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綺麗なだけの花と侮るなかれ。
隣国の王城に到着した一行は、王城内のホールに迎え入れられた。
隣国の国王は60歳を過ぎた老人で、キリアンとは祖父と孫ほどの年齢差がある。
「よくぞ我が国へ参られた!ささ、もてなすゆえ、ゆるりとして行くが良いだろう!」
壁の様な大きなガインに背を守らせる、見た目が気弱な少女の様な毒気の無い美しいかんばせの青年に、老齢の国王は機嫌が良い。
軍事国家であるこの国の民は、力ある強い者が優位であるべきとの気質を持つ。
この老人もまた、歳を取ってはいるが勇猛な騎士であったという。
気弱に見えるキリアンの姿は、老練の王の目にはさぞ力で捩じ伏せ易く見えた事だろう。
「国王としての正式な訪問ではありません。
私は急遽、この一行に同行させて貰った身ですので、そんなもてなして頂くなど申し訳が立ちません…。
それに長居をするつもりもありませんし。」
キリアンは、おずおずと控え目な口調で答えて背後に控えるガインをチラッと見る。
キリアンの視線に気付いたガインは一歩前に進み出て、頭を下げた。
「ですが、陛下が我が部下である、このガインを気に入って下さり、息子の様な立場で姫君の婿にと言って下さったと聞きましたので……」
「おお、そうなのだ!ガイン伯爵の騎士としての勇猛果敢さは、我が国にも轟いておる!
そのような立派な騎士を伯爵の身で終わらせるなど勿体ない!
儂の姪の夫して迎えた暁には、侯爵の地位を与えよう!
そちらの国ともより良い関係が得られると思うのだが!」
機嫌の良い国王の後ろから三十路半ば程の美しい女が歩み出て来た。
キリアンがその女を冷たい表情で一瞥し、ガインの方に視線を向けながら、ガインにしか聞こえない声を発した。
「へぇー………」
ザワッとガインに鳥肌が立つ。冷や汗が流れる。
ガインは、何もしていない。
なのに、刺す様な強い嫉妬を向けられた。
━━いや!色目も何も使っちゃおらんし!
俺からは何にも、本当に何にもしていない!
そんな、あからさまな苛立ちをぶつけて来られてもだな!
ほんっとキリアンは嫉妬深い!!━━
「陛下、それなんですがお断りさせて戴きます。」
キリアンが、薄笑いを浮かべつつ困った感じの表情を作り、ゴメンなさいね?とでも言うかの様に軽く答えた。
「何だと?なぜ断る理由がある。悪い話ではなかろうが。」
老齢の王の顔から笑みが消えた。
今まで、自身が決めた事はゴリ押しで推し進めて来たであろう国王は否定される事を嫌う。
「ガインは我が国の軍事力の要です。
彼が居なくなれば、我が国の軍事力はペラペラの紙になる。
知ってらっしゃいますよね?
まさか陛下は、それを狙ってます?
我が国が攻め入られ易い国になるのを。」
「無礼な若造だな。そんな浅ましい考えは持っておらん。
ガイン伯爵の力を正当に評価したがゆえの事だが。」
「そうなんですねー。
ですが、そんな理由があるのでお断りさせて頂きます。」
一気に不機嫌になった国王の表情が、かつて自身も戦場に出ていた戦人の顔付きとなる。
厳しい顔に強者ゆえの圧を込め、キリアンを睨み付けて来た。
一方のキリアンは、涼し気な表情を崩さずに柔らかく微笑んでいる。
「儂は、いいえと言われるのば嫌いでな。
特に、戦場も知らぬ様な若造に侮られるのは。
無理矢理にでも、ハイと言わせる事をさせないで欲しいもんだ。」
「えー?無理矢理にでもハイと言わせる口が頭ごと無くなれば済む話では?今。」
美しい微笑みを浮かべたままのキリアンは、『その首、落とそうか?』との意を込め、国王陛下に向けて強い殺気を放った。
キリアンの殺気は、向けられた者にしか分からない。
その鋭さも冷たさも、心臓を鷲掴みされたような苦しさも。
「お忘れですか?
先だっての戦には、私本人が前線に立ち剣を振るってました。
枯れ枝の如き首など、一瞬です。」
「陛下!キリアン皇帝陛下!」
目の前の老人が顔面蒼白で口ひげの辺りを濡らし、胸の辺りを掴むのを見たガインが慌ててキリアンの前に立ちはだかり、制する様にキリアンからの殺気を遮った。
「あ、ごめん。ガインの事考えたら、ちょっと抑えらんなかった。」
ケロリと答えたキリアンと、ハァッと大きく息を吐いたガイン。
ガインの背後で、隣国の国王がフラフラと倒れそうになり回りの側近達に支えられていた。
今、何が起こったか理解しているのはキリアン、隣国の国王、ガインの3人のみ。
強者を好み、弱者を蔑む傾向にあるこの国の国王は、倒れそうになった身体を支えられながら、儚い少女の様な見た目に隠されたキリアンの本質を知り、目を細めた。
「何と…何と素晴らしい…!分かった、ガイン殿の事は諦めよう……
だが、キリアン皇帝よ……そなたはまだ、独り身だったな。
正式な妃で無くとも良い、儂の孫娘を一人貰ってはくれんか?
美しく、強い、そなたの血を我が国に入れたい……」
隣国の兵士や側近達は、国王の言葉が理解出来ていない。
ガイン伯爵を、何がなんでも我が国に迎え入れようと言っていた国王が、手の平を返した様にそれを諦め、見てくれだけで弱き者だと馬鹿にしていたキリアンと血縁を結びたがっている。
「それも無理です。私には…愛を誓い、妃に迎えると心に決めた美しい未来の妻がいるのです。」
キリアンが、フッと優しい笑みを溢して頬を染めた。
ガインはそれが、隣国の王の申し出を断る為のでまかせであると気付いた。
キリアンの気持ちを疑ってはないので、本当にそんな女性がいるとは思っていない。
だが架空の人物とは言えど、妻にしたい女性がいると聞くのは、あまり良い気分ではない。
聞きたくは無いな、とガインが少し目を伏せた。
「ほほう、美しいキリアン陛下を夢中にさせるなど、よほど美しい者なのだろうな……。」
「ええ、私のすべてを包み込む様な、地母神の如き慈愛に満ちた人です。
大地の様にとても大らかで、心を現すかのような大きく豊満な肉体を持つ美しい人。
その人の中でしか、私は花を咲かせる事が出来ません。
私のすべてを解放し、受け入れてくれる……その肉体の心地よさと言ったらもう…!」
テンションが上がってきたキリアンの様子がおかしい。
何かうまく誤魔化せている気がしないでもないが、段々と危ない方向に…
━━ソレ、俺とヤってる時の話じゃね!?暴走しかけてないか?
そういやキリアン、一言も女性なんて言ってないわ!━━
「キリアン皇帝陛下!!隣国の国王陛下はお疲れのご様子!!
我々も一旦下がらせて頂きましょう!!」
「涙に潤む漆黒の瞳に私の姿が映る時、私の心は早鐘を打つように鳴り響き…」
「キリアン皇帝陛下に、長旅の疲れが出てらっしゃる!!
早く、お休み頂く準備を!頼みます!」
「おや。」
ガインは、キョトンとしているキリアンをガバっと横向きに抱き上げた。
これ以上、我が国の者達も多く居る場で、余計な事を言わないで欲しい!
隣国の王城ではキリアンに立派な貴賓室が用意された。
同行した他の貴族も城内の寝室をあてがわれ、下級の兵士達や使用人達は、主人に付き従う者以外は王城近辺の宿に滞在となった。
ガインは警護も兼ねてキリアンの貴賓室に共に入った。
部屋を案内した隣国の者が、交代する者も無くガインたった一人しか皇帝の警護をする者が居ない事に不審そうな表情を見せた。
キリアンを抱きかかえたままのガインは案内された部屋の中の豪奢な椅子にキリアンを座らせる。
「警護はガイン一人で充分と思ってますが…一人では不満ですか?
一人では不安になる程、この国の警備はザルって事ですかね。」
椅子に座り、身に纏う甲冑を外していきながらキリアンが部屋に案内した者に微笑む。
「ご、ご安心下さい!我が国の優秀な兵が常に城を巡回しておりますゆえ、おかしな輩など現れるハズも御座いません!」
案内した者が部屋を去った後、脱ぎ捨てた甲冑を椅子の下にバラけさせたままキリアンがベッドに座った。
ガインは散らばった甲冑を集めて、窓の下に纏めて置く。
「脱いだら脱ぎっぱなしはやめろと、昔から言ってるだろ!」
「もー!後からちゃんと片付けるつもりだったの!
師匠は昔から口うるさい。」
窓の下にしゃがみ、キリアンの鎧を身に着け易い様に並べて行くガインの背中にキリアンが張り付いた。
「ガインも鎧を脱いでベッドに来て?……さっき、ジジィにあんな話していたら思い出しちゃった。
愛する妻を抱きたい。」
背後から抱き着いたキリアンが、ガインの耳元で甘えた声音で囁く。
━━誰が見ているかも知れないのに、出来るワケねぇだろ!!よその城でなんか!!━━
「陛下、お戯れは程々に。どこに、誰の目があるかも分かりません。それに、あと一時間程で夕食の用意が整うとの事。」
「そっか……ガインは今、鎧を脱ぐワケにはいかないもんな。」
キリアンはガインから身体を離し、ベッドの縁に座る。
「じゃあ、ガインの口で慰めて。」
ガン!…ガランガラン……………
ガインが手にしたキリアンの甲冑の一部が床に落ち、転がった。
ベッドに腰掛けた背後のキリアンに、とんでもない事を言われた気がする。
「っな、な……!何を!!」
「こんなになってる俺のを見て、可哀想だと思わない?
ジジイに愛しい妻の自慢話をしていたら……ガインを抱いた夜の事を思い出したんだよね。
城を発ってから肌にも触れられていないのだから。」
ベッドの縁に座るキリアンのトラウザーズの前が、はち切れそうに隆起している。
それを可哀想だと思うかって?まったく思わん。
それを慰めろと言われた俺の方が、よっぽど可哀想だ。
「そんな事していて、いきなり部屋に入って来られて誰かに見られたら…どうすんだよ。」
自分を可哀想だと思いつつ、まるでそれが自然な流れであるかの様に、ガインはキリアンの前に膝をつき、キリアンのトラウザーズの前を寛げ始めた。
「その時は俺が、受けてる側らしく可愛い女のコの声を出してやるよ。
そういう立場でなら、ガインも文句は無いでしょ?」
「はぁ?文句しかネェよ!
偉大なる皇帝陛下が女役で男相手に身を任せているなんざ…!」
「俺がオンナ役だって噂は今さらだし。
それが原因で持ち込まれる婚姻話が減るなら俺は助かるし。
それに相手が誰でもいいって訳じゃないんだし。いいんじゃない?」
何がいいのか分からんが……
ガインは目の前に取り出したキリアンの猛る雄根に息を呑む。
慰める?口で?コレを……………
隣国の国王は60歳を過ぎた老人で、キリアンとは祖父と孫ほどの年齢差がある。
「よくぞ我が国へ参られた!ささ、もてなすゆえ、ゆるりとして行くが良いだろう!」
壁の様な大きなガインに背を守らせる、見た目が気弱な少女の様な毒気の無い美しいかんばせの青年に、老齢の国王は機嫌が良い。
軍事国家であるこの国の民は、力ある強い者が優位であるべきとの気質を持つ。
この老人もまた、歳を取ってはいるが勇猛な騎士であったという。
気弱に見えるキリアンの姿は、老練の王の目にはさぞ力で捩じ伏せ易く見えた事だろう。
「国王としての正式な訪問ではありません。
私は急遽、この一行に同行させて貰った身ですので、そんなもてなして頂くなど申し訳が立ちません…。
それに長居をするつもりもありませんし。」
キリアンは、おずおずと控え目な口調で答えて背後に控えるガインをチラッと見る。
キリアンの視線に気付いたガインは一歩前に進み出て、頭を下げた。
「ですが、陛下が我が部下である、このガインを気に入って下さり、息子の様な立場で姫君の婿にと言って下さったと聞きましたので……」
「おお、そうなのだ!ガイン伯爵の騎士としての勇猛果敢さは、我が国にも轟いておる!
そのような立派な騎士を伯爵の身で終わらせるなど勿体ない!
儂の姪の夫して迎えた暁には、侯爵の地位を与えよう!
そちらの国ともより良い関係が得られると思うのだが!」
機嫌の良い国王の後ろから三十路半ば程の美しい女が歩み出て来た。
キリアンがその女を冷たい表情で一瞥し、ガインの方に視線を向けながら、ガインにしか聞こえない声を発した。
「へぇー………」
ザワッとガインに鳥肌が立つ。冷や汗が流れる。
ガインは、何もしていない。
なのに、刺す様な強い嫉妬を向けられた。
━━いや!色目も何も使っちゃおらんし!
俺からは何にも、本当に何にもしていない!
そんな、あからさまな苛立ちをぶつけて来られてもだな!
ほんっとキリアンは嫉妬深い!!━━
「陛下、それなんですがお断りさせて戴きます。」
キリアンが、薄笑いを浮かべつつ困った感じの表情を作り、ゴメンなさいね?とでも言うかの様に軽く答えた。
「何だと?なぜ断る理由がある。悪い話ではなかろうが。」
老齢の王の顔から笑みが消えた。
今まで、自身が決めた事はゴリ押しで推し進めて来たであろう国王は否定される事を嫌う。
「ガインは我が国の軍事力の要です。
彼が居なくなれば、我が国の軍事力はペラペラの紙になる。
知ってらっしゃいますよね?
まさか陛下は、それを狙ってます?
我が国が攻め入られ易い国になるのを。」
「無礼な若造だな。そんな浅ましい考えは持っておらん。
ガイン伯爵の力を正当に評価したがゆえの事だが。」
「そうなんですねー。
ですが、そんな理由があるのでお断りさせて頂きます。」
一気に不機嫌になった国王の表情が、かつて自身も戦場に出ていた戦人の顔付きとなる。
厳しい顔に強者ゆえの圧を込め、キリアンを睨み付けて来た。
一方のキリアンは、涼し気な表情を崩さずに柔らかく微笑んでいる。
「儂は、いいえと言われるのば嫌いでな。
特に、戦場も知らぬ様な若造に侮られるのは。
無理矢理にでも、ハイと言わせる事をさせないで欲しいもんだ。」
「えー?無理矢理にでもハイと言わせる口が頭ごと無くなれば済む話では?今。」
美しい微笑みを浮かべたままのキリアンは、『その首、落とそうか?』との意を込め、国王陛下に向けて強い殺気を放った。
キリアンの殺気は、向けられた者にしか分からない。
その鋭さも冷たさも、心臓を鷲掴みされたような苦しさも。
「お忘れですか?
先だっての戦には、私本人が前線に立ち剣を振るってました。
枯れ枝の如き首など、一瞬です。」
「陛下!キリアン皇帝陛下!」
目の前の老人が顔面蒼白で口ひげの辺りを濡らし、胸の辺りを掴むのを見たガインが慌ててキリアンの前に立ちはだかり、制する様にキリアンからの殺気を遮った。
「あ、ごめん。ガインの事考えたら、ちょっと抑えらんなかった。」
ケロリと答えたキリアンと、ハァッと大きく息を吐いたガイン。
ガインの背後で、隣国の国王がフラフラと倒れそうになり回りの側近達に支えられていた。
今、何が起こったか理解しているのはキリアン、隣国の国王、ガインの3人のみ。
強者を好み、弱者を蔑む傾向にあるこの国の国王は、倒れそうになった身体を支えられながら、儚い少女の様な見た目に隠されたキリアンの本質を知り、目を細めた。
「何と…何と素晴らしい…!分かった、ガイン殿の事は諦めよう……
だが、キリアン皇帝よ……そなたはまだ、独り身だったな。
正式な妃で無くとも良い、儂の孫娘を一人貰ってはくれんか?
美しく、強い、そなたの血を我が国に入れたい……」
隣国の兵士や側近達は、国王の言葉が理解出来ていない。
ガイン伯爵を、何がなんでも我が国に迎え入れようと言っていた国王が、手の平を返した様にそれを諦め、見てくれだけで弱き者だと馬鹿にしていたキリアンと血縁を結びたがっている。
「それも無理です。私には…愛を誓い、妃に迎えると心に決めた美しい未来の妻がいるのです。」
キリアンが、フッと優しい笑みを溢して頬を染めた。
ガインはそれが、隣国の王の申し出を断る為のでまかせであると気付いた。
キリアンの気持ちを疑ってはないので、本当にそんな女性がいるとは思っていない。
だが架空の人物とは言えど、妻にしたい女性がいると聞くのは、あまり良い気分ではない。
聞きたくは無いな、とガインが少し目を伏せた。
「ほほう、美しいキリアン陛下を夢中にさせるなど、よほど美しい者なのだろうな……。」
「ええ、私のすべてを包み込む様な、地母神の如き慈愛に満ちた人です。
大地の様にとても大らかで、心を現すかのような大きく豊満な肉体を持つ美しい人。
その人の中でしか、私は花を咲かせる事が出来ません。
私のすべてを解放し、受け入れてくれる……その肉体の心地よさと言ったらもう…!」
テンションが上がってきたキリアンの様子がおかしい。
何かうまく誤魔化せている気がしないでもないが、段々と危ない方向に…
━━ソレ、俺とヤってる時の話じゃね!?暴走しかけてないか?
そういやキリアン、一言も女性なんて言ってないわ!━━
「キリアン皇帝陛下!!隣国の国王陛下はお疲れのご様子!!
我々も一旦下がらせて頂きましょう!!」
「涙に潤む漆黒の瞳に私の姿が映る時、私の心は早鐘を打つように鳴り響き…」
「キリアン皇帝陛下に、長旅の疲れが出てらっしゃる!!
早く、お休み頂く準備を!頼みます!」
「おや。」
ガインは、キョトンとしているキリアンをガバっと横向きに抱き上げた。
これ以上、我が国の者達も多く居る場で、余計な事を言わないで欲しい!
隣国の王城ではキリアンに立派な貴賓室が用意された。
同行した他の貴族も城内の寝室をあてがわれ、下級の兵士達や使用人達は、主人に付き従う者以外は王城近辺の宿に滞在となった。
ガインは警護も兼ねてキリアンの貴賓室に共に入った。
部屋を案内した隣国の者が、交代する者も無くガインたった一人しか皇帝の警護をする者が居ない事に不審そうな表情を見せた。
キリアンを抱きかかえたままのガインは案内された部屋の中の豪奢な椅子にキリアンを座らせる。
「警護はガイン一人で充分と思ってますが…一人では不満ですか?
一人では不安になる程、この国の警備はザルって事ですかね。」
椅子に座り、身に纏う甲冑を外していきながらキリアンが部屋に案内した者に微笑む。
「ご、ご安心下さい!我が国の優秀な兵が常に城を巡回しておりますゆえ、おかしな輩など現れるハズも御座いません!」
案内した者が部屋を去った後、脱ぎ捨てた甲冑を椅子の下にバラけさせたままキリアンがベッドに座った。
ガインは散らばった甲冑を集めて、窓の下に纏めて置く。
「脱いだら脱ぎっぱなしはやめろと、昔から言ってるだろ!」
「もー!後からちゃんと片付けるつもりだったの!
師匠は昔から口うるさい。」
窓の下にしゃがみ、キリアンの鎧を身に着け易い様に並べて行くガインの背中にキリアンが張り付いた。
「ガインも鎧を脱いでベッドに来て?……さっき、ジジィにあんな話していたら思い出しちゃった。
愛する妻を抱きたい。」
背後から抱き着いたキリアンが、ガインの耳元で甘えた声音で囁く。
━━誰が見ているかも知れないのに、出来るワケねぇだろ!!よその城でなんか!!━━
「陛下、お戯れは程々に。どこに、誰の目があるかも分かりません。それに、あと一時間程で夕食の用意が整うとの事。」
「そっか……ガインは今、鎧を脱ぐワケにはいかないもんな。」
キリアンはガインから身体を離し、ベッドの縁に座る。
「じゃあ、ガインの口で慰めて。」
ガン!…ガランガラン……………
ガインが手にしたキリアンの甲冑の一部が床に落ち、転がった。
ベッドに腰掛けた背後のキリアンに、とんでもない事を言われた気がする。
「っな、な……!何を!!」
「こんなになってる俺のを見て、可哀想だと思わない?
ジジイに愛しい妻の自慢話をしていたら……ガインを抱いた夜の事を思い出したんだよね。
城を発ってから肌にも触れられていないのだから。」
ベッドの縁に座るキリアンのトラウザーズの前が、はち切れそうに隆起している。
それを可哀想だと思うかって?まったく思わん。
それを慰めろと言われた俺の方が、よっぽど可哀想だ。
「そんな事していて、いきなり部屋に入って来られて誰かに見られたら…どうすんだよ。」
自分を可哀想だと思いつつ、まるでそれが自然な流れであるかの様に、ガインはキリアンの前に膝をつき、キリアンのトラウザーズの前を寛げ始めた。
「その時は俺が、受けてる側らしく可愛い女のコの声を出してやるよ。
そういう立場でなら、ガインも文句は無いでしょ?」
「はぁ?文句しかネェよ!
偉大なる皇帝陛下が女役で男相手に身を任せているなんざ…!」
「俺がオンナ役だって噂は今さらだし。
それが原因で持ち込まれる婚姻話が減るなら俺は助かるし。
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