【R18】熊の様な45歳の近衛隊長は、22歳の美貌の皇帝に欲しがられています。

DAKUNちょめ

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お姫様皇帝と呼ばれた皇帝は…。

先の戦争が終わり、共闘した国々へ報奨交渉などの為に各国へと向かっていたキリアン皇帝の側近と呼ばれる者達が全て国に帰還した。



ガインを含め武官も文官も半数以上が、キリアンの父グレアムが皇帝をしていた頃より城におり、キリアンが絶対の信頼を寄せる者達。



王城内に設けられた会議室にて、交渉の成否や対応について話していく。



若い皇帝を甘く見て倍以上の報奨を求めて来る国、これを期に同盟を結びたいと申し出る国、反応は様々だ。



「私を侮り、この国の力を見誤る様な愚王が治める国など手を切って良い。

その内、身内に寝首を掻かれるだろう。

先に定めた報奨だけ渡して切り捨てろ。

そちらの国は、街道使用時の税収の折り合い次第で同盟を結ぶと返答を。」



キリアンが出した指示を書記が記録として書き留め、合わせて皇帝の言葉を書簡としてしたためる。



「陛下、以前より同盟国であった公国より、姫君を陛下の妃にと!」



「こちらの王国からもです!第一妃でなくとも良いから第三王女を陛下の側女にと!」





先ほどまで席を立ちながら方々へと指を差しつつ声を出し、書類に目を通しながら交渉人達と意見を交わし、テキパキと指示をしていたキリアンがストンと椅子に腰を下ろし、にこやかに微笑みながら無言になった。



あんなに喧々囂々(けんけんごうごう)としていた会議室が、水を打ったようにシン…と静まり返る。

ある者は口をつぐんで、ただ押し黙り、ある者はキリアンから目を逸らし小刻みに震えてさえいる。



ガインもまた、キリアンのその姿に小さく溜め息をついた。



━━えらく、腹を立ててやがるな…キリアン━━





「………………私は、かなり、以前から、妻を、娶るつもりは、無いと、何度も言った筈だが。

なぜ縁談の話を持ち帰る?その場で断れば良いだろう?

それとも、私の言葉を汲み取る気も無いのか?」



単語を強調する様に、ゆっくりと諭す様に話すキリアンは、女神かと見紛う程の美しい微笑みを浮かべている。

だが、その姿からは想像出来ない程の怒気を身体全体から発していた。



「も、持ち帰るだけでも良いからと、言われましたので…」



若い文官がベソをかきそうな顔でキリアンに言えば、微笑みつつ困り顔のキリアンは、あどけない少女の様にコテンと首を傾げる。



「国を治める者から預かり持ち帰った物に、私が目を通さない訳にはいくまい?

そんな簡単な事も分からなかったのかな?ねぇ?」



ベソをかいてアワアワと震える若い文官の視線の先に居る、微笑むキリアンの視線が、ガインの方に向けられた。



━━持ち帰ったのなら、目を通さないワケにはいかない。

隠したって、何の解決にもならないからね?師匠。━━



「…うっわ…。」



キリアンの視線が、何を語っているのかを察したガインが顔を青くして肩を下げた。







朝から始まった会議は昼食、夕食を挟み夜まで続き、全ての指示を出した皇帝は会議室を離れた。

会議室に残された者達は、自身が担当となった国へ再度向かう為の準備をしていく。

遠方に向かう者は先日帰国したばかりであるのに、一週間後にはまた国を発たねばならない。



ガインが向かう国は隣国である為、向かうのはまだ先でも良いが、距離が近いからこそ細心の注意が必要となる。

戦となれば、双方共に即侵攻が可能だからだ。



だからこそ、「キリアンの機嫌を損ねたくない」なんて個人的な都合のみで、国と国との間で交わされた親書を隠すべきでは無かったと今更ながら思わずにはいられない。



「そんな当たり前の事を俺はなんで失念していた?

……キリアンと、ああなってから、俺がおかしくなっちまってる。」



━━そりゃな……恋愛経験が一切無いまま、この歳だし。

今更若者同士の様に、激しい恋情を持つ事も持たれる事も無いだろうと思っていたし。性欲だって人並以下になってたし。

なのにいきなり、ケダモノみたいな性欲叩きつけられて、激しい恋情持たれるとは思わないじゃないか!!

しかも、それがキリアン!ダチの息子で、俺の弟子で、スゲー年下だし、男だし、皇帝だし、もう、ツッコミ所が多過ぎてどこに驚いたらいいか分からんわ!!━━



キリアンが席を立ち居なくなり、再び喧々囂々となった会議室で、ガインは壁に両手をついて項垂れながらブツブツと呟いていた。


━━いーや、一番ツッコむべき所はよぉーく分かっている。

美の権化とも言うべきキリアンに対し、なんで野獣と言われる俺が女役!!

しかも妻とか言う!しかも孕めとか頭の悪い事をのたまう!

それって、どーゆーこっちゃ!!

こんなもん、おかしくなるに決まっとるわ!━━



「………ガイン殿、大丈夫ですか?やはり、あの親書の件で…。」



項垂れたガインに話し掛けて来たのは、共に隣国へ行き親書を受け取った交渉役の文官。

先日、ガインに黙ってノーザンに親書を渡した事を何度もガインに詫びて来ていた。



「皇帝陛下のお叱りを、お一人で受けられたのでは?

親書に関しては私にも責がございます、お叱りを受けるなら私も陛下に…!」



「いや、違うんだ!あれは俺が勝手にした事、陛下にお叱りを受けるのも俺一人でいい!」



気弱であるのに責任感の強い交渉人の彼を振り回した事を心の中で詫びつつ、まだ騒がしい会議室を見たガインが苦笑する。



「かわりと言っちゃ何だが頭を使う交渉事については、俺は役に立たん。

だから陛下の返事をしたためた書簡や、次回隣国に発つ際の準備など任せていいか?」



「それはもう!任せて下さい!」



ガインが窓の外を見れば、月も無い暗い夜。

夜の会議室は、ランプや蝋燭が多く立てられて、それなりに明るくはあるが既に深夜だ。

血走った目で報奨の目録を書いたり、数に限りのある物の分配の相談など、かなり揉めている。



「…………風呂入って寝るか。」



ガインは王城内にある大浴場へと向かった。













王城の大浴場。

ここは皇族の者達と、王城に務める上級貴族と、皇族の者に許された者だけが入る事を許された場所。



王城に皇族は今キリアンしかおらず、皇帝であるキリアンに普段の浴場の利用を許されているのは王城務めの上級貴族と、貴族籍に関係無くキリアンの側近達のみである。



だが皇帝が入浴する際には、誰も浴場に入ってはならない。





キリアンは一人、大浴場に居た。

他人が肌に触れる事を嫌うキリアンは侍女らに任せる事も無く、自身の身体を自らの手で洗う。



浴槽の縁に腰掛け、流れる様な美しい金の髪を指で梳かす。

白磁の様なきめ細かな白い肌を、白く細い指で丁寧に磨く様に洗い流していった。



「………………だれ?」



無人の筈の浴場内に、人の気配を感じたキリアンがゆっくりと振り返る。

人払いをしてある浴場の近くには、今誰も居ない。

人々の住む居館から離れた場所に造られた浴場は、多少大きな音が出ても気付かれにくい。



浴槽の中に全裸で立つキリアンの前に、入口を塞ぐ様に見知らぬ男が二人立っていた。

その手には武器が握られている。



「なんだ、師匠じゃなかったのか。つまんないな。」



キリアンが口元に手を当て、ボソッと呟いた。



「警備兵も連れずに、こんな場所に一人で来るのが運の尽きだな皇帝陛下。」



「城の敷地内だから敵は来るまいと安心しきったのか?

守られてばかりのお姫様皇帝は、考えが甘いな。」



浴槽の中に立つキリアンは、きょとんとした表情で暗殺者の二人を見る。



「お姫様皇帝…私はそう、呼ばれているのですか?

確かに…私は皆に守って貰って…今日こんにちまでを無事に過ごしてきました…。」



キリアンは浴槽の中で後退り、暗殺者に背を向け浴槽の隅へと逃げ出した。



「待て待て!逃げんな!」

キリアンを追った暗殺者の一人が浴槽に入り、背後からキリアンの首に腕を回して、キリアンを捕らえた。



「離して!た、助けて下さい!皆が守ってくれた私の命、簡単に散らす訳にはいかないのです!

お願い!助けて!何でもしますから!」



キリアンの濡れた白磁の肌に、長めの金の髪が流線を描いて張り付く。

紺碧の瞳は潤んで涙を溢れさせ恐怖に震え濡れており、薔薇の花弁の様な唇が許しを請うた。



それは美しく艶めかしく煽情的で、抗う術を持たない獲物を捕らえた捕食者としての嗜虐心を煽り、キリアンを捕らえた男にもっと痛ぶり弄びたいと思わせた。



「何でもするって?…ハハ、お姫様と呼ばれるだけあるな……女みてぇな、キレイな身体をしてやが………」



背後からキリアンの首に右腕を回して捕らえていた男は、キリアンの肌に触れようと胸の方に左手を動かした。



「バカ!!スキを見せるな!!」



キリアンを捕らえていた背後の男は、弱々しく許しを請うキリアンに、抵抗も出来ないだろうと思い込まされた。

キリアンの肌に触れる為に、男は左側の腰に下げた鞘に剣を納めてしまった。

キリアンは左手で男の腰の剣を抜くと、そのまま背後の男の脇腹に深く刺し、外側に刃を抜いた。



「俺に触れるな。虫けらが。」



叫ぶ間も無く血しぶきを飛ばし、浴槽の中に腹ワタをこぼれさせた男は、真っ赤に染まった浴槽に倒れ、プカプカと浮かんだ島の様になった。



「お、お前!!よくもやっ」



キリアンに斬りかかる間もなく残った男の首が飛び、浴槽の中にポチャンと落ちる。

キリアンは自分が立つ浴槽の中に浮かぶ男の屍と、頭部を見た。



「キリアン!!無事か!!キリアン!!」



「ああ、師匠。…待ってた。」



ガインは首を刎ねた剣を鞘に納め、青ざめた顔でザブザブと浴槽の中を進んで来ると、全裸のまま血だらけで浴槽に立つキリアンの身体を強く抱き締めた。



「良かった…良かった!!お前が無事で良かった!」



「……ヤルつもりで待ってたんだけど………ここじゃ無理になったな。」



ガインに聞こえない位の声でキリアンがボソッと呟く。



やがて騒ぎを聞きつけ、兵士達が集まって来た。

賊の屍を前に、血だらけのキリアンを抱きすくめるガインの姿は、姫君を守ったナイトの様に、その場に居た者達の目に映った。

それは今のキリアンには、とても都合が良い。



「ガイン……今夜は私の側に居て、私を守っていて欲しい……

私の為に、二人もの賊を屠ってくれたガインが居てくれたら心強い。お願いだ、ガイン。」



「………………二人?………いや、一人はキリアンが………」



赤い血に塗れたままのキリアンが、ガインの腕の中で微笑んだ。



「……お願い、ガイン………ふふ……」

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