8 / 124
我慢の限界。
━━クッソ恥ずかしい!!…が……嫌じゃなかったんだよなぁ……なぁんでだろ?━━
「じゃ、ねえぇぇ!!!」
ガインは早朝から自室のベッドの上で、うつぶせ寝のまま拳で何度もベッドを叩いていた。
一晩色んな事を考えながら、そのまま眠りにつき朝を迎えたのだが、目が覚めた途端、昨夜の記憶がフラッシュバックされてしまった。
冷静になって考えてみれば自身の言動もおかしかったが、何より思考がおかしい。
「おかしいだろう!陛下の大事な所を握りながら、俺のイチモツを陛下に握らせて、嫌じゃなかったとか、気持ち良かったとか思っちまうとか!!」
枕に顔を押し付けて、大きな声が外に漏れない様に枕に声を吸わせる。
その状態で、散々ベッドを叩いて暴れてからクールダウン。
落ち着きを取り戻したガインは仰向けになり、ゆっくりと昨日の事を思い出していった。
ガインは性経験が無い。
世間では、少年兵は先輩兵士のそういう対象になる事が無くはないと聞いてはいたが、ガインは若い頃から他を圧倒するような体躯の持ち主であったし、当時王太子だったグレアムと親友だった事もあり、誰もガインを性処理の相手には選べなかった。
それなりの年になった頃に、女性や見目麗しい少年や青年がガインを「お慰め致します」と寝所に来る事もあったが、ガインはそれらを「断る!」と一切相手をしなかった。
それなりの年になるまで性経験をしなかったゆえか、最初の相手は心底好きになった相手がいいと、乙女の様な幻想を持ち始め、だったら妻になった女性と……
と思っていたのだが縁に恵まれず。
この歳まで童貞という大賢者ばりの熊が出来上がってしまった。
自慰をした事は、あるにはあるが……
なにしろ想像力が乏しく、その対象とするべき「オカズ」が思い当たらない為に、なんとなく的な自慰しか経験が無い。
回数自体少なく、握った手を上下させるしか方法を知らない。
妄想の中で、ガツガツと色んなシチュエーションでガインを食いまくっていたキリアンとは自慰の経験にもかなり差が出る。
だから、今になって思った。
「俺、本当に、キリアンを抱こうとしたのか?」
キリアンは美しい。
誰が見てもキリアンは、女性に喩えられる程に美しい。
ガインに至っては、弟子であった可愛さと、敬愛すべき皇帝陛下というオプションが付いてしまい、美しい女性を遥か越えて、キリアンを女神の様だと思っている。
崇拝対象にも近い感情なら持ってないとは言わないが、性的に欲情するなど…。
「……いかん、分からん。」
考えるのが苦手なガインはベッドから起き上がり、フラリと部屋の外に出た。
昨夜遅くまで中庭の警らの仕事をしていたガインは今日は非番で、ベッドから出たままの姿で兵士達の為の食堂に向かう。
朝食の時間をとうに過ぎた食堂はガランとしており、昼食の仕度をする料理人のバネッサと、料理人見習いの青年の二人だけが居た。
「アラ!ガイン隊長!どうしました!?今日は非番でしょ!?」
料理人のバネッサは50歳の肥えた女性で、農家を営んでいる夫が居る。
夫が城の皇族、貴族用の厨房に野菜を届け、余った野菜や傷みかけの野菜を引き取り妻のバネッサに届け、バネッサが兵士達のお腹を満たす料理を作るのだ。
見掛けた事は無いが、息子が精肉店を営んでるらしく、兵士用の肉はバネッサの夫が余ったくず肉を届けてくれている。
「腹が減ってな、目が覚めちまった。何か軽く腹を満たすもんないかな?」
「騎士様、僕の作ったサンドイッチですが良かったらどうぞ。」
料理人見習いの青年が、木の皿に乗った肉厚のサンドイッチをガインに差し出した。
「おお、すまん!これは旨そうだ!」
差し出されたサンドイッチに、その場でガブリとかぶり付く。
豪快な食べっぷりに、バネッサと青年がホッコリと微笑んだ。
「……騎士様、シャツのボタンが……」
「あ?」
青年の指摘に、サンドイッチを食べながらガインが自身の衣服を見下ろす。
騎士の制服だけ脱いで、白いシャツとトラウザーズ姿で寝てしまったガインは、ボタンが全て無くなったシャツ姿でその場に立っていた。
喉元から胸板、腹筋、臍まで、毛に覆われた肌が見えている。
「お!おわ!!」
「あっはっは!年頃の娘さんじゃあるまいし、何を照れてんだい!隊長さん!」
兵士達が上半身裸のままで訓練所や食堂をうろつく事も珍しくはない。
ガインもよく裸で食堂をうろつく、そういう事をしているのだが、自身の肌を見た瞬間昨夜の事を思い出して思わず前を隠してまった。
単純で正直者なガインは、それがそのまま焦りとして顔に出てしまい、肌を晒していた事に取り乱した様な態度を取ってしまった。
「い、いやぁなに、ちょっと驚いてしまってな…ははは。」
「……騎士様、僕がボタン、付けて差し上げましょうか?」
青年の手がのび、ガインのシャツの端を摘まむ。
ガインは青年と目を合わせ、少し黙りこんでしまった。
「いや、いーわ。このシャツは、このままで。ありがとうな、坊主!サンドイッチ旨かった!見習い、頑張れよ!?」
ガインはニカッと歯を見せて微笑み、青年の頭をぽんぽんと叩いた。
「もう一眠りするわ、バネッサ邪魔をしたな。」
手を振るバネッサと青年のいる食堂を後にし、ガインは自室の方に向かった。
非番の日は寝て過ごす事が多い。
特に昨日は、色々考え過ぎて熟睡した感じがしない。
自室のドアを開けながら、ガインが大きなアクビをした。
「くぁあ……もう、一眠り……。」
バンッッ!!!
部屋に入った途端、強くドアが閉められた。
ドアを背にして立ち尽くしたガインの両肩の上に腕が延び、ガインは狭い檻に囚われてしまった。
ドアドン。扉ドン状態。
「…………へ、陛下……?」
囚われた状態で、自身の目線より少し下にあるキリアンの顔を見下ろす。
キリアンはキツイ目付きでガインを睨め上げている。
「な、何か知らんが…怒ってます?…陛下…。」
キリアンがガインに対して怒りをあらわにする時は
子どもの様に拗ねた顔をする事が多い。
時折、スウっと冷たさを帯びて本当の怒りをあらわにする事もあるが……
皇帝になってからのキリアンは、長く共に居たガインですら見た事の無い表情をたくさん見せる様になっていた。
今、目の前に居るキリアンの表情もその一つだ。
戦場に居る時でさえ見せなかった、強い怒り。
冷たく凍り付いた表情で、焦げ付く程に熱く激しい怒りを身に纏う。
「………お前はなぜ、俺以外の者に色目を使う。」
色目!?色目を使う!?色目って何だ!?
「な、何の事だ!?俺は色目なんて使っちゃおらん!」
そもそもが、色目を使う相手なんぞおらん!!
「お前は俺の物だ!!そう、約束しただろう!!」
「ちょ!ちょっと待て!!色々、待て!!」
頭の中が整理出来てない。
色目を使う?色目を使った?俺が?誰に?それ、いつよ。
それに俺、キリアンの物……いや、ある意味それは間違いではない。
我が身は魂共々、皇帝陛下に忠誠を誓い、捧げた。
俺だけではない。
この国の、特にこの城の臣下、側近、兵士全てがそうであろう。
…………未婚の者は、陛下の許し無く恋をしてはいけないとか?
いやいや、いくらなんでも。
ますます頭が混乱してくる。
「と、とりあえずだな、俺は確かにキリアン、お前のモンだ!だがな、俺は色目を使った記憶なんざ無えし、お前が何でそんなに怒ってんのか分かんね……」
ガインの頭にキリアンが手を当て強引に顔を下に向けられ、
ガインの言葉を遮る様にキリアンの口が覆い被さった。
唇が触れるだけでは足りないと、キリアンの口が噛み付く様にガインの口を覆い、口の中の空気さえ奪おうとする。
口を閉じれず口内の唾液を飲み込めない辛さから咽頭を上げ萎縮したガインの舌先が、キリアンの舌と唇で噛み付く様に引き摺り出される。
呼吸がままならない、唾液が飲み込めない、かなり苦しい。
やっと口が解放されたガインは荒い呼吸で戸惑った状態のまま、困った様に眉尻を下げてキリアンを見下ろす。
「はぁはぁ…ッ…キリアン…どうした?何をそんな…焦って…んだ…」
ガインは自身の口にした問いを耳にして「え?焦って?」と自問する。
ガインはキリアンに、何をそんな怒っているんだと尋ねるつもりだった。
だが、考えるより先に口から出たキリアンへの問いは、焦っているのか?だった。
「もう我慢ならないし、待てない!!」
ガインの肩が掴まれ、大きな身体が部屋の中に引っ張られる。
キリアンは細身で、衣装を身に付けて居ると華奢に見えて分かりにくいが、その身体には無駄無く筋肉が付いている。
騎士として見事な体躯をしている彼は、武芸にも秀でており、力もある。
そのキリアンに、不意をつかれて引き回されたガインの大きな身体は、そのままガインの部屋にある小さなテーブルの上にうつ伏せに押し付けられた。
「何しやがる!キリアン!」
ガインの胴体しか乗らない小さなテーブルにうつ伏せに寝た背中を上から押さえつけられて、宙に浮いたままのガインの両腕は掴まる場所が無く身体を起こす事が出来ない。
そして、ここまでの状態になれば鈍いガインでも、その後に続く行為に想像がつく。
想像がつくのだが、そんな事は有り得ないだろ?とも思わずにはいられない。
世間で噂される、美貌の皇帝は女役だとの心無い声をたくさん聞いて来た。
同時に、美しい皇帝が誰かを愛するならば、それはよほど美しい者なのであろうと。
ガインの中でも「そうかもな」位に思っていたのだが……
うつ伏せにされたままで、トラウザーズの腰部分が掴まれ、そのままズルッとずり下げられた。
「ま、待て!キリアン!誤解だ!俺は誰にも色目なんか……ぐあああっ!!」
何の前触れも無しに、後ろから杭が打ち込まれた。
強く結ばれた秘肉の結び目を、開き易い様にほぐす事も無く、傍若無人な行いにより乱暴に侵略されてしまった。
「っ……てぇ…ッキリアン…何して……」
声を出すのも辛い。ガインは宙に浮いた両手に拳を握り、裂かれた痛みと、初めて経験した内側からの圧迫の辛さに耐える。
キリアンは何も語らず、ゆっくりと埋めた杭を引き抜きかけ、再び深くガインの中に埋め込んだ。
「うくっ!!ッた、な、き、キリアン!!ってぇ…!」
その工程が何度も繰り返される。
受け入れる器の方が馴染んで来て抵抗が少なくなったのか、ガインの感じる痛みは消えないが抽挿の速度が増す。
やがて、ズチュズチュと硬い肉が粘膜を擦りながら出入りする音が聞こえる様になった。
「っは…あっ…くっ…!ってぇ…」
ガインは痛みを堪えながら、背後の見えないキリアンの様子をうかがう。
今まで、分からなかった事が少しずつ分かって来た。
キリアンが何を欲しがっていたのか、何を自分に求めていたのか。
そんな事があるわけ無いと否定するのは容易いし、楽だ。
だが、それではいつまで経っても答えを知る事が出来ない。
「………しょ………」
繋がったままでガインの背中にキリアンが覆い被さる。
「………師匠………好きなんです……好きなんです………」
背中越しに聞こえたキリアンの声は、か細く消え入りそうな程に弱々しい声だった。
「もう……我慢できない……辛い……………」
痛みに耐え、うつ伏せのまま拳を握っているガインが苦笑した。
「……俺より痛そうな声を出しやがって………」
「じゃ、ねえぇぇ!!!」
ガインは早朝から自室のベッドの上で、うつぶせ寝のまま拳で何度もベッドを叩いていた。
一晩色んな事を考えながら、そのまま眠りにつき朝を迎えたのだが、目が覚めた途端、昨夜の記憶がフラッシュバックされてしまった。
冷静になって考えてみれば自身の言動もおかしかったが、何より思考がおかしい。
「おかしいだろう!陛下の大事な所を握りながら、俺のイチモツを陛下に握らせて、嫌じゃなかったとか、気持ち良かったとか思っちまうとか!!」
枕に顔を押し付けて、大きな声が外に漏れない様に枕に声を吸わせる。
その状態で、散々ベッドを叩いて暴れてからクールダウン。
落ち着きを取り戻したガインは仰向けになり、ゆっくりと昨日の事を思い出していった。
ガインは性経験が無い。
世間では、少年兵は先輩兵士のそういう対象になる事が無くはないと聞いてはいたが、ガインは若い頃から他を圧倒するような体躯の持ち主であったし、当時王太子だったグレアムと親友だった事もあり、誰もガインを性処理の相手には選べなかった。
それなりの年になった頃に、女性や見目麗しい少年や青年がガインを「お慰め致します」と寝所に来る事もあったが、ガインはそれらを「断る!」と一切相手をしなかった。
それなりの年になるまで性経験をしなかったゆえか、最初の相手は心底好きになった相手がいいと、乙女の様な幻想を持ち始め、だったら妻になった女性と……
と思っていたのだが縁に恵まれず。
この歳まで童貞という大賢者ばりの熊が出来上がってしまった。
自慰をした事は、あるにはあるが……
なにしろ想像力が乏しく、その対象とするべき「オカズ」が思い当たらない為に、なんとなく的な自慰しか経験が無い。
回数自体少なく、握った手を上下させるしか方法を知らない。
妄想の中で、ガツガツと色んなシチュエーションでガインを食いまくっていたキリアンとは自慰の経験にもかなり差が出る。
だから、今になって思った。
「俺、本当に、キリアンを抱こうとしたのか?」
キリアンは美しい。
誰が見てもキリアンは、女性に喩えられる程に美しい。
ガインに至っては、弟子であった可愛さと、敬愛すべき皇帝陛下というオプションが付いてしまい、美しい女性を遥か越えて、キリアンを女神の様だと思っている。
崇拝対象にも近い感情なら持ってないとは言わないが、性的に欲情するなど…。
「……いかん、分からん。」
考えるのが苦手なガインはベッドから起き上がり、フラリと部屋の外に出た。
昨夜遅くまで中庭の警らの仕事をしていたガインは今日は非番で、ベッドから出たままの姿で兵士達の為の食堂に向かう。
朝食の時間をとうに過ぎた食堂はガランとしており、昼食の仕度をする料理人のバネッサと、料理人見習いの青年の二人だけが居た。
「アラ!ガイン隊長!どうしました!?今日は非番でしょ!?」
料理人のバネッサは50歳の肥えた女性で、農家を営んでいる夫が居る。
夫が城の皇族、貴族用の厨房に野菜を届け、余った野菜や傷みかけの野菜を引き取り妻のバネッサに届け、バネッサが兵士達のお腹を満たす料理を作るのだ。
見掛けた事は無いが、息子が精肉店を営んでるらしく、兵士用の肉はバネッサの夫が余ったくず肉を届けてくれている。
「腹が減ってな、目が覚めちまった。何か軽く腹を満たすもんないかな?」
「騎士様、僕の作ったサンドイッチですが良かったらどうぞ。」
料理人見習いの青年が、木の皿に乗った肉厚のサンドイッチをガインに差し出した。
「おお、すまん!これは旨そうだ!」
差し出されたサンドイッチに、その場でガブリとかぶり付く。
豪快な食べっぷりに、バネッサと青年がホッコリと微笑んだ。
「……騎士様、シャツのボタンが……」
「あ?」
青年の指摘に、サンドイッチを食べながらガインが自身の衣服を見下ろす。
騎士の制服だけ脱いで、白いシャツとトラウザーズ姿で寝てしまったガインは、ボタンが全て無くなったシャツ姿でその場に立っていた。
喉元から胸板、腹筋、臍まで、毛に覆われた肌が見えている。
「お!おわ!!」
「あっはっは!年頃の娘さんじゃあるまいし、何を照れてんだい!隊長さん!」
兵士達が上半身裸のままで訓練所や食堂をうろつく事も珍しくはない。
ガインもよく裸で食堂をうろつく、そういう事をしているのだが、自身の肌を見た瞬間昨夜の事を思い出して思わず前を隠してまった。
単純で正直者なガインは、それがそのまま焦りとして顔に出てしまい、肌を晒していた事に取り乱した様な態度を取ってしまった。
「い、いやぁなに、ちょっと驚いてしまってな…ははは。」
「……騎士様、僕がボタン、付けて差し上げましょうか?」
青年の手がのび、ガインのシャツの端を摘まむ。
ガインは青年と目を合わせ、少し黙りこんでしまった。
「いや、いーわ。このシャツは、このままで。ありがとうな、坊主!サンドイッチ旨かった!見習い、頑張れよ!?」
ガインはニカッと歯を見せて微笑み、青年の頭をぽんぽんと叩いた。
「もう一眠りするわ、バネッサ邪魔をしたな。」
手を振るバネッサと青年のいる食堂を後にし、ガインは自室の方に向かった。
非番の日は寝て過ごす事が多い。
特に昨日は、色々考え過ぎて熟睡した感じがしない。
自室のドアを開けながら、ガインが大きなアクビをした。
「くぁあ……もう、一眠り……。」
バンッッ!!!
部屋に入った途端、強くドアが閉められた。
ドアを背にして立ち尽くしたガインの両肩の上に腕が延び、ガインは狭い檻に囚われてしまった。
ドアドン。扉ドン状態。
「…………へ、陛下……?」
囚われた状態で、自身の目線より少し下にあるキリアンの顔を見下ろす。
キリアンはキツイ目付きでガインを睨め上げている。
「な、何か知らんが…怒ってます?…陛下…。」
キリアンがガインに対して怒りをあらわにする時は
子どもの様に拗ねた顔をする事が多い。
時折、スウっと冷たさを帯びて本当の怒りをあらわにする事もあるが……
皇帝になってからのキリアンは、長く共に居たガインですら見た事の無い表情をたくさん見せる様になっていた。
今、目の前に居るキリアンの表情もその一つだ。
戦場に居る時でさえ見せなかった、強い怒り。
冷たく凍り付いた表情で、焦げ付く程に熱く激しい怒りを身に纏う。
「………お前はなぜ、俺以外の者に色目を使う。」
色目!?色目を使う!?色目って何だ!?
「な、何の事だ!?俺は色目なんて使っちゃおらん!」
そもそもが、色目を使う相手なんぞおらん!!
「お前は俺の物だ!!そう、約束しただろう!!」
「ちょ!ちょっと待て!!色々、待て!!」
頭の中が整理出来てない。
色目を使う?色目を使った?俺が?誰に?それ、いつよ。
それに俺、キリアンの物……いや、ある意味それは間違いではない。
我が身は魂共々、皇帝陛下に忠誠を誓い、捧げた。
俺だけではない。
この国の、特にこの城の臣下、側近、兵士全てがそうであろう。
…………未婚の者は、陛下の許し無く恋をしてはいけないとか?
いやいや、いくらなんでも。
ますます頭が混乱してくる。
「と、とりあえずだな、俺は確かにキリアン、お前のモンだ!だがな、俺は色目を使った記憶なんざ無えし、お前が何でそんなに怒ってんのか分かんね……」
ガインの頭にキリアンが手を当て強引に顔を下に向けられ、
ガインの言葉を遮る様にキリアンの口が覆い被さった。
唇が触れるだけでは足りないと、キリアンの口が噛み付く様にガインの口を覆い、口の中の空気さえ奪おうとする。
口を閉じれず口内の唾液を飲み込めない辛さから咽頭を上げ萎縮したガインの舌先が、キリアンの舌と唇で噛み付く様に引き摺り出される。
呼吸がままならない、唾液が飲み込めない、かなり苦しい。
やっと口が解放されたガインは荒い呼吸で戸惑った状態のまま、困った様に眉尻を下げてキリアンを見下ろす。
「はぁはぁ…ッ…キリアン…どうした?何をそんな…焦って…んだ…」
ガインは自身の口にした問いを耳にして「え?焦って?」と自問する。
ガインはキリアンに、何をそんな怒っているんだと尋ねるつもりだった。
だが、考えるより先に口から出たキリアンへの問いは、焦っているのか?だった。
「もう我慢ならないし、待てない!!」
ガインの肩が掴まれ、大きな身体が部屋の中に引っ張られる。
キリアンは細身で、衣装を身に付けて居ると華奢に見えて分かりにくいが、その身体には無駄無く筋肉が付いている。
騎士として見事な体躯をしている彼は、武芸にも秀でており、力もある。
そのキリアンに、不意をつかれて引き回されたガインの大きな身体は、そのままガインの部屋にある小さなテーブルの上にうつ伏せに押し付けられた。
「何しやがる!キリアン!」
ガインの胴体しか乗らない小さなテーブルにうつ伏せに寝た背中を上から押さえつけられて、宙に浮いたままのガインの両腕は掴まる場所が無く身体を起こす事が出来ない。
そして、ここまでの状態になれば鈍いガインでも、その後に続く行為に想像がつく。
想像がつくのだが、そんな事は有り得ないだろ?とも思わずにはいられない。
世間で噂される、美貌の皇帝は女役だとの心無い声をたくさん聞いて来た。
同時に、美しい皇帝が誰かを愛するならば、それはよほど美しい者なのであろうと。
ガインの中でも「そうかもな」位に思っていたのだが……
うつ伏せにされたままで、トラウザーズの腰部分が掴まれ、そのままズルッとずり下げられた。
「ま、待て!キリアン!誤解だ!俺は誰にも色目なんか……ぐあああっ!!」
何の前触れも無しに、後ろから杭が打ち込まれた。
強く結ばれた秘肉の結び目を、開き易い様にほぐす事も無く、傍若無人な行いにより乱暴に侵略されてしまった。
「っ……てぇ…ッキリアン…何して……」
声を出すのも辛い。ガインは宙に浮いた両手に拳を握り、裂かれた痛みと、初めて経験した内側からの圧迫の辛さに耐える。
キリアンは何も語らず、ゆっくりと埋めた杭を引き抜きかけ、再び深くガインの中に埋め込んだ。
「うくっ!!ッた、な、き、キリアン!!ってぇ…!」
その工程が何度も繰り返される。
受け入れる器の方が馴染んで来て抵抗が少なくなったのか、ガインの感じる痛みは消えないが抽挿の速度が増す。
やがて、ズチュズチュと硬い肉が粘膜を擦りながら出入りする音が聞こえる様になった。
「っは…あっ…くっ…!ってぇ…」
ガインは痛みを堪えながら、背後の見えないキリアンの様子をうかがう。
今まで、分からなかった事が少しずつ分かって来た。
キリアンが何を欲しがっていたのか、何を自分に求めていたのか。
そんな事があるわけ無いと否定するのは容易いし、楽だ。
だが、それではいつまで経っても答えを知る事が出来ない。
「………しょ………」
繋がったままでガインの背中にキリアンが覆い被さる。
「………師匠………好きなんです……好きなんです………」
背中越しに聞こえたキリアンの声は、か細く消え入りそうな程に弱々しい声だった。
「もう……我慢できない……辛い……………」
痛みに耐え、うつ伏せのまま拳を握っているガインが苦笑した。
「……俺より痛そうな声を出しやがって………」
あなたにおすすめの小説
嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない
天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。
「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」
――新王から事実上の追放を受けたガイ。
副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。
ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。
その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。
兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。
エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに――
筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。
※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。