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初恋と初欲情。可愛い子ぶる事をラーニング。
「陛下!冗談が過ぎますぞ!皆の前で、あのような戯れを!」
ガインを食堂に残して席を立ったキリアンは皇帝の衣装を身に着ける為に、皇帝専用の衣装室へと向かう。
その後をついて来た小柄な老人が、キリアンを嗜める様にくどくどと何かを言っているのだが…。
キリアンはその殆どを笑いながら聞き流していた。
「ははは、いいじゃないか、あれ位。爺やは昔から元気でうるさいな。」
「良くありません!あれでは皇帝陛下として、皆に示しがつきません!そんなんだから、陛下は女みたいで頼りないとか言われるんです!!」
「ははは、勝手に言わせておけばいい。」
「こんな皇帝では頼りない!すぐ皇帝の座を奪われるのではないかと、皆が危惧しているのです!!皇帝の座を誰かに奪われても良いと思ってらっしゃるのですか!?陛下にとって皇帝とは、そのように軽い………」
足早に衣装室に向かうキリアンの背中を追っていた小さな爺やが、急に立ち止まった為にぶつかりそうになったキリアンの背を見上げる。
「軽い?俺にとって、この皇帝の座を手にいれる事は、全てのスタートラインだったんだ。それを奪う?奪おうとするヤツがいる?」
幼い頃からキリアンを見て来た筈の爺やが、初めて見るキリアンの表情に息を呑む。
いつもニコニコと、争い事を好まない穏和な姿が常だった。
そのキリアンが初めて見せた怒りの表情。
ゆっくりと振り返ったキリアンは、背筋が凍える程に静かで冷たい表情を見せ、なのにチリチリと焦げ付く様に激しい怒りの感情を投げつけて来る。
「へ、陛下……?」
「この座を手に入れるまで、俺がどれだけ我慢してきたと………その俺から皇帝の座を奪う、そんな事を口にする奴が居るのなら教えろ。即刻、首を斬り落とすから。」
「……た、例えの話しに御座います。差し出がましい事を…申し訳ありません……。」
これ以上、キリアンと目を合わせているのが苦しくなった爺やは頭を下げた。
冷や汗が出る。
━━よくよく考えるならば、此度の戦には陛下御自らも戦場に赴いて剣を振るっていた。
武神と呼ばれたガインに背を守らせて戦場に立つ陛下は、とても楽しげであった……。
そして、その乙女の様な容姿からは想像つかない程に陛下の剣は容赦無く、強かった。━━━
「ははは、いいんだ爺や。俺も悪かった。
だが、俺にとって皇帝の座を手に入れる事は、俺が一番望むモノを手にするには必須だったんだ。
だから、軽く思ってるのじゃないかとか、奪うとか言われると……許せないんだよな。」
キリアンは再び穏やかな表情を見せて微笑んでいる。
だが、爺やにはキリアンの目を見る事が出来ない。
「……はい、心得ました……。」
「うん、じゃあ着替えて玉座の間に向かうかな。国を立て直していく話しを進めなきゃならないしね。」
一人、衣装室に向かうキリアンの背を見送った爺やが、止まりかけていた呼吸をし始める様にブハッと息を吐いた。
「戦場で戦ったお姿を忘れておったわ。
なんと恐ろしい表情を今まで隠しておられたのか…
今まで、何かが欲しい等言った事の無かった陛下が、あれだけ執着するモノとは何なのであろうか………
それにしても陛下、ご自身を俺って呼ぶとは知らなんだ…。」
▼
▼
▼
━━15年前━━
皇帝の私室では、いつもの様にグレアム皇帝と側近のガインが酒を酌み交わしていた。
7歳のキリアンは、いつもは固い表情の二人がこの部屋の中でだけ見せる、砕けた素のままの姿を見るのが大好きだった。
「また来たのか!キリアン!さぁ、おいで!父の膝に座りなさい!!」
良い加減に酔ったグレアムが、パンパンと膝を叩いてキリアンを呼ぶが、キリアンはガインの方に向かう。
「父上は僕に臭いチーズばかり食べさせようとするからイヤです!」
キリアンは大きなガインの膝に乗ろうとして、よじ登り始めた。
椅子に座るガインだが筋肉の付いた大腿部は太く硬く、その上に乗るとなると中々に高い。
そうやって懸命に乗ろうとしていると、いつもガインの腕がのびて来てキリアンを膝に座らせてくれた。
キリアンは、この大きくて優しい熊さんが大好きだった。
「ガイン!ガイン!フルーツ!フルーツ!」
膝に座らせて貰った途端、ひな鳥の様に口を開けて果物をねだるキリアンの口に、仕方ないなと笑いながらガインがフルーツを運んでくれる。
キリアンは、ガインの困ってないのに困ったふりをする笑顔も大好きだった。
太い眉の尻が下がり、だが嬉しそうに、大きな手の指先に小さな干しブドウを摘まんでキリアンの口の前に持って来る。
「仕方ないヤツだな、グレアムに似て我が儘なんだからよ。ホラ、あーん。」
「俺に似て我が儘は余計だ。まったく…。」
小さなキリアンが大きな口を開け、ガインの指先にある干しブドウをパクンと口に含む。
「おいおい!俺の指ごと食うなよ!ははは!…は……ッン」
小さな干しブドウだけ咥えるのが難しく、キリアンはガインの指ごと口に含んだ。
口の中で干しブドウだけを舌に乗せたが、ガインの指が甘かったので、その日はそのままチュウと指に吸い付いた。
その際にガインが出した声と、ピクッと僅かに強張った身体、目の下と耳が微かに赤くなった姿は、幼いキリアンに初めて性的な興奮を与えた。
「がはははは!相変わらず、くすぐったいのに弱いのな!痛みには強いクセに!」
「しゃあねぇだろ!なんか知らんが、苦手なんだよ!痛みは耐えれるが、これは中々難しいんだって!」
キリアンは、ガインの膝の上で干しブドウを口に含んだままの状態で固まっていた。
何が自分の中で起こったのか分からない。
ただ、心臓が早鐘を打つように激しく鳴り、下半身に熱が集まるのが分かる。
そして、初めて見たガインの姿が堪らなく愛おしく、ぞくぞくする。━━
キリアンは恋に落ちた。
「キリアン、コイツはなぁガキの頃からこんなんでよ、近所の仔犬を見に行った時なんか懐かれ過ぎて、顔中ベロベロに舐められて、足腰立たなくなっちまいやがんの。
それから犬嫌いになった。」
楽しそうに親友の弱点を暴露する父の言葉に、試したい!と顔を輝かせたキリアンは、ガインの膝の上で膝立ちになり、首に手を掛けて上体を屈ませた。
「おい、コラコラ、何をすんだ何を。膝の上から落ちるぞ」
「ガイン、父上の言った事、本当?…ねぇ」
屈ませたガインの、赤く染まったままの耳に唇を寄せて小さく囁いてから、その耳に唇だけでハム、とキリアンが柔く噛み付いた。
「くっ…フッ…!だあ!やめろやめろ!お前、息子に余計な事を教えんな!馬鹿!親子して俺をオモチャ扱いすんじゃねー!」
顔中すべて真っ赤になったガインが、涙目でテーブルを叩いて爆笑中のグレアムに抗議する。
「キリアンもな、人の嫌がる事はするんじゃない。もう膝に乗せてやらんぞ?」
「ごめんなさい、もうしません……フルーツ食べられなくなるのヤダもん…。」
キリアンは自身の感情を隠した。
ガインに執着している事を危ぶまれ、ガインと近付く機会を減らされたくない。
だから、あくまで目的はフルーツとして酒宴の都度ガインの膝の上に乗る事を選んだ。
キリアンはその後も何度も父とガインの酒の席に顔を出しては、ガインの膝に乗り、フルーツが好きな可愛い子供を演じ続けた。
「僕もガインと一緒にお酒が飲みたいな…。フルーツいっぱい食べられるでしょ?」
「酒?酒は、まぁだ早いな!キリアン!そうだな、キリアンが皇帝になったら祝いに一緒に飲んでやろう!」
「おいおいガインよー、そりゃ俺が死んだ後って意味か?俺が死ななきゃキリアンは皇帝にならんだろうが。」
飲んだくれ親父と化したグレアムが、愛息子のキリアンがガインにばかり懐くのが面白くないと、ブーブー文句を垂れる。
「アホか、お前みたいなアホは、キリアンが立派な大人になったら隠居だ、隠居!
キリアンに皇帝の座を譲ってお前は田舎で飲んだくれてろ。」
良い具合に飲んだくれている大人二人を見ながら、キリアンはガインの膝の上でガインを見上げた。
「僕が皇帝になったら、父上の側近をしているガインは僕の側近になるの?」
「まぁ、そうだな!グレアムがど田舎に隠居したら、俺の主君はキリアンだな!俺はキリアンのモノって事だ!」
「お前ら、俺の隠居で話を進めるんじゃない!不敬罪で仔犬100匹ペロペロの刑に処すぞ!ダハハハハ!!」
すっかり出来上がって爆笑中の酔っ払い二人を見ながらキリアンは、ガインの言った一言が頭から離れなくなっていた。
━━━僕が皇帝になったら、ガインは僕のモノ。━━━
「…………じゃあ、僕、立派な皇帝にならなきゃね…勉強もして、剣の稽古もして強くなって……」
「あ?だったらキリアン、ガインに剣技を含む、武芸全般教えて貰え。もうそろそろ剣の師も探さなきゃと思っていた所だしな。ちょうどいい。」
「おい、グレアム…キリアンには、剣に慣れるまでは優しい師を探すって言ってなかったか?俺は優しく出来んぞ。」
「キリアンの方から剣の稽古をしたいなんて言うと思わなかったからな。本人から言うのであれば、親としては最初から最高の師をつけてやりたくなるだろう?」
「優しくなくてもいいです!剣を教えて下さい!ガイン…ううん、師匠!!」
「気がはえーよ!!!まだ師匠になってねぇ!」
「ホラ!ヤル気満々だよ!さすが俺の可愛い息子!」
酔っ払い二人にニコニコと、子供らしい無邪気な笑顔を見せながらキリアンは、頭の中でゆっくりと計画を組み立てていった。
キリアンはその後も何度も酒の席に顔を出して、ガインに子供らしく甘えながら何度も念を押すように繰り返し、自分が皇帝になる話しをした。
その際に必ず、皇帝になったらガインが僕の側近だからね?と、僕のモノだからね?と言い続ける。
ガインもグレアムも、酔っ払いながら「ハイハイ」なんて子供の語る可愛い夢を聞いてご満悦な顔をしていた。
「眠くなっちゃった…じゃあ、僕もう寝ますね?父上、師匠おやすみなさい!」
皇帝の私室を出たキリアンは、すぐに自室に戻り勉強に励む。
小さな灯りを灯してあらゆる知識を取り入れようとした。
すべては皇帝になる為だけに。
8歳になる頃にはさすがに膝に乗り甘える姿を見せる事を控えた。
本当なら、いつまでも幼い子供を演じてガインの膝に乗りたかったが、皇帝という高みの更に上に目的がある以上、そこで足踏みをする時間が惜しかった。
「僕は早く皇帝として相応しい大人にならなければ……父上に隠居して貰えるように。」
全てはガインを自分だけのモノにする為に。
この時8歳のキリアンに、確固たる目的が出来た。
ガインを食堂に残して席を立ったキリアンは皇帝の衣装を身に着ける為に、皇帝専用の衣装室へと向かう。
その後をついて来た小柄な老人が、キリアンを嗜める様にくどくどと何かを言っているのだが…。
キリアンはその殆どを笑いながら聞き流していた。
「ははは、いいじゃないか、あれ位。爺やは昔から元気でうるさいな。」
「良くありません!あれでは皇帝陛下として、皆に示しがつきません!そんなんだから、陛下は女みたいで頼りないとか言われるんです!!」
「ははは、勝手に言わせておけばいい。」
「こんな皇帝では頼りない!すぐ皇帝の座を奪われるのではないかと、皆が危惧しているのです!!皇帝の座を誰かに奪われても良いと思ってらっしゃるのですか!?陛下にとって皇帝とは、そのように軽い………」
足早に衣装室に向かうキリアンの背中を追っていた小さな爺やが、急に立ち止まった為にぶつかりそうになったキリアンの背を見上げる。
「軽い?俺にとって、この皇帝の座を手にいれる事は、全てのスタートラインだったんだ。それを奪う?奪おうとするヤツがいる?」
幼い頃からキリアンを見て来た筈の爺やが、初めて見るキリアンの表情に息を呑む。
いつもニコニコと、争い事を好まない穏和な姿が常だった。
そのキリアンが初めて見せた怒りの表情。
ゆっくりと振り返ったキリアンは、背筋が凍える程に静かで冷たい表情を見せ、なのにチリチリと焦げ付く様に激しい怒りの感情を投げつけて来る。
「へ、陛下……?」
「この座を手に入れるまで、俺がどれだけ我慢してきたと………その俺から皇帝の座を奪う、そんな事を口にする奴が居るのなら教えろ。即刻、首を斬り落とすから。」
「……た、例えの話しに御座います。差し出がましい事を…申し訳ありません……。」
これ以上、キリアンと目を合わせているのが苦しくなった爺やは頭を下げた。
冷や汗が出る。
━━よくよく考えるならば、此度の戦には陛下御自らも戦場に赴いて剣を振るっていた。
武神と呼ばれたガインに背を守らせて戦場に立つ陛下は、とても楽しげであった……。
そして、その乙女の様な容姿からは想像つかない程に陛下の剣は容赦無く、強かった。━━━
「ははは、いいんだ爺や。俺も悪かった。
だが、俺にとって皇帝の座を手に入れる事は、俺が一番望むモノを手にするには必須だったんだ。
だから、軽く思ってるのじゃないかとか、奪うとか言われると……許せないんだよな。」
キリアンは再び穏やかな表情を見せて微笑んでいる。
だが、爺やにはキリアンの目を見る事が出来ない。
「……はい、心得ました……。」
「うん、じゃあ着替えて玉座の間に向かうかな。国を立て直していく話しを進めなきゃならないしね。」
一人、衣装室に向かうキリアンの背を見送った爺やが、止まりかけていた呼吸をし始める様にブハッと息を吐いた。
「戦場で戦ったお姿を忘れておったわ。
なんと恐ろしい表情を今まで隠しておられたのか…
今まで、何かが欲しい等言った事の無かった陛下が、あれだけ執着するモノとは何なのであろうか………
それにしても陛下、ご自身を俺って呼ぶとは知らなんだ…。」
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━━15年前━━
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7歳のキリアンは、いつもは固い表情の二人がこの部屋の中でだけ見せる、砕けた素のままの姿を見るのが大好きだった。
「また来たのか!キリアン!さぁ、おいで!父の膝に座りなさい!!」
良い加減に酔ったグレアムが、パンパンと膝を叩いてキリアンを呼ぶが、キリアンはガインの方に向かう。
「父上は僕に臭いチーズばかり食べさせようとするからイヤです!」
キリアンは大きなガインの膝に乗ろうとして、よじ登り始めた。
椅子に座るガインだが筋肉の付いた大腿部は太く硬く、その上に乗るとなると中々に高い。
そうやって懸命に乗ろうとしていると、いつもガインの腕がのびて来てキリアンを膝に座らせてくれた。
キリアンは、この大きくて優しい熊さんが大好きだった。
「ガイン!ガイン!フルーツ!フルーツ!」
膝に座らせて貰った途端、ひな鳥の様に口を開けて果物をねだるキリアンの口に、仕方ないなと笑いながらガインがフルーツを運んでくれる。
キリアンは、ガインの困ってないのに困ったふりをする笑顔も大好きだった。
太い眉の尻が下がり、だが嬉しそうに、大きな手の指先に小さな干しブドウを摘まんでキリアンの口の前に持って来る。
「仕方ないヤツだな、グレアムに似て我が儘なんだからよ。ホラ、あーん。」
「俺に似て我が儘は余計だ。まったく…。」
小さなキリアンが大きな口を開け、ガインの指先にある干しブドウをパクンと口に含む。
「おいおい!俺の指ごと食うなよ!ははは!…は……ッン」
小さな干しブドウだけ咥えるのが難しく、キリアンはガインの指ごと口に含んだ。
口の中で干しブドウだけを舌に乗せたが、ガインの指が甘かったので、その日はそのままチュウと指に吸い付いた。
その際にガインが出した声と、ピクッと僅かに強張った身体、目の下と耳が微かに赤くなった姿は、幼いキリアンに初めて性的な興奮を与えた。
「がはははは!相変わらず、くすぐったいのに弱いのな!痛みには強いクセに!」
「しゃあねぇだろ!なんか知らんが、苦手なんだよ!痛みは耐えれるが、これは中々難しいんだって!」
キリアンは、ガインの膝の上で干しブドウを口に含んだままの状態で固まっていた。
何が自分の中で起こったのか分からない。
ただ、心臓が早鐘を打つように激しく鳴り、下半身に熱が集まるのが分かる。
そして、初めて見たガインの姿が堪らなく愛おしく、ぞくぞくする。━━
キリアンは恋に落ちた。
「キリアン、コイツはなぁガキの頃からこんなんでよ、近所の仔犬を見に行った時なんか懐かれ過ぎて、顔中ベロベロに舐められて、足腰立たなくなっちまいやがんの。
それから犬嫌いになった。」
楽しそうに親友の弱点を暴露する父の言葉に、試したい!と顔を輝かせたキリアンは、ガインの膝の上で膝立ちになり、首に手を掛けて上体を屈ませた。
「おい、コラコラ、何をすんだ何を。膝の上から落ちるぞ」
「ガイン、父上の言った事、本当?…ねぇ」
屈ませたガインの、赤く染まったままの耳に唇を寄せて小さく囁いてから、その耳に唇だけでハム、とキリアンが柔く噛み付いた。
「くっ…フッ…!だあ!やめろやめろ!お前、息子に余計な事を教えんな!馬鹿!親子して俺をオモチャ扱いすんじゃねー!」
顔中すべて真っ赤になったガインが、涙目でテーブルを叩いて爆笑中のグレアムに抗議する。
「キリアンもな、人の嫌がる事はするんじゃない。もう膝に乗せてやらんぞ?」
「ごめんなさい、もうしません……フルーツ食べられなくなるのヤダもん…。」
キリアンは自身の感情を隠した。
ガインに執着している事を危ぶまれ、ガインと近付く機会を減らされたくない。
だから、あくまで目的はフルーツとして酒宴の都度ガインの膝の上に乗る事を選んだ。
キリアンはその後も何度も父とガインの酒の席に顔を出しては、ガインの膝に乗り、フルーツが好きな可愛い子供を演じ続けた。
「僕もガインと一緒にお酒が飲みたいな…。フルーツいっぱい食べられるでしょ?」
「酒?酒は、まぁだ早いな!キリアン!そうだな、キリアンが皇帝になったら祝いに一緒に飲んでやろう!」
「おいおいガインよー、そりゃ俺が死んだ後って意味か?俺が死ななきゃキリアンは皇帝にならんだろうが。」
飲んだくれ親父と化したグレアムが、愛息子のキリアンがガインにばかり懐くのが面白くないと、ブーブー文句を垂れる。
「アホか、お前みたいなアホは、キリアンが立派な大人になったら隠居だ、隠居!
キリアンに皇帝の座を譲ってお前は田舎で飲んだくれてろ。」
良い具合に飲んだくれている大人二人を見ながら、キリアンはガインの膝の上でガインを見上げた。
「僕が皇帝になったら、父上の側近をしているガインは僕の側近になるの?」
「まぁ、そうだな!グレアムがど田舎に隠居したら、俺の主君はキリアンだな!俺はキリアンのモノって事だ!」
「お前ら、俺の隠居で話を進めるんじゃない!不敬罪で仔犬100匹ペロペロの刑に処すぞ!ダハハハハ!!」
すっかり出来上がって爆笑中の酔っ払い二人を見ながらキリアンは、ガインの言った一言が頭から離れなくなっていた。
━━━僕が皇帝になったら、ガインは僕のモノ。━━━
「…………じゃあ、僕、立派な皇帝にならなきゃね…勉強もして、剣の稽古もして強くなって……」
「あ?だったらキリアン、ガインに剣技を含む、武芸全般教えて貰え。もうそろそろ剣の師も探さなきゃと思っていた所だしな。ちょうどいい。」
「おい、グレアム…キリアンには、剣に慣れるまでは優しい師を探すって言ってなかったか?俺は優しく出来んぞ。」
「キリアンの方から剣の稽古をしたいなんて言うと思わなかったからな。本人から言うのであれば、親としては最初から最高の師をつけてやりたくなるだろう?」
「優しくなくてもいいです!剣を教えて下さい!ガイン…ううん、師匠!!」
「気がはえーよ!!!まだ師匠になってねぇ!」
「ホラ!ヤル気満々だよ!さすが俺の可愛い息子!」
酔っ払い二人にニコニコと、子供らしい無邪気な笑顔を見せながらキリアンは、頭の中でゆっくりと計画を組み立てていった。
キリアンはその後も何度も酒の席に顔を出して、ガインに子供らしく甘えながら何度も念を押すように繰り返し、自分が皇帝になる話しをした。
その際に必ず、皇帝になったらガインが僕の側近だからね?と、僕のモノだからね?と言い続ける。
ガインもグレアムも、酔っ払いながら「ハイハイ」なんて子供の語る可愛い夢を聞いてご満悦な顔をしていた。
「眠くなっちゃった…じゃあ、僕もう寝ますね?父上、師匠おやすみなさい!」
皇帝の私室を出たキリアンは、すぐに自室に戻り勉強に励む。
小さな灯りを灯してあらゆる知識を取り入れようとした。
すべては皇帝になる為だけに。
8歳になる頃にはさすがに膝に乗り甘える姿を見せる事を控えた。
本当なら、いつまでも幼い子供を演じてガインの膝に乗りたかったが、皇帝という高みの更に上に目的がある以上、そこで足踏みをする時間が惜しかった。
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