまだまだ現役だよな……。
ヴィルムバッハで準備か…何のだ。」


はて、と考えながらもガインの足は自室に向かう。

キリアンを見つけ、先ほどの会話について自分にも理解出来るように話して貰わねば。



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