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語る前に口付けを。
城の大門前で父親のヴィルムバッハ将軍を見送ったガインは、人目を避けながら足早に自室へと向かった。
よくよく考えたら今日が非番のガインは、寝起きの格好のままで貴族が行き交う城の中を闊歩していたと今、気が付いたのだ。
以前の自分ならば、着崩した格好を城の者に見られる位「こんな場所に、こんな格好で来ちまって…みっともないトコ見せちまったな」とドジを恥じて少し焦る位で済んだのだが、今の自分は寝起きの着崩した格好を城の者に見られるのは極力避けたい。
━━身なりを整える余裕も無いほど、こんな時間まで陛下に愛されていたのですね━━
そう見られているような気がしてならない。
ガインの勝手な思い込みでしかないのだが、例えるならば寝間着を着たまま職場に来てしまったのと、キスマークだらけの身体でスケスケのネグリジェを着て職場に来てしまった程のイメージ差がある気がする。
なので、寝起きの姿は人に見られたくない。
忍ぶように城内を移動し、やっと自室のドア前に着いたガインは、ふと「まだキリアンは俺の部屋に居るのか?」と考えた。
本来ならば、まだ日も沈んではおらず皇帝としての仕事をするべき時間。
だが、昨夜ひと晩中睦み合っていた身としては休む間もなく皇帝としての執務に向かったキリアンの体調が心配でもあり、隣の自室に戻って、あるいはそのままガインの部屋ででも良いから少しでも休んで欲しい所だ。
静かに自室のドアを開き、静かに部屋の中に入ってドアを閉める。
部屋に入ってすぐ目に付く小さなテーブルと椅子にはもうキリアンの姿は無く、ガインが奥のベッドに目を向けると枕に顔を埋める態勢でうつ伏せで寝ているキリアンを見つけた。
「寝てるのか。窒息しねぇか?その態勢。」と少し心配になったガインがベッドに近付くと、キリアンが枕から顔を上げた。
「おかえり、ガイン。将軍はもう帰ったの?」
「なんだ起きていたのか。
親父なら門の所で若い兵士や騎士達に囲まれていた。
まだ城から出られてないかもだな。
……で、キリアンはナニやってんだ。」
ガインがベッドの縁に腰を下ろしてキリアンを見下ろし、軽く頭を撫でた。
キリアンは頭に置かれたガインの手に自身の手を重ね、手の方に顔を向けてチュッとガインの手の平に口付けた。
思わずピクッと反応したガインは、咄嗟に手を引く。
「ガインのニオイを思い切り吸い込んでいたんだ。
将軍がテーブルの話なんか出すから…ガインとの初めての事を思い出しちゃって。」
「んな事…小っ恥ずかしいから思い出すなよ。」
ベッドの上で身体を起こしたキリアンは乱れた金糸の髪を掻き上げてクスリと微笑んだ。
今さら思うのも何だがキリアンは本当に美しい。
ただ美しいだけではなく仕草や表情も相まって、見た瞬間に男女問わずに性的な欲望を掻き立てられるような恐ろしい程に蠱惑的な様相をしているのだ。
そんな美人をケダモノみたいに変えてしまい、抱かれてしまう自分━━
改めて考えると、恥ずかしいやら申し訳ないやら何やらかんやら。
「どうしたの?そんなにジッと俺を見詰めて。」
「いや…お前って、ホント…人の理性を狂わせるヤツだなと改めて思って。」
「ええ?ガインは今、俺に理性を狂わされそうなの?」
「いや、今の俺がじゃなくて…世間一般的にと言うか…」
ベッド縁に座ったガインは背を丸めて俯き加減で自身の眉間を摘むと、ウーンと低く唸って「俺は急に何を言出してんだ」と呟いた。
その様子を見たキリアンが不思議そうに「え?」と声を出し、クスッと小さく笑う。
「俺が狂わせたいのはガインだけだから…他の誰かにどう見られているかなんて全く興味無いな。」
ガインの背にピタリと抱き着いたキリアンは両腕を前に回し、ガインを緩く抱き締めながら衣服の上から腹部を指先でツゥーっと撫でた。
「ね…もしかして…ガインから誘ってくれてる?」
背に張り付いたキリアンの甘い声が振動となって背中からガインの全身に広がるように響く。
全身を包むトロリとした甘い感覚の中、キリアンの指先はガインの敏感な部分を刺激して意識をキリアンに繋ぎ止める。
「ッッン……!」
衣服の上から乳首をカリっと軽く掻かれ、思わずブルッと身震いしたガインはキリアンから離れるように焦ってベッドから立ち上がった。
「違うわ!俺はただ…キリアンが疲れてんじゃないかと心配なのと…!
キリアンと親父が話していた事を、俺も分かるように詳しく聞きたいのと…!それから!
それから…この先…は……………。」
城内を歩いていた際にガインは父親に、孫を抱かせてやる事が出来ずにすまないと謝った。
自分が選んだ未来は、ヴィルムバッハ伯爵家の血を途絶えさせてしまうと。
父親は気にするなと言ってくれたが、それがキリアンの立場では国の頂点である皇族の血を途絶えさせてしまう事になる。
自分は父親を裏切ったのではと罪の意識に苛まれたが、キリアンとの愛を貫く事は、ベルゼルト皇族の治める国を愛した国民全てを皇帝に裏切らせる事になるのではないか━━と考えた。
その罪の意識は、どれ程自分達を…いやキリアンを苛む事になるのかと思うと胸が痛い。
「ガインは、悩みが尽きないと言うか、新しい悩み事を見つけるのが得意なんだね。
俺との事をミーシャに知られたくない気持ちが一番から始まって、次は将軍には知られたくないが一番になって…城ではもう皆が俺達の関係を知っているし隠す必要もバレる心配もない。。
今はナニ?何か悩み過ぎて上手く言葉に出せないほど混乱してる?」
キリアンが立ち上がったガインの手を握り、ユラユラ揺らしながら訊ねた。
そして少し首を傾げて柔らかく微笑む。
「それとも…今まで蓋をして考えないようにしていた事が一気に溢れちゃった?
ガインって、度々そんな感じになるよね。
後回しにしていた事を急に思い出して凄く慌てたりする。」
キリアンに握られた手を揺らされたガインは図星を指され黙り込んだ。
よく考えればキリアンも同じ悩みを持っていておかしくないのに、なぜこうも平然としていられるのかとモヤッとしたりもする。
「ガインの憂いは俺が全て払ってあげたいから言うけど…俺、疲れはさほど感じて無いんだよ。
将軍との話については、俺からちゃんと話すつもりでいたよ。
で、この先…とは国の事?いや、俺達の未来の話?
その答えも俺の中では既に決まってるんだよね。」
「……だったら、それを俺にも聞かせてくれよ……」
隠し事をされていた気がする不満と、将来への不安を孕んだ表情を隠さず、ガインは二人の間でユラユラと左右に揺れる繋がれた腕を見下ろしながら渋い顔でベッド縁に腰掛けるキリアンに言った。
キリアンはガインを見上げ、少し間を置いて答える。
「そうだね……ちゃんと話すよ。
…………ね、ガイン…キスしよう?」
━━は?
今までの話の流れを故意に断ち切られたのだと思ったガインは、不信感いっぱいの表情をキリアンに向けた。
「なんでそうなる。
そんでまた抱きたくなったとか言って、なし崩し的にコトを始める気か?
そうやって、今していた話題をはぐらかす気なのかよ。」
「誤魔化したり、はぐらかしたりするつもりはないよ。
ちゃんと話すつもりだって。
……正直に言えば、今すぐガインを抱きたいって気持ちもあるんだけれど…それは今、無しにしてキスだけしよ。」
いや、なんで?
ガインはキリアンを「嘘つけよ、コイツ」みたいな疑いの眼差しでジトっと見た。
興奮しただの我慢できなくなっただの何だかんだ理由をつけて、また繋がる気かよ…と思うと共に、だったらキス以上をされそうになったら無理矢理にでも自分が止めて、先ほどの話題まで再び引き戻してやればいい。
絶対になぁなぁにはさせん!━━そんな思いを胸に、ガインは「分かった」とキリアンにコクリと頷いた。
「じゃ、ガインもう一度隣に座って。」
ベッドの縁に腰掛けたキリアンが、自分の右側の縁をポンポンと叩く。
ガインは「お、おう」と返事をし、なぜかぎこちない動作でキリアンの隣に腰を下ろした。
ガインは、並んで座る左側のキリアンを強く意識してしまう自分に戸惑う。
キスなんて………もう数え切れないほどしている。
特に、事の最中には互いの濡れた舌先を延ばして喘ぐ声さえ食み、貪るような口付けを何度も交わす。
それを今さら改まって口付けをする事に何の意味が…?
そう思うのだが、その改まった事によって、ただの口付けに対して強く意識してしまい構えてしまう自分がいる。
「ガイン、こっち向いて。
ガインは背が高いから、少し身体を下げてね。」
「……わかった。」
ガインは平静さを装い、左側のキリアンの方に無表情な顔を向けた。
ベッドに左手をついて肩を下げ、顔の位置をキリアンの高さに合わせる。
同じ目線にあるキリアンがの顔が自分を優しく見詰めるのを真っ正面から見た瞬間、ガインは気恥ずかしさと緊張から思わず唇をキュッと強く結んでしまった。
ガインは自身の頬が赤く染まり唇をキュッと結んでいる自分の表情には気付いておらず、目だけ無表情を演じて平然としたフリをしながらキリアンを見詰め返した。
キリアンの右手がガインの頬に当てられ、細くしなやかな指先がガインの髪に触れ耳を撫でる。
「ガイン…」
羞恥心すら取っ払うような、互いの恥部をさらけ出すような淫らで深い交わりを幾度と無く重ねてきたのに、ガインは今、ただのキスをする前という、この瞬間が逃げ出したくなる程に恥ずかしい。
そしてまだキリアンの手しか自分に触れていないのに、心臓の音が外に漏れ出るのではないかと思う程に胸の動悸が激しくなった。
「ガイン…愛してるよ…」
その言葉にギュンっと心臓が締め付けられた。
ガインはもう、その言葉を疑ったりしない。
キリアンの全ての愛が自分一人に向けられている事を、逃げる事が叶わぬ程の愛で、がんじがらめにされている事を、ガインは意識せずとも心に深く刻み込まれている。
「キリアン……」
互いの唇の表面が触れて重なる。
浅く重なった唇の僅かに開いた隙間から漏れる生温かな吐息を交換した。
━━ああ…愛しい…愛しい…!好きだ…好きで堪らない……もっとキリアンが欲しい…
もっと奪われたい…キリアンに俺の全てを奪われたい…
涙が溢れそうだ…切なくて泣いてしまいそう…
キリアンは俺の全てだ…俺の全てだってキリアンだけのもんだ…━━
「ガイン……この先俺が何処へ行っても……どんな道を選んでも……一緒についてきてくれる?」
触れ合う唇を僅かに離し、キリアンが囁くようにガインに訊ねた。
触れ合う肌が離れて告げられたキリアンの言葉はガインの耳に届き、唇という肌の代わりにガインの心に触れる。
「ッッンなの、当たり前だろ!!!
俺の居場所は…もう、キリアンの隣だけなんだからよ!
隣なんて表現じゃ足りねぇ位だ、俺たちは互いの一部だから…欠けたら生きていけない…!
お前が選ぶなら、どんな道でも共に行く!
何処にだってついて行く!」
ガインはキリアンの身体を掻き抱く勢いで抱き締めた。
キリアンが戦争は起こらないと言うのならば、そうなのだろう。
ガインは万が一を懸念していたが、もうキリアンが決めた事を疑ったりしない。
ふと、ガインが気付いた。
キリアンは戦争を起こさない事を目標にはしていない。
戦争を回避するのはキリアンにとって、その先にある何かを手にするための道中でしかないのだ。
「嬉しいよガイン…。
ガインにも厳しい選択をせまる事になるかも知れないから…全てを詳らかにする事に躊躇してしまっていたんだけど…将軍との話についても詳しく教えるよ。
これは俺と将軍と言うよりは…お祖父様と将軍とで決めた事なんだ。
それで………」
膝に座らされる勢いでガインに抱き締められたキリアンが囁くようにガインにそう告げ、ガインが聞きたがっていた将軍との話を伝えようとしたが、ガインがキリアンの言葉を遮るように唇で唇を塞いだ。
どこかたどたどしく、ぎこちなく動かされたガインの舌先はキリアンの咥内でクチュクチュと動き回り、キリアンの舌先を誘い出したがる。
「ンンンっ……ん…ガイン…?熱烈だねぇ…
ね、こんな事したら……どうなるか分かってる?
俺、我慢できなくなるよ?」
「…俺がもう…我慢出来ない…キリアンが欲しい…
繋がりたい…ひとつになりたい…キリアンが欲しくて欲しくて………
俺の全てをキリアンに奪われたい……。」
「……ねぇガイン…それ本気?
ガインから奪われたいって言うなんて…俺、止まらなくなるよ?
理性をかなぐり捨てて堕ちてくれる?」
キリアンがガインの顎を掬い上げ、チロチロと舌先でガインの唇を舐めた。
先ほどまでの優しげな微笑みとは違う、今のキリアンの微笑みは悪魔の様に蠱惑的で美しく、艶めかしく動く舌先が獲物を狙う蛇のようだ。
奪い尽くされて食い尽くされて、キリアンとならどこまでも共に堕ちて往きたい。
「ああ…もう、どこまでも………。」
「まだ夜になってもないのにガインから…ふふっ
部屋に誰か訪ねて来たって、止めないからね?」
キリアンがガインの後ろに右腕を回して頭を支え、指先でうなじを撫でながら唇を深く重ねる。
左手をガインの股の間に運び、既に膨張したトラウザーズの頂きを慰めるように撫で回した。
曖昧な刺激はガインには焦れったくもどかしく、ガインはキリアンの手に下肢を擦り寄せる。
「もっと強く…服の上からじゃなく直に触れてくれ…
愛を与えるより、俺を奪い尽くして欲しい…
優しさよりも傲慢に、誰が見てもキリアンの物だと分かる程の烙印を、この身に刻まれたい…。」
「どうしたのガイン…俺を狂わせる気?
ふふっ…ホント、堪らないよ……どれだけ暴いても暴き尽くせない、毎回俺の知る極上のガインが上書きされていく。」
キリアンはベッドの縁に座ったガインの上半身をベッドの上に押し倒した。
キリアンはベッドに深く沈んだガインの巨体を見下ろしながら、ガインのトラウザーズを膝下までずり下げると片方の足だけを抜き、その足を上に高く上げさせる。
「…キリアン…」
小声で名を呼び、恥じらうガインの後孔が現れるとキリアンがニッと顔を歪ませて笑った。
「…堪らないなぁ…いつ見ても美味そうで…
蛇みたいにかま首をもたげて、早く食い破りたいって急かされる。」
既に臨戦態勢に入ったキリアンの雄根は、先端の小さな口から喰わせろとせがむように白濁色の涎をタラリと垂らした。
キリアンは垂らした涎を淫靡な結び目にヌルヌルと塗りたくり、クチュクチュと足踏みするように入り口を数回ノックする。
「ああ、もう限界だ。一回挿れるよ?」
「うぁ……ああああッ!!!!」
きつく結ばれた口を強引にクパァと押し広げ、キリアンの雄茎がガインの内側に完全に埋まった。
よくよく考えたら今日が非番のガインは、寝起きの格好のままで貴族が行き交う城の中を闊歩していたと今、気が付いたのだ。
以前の自分ならば、着崩した格好を城の者に見られる位「こんな場所に、こんな格好で来ちまって…みっともないトコ見せちまったな」とドジを恥じて少し焦る位で済んだのだが、今の自分は寝起きの着崩した格好を城の者に見られるのは極力避けたい。
━━身なりを整える余裕も無いほど、こんな時間まで陛下に愛されていたのですね━━
そう見られているような気がしてならない。
ガインの勝手な思い込みでしかないのだが、例えるならば寝間着を着たまま職場に来てしまったのと、キスマークだらけの身体でスケスケのネグリジェを着て職場に来てしまった程のイメージ差がある気がする。
なので、寝起きの姿は人に見られたくない。
忍ぶように城内を移動し、やっと自室のドア前に着いたガインは、ふと「まだキリアンは俺の部屋に居るのか?」と考えた。
本来ならば、まだ日も沈んではおらず皇帝としての仕事をするべき時間。
だが、昨夜ひと晩中睦み合っていた身としては休む間もなく皇帝としての執務に向かったキリアンの体調が心配でもあり、隣の自室に戻って、あるいはそのままガインの部屋ででも良いから少しでも休んで欲しい所だ。
静かに自室のドアを開き、静かに部屋の中に入ってドアを閉める。
部屋に入ってすぐ目に付く小さなテーブルと椅子にはもうキリアンの姿は無く、ガインが奥のベッドに目を向けると枕に顔を埋める態勢でうつ伏せで寝ているキリアンを見つけた。
「寝てるのか。窒息しねぇか?その態勢。」と少し心配になったガインがベッドに近付くと、キリアンが枕から顔を上げた。
「おかえり、ガイン。将軍はもう帰ったの?」
「なんだ起きていたのか。
親父なら門の所で若い兵士や騎士達に囲まれていた。
まだ城から出られてないかもだな。
……で、キリアンはナニやってんだ。」
ガインがベッドの縁に腰を下ろしてキリアンを見下ろし、軽く頭を撫でた。
キリアンは頭に置かれたガインの手に自身の手を重ね、手の方に顔を向けてチュッとガインの手の平に口付けた。
思わずピクッと反応したガインは、咄嗟に手を引く。
「ガインのニオイを思い切り吸い込んでいたんだ。
将軍がテーブルの話なんか出すから…ガインとの初めての事を思い出しちゃって。」
「んな事…小っ恥ずかしいから思い出すなよ。」
ベッドの上で身体を起こしたキリアンは乱れた金糸の髪を掻き上げてクスリと微笑んだ。
今さら思うのも何だがキリアンは本当に美しい。
ただ美しいだけではなく仕草や表情も相まって、見た瞬間に男女問わずに性的な欲望を掻き立てられるような恐ろしい程に蠱惑的な様相をしているのだ。
そんな美人をケダモノみたいに変えてしまい、抱かれてしまう自分━━
改めて考えると、恥ずかしいやら申し訳ないやら何やらかんやら。
「どうしたの?そんなにジッと俺を見詰めて。」
「いや…お前って、ホント…人の理性を狂わせるヤツだなと改めて思って。」
「ええ?ガインは今、俺に理性を狂わされそうなの?」
「いや、今の俺がじゃなくて…世間一般的にと言うか…」
ベッド縁に座ったガインは背を丸めて俯き加減で自身の眉間を摘むと、ウーンと低く唸って「俺は急に何を言出してんだ」と呟いた。
その様子を見たキリアンが不思議そうに「え?」と声を出し、クスッと小さく笑う。
「俺が狂わせたいのはガインだけだから…他の誰かにどう見られているかなんて全く興味無いな。」
ガインの背にピタリと抱き着いたキリアンは両腕を前に回し、ガインを緩く抱き締めながら衣服の上から腹部を指先でツゥーっと撫でた。
「ね…もしかして…ガインから誘ってくれてる?」
背に張り付いたキリアンの甘い声が振動となって背中からガインの全身に広がるように響く。
全身を包むトロリとした甘い感覚の中、キリアンの指先はガインの敏感な部分を刺激して意識をキリアンに繋ぎ止める。
「ッッン……!」
衣服の上から乳首をカリっと軽く掻かれ、思わずブルッと身震いしたガインはキリアンから離れるように焦ってベッドから立ち上がった。
「違うわ!俺はただ…キリアンが疲れてんじゃないかと心配なのと…!
キリアンと親父が話していた事を、俺も分かるように詳しく聞きたいのと…!それから!
それから…この先…は……………。」
城内を歩いていた際にガインは父親に、孫を抱かせてやる事が出来ずにすまないと謝った。
自分が選んだ未来は、ヴィルムバッハ伯爵家の血を途絶えさせてしまうと。
父親は気にするなと言ってくれたが、それがキリアンの立場では国の頂点である皇族の血を途絶えさせてしまう事になる。
自分は父親を裏切ったのではと罪の意識に苛まれたが、キリアンとの愛を貫く事は、ベルゼルト皇族の治める国を愛した国民全てを皇帝に裏切らせる事になるのではないか━━と考えた。
その罪の意識は、どれ程自分達を…いやキリアンを苛む事になるのかと思うと胸が痛い。
「ガインは、悩みが尽きないと言うか、新しい悩み事を見つけるのが得意なんだね。
俺との事をミーシャに知られたくない気持ちが一番から始まって、次は将軍には知られたくないが一番になって…城ではもう皆が俺達の関係を知っているし隠す必要もバレる心配もない。。
今はナニ?何か悩み過ぎて上手く言葉に出せないほど混乱してる?」
キリアンが立ち上がったガインの手を握り、ユラユラ揺らしながら訊ねた。
そして少し首を傾げて柔らかく微笑む。
「それとも…今まで蓋をして考えないようにしていた事が一気に溢れちゃった?
ガインって、度々そんな感じになるよね。
後回しにしていた事を急に思い出して凄く慌てたりする。」
キリアンに握られた手を揺らされたガインは図星を指され黙り込んだ。
よく考えればキリアンも同じ悩みを持っていておかしくないのに、なぜこうも平然としていられるのかとモヤッとしたりもする。
「ガインの憂いは俺が全て払ってあげたいから言うけど…俺、疲れはさほど感じて無いんだよ。
将軍との話については、俺からちゃんと話すつもりでいたよ。
で、この先…とは国の事?いや、俺達の未来の話?
その答えも俺の中では既に決まってるんだよね。」
「……だったら、それを俺にも聞かせてくれよ……」
隠し事をされていた気がする不満と、将来への不安を孕んだ表情を隠さず、ガインは二人の間でユラユラと左右に揺れる繋がれた腕を見下ろしながら渋い顔でベッド縁に腰掛けるキリアンに言った。
キリアンはガインを見上げ、少し間を置いて答える。
「そうだね……ちゃんと話すよ。
…………ね、ガイン…キスしよう?」
━━は?
今までの話の流れを故意に断ち切られたのだと思ったガインは、不信感いっぱいの表情をキリアンに向けた。
「なんでそうなる。
そんでまた抱きたくなったとか言って、なし崩し的にコトを始める気か?
そうやって、今していた話題をはぐらかす気なのかよ。」
「誤魔化したり、はぐらかしたりするつもりはないよ。
ちゃんと話すつもりだって。
……正直に言えば、今すぐガインを抱きたいって気持ちもあるんだけれど…それは今、無しにしてキスだけしよ。」
いや、なんで?
ガインはキリアンを「嘘つけよ、コイツ」みたいな疑いの眼差しでジトっと見た。
興奮しただの我慢できなくなっただの何だかんだ理由をつけて、また繋がる気かよ…と思うと共に、だったらキス以上をされそうになったら無理矢理にでも自分が止めて、先ほどの話題まで再び引き戻してやればいい。
絶対になぁなぁにはさせん!━━そんな思いを胸に、ガインは「分かった」とキリアンにコクリと頷いた。
「じゃ、ガインもう一度隣に座って。」
ベッドの縁に腰掛けたキリアンが、自分の右側の縁をポンポンと叩く。
ガインは「お、おう」と返事をし、なぜかぎこちない動作でキリアンの隣に腰を下ろした。
ガインは、並んで座る左側のキリアンを強く意識してしまう自分に戸惑う。
キスなんて………もう数え切れないほどしている。
特に、事の最中には互いの濡れた舌先を延ばして喘ぐ声さえ食み、貪るような口付けを何度も交わす。
それを今さら改まって口付けをする事に何の意味が…?
そう思うのだが、その改まった事によって、ただの口付けに対して強く意識してしまい構えてしまう自分がいる。
「ガイン、こっち向いて。
ガインは背が高いから、少し身体を下げてね。」
「……わかった。」
ガインは平静さを装い、左側のキリアンの方に無表情な顔を向けた。
ベッドに左手をついて肩を下げ、顔の位置をキリアンの高さに合わせる。
同じ目線にあるキリアンがの顔が自分を優しく見詰めるのを真っ正面から見た瞬間、ガインは気恥ずかしさと緊張から思わず唇をキュッと強く結んでしまった。
ガインは自身の頬が赤く染まり唇をキュッと結んでいる自分の表情には気付いておらず、目だけ無表情を演じて平然としたフリをしながらキリアンを見詰め返した。
キリアンの右手がガインの頬に当てられ、細くしなやかな指先がガインの髪に触れ耳を撫でる。
「ガイン…」
羞恥心すら取っ払うような、互いの恥部をさらけ出すような淫らで深い交わりを幾度と無く重ねてきたのに、ガインは今、ただのキスをする前という、この瞬間が逃げ出したくなる程に恥ずかしい。
そしてまだキリアンの手しか自分に触れていないのに、心臓の音が外に漏れ出るのではないかと思う程に胸の動悸が激しくなった。
「ガイン…愛してるよ…」
その言葉にギュンっと心臓が締め付けられた。
ガインはもう、その言葉を疑ったりしない。
キリアンの全ての愛が自分一人に向けられている事を、逃げる事が叶わぬ程の愛で、がんじがらめにされている事を、ガインは意識せずとも心に深く刻み込まれている。
「キリアン……」
互いの唇の表面が触れて重なる。
浅く重なった唇の僅かに開いた隙間から漏れる生温かな吐息を交換した。
━━ああ…愛しい…愛しい…!好きだ…好きで堪らない……もっとキリアンが欲しい…
もっと奪われたい…キリアンに俺の全てを奪われたい…
涙が溢れそうだ…切なくて泣いてしまいそう…
キリアンは俺の全てだ…俺の全てだってキリアンだけのもんだ…━━
「ガイン……この先俺が何処へ行っても……どんな道を選んでも……一緒についてきてくれる?」
触れ合う唇を僅かに離し、キリアンが囁くようにガインに訊ねた。
触れ合う肌が離れて告げられたキリアンの言葉はガインの耳に届き、唇という肌の代わりにガインの心に触れる。
「ッッンなの、当たり前だろ!!!
俺の居場所は…もう、キリアンの隣だけなんだからよ!
隣なんて表現じゃ足りねぇ位だ、俺たちは互いの一部だから…欠けたら生きていけない…!
お前が選ぶなら、どんな道でも共に行く!
何処にだってついて行く!」
ガインはキリアンの身体を掻き抱く勢いで抱き締めた。
キリアンが戦争は起こらないと言うのならば、そうなのだろう。
ガインは万が一を懸念していたが、もうキリアンが決めた事を疑ったりしない。
ふと、ガインが気付いた。
キリアンは戦争を起こさない事を目標にはしていない。
戦争を回避するのはキリアンにとって、その先にある何かを手にするための道中でしかないのだ。
「嬉しいよガイン…。
ガインにも厳しい選択をせまる事になるかも知れないから…全てを詳らかにする事に躊躇してしまっていたんだけど…将軍との話についても詳しく教えるよ。
これは俺と将軍と言うよりは…お祖父様と将軍とで決めた事なんだ。
それで………」
膝に座らされる勢いでガインに抱き締められたキリアンが囁くようにガインにそう告げ、ガインが聞きたがっていた将軍との話を伝えようとしたが、ガインがキリアンの言葉を遮るように唇で唇を塞いだ。
どこかたどたどしく、ぎこちなく動かされたガインの舌先はキリアンの咥内でクチュクチュと動き回り、キリアンの舌先を誘い出したがる。
「ンンンっ……ん…ガイン…?熱烈だねぇ…
ね、こんな事したら……どうなるか分かってる?
俺、我慢できなくなるよ?」
「…俺がもう…我慢出来ない…キリアンが欲しい…
繋がりたい…ひとつになりたい…キリアンが欲しくて欲しくて………
俺の全てをキリアンに奪われたい……。」
「……ねぇガイン…それ本気?
ガインから奪われたいって言うなんて…俺、止まらなくなるよ?
理性をかなぐり捨てて堕ちてくれる?」
キリアンがガインの顎を掬い上げ、チロチロと舌先でガインの唇を舐めた。
先ほどまでの優しげな微笑みとは違う、今のキリアンの微笑みは悪魔の様に蠱惑的で美しく、艶めかしく動く舌先が獲物を狙う蛇のようだ。
奪い尽くされて食い尽くされて、キリアンとならどこまでも共に堕ちて往きたい。
「ああ…もう、どこまでも………。」
「まだ夜になってもないのにガインから…ふふっ
部屋に誰か訪ねて来たって、止めないからね?」
キリアンがガインの後ろに右腕を回して頭を支え、指先でうなじを撫でながら唇を深く重ねる。
左手をガインの股の間に運び、既に膨張したトラウザーズの頂きを慰めるように撫で回した。
曖昧な刺激はガインには焦れったくもどかしく、ガインはキリアンの手に下肢を擦り寄せる。
「もっと強く…服の上からじゃなく直に触れてくれ…
愛を与えるより、俺を奪い尽くして欲しい…
優しさよりも傲慢に、誰が見てもキリアンの物だと分かる程の烙印を、この身に刻まれたい…。」
「どうしたのガイン…俺を狂わせる気?
ふふっ…ホント、堪らないよ……どれだけ暴いても暴き尽くせない、毎回俺の知る極上のガインが上書きされていく。」
キリアンはベッドの縁に座ったガインの上半身をベッドの上に押し倒した。
キリアンはベッドに深く沈んだガインの巨体を見下ろしながら、ガインのトラウザーズを膝下までずり下げると片方の足だけを抜き、その足を上に高く上げさせる。
「…キリアン…」
小声で名を呼び、恥じらうガインの後孔が現れるとキリアンがニッと顔を歪ませて笑った。
「…堪らないなぁ…いつ見ても美味そうで…
蛇みたいにかま首をもたげて、早く食い破りたいって急かされる。」
既に臨戦態勢に入ったキリアンの雄根は、先端の小さな口から喰わせろとせがむように白濁色の涎をタラリと垂らした。
キリアンは垂らした涎を淫靡な結び目にヌルヌルと塗りたくり、クチュクチュと足踏みするように入り口を数回ノックする。
「ああ、もう限界だ。一回挿れるよ?」
「うぁ……ああああッ!!!!」
きつく結ばれた口を強引にクパァと押し広げ、キリアンの雄茎がガインの内側に完全に埋まった。
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筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。
※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。