【R18】熊の様な45歳の近衛隊長は、22歳の美貌の皇帝に欲しがられています。

DAKUNちょめ

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姿を消した二人。皇帝を襲う城内の新たなる変化。

ベルゼルト皇国は広大な国土を有する大国である。

幾度となく侵略者との戦火を交え、それに打ち克つ度に国土を拡げた歴史を持つ国でもあり、国民は多種多様な民族や文化の流れを汲む者も多い。

キリアンの城も国の縮図の様に戦の都度敷地を拡げ、その広大な敷地を有する王城には、使用人らも全てを合わせれば、ゆうに千人を越える多くの人間が居る。

王城の外から通う者や業者など、日々城を訪れる者も多く、紹介者無く初めての入城となる者は門兵によって一時拘束され、身元を詳しく聴取される事となる。


それらを上手くかいくぐり入城を果たした、既に馴染みとなった者たちの中に、諸外国の間諜が紛れている事をキリアンは把握していた。

それらの人物はキリアンが信を置くセドリックの配下となるヴィーヴルの者によって密かに監視されており、不穏な動きがあった場合は逐一キリアンに報告がなされる手筈となっていた。

彼らは、セドリックがベルゼルトを離れリスクィートに行っている間もセドリックの指示に従い、キリアンには逐一の報告を常としていたのだが━━


マンダンに関してだけは、詳しい報告がなされなかった。


「マンダンを狙った暗殺者が城内に入り込んだ、それらを手引きしていたのが、暗殺対象であるマンダン本人だったとまでは聞いたが…。」


キリアンは人払いをしてあり周りに誰も居ない玉座にて思案し、ポツリと独り言つ。

マンダンは囚えたと聞いたが、牢にマンダンは居らず、入った形跡も無かった。

そして、囚えたとの報告があった翌日にマンダンは、ベルゼルトの城から忽然と姿を消した。


「セドリックの部下であるヴィーヴルの者たちが俺を謀ったりする筈が無いし俺の命令無く勝手に処分などしたりはしないだろう。
…………彼らは口をつぐむが嘘は言わない。」


マンダンの消息については、セドリックの部下である皆が一様に口を閉ざした。
彼らがセドリックの指示に従わない理由を推察するならば一つ思い当たる事がある。

それは序列厳守のヴィーヴルに於いては絶対的なもの。


「そう…マンダンだけではなく、奴も城から居なくなった。
ヴィーヴル出身のおっぱいマスターギャリー。
奴がヴィーヴルにおいて、セドリック以上の地位にあるならば、その可能性がある。」


だとすれば、ただのヴィーヴル出身の騎士としてベルゼルト城に雇われに来たギャリーが
本来はヴィーヴルの暗部組織に身を置く者であり、ベルゼルト国内にて影としての働きをするならば、その雇い主は自分ではない。


「母上の生国であるヴィーヴルが関わっている以上、俺の敵とはならないだろうが…一体誰がギャリーを……
セドリックはギャリーの正体を知っていたのだろうか」


キリアンには彼の描く思惑がある。
その思惑の障壁とならないのであれば良いが………



「陛下。」


玉座に腰掛けたまま、声を掛けられたキリアンがそちらに顔を向けた。

人払いをしており、誰も居ない筈の玉座の間に青年騎士が独り立っている。
キリアンは訝しげに青年に問うた。


「人払いをしてあった筈だが。」


「何度かお声掛けしたのですが、何かを深く思案中の様で…気付いて戴けなかったので、お側に参りました。」


凛々しい青年の騎士はキリアンの玉座前の階段下に進み出ると片膝をついて傅き、熱のこもった瞳でキリアンを見上げた。

キリアンは、あーまたコレか…と辟易した表情を隠さずに大きな溜め息を吐く。


「わたくしは……ずっと陛下をお慕いしておりました。
ですが…お慕いするがゆえに、わたくしには陛下にわたくしの想いを告げる事は出来なかったのです。」


青年は苦悩する様に、眉を寄せ苦しげな表情を見せて胸に手を当てギュッと心臓の当たりを掴む仕草をした。

キリアンは高い玉座の上から、回りくどい言い回しをし一人芝居の悦に入った様な青年を冷めた目で見下ろす。

この様に無意味な懇願は時間の無駄だと、苛立ちを隠さずキリアンが先に口を開いた。


「だから何だ。
私を抱きたいとでも言うつもり━━」


「陛下!どうか、わたくしを!
……抱いて下さい。」


キリアンが最後まで言い切る前に、青年が言葉を被せて発した。

青年の言葉を聞き、言葉途中で声を失ったキリアンは、しばし無言で茫然と玉座から青年を見下ろしていたが、間を開けてやっとで声を発した。


「……………………………………

……………そうきたか。」












「ギャリーが暇を申し出たんだって?急だな。」


「ええ、色々な意味で難アリでしたが、彼は騎士としてかなり優秀だったので……とても残念です。」


兵士の鍛錬場にて、鍛錬に励む兵士達を見ながらガインとノーザンがおっぱいマスターの話をする。

ベルゼルトの城に務める兵士達は、連日鍛錬を精励する事を欠かさない。
先の内戦を経験した者も、その後に新しく兵士となった者も、身体を鍛え技を磨き、来たるその日に備え自身を高める。

それらを監督、指導してゆくのはガインやノーザンを含む、階級や出自を問わずに実力を伴う騎士や兵士達だ。

ここでは新兵ならば上位貴族出身であろうと、副隊長である平民出身のノーザンにも逆らう事は許されない。

その上下関係は鍛錬場を離れようと城内では絶対で、過去には陰で自身の地位を笠に着て上官を貶めようとした者に厳罰が下る事もあった。


この国において、兵士や騎士を統轄する最高権力者は軍を預かる伯爵のガインだ。
この場でガインに逆らう事は、ガイン以上の地位を持つ者であろうと許されない。


たった1人の例外を除いて━━



「ガイン!話がある!」


「へ、ヘヘ陛下!?」


突然、鍛錬場に現れたキリアン皇帝陛下に対し、ガインは思わず頓狂な声をあげる。

鍛錬をしていた全ての兵士が手を止めキリアンの方を向き、その場に片膝をついて頭を下げた。


「陛下、俺……いや、私に話とは?」


いきなり鍛錬場を訪れたキリアンの切迫した様子に、ただ事ではないのかもとガインとノーザンが真剣な面持ちでキリアンを見る。


「ノーザン、ガインを連れて行く。
後は頼んだぞ。」


「はっ!」


ノーザンの了解を得たキリアンは、ガインの腕を掴んで早足で歩き始めた。

キリアンに腕を掴まれたまま城内を歩くガインの脳裏に不安がよぎる。

皇帝であるキリアンが、この様に切迫した状態になる心当たりが一つしか思い当たらない。


「まさか…!
ついにリスクィートから戦争を仕掛けられ……」


キリアンの私室に到着し、部屋の中に招き入れられたガインは、ドアを背にした状態で突然キリアンの激しい口付けを受けた。


━━???????━━


あまりにも唐突過ぎて理解が及ばず、ガインはキリアンのなすがままになってしまう。


身長差のあるキリアンはガインの首に腕を掛けてガインの顔を下に向かせ、下から掬う様に唇を押しあて舌先を使って強引にガインの口を開かせた。

隙間を割り開く様に侵入した舌先は力強くガインの腔内でうねり、上顎や歯列をなぞる。

キリアンは顔の角度を変えても重ね合わせた唇だけは離さず、ガインの呼気をも奪う様に呑み込んでいった。


「………ッンぅっ!!……ちょ!待てよ!
何なんだ、いきなり!」


間を置き、無呼吸の苦しさに止まっていた思考が回り始めたガインがキリアンの両肩を持って身体を押し離した。

ガインに両肩を持たれたまま唇と身体を離されたキリアンは、互いの唾液に濡れた下唇を親指で拭う。


「俺とガインの本当の関係が…少しずつ周りに知られ始めている。」


「…………あぁ…………」


キリアンの肩に置いた片手を下げ、ガインが俯いた。

ガインとしては出来れば隠しておきたかった二人の関係ではあるが、ミーシャにも知られた今となっては無理に隠そうとはしていない。
(※恋人同士と知られたが肉体関係がある事をミーシャには隠せてると根拠も無く思い込んでいる)

かと言ってガインは二人の関係を大々的に公言するつもりもないし、直接聞かれる様な事があれば否定も肯定もせずに濁すつもりだ。

ガインがそうする事についてはキリアンも、『隠し通したい』から『隠さなくてもいい』に変わった事を「大いなる前進」だと了承している。

大々的に公言したいキリアン自身がどうするかは別として。


「だが詳しく知られているワケでなくて、俺が男を抱く側って話だけが浸透しつつあるようだ。
……初めて、俺に抱かれたいって男が現れた。」


「………そりゃまた……勇気があるこった……。」


女神の様だと喩えられるキリアンを抱きたい男ならば今までに何人も現れた。
美しい物を自分の物にしたいという欲望は理解出来る。
だが、その女神の様な美しさを持つキリアンに抱かれたいとは……

奪いたい感情とは違い、差し出す側の感情を考えるならば、よほど自分に自信が無ければ、おこがましくも思えたりしないのだろうかとガインに変な老婆心がわく。


「俺が男を抱きたい側だとだけ知られているせいで、見たくも無い男の尻を見る羽目になったんだ!」


「ほう、そいつはキリアンの前でケツを出したのか。」


「出してないけど!今にも出しそうな勢いだったんだ!
気持ち悪いから部屋から蹴り出したけど!
汚い男の尻なんて、そんなの見たくもないよ!」


よほど嫌な思いをしたのか興奮気味に苛立ちを吐き出すキリアンをなだめつつ、ガインが複雑な表情をした。


「うーん…汚い男の尻っつーたら、俺のケツなんか最たるモンじゃねぇか?
若くもねぇしデケェわ毛が生えとるわカチカチだわ…」


「全ッ然違う!!汚いワケ無いじゃん!
ガインの尻はパンと張っててガッチリしていてムチムチで!
揉んだら弾力最高で!
キュッとキツイ結び目がもうやらし可愛いくて!
毛だってフワッと可愛らしくて!
ただもう、最高に美味しそうで………
はぁ…今すぐ食べたい。」


あ、なんかヤベー

ガインがそう思ったが、時すでに遅し。
ガインのトラウザーズの中には、キリアンの手が既に入っていた。


「待っっ!!早っ!手慣れ過ぎてて怖いわ!」


「もう俺は限界かも知れない。
妻であるガインだけが俺の相手だと周知されなければ、また今日の様に、俺に汚い尻を掘られたい奴が寄って来るかも知んない。」


キリアンの手の平は蛇が這う様にトラウザーズの内側を進みガインの肌に直に触れ、やがて巨大なガインの竿を手の平に置き、小指から順に指を曲げ指を巻き付ける様にして強く握った。


「んぅッ…つう……イテ…!」


「ねぇガイン……もし……だよ?
ガインが俺との関係があやふやなまま、受け入れる側だって情報だけ知られてさぁ……
もし、この先さぁ………ガインを抱いてみたいなんて輩が現れたらさぁ……………
俺さぁ…生きたままそいつの四肢を引き千切ってはらわた引っ張り出しても、怒りが収まらない……」


ガインの竿を握り締めたままガインを見上げたキリアンの顔は、悪鬼羅刹の様に怒りをあらわにした表情では無く

感情を全て棄て去り、瞬きさえしなくなった目だけ大きく見開いた状態での無表情だった。

瞳孔が開いた様に見える目は生気が無く、まるで死者の様でありながら、なのにえげつない殺気を立ち昇らせる。

それが余計に恐ろしい。


「わわわ分かった!!分かったから!!
妄想が理由で、息が詰まりそうな程の殺気を発するな!!」


ガインは改めて自身の立場を理解する。

自分はキリアンにとって、臣下であり側近であり父であり師匠であり………妻であり后であり………と多くの立場を有するのだが、今改めて

そう言えば、キリアンの精神安定剤でもあったのだなと。



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