【R18】熊の様な45歳の近衛隊長は、22歳の美貌の皇帝に欲しがられています。

DAKUNちょめ

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金髪に碧眼、凛々しく美しい青年は……。

訓練場に新兵を集めて軽く全員と面通しをした後に、ガインは新兵の中心に立ち何の前触れも無しに、いきなり大きな威圧を放った。



戦場という実際の修羅場で放つ威圧や殺気には程遠いが、それでも巨熊のような体躯から外に向けて放つ大きな威圧は空気を震わせ、その場に居る者の意識を圧倒し強く揺さぶる。



ヘナヘナと地面に尻をつく者、涙を流しながら歯をガチガチ鳴らす者、それそこお漏らしする者など様々ではあるが、数人はガインの威圧に耐え、その場で凛然たる佇まいを崩さずに立っていた。



「ほう、四人も俺の圧に耐えるとは…今回は中々強いのが居るじゃないか。」



「隊長、四人の内二人は、こないだまで近衛騎士だった実力者です。陛下の命により一兵卒扱いになってますが。」



満足げなガインの言葉に、ノーザンが溜め息を混じえてサラリと返した。



「………なるほど。」



コイツらが、キリアンが言っていた俺の後釜希望者か、とガインが複雑な顔をした。



『俺を抱こうとした』なんてキリアンの言い方は多少、大げさに脚色されているかもとは言え、キリアンに色目を使った輩には違いはない。



ハッキリ言って、気分の良いモノではない。



━━………何かムカッ、モヤッとする。コレ、嫉妬か?

俺、部下に嫉妬しちまってんのか?マジか…━━



「今日の訓練は終了だ、食堂にて食事を済ませたら各々好きに過ごすが良い。

明日の訓練には遅れないように。」



ノーザンが兵士達に声を掛け、地面に尻をついた新兵達もノロノロと立ち上がり、兵舎脇の水場や食堂へとゾロゾロと移動していく。



ガインの威圧に耐えた四人の内の一人は戦場経験者であったらしく、既に兵士として城に勤める者と顔見知りであったようだ。

親しげに話しながら食堂へと向かって行った。





「彼はまぁ……当然と言いますか……。」



「そうだな。」



兵士達が水場や食堂へと去った訓練場に一人、ポツンと立った金髪に碧眼の青年は、ただ静かにその場に立っていた。

ガインは、再び青年に目を奪われたが、さすがに意識し過ぎだと自身で気付いて目を逸らした。



「ノーザン、後の事は任せる。

俺は、あいつらの様子を見に治療院の方に行って来る。」



「ああ、二人の…承知致しました。」



ガインは自分がなぜ、こんなにも青年の存在を意識してしまうのか答えを出せず、ただ知らず知らず目で追ってしまう青年の姿が見えない場所に自身が移動した方が良いと、その場を離れる事にした。





━━こんな、アホみたいに一人の青年を見つめ続けてましたなんてキリアンに知られた日には、とんでもない事になる!

理由も分からんし、俺はコイツからは離れた方がいい━━





隣国との国境で襲撃を受けた際に大きな怪我を負った二人の兵士を見舞いに行く口実で訓練場を離れたガインは、城内を通らず屋外にある兵舎の裏から、建物の隙間を縫うようにして礼拝堂のある棟を目指した。



足場も地面や砂利が剥き出しの、貴族達は通らない様な裏道、屋外の補修を任されている下働きの者や訓練場から直接、治療院に向かう者しか利用しない細い道を歩いていたガインが背後に気配を感じて足を止め振り返る。



「何の用だ。」



「やっと気付いてくれた。」



狭い路地の、ガインから数メートル離れた位置に立つ金髪碧眼の青年は、立ち止まったガインにゆっくりと歩み寄って来た。



「ずっと後ろを着いて来てたのに全然気付いてくれないから。

僕って、そんなに存在感無いのかなと心配になりました。」



「存在感が無いワケ無いだろう。そんな目立つナリして。

で、俺を追いかける理由は何だ?こう見えて忙しいんだ。

用件があるなら手短かにしてくれ。」



ガインは青年に対して警戒の態度を一切取らなかった。

青年はすぐにガインの正面まで近付き、僅かに上にあるガインの目を見上げる。



「僕はセディ。見ての通りの新米兵士です。よろしく。」



「ああ、よろしくな。だが、挨拶なら訓練場で出来たろう。

わざわざ、こんな所まで追ってこんでも。」



ガインは少し下にある青年の紺碧の瞳を見下ろす。

キリアンと同じ髪色、瞳の色をした青年はキリアンとはまったく違うが整った美しい顔立ちをしている。



「それは隊長が僕の顔を余りにもジロジロ見るから…。

意識するでしょ?2人きりで挨拶したかったんです。

それに、人の居る場所では出来ない話があったんで。」



セディと名乗った青年に指摘され、やはり見過ぎていたかとガインが口元を隠して敢えてセディから視線を逸らした。



「そんなに見ていたか。すまん。

何か分からんが…気になってな…。」



「僕の事が、好きなタイプだからとかじゃないんですか?」



自身の胸に手を当てて、逸らしたガインの目線の先に自分の顔を持って来たセディは、ガインと目が合うとニッと微笑んだ。



「いや、悪いがそれは無い。俺にはそういう趣味は無いんでな。」



「男を抱く趣味が無いのは知ってますよ。だから……



僕に貴方を抱かせて下さい、隊長。」











「……………………………あぁ?」



暫く時間が止まった。

セディの言葉が耳に入り、脳に到達してからその言葉の持つ意味に理解が及ぶのに、必要以上に時間が掛かってしまった。

いや、理解と言うにはまだ及ばないかも知れない。



━━ダカセテクダサイ……って何だ?ダカせ…抱かせ???━━





「セディ……見れば分かると思うが俺は、キリアンではないぞ。」



「そんなの、言われなくても分かりますが……。

誰もが皆、美しい陛下を抱きたいってワケじゃないんですよ?」



ガインは益々混乱した。

この、男役、女役のどちらの立場になろうとも相手には困らないであろう美青年であるセディが、こんなドドン!とデカくてモサァ!と毛の生えたムッサいオッサンを抱かせろと言う。



キリアンに次いで、コイツも可笑しな趣味を持っているのかも知れないが…



「あいにく、ソッチの趣味もない。他を当たってく……」



シッシッと払う様に向けたガインの手の平がセディに握り込まれ、指を絡められる。



「陛下と、そういう立場で散々ヤってるのに、ソッチの趣味は無いなんて嘘つかないで下さいよ隊長。」



握り込まれた手を壁に強く押し付けられ、セディの顔が近付く。



「セディ!お前…!」



「隊長、僕はお願いしているんじゃない。

貴方を脅してるんですよ。一回ヤラせろって。

お城の皆や、可愛い義娘さんに陛下との関係をバラされたくなかったら……ってね。」



「なっ……!」





目を細めてニッと口角を上げるセディを前に、いまだに理解し切れていないガインが、我が身というよりは、セディを憐れむ様な複雑な表情をした。





「……何で、僕を可哀想な子を見る様な顔で見るんですか。

脅されてる被害者は隊長でしょうよ。」



「……いや、秘密を知られ強請られて肉体関係を強要されるという気の毒な女性の話を聞いた事はあったが………

まさか、俺がその女性らの立場に……え?……お前、大丈夫か?色々と…ココとか。」



思わずガインが、セディに囚われてない方の指で自身のこめかみをトントンと叩く。



「大きなお世話ですよ。人の趣味をとやかく言う前に自分の心配をしたらどうなんです?

あの麗しき皇帝陛下を夫役とさせ、妻の役で虜にした隊長を味わってみたいと思う事が、そんなに不思議ですかね。

俺は隊長を哭かせてみたいですよ。僕の下で。」



セディの指先がガインの唇に軽く触れる。



「たった一回だけでいいんですよ。

そうすれば隊長が隠したい秘密は守られ、貴方が女役だと誰にもバレないで済む。

一回やる位、陛下にだって黙ってればバレやしませんって。」



スゥっと軽くガインの唇をなぞった指が離れ、セディがガインから離れた。



「今すぐ決めろなんて言いません。明日の夜、また此処に来て下さい。

無視すれば……隊長と陛下の関係をまずは義娘さんに伝えますんで。」



去って行くセディの姿を見送ったガインの心臓がズクッと鳴った。


抱かせろなんて言われてハイなんて言える筈も無く、弱味に付け込んで人を脅迫するなんて、馬鹿野郎、フザけた事を言うな!と曲がった根性を叩き直すつもりでボコボコになるまで教育的指導をしてもいいと思った。



だが、ミーシャにバラすと言われたその言葉だけが、ガインの胸を締め付ける。

愛娘にとって良き父親であり続けたいガインは、ミーシャに恥をかかせる事を避けたい。



「俺がミーシャに軽蔑される位ならば構わん…だが、俺がそのような立場だと広く知れ渡る事となり、それによりミーシャまでもが嘲笑の的となってしまったら…。」





キリアンに内緒にして、たった一度だけ我慢すれば……

そうすればミーシャが傷付かないで済むのか……?



我慢?我慢て……あんな若造に、キリアンに許しているのと同じ行為を許せと?



無理だろ!!そんなもん!!

だが断ればミーシャが………





「…はぁ…もう、覚悟を決めるしかないのか…。」





ガインは痛む頭を撫でる様に左側の額に手を当て、こめかみの傷を指先で撫でた。



「キリアン…………」

















自室から執務室に仕事場を移したキリアンは、執務室の机にて隣国の襲撃に関する報告に目を通していた。



証拠不十分なまま隣国の姫君が首謀者だと暴く事が出来ず、その姫君は病により急逝したとの報告にて終わった事件ではあったが、秘密裏に調査は続けられており、キリアンの手元には隣国からの内々での賠償の申し出があった。



多額の賠償金と、ベルゼルトでは入手しにくい農産物、鉱石等の特産品等が運び込まれる予定との報告書に目を通したキリアンは、それをランプの火に焚べて燃やした。



「どんな脅し方をしたんだかな……戦争回避と同盟関係の維持、姫君の生死についての詮索はしない事を条件にしたのか。」



キリアンは執務室の壁に掛けられた、前皇帝夫妻である父母の肖像画に目を向ける。



キリアンと同じ金髪と碧眼を持つ美しい皇妃であったキリアンの母は、隣国と同じく軍事国家と言われた国の出身で女傑であった。

男女共に武器を振るう強者の国でありながら、秘密裏に事を運ぶ暗殺部隊の働きでも名を馳せる国だ。



「ガインにも内緒っての…ツラいよな。

この国の暗部組織の存在……叔父上のコト…。」



皇帝以外に誰ひとりとして存在を知られてはならない。

それを条件として国が安定するまでの契約で皇妃の生国より派遣されている少人数の暗殺部隊がベルゼルト皇国には居る。



「見れば見るほど、母上に似てるし…セドリック叔父上は。

滅多に姿を見せないけど、今何処に居るんだかね。」



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