【R18】熊の様な45歳の近衛隊長は、22歳の美貌の皇帝に欲しがられています。

DAKUNちょめ

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婚約の報告に里帰り。と見せた避難。と思わせて実は観察旅行。

激しく交わり互いを貪り合った後の残滓を眺め、キリアンは繋がったままベッドの上で気をやったガインを見下ろした。

全身をありとあらゆる体液にまみれさせ、半開きの白眼をむいて意識を飛ばしたガインのグっチョグチョの姿を美しいと思うキリアンは「ほぅ」と満足気な吐息を漏らしてからガインの蜜壷の中をクッチュクッチュと数回突き、気を失った状態でもヒクツと顎を動かすガインに堪らずぶるっと身を震わせつつも、名残りを惜しみながらズルリと楔を引き抜いた。


後始末にも慣れたキリアンはテキパキと後処理を済ませガインの身体を綺麗にし、シーツも真新しい物に替えた。
綺麗になったベッドに横たわったキリアンは枕に肘をついた手に頭を乗せると、泥に沈む様に眠る隣のガインの寝顔を覗き込んだ。


「行方不明となっていたケンヴィーが見つかった…だと?
しかも大怪我をしており、カリーナ義母上と共にリスクィートに居るだと?」


眉間にシワを寄せ険しい表情をしてキリアンが呟いた。

カリーナは夫も息子も愛さない薄情な印象を人に与えるが、表現が下手なだけで決して薄情な人間ではない。

傷付いた我が子の姿を見て、どのような感情を持つかが分からない。

我関せずを貫くのか、鬼女の如き怒りを顕にするのか。
鬼女に転ずるなら、その怒りの矛先がどこに向かうのか。


「今になって消息が明らかになるとは、仕組まれた様で気味が悪い。
これは確認が必要だな。」


キリアンはベッドの隣で眠るガインに目を向け、汗が乾いてゴワゴワになった硬い黒髪を優しく撫でた。

やっとの思いで手にした愛しい人、そして夫婦として過ごす至福の時。
この先も続く筈のこの幸せを守らねばならない。

その為には国を、国を支える人々をも守らねばならない。


「俺の行く手を阻み邪魔する者は誰であろうと容赦しない。」


キリアンの紺碧の瞳に、ゆらりと焔が灯った。












ベルゼルト皇国王都の中央にキリアン皇帝が住まう王城がある。

広大な王城の敷地を囲う高い城壁には、正門以外にも幾つかの門がある。

中でも裏門と呼ばれる場所は、数カ所ある門の中でも1番狭く質素な造りで、門番も複数名おり堅牢ではあるが王宮部分からは離れており、主に業者や使用人が出入りに使う門である。

運搬用の馬車が数台停まる広場を有した場所には、荷の確認や食品、生活物資等の商談をする場所が設けられており、休憩所も兼ねたあずま屋がある。

そのような場所に貴族が立ち寄る事など滅多に無いのだが、この日は珍しく貴族のご令嬢が立っていた。

そして、小綺麗な身なりをしているが平民とおぼしき青年にグイグイとせまっていた。


「お初にお目にかかります!
わたくしは伯爵家の者で、ドロテアナと申します!
ガルバンゾー様!貴方の書かれた作品、拝見致しましたわ!」


「えっ?いや、私はガルバンゾー先生では…」


伯爵令嬢ドロテアナにガルバンゾーと呼ばれた青年は、人づてに渡されたミーシャの小説原稿の束を持ち、この場を立ち去ろうとしている所であったのだが、いきなり見知らぬ令嬢に捕まってしまった。


出版所に勤めミーシャの担当をしている青年は、ガルバンゾーの正体がミーシャである事を知ってはいるが、それを明らかにする事は出来ない。

世間に認識されているガルバンゾーは謎の青年作家という触れ込みで、その名を売っている。


「わたくし妹に勧められて、気乗りはせずに読んでみたのですけれど…こう、読み進めていく内に段々とガルバンゾー様の描く世界が目の前に広がって……ああ!
この様に心躍る事など、何時ぶりでしょう!
この感動をお伝えしなくてはと、登城する度に侍女に裏門を見張らせてましたの!」


「あ、あの……わたしはガルバンゾーでは御座いません…よ?…」


貴族に無礼を働く事は出来ない。
青年は恐る恐るドロテアナの言葉を否定したが、ドロテアナは興奮し過ぎてか、聞く耳を持つ様子がない。


「わたくしがお城におります時にガルバンゾー様がお見えになるのを今か今かと待っておりましたの!
今日はなんて素晴らしい日なのでしょう!
婚約者の居る身でガルバンゾー様を誑かす不誠実なミーシャ様は、ご実家にお帰り中ですし!
邪魔をされる事もなく語らえますわね!」


「………ですから私はガルバンゾー先生では………
うぅ…私も早く帰りたい…
どう説明すれば理解してくれるんだ…」


ドロテアナに捕われた青年は、休憩所の隅の席に座らされ、時間の経過以外ではドロテアナの言葉を肯定する以外に逃げ道の無い訊問をされる事となった。

ミーシャから預かった原稿を青年に渡したノーザンは、その場をいち早く離れかけた際に青年がドロテアナ伯爵令嬢に捕まり、グイグイ迫られる現場を見てしまったのだが助ける事は出来ず、見なかった事にしてその場を離れた。

ノーザンは、今だに押しの強い女性がコワイ。


「こ、ここ、婚約者か……婚約者……」


何度か噛み締めるように呟き、テレッと緩んだ表情を隠す様に手の平で口もとを覆いながら裏門を離れたノーザンは、城に入る前に高い空を見上げる。


「ミーシャ嬢は、今どの辺りに居るのだろう…。
王都にある隊長の伯爵邸ではなく、故郷である領地の本邸の方へ行くと言っていたからな。
ご両親のお眠りになる……。」






二週間程前━━

ミーシャは義父ガインに、婚約の報告を兼ねてガインとミーシャの故郷であり、本邸のある領地の方へ一度里帰りするよう言われた。

故郷におめでたい報告をしに向かえと言うよりは、何処か思い詰めた様に固く深刻な面持ちのガインにミーシャは理由を問いたかったが、ガインはそれを許さなかった。

ガインの態度は敏いミーシャには逆効果で、正解に等しい答えを導き出した。

婚約の報告を理由の帰郷にも関わらず相手のノーザンは城に残し、ミーシャ1人だけを王城から離れさせようとするのは、危険から娘だけでも遠ざけようとするガインの親心なのだろうとミーシャは把握した。

何かしらの危険が迫っているのならば、義父ともキリアンともノーザンとも最期を迎える覚悟があり、城を離れたくないのがミーシャの本音ではあったが、ガインは頑なにそれを拒んだ。






「見送りはしないでと言ったじゃない。」


ミーシャが城を発つ日の早朝。

荷物を抱え一人寂しく部屋を出ようとしたミーシャの自室に、こっそりとキリアンが訪れた。


「見送りじゃないよ。
ミーちゃんに、お願いがあって来たんだけど。」


ミーシャの部屋は今はガインの自室となった皇妃の部屋を間に挟み、キリアンの自室の並びにある。

隣室にガインの気配が無い事から、ガインはキリアンの部屋に居る模様。

早朝という事もあり、キリアンの部屋でまだ寝ているのであろう。

また朝までケダモノの様に義父と交わり合っていたのかと、ミーシャがジトっとした視線をキリアンに向ける。

ミーシャの視線に気付いたキリアンは肩を竦めて微笑しつつ、否定する様に首を振った。


「パパもキリお兄ちゃんも私をお城から遠ざけたい理由を何も話してくれないのに、キリお兄ちゃんからは私にお願いするなんて、随分と調子いいんじゃないの。」


一度王都にある伯爵邸に向かってから旅支度をするミーシャは、簡単に手荷物だけを纏めながら、いつものぬぼーんとした表情に抑揚の無い声で話した。


「話すまでも無く、ガイン見てたら分かるだろ?
全部顔に出ているし。
戦争が始まる恐れがある。だからミーちゃんだけでも戦火の被害に遭わない様にしたいってガインの親心。
まぁ先走り過ぎなんだけどな。
それが本当に始まるかも、いつの話かも分からないのに。」


「だったらキリお兄ちゃんからパパにそう言ってくれたら良かったのに。
なんで私1人で田舎に引っ込まなきゃならないのよ。」


不満を口にして眼鏡の奥からキリアンを睨むミーシャにキリアンが苦笑した。


「ミーちゃんの里帰りをガインに勧めたのは俺だから。
それを避難させるのだと解釈したのはガインなんだけど。
俺からのお願いに、ミーちゃんの里帰りが必須だからね。
ミーちゃんには、ガインの領地の様子と本邸の様子を見て来て欲しい。
あとお土産にガルバンゾーの種とゆーか豆を持ち帰ってほしい。」


「それは…戦争を回避するために必要な事?
何かを探って来て欲しいって意味かしら。」


「いや観察程度で構わない。戦争とも関係無い。
平和なら平和で良いのだし。
あとガルバンゾー、王城で栽培出来ないかなーって。」



ミーシャは訝しげな表情をしてキリアンを見た。

お土産が欲しいだなんて、結局は城に帰って来いとキリアンは言っているワケで、戦争に巻き込まれないようミーシャを王都から遠ざけたいガインの意図からは外れてしまう。


「本当に戦争は起こるのかしら。」


「うーん……宣戦布告は受けるかも。
それよりも今、俺にとっては………
ガインが隠居したら引きこもりたいと何度も言っていた、ガインの田舎がどんな所かの方が気になるんだ!
何よりもね!」


ミーシャは真剣な表情で告げられた、キリアンの言う重要な話が全く心に刺さらない。

宣戦布告を受けるかも知れないという大変な事態を越えてまで必要性のあるものに感じられない。


何よりも気になるって…田舎の暮らしとひよこ豆がか。


「そりゃ…パパは処理し切れない事象に遭遇した時に、よく田舎に引っ越そうだの言っちゃってたけど。
パパの実家のある領地は本当にただのど田舎よ?
そんな所の情報が欲しいの。」


キリアンに狙われて逃げている内はよく口にした田舎への逃避行だが、キリアンを受け入れた今ガインはそのような事を言う事も無くなった。

なのに今、なぜその情報が欲しいのか。


「領地の奥には、天然の温泉も湧いていると聞いたよ。
いつか一緒に入ろうと、幼い俺にガインが言ってくれて……。」


「先に言っとくけど、入浴時の肌着着用厳守よ。
女性は滅多に来ないけど基本的には誰でも自由に入れるから、パパと2人きりでヤラシー事は出来ないから。」


「………えぇー………」


「えぇーじゃなくて。」


しょもーんとあからさまに残念がるキリアンに、ミーシャが冷ややかな目を向けた。


「何だかよく分からないけど、それでキリお兄ちゃんが納得するならいいわよ。
両親の墓前に婚約の報告も出来るしね。
それに…………
両親の葬儀以来顔を見せてないから、ご挨拶に伺わなくてはと思っていたし丁度いいかもね。

お元気かしら、大伯父様。」





二週間前の城を発つ日に、キリアンとそんな言葉を交わしたミーシャは馬車を使えば20日近く掛かる道のりを馬を駆り、王都の邸から腕の立つ従者を2人伴って故郷に帰って来た。

インドア派のミーシャではあるが、馬術はミーシャがガインに申し出て身に着けさせて貰った。

そのノリで、槍術も少しかじらされている。


ミーシャは馬を下り、広大なひよこ豆畑を見渡した。
青空の下に広がる緑色の畑とのコントラストが何とも美しい。

見ているだけで清々しい風景なのだが、緊張という言葉とは余り縁の無いミーシャが少しばかり緊張の漂う面持ちをしていた。
ミーシャと共に来た従者にも緊張感が漂う。


「さぁ、先代ヴィルムバッハ伯爵の大伯父様にご挨拶に行かなきゃ……。

………パパの、お父様に。」


ミーシャと従者2人が、青白い顔をして胃のあたりに手を当てた。

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