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厚い壁の向こう側。
「駄目だ…!そんな強くこすったら…ンあっ!あっ!あっ!ま、待て…や、やめ…!ふぁっ!!」
キリアンは指によるガインの後孔への抽挿と同時に、屹立した性器をも激しく責め立てる。
その動きに呼応する様に、ガインは四つん這いで高く上げた臀部をガクガクと不規則に上下左右に揺らし始めた。
顔の下にある枕に顔半分を埋めた状態で、半開きになった口からは抑え切れずに切なげな声を絶え間なく漏らし続ける。
「あっ、あっ…くぅ!ソコっ…!あぁあ!
ソコ、気持ちいい…イイ…ンん…!」
「おしとやかに声を殺すんじゃなかったの?ねぇ。
そんな大きなよがり声を出していて良いの?
いくら壁が厚いとは言え、壁の間近くだよ。
ミーシャに聞こえるんじゃない?いいの?」
キリアンは、快感に理性を手放しそうになるガインを敢えて引き戻す。
ミーシャの名を聞いたガインは、思い出した様にハッと表情を変え、踏みとどまる様に再び無意味な抵抗を始めた。
「や…ムリッッ!嫌だ、一回止めてくれ!
ミーシャに聞かれたくな…ちょ…ひぁっ!」
「気持ちいいって言ったクセに、そうやって、やめてとか止めてとか心にも無い事を言って俺を煽る…ふふっ。
誰よりも俺を愛してるって証明してくれるんじゃなかったの?
答えは『かしこまりました』のみだって教えたよね。」
キリアンは、手の平に握ったガインの性器の吐出口を押さえた指を少し緩めた。
吐出口から指の腹を少し浮かせるとキリアンの指を押し返す様に、ガインの鈴口からプシュっと欲液が噴き出して漏れ出した。
キリアンは愉しげにトントンとガインの鈴口を叩いて口を塞いだり解放したりを繰り返し、中途半端に塞き止められた鈴口からタラタラと白濁液が滴り落ちてシーツに染みを作ったのを見てほくそ笑んだ。
「か、かしこまりました……だが…隣にはッッんぅ!
一回!一回止めてくれ…!頼むから…!」
「この期に及んで、まだ俺よりミーシャを気にするの。
シーツの上に、こんなにも濃くてやらしいオスのニオイを撒き散らしながら俺を欲しがってんのに。
俺が止めてあげたりなんてすると思う?
ガインは、俺って男をまだ分かってないのかな?」
キリアンはガインの内側に埋め込んだ指をクップクップと出し入れし、内側で指を開いてクパァと口を拡げた。
「ひ、拡げるなっ!
わ、馬鹿!んなトコに舌ッッ……うぁ……あ、んぁン…」
「ガイン本人よりも身体の方が、俺を良く知っているみたいだね。
こんなに早く馴染んで、俺を早く欲しいとおねだりして…内側の肉ヒダが指先にやらしく絡み付いて来る。」
指を咥え込んだまま強弱を付けて収縮する後孔の淵にツゥと舌先を這わせ、キリアンはガインの内側の一部を集中して擦り、タンタンと叩いて刺激を与える。
「ナカっ…ソコ、ソコ擦ったら…駄目だ、イく!」
「さっきから既にお漏らし状態じゃないか。
部屋の中、ガインのやらしいオス汁のニオイでいっぱいだし。
なのにまた、主の俺を差し置いて先にイくの?
お尻振って、まるで発情中の淫乱なメス猫みたい。」
「だって!だってよ、キリアンに触れられてんのが気持ち良くてっ…たまんないんだって…!
もぉ…もぉ!キリアンの熱いのでナカを激しくほじくられたい…!」
「そんな、はしたないおねだりしちゃうんだ。
分かってるよね、俺、止まらなくなるよ?
ガインもアンアン声あげるの止まらなくなるよね。
ミーシャにも聞こえちゃうけど…いいんだね?」
「そ、それはヤだ…!ヤだけど…!けどっ…!
嫌なんだけど…!」
「ガイン、そこはかしこまりましたって言って貰わないとね。
ふふっ、もう自分でも止められないんだね。
お望み通り、よがり声が止まらなくなる程に掻き回してあげるよ。」
━━━━い……いたたまれない。━━━━
ガインの私室の隣、ミーシャの部屋を訪問中のノーザンは、この場から逃げ出したい衝動に駆られていた。
薄い壁の向こう側から聞こえてくる、尊敬する上官の━━やがては義理の父となる婚約者の父親の、あられもない声を聞き続けている事に罪悪感の様な物を感じずには居られない。
とは言え、このまま婚約者であるミーシャと共に部屋に居続けたい気持ちも強く腰は重いのだが、ノーザンはどんな態度でこの場に居るのが正しいのかも分からずに困惑状態だ。
当のミーシャはと言うと、いつも通りのぬぼーんとした顔で、平然と菓子を頬張っている。
ミーシャは口の中の菓子を流し込む様にグイッと茶を一気飲みすると、テーブルの向かい側で茶にも菓子にも手を付けずに固まっているノーザンの顔をジッと見た。
「ノーザン様どうしました?
お茶も菓子も手を付けずに黙り込んだままで。」
「いや…あの…」
この居たたまれない気持ちを、まるで何事も無いかの様に平然としているミーシャに何と説明したら良いかと言いあぐねているノーザンに、ミーシャがサラッと返す。
「私と一緒にお茶をしたいから訪問なさったのかと。
特に用が無いのでしたら、お仕事に戻って頂いて結構ですわよ?」
嫌味でも皮肉でも無く通常通り、あっさり塩対応なミーシャにノーザンの方が少なからずショックを受けてしまった。
今までノーザンに猛アピールしてきた女性達の様に、甘えたり縋ったりを一切しないミーシャだからこそ、女性に対する苦手意識が働かずに好きになったのだが、今はそれが寂しくなりつつある。
「いや、貴女と御一緒させて頂きたいと思っておりました!
た、ただ…何と言いますか…隣が…あの…仲がよろしいのは大変結構なのですが…。
こう…例えばなんですが、シーツにくるまって外に声が漏れない様に互いに愛を囁き合うとか…
もっと慎ましやかに愛し合えば良いのになと…思うと言いますか…。」
隣室がある壁の方に目をやったノーザンはゴニョゴニョと小声で言いながら顔を赤くし、ぬるくなった茶の入ったカップに口を付けた。
コクリと一口茶を口に含むが、喉が詰まってすぐには飲み込めない。
少し間を空けて、やっとやっとで口の中の茶を飲み込んだ。
「キリお兄ちゃんは全てをさらけ出させたいと、そういう愛し方をする人ですし、パパもそれに満足してるんだから、それでいいんじゃないですか。」
「そういうものなのでしょうか……。
私の知る、愛の営みというものとは違い過ぎて…」
性経験の無いノーザンにとって、性行為は未知の分野である。
性行為についてを記した書物等から得た多少の知識はあっても、こればかりは実体験が無ければ何も分からない。
「ノーザン様は、ベッドの上でしか見られない『私』を知りたいとか思いません?
ノーザン様が触れる事でしか見る事の出来ない、ノーザン様以外は誰も知る事のない私の姿を。」
「……!そ、それは……」
テーブルに頬杖を付いて意味有りげに微笑むミーシャの言葉に、あられもない姿のミーシャを想像をしてしまったノーザンだが、いかんせん情報と想像力が乏しく、ノーザンの頭に描かれたベッドの上のミーシャは飾り気も透け感も無いネグリジェを着たまんま、色気も無くぬぼーんと横たわった状態だった。
━━━……なんてことだ!
妄想すら理性が箍を外す邪魔をするっ!
いや、私の想像力がそこまで追い付かない!━━━
ノーザンの心の中では残念な思考を悔やむ自分と、思考の中でまでも理性を保った紳士的な自分を誇らしく思う気持ちがせめぎ合う。
いや…変な妄想をしなかった事を紳士的だと褒められたいってのもおかしな話だ。
と言うより、目の前のミーシャはむしろ妄想してみろと言わんばかりにノーザンを見てニヤリと笑う。
「わ、私は…その時が来るまでは、頭の中とは言えどミーシャ殿のあで姿を想像するのは気が引けます…。」
「あら私は、ベッドの上の私だけが知り得るノーザン様を見たいと思いますわよ。
だからいつも想像してみたりしていますわ。
理性が飛んだノーザン様は、どうなってしまうのか…
性欲旺盛なケダモノになってしまうのか、イジメられたくて乱れるタイプなのか……
私の想像と違うのか、越えていくのか…暴きたいです。
あ、コレがキリお兄ちゃんが言う答え合わせなのでしょうね。」
ミーシャが言う様に、ノーザンは自分がキリアンの様なケダモノになるとか、ガインの様に乱れるとか想像もつかない。
しかも例えが両極端過ぎる気もする。
「期待を裏切る様で申し訳ありませんが、私は私のままで変わらない気がします。
ベッドの上では、いつもの私ではない私になるとか…
そんな事、想像もつきません。」
ミーシャとの会話に変な緊張をしたノーザンは、乾いた口を潤す為に茶を口に含んだ。
「でしたら、初夜は勝負ですわね。
私、ノーザン様も知らないノーザン様を暴き出しますので覚悟を。」
「ブハッ!!!」
ノーザンは思わず口から茶を噴いた。
夫婦が初めて情を交わす神聖なる初夜が、なぜかバトルステージに。
「お互いに未経験ですから、勝率は五分五分ですわね。うふふ…楽しみにしていて下さいね。」
━━━五分五分?な、何が!?
受け入れる女性側が勝つとは、どういう意味だ?
え、まさか私を隊長みたいに乱れる側にしたいって事か!?
ミーシャ殿がリードしていく感じで??━━━
「…………お手柔らかにお願い致します。」
互いに初めての経験、スマートにこなせる自信などあるはずも無く、花嫁が自らリードしたいと言うのならば、それはそれで悪くないかも知れない━━そんな考えが浮かんでしまったノーザンは濡れた口元をナプキンで拭いながら小さく呟いた。
が、ひとつの懸念も浮かぶ。
━━━初夜当日に、花嫁が私の尻を責めたりなんてこと……無いよな……?━━━
「さぁガイン、主の俺を受け入れて、もっと淫らな姿を見せてくれ。」
「かしこまりました…!だからっ…だから…!
ワタクシのはしたない、この孔に…!」
箍が外れ掛けたガインは思考が停滞してしまい、導かれた状況に簡単に自我を染めてゆく。
ガイン的には意味不明だった主と執事というシチュエーションを無意識下で受け入れ、そこに自分を落とし込んでゆく。
ガインは仰向けになり大きく足を開いて腰を浮かせ、キリアンを迎え入れたい淫口を晒した。
「いい子だガイン、ミーシャの事を忘れる程に激しく乱れてくれ。」
キリアンは既に臨戦態勢の凶器の様な巨樹を出し、晒されたガインの淫らな口に切っ先を宛てがった。
が、キリアンの口から手放し掛けた理性を引き戻す名前を聞いたガインはビクッと身体も表情も強張らせ、キリアンの雄茎から逃れる様に浮かせた腰を下に下げた。
が、口に切っ先を宛てがったキリアンは位置を変えたガインを気にする様子も無く、そのままズブズブと巨樹の幹を挿し込んでゆく。
「ちょっと…!ま、待てっ!やっぱり、この場では…!んぁッ!」
「今さら何を言ってるんだ、ガイン。
もう、しっかりと咥え込んでいるだろう。」
「頼むから一回抜け!でないと俺は………」
「俺は?大声出してよがり狂うのを止められない?
いいじゃないか、俺に感じてくれるんだろ?
最高だよ。」
ガインの上に覆い被さったキリアンは、ガインの胸の粒を舌先でつつきながら、緩く腰を前後に動かした。
「ンっ…!や、動くなっ…!」
「皆に知られた、ミーシャにも既に知られている。
これ以上、何を隠して守ろうとしているんだ?」
キリアンは、ガインが自身の痴態をミーシャに知られたくないと強く思っているのを知っている。
キリアンは、ミーシャに痴態を知られまいと理性を保ち普段の自分を維持しようとするガインのガワを一枚ずつ剥がしてゆき、やがて箍の外れたガインの剥き出しの本心が現れた時の達成感にも似た感覚が好きなのだが……。
今日に限って言うならば、この期に及んでまだ自分よりもミーシャに対して意識が向くガインが面白くない。
「ガイン自ら俺の物であると暴露したんだ。
もう、諦めて皆に全てを知って貰おう。
ミーシャにも、だ。」
キリアンは繋がったガインの下肢をグイッと上げながら上体を壁の方に近付けた。
ガインの腰がキリアンの腿に乗り、繋がりが深くなるとガインが「ンッ…」と声を漏らしクンと顎を上げた。
キリアンはガインの頭の上にある壁に手をつき拳を握り、コンコンと壁をノックした。
「キリアン!?ナニしてんだ!!」
自身の頭上でミーシャの部屋とガインの部屋とを隔てる壁がノックされ、ガインが焦った様にキリアンのノックした右手首を掴んで制止した。
キリアンはガインに右腕を掴まれたまま、さほど大きくはない声で壁に向かって問い掛ける。
「ミーちゃん、今からガインを激しく愛してしまうけど、いいかな?」
コンコン
壁の向こう側からノックが返って来た。
その後に
『どーぞー』
少し遠いが確実にミーシャだと分かる声で返事が返って来た。
「!!!!!!!!!!!!!」
大きな口を開いて今にも悲鳴に似た雄叫びをあげそうなガインだが、声は出せず。
口と同様に大きく開いた目はまばたきすら忘れ。
両足を大きく開かせたおむつ交換の際の赤ん坊みたいな態勢のまま、ガインが完全に停止した。
「……………と、いう事だ。
ガイン、もう諦めろ。
これからは、俺とガインがどんなに愛し合っているかを皆に知らしめなければならないのだから。」
キリアンの下で石像の様に微動だにしなくなったガインを見下ろし、キリアンがクスリとほくそ笑む。
「ショックを受け過ぎて意識が何処かへ飛んじゃったか……まぁ……すぐに連れ戻してあげるんだけどね。
次は理性だけ飛ばして、俺の大好きなふしだらなガインになって貰わないとな。」
キリアンは手首を掴んだままのガインの手に口付けた後に軽く歯を立て甘咬みし、ゆっくりと腰を動かし始めた。
キリアンは指によるガインの後孔への抽挿と同時に、屹立した性器をも激しく責め立てる。
その動きに呼応する様に、ガインは四つん這いで高く上げた臀部をガクガクと不規則に上下左右に揺らし始めた。
顔の下にある枕に顔半分を埋めた状態で、半開きになった口からは抑え切れずに切なげな声を絶え間なく漏らし続ける。
「あっ、あっ…くぅ!ソコっ…!あぁあ!
ソコ、気持ちいい…イイ…ンん…!」
「おしとやかに声を殺すんじゃなかったの?ねぇ。
そんな大きなよがり声を出していて良いの?
いくら壁が厚いとは言え、壁の間近くだよ。
ミーシャに聞こえるんじゃない?いいの?」
キリアンは、快感に理性を手放しそうになるガインを敢えて引き戻す。
ミーシャの名を聞いたガインは、思い出した様にハッと表情を変え、踏みとどまる様に再び無意味な抵抗を始めた。
「や…ムリッッ!嫌だ、一回止めてくれ!
ミーシャに聞かれたくな…ちょ…ひぁっ!」
「気持ちいいって言ったクセに、そうやって、やめてとか止めてとか心にも無い事を言って俺を煽る…ふふっ。
誰よりも俺を愛してるって証明してくれるんじゃなかったの?
答えは『かしこまりました』のみだって教えたよね。」
キリアンは、手の平に握ったガインの性器の吐出口を押さえた指を少し緩めた。
吐出口から指の腹を少し浮かせるとキリアンの指を押し返す様に、ガインの鈴口からプシュっと欲液が噴き出して漏れ出した。
キリアンは愉しげにトントンとガインの鈴口を叩いて口を塞いだり解放したりを繰り返し、中途半端に塞き止められた鈴口からタラタラと白濁液が滴り落ちてシーツに染みを作ったのを見てほくそ笑んだ。
「か、かしこまりました……だが…隣にはッッんぅ!
一回!一回止めてくれ…!頼むから…!」
「この期に及んで、まだ俺よりミーシャを気にするの。
シーツの上に、こんなにも濃くてやらしいオスのニオイを撒き散らしながら俺を欲しがってんのに。
俺が止めてあげたりなんてすると思う?
ガインは、俺って男をまだ分かってないのかな?」
キリアンはガインの内側に埋め込んだ指をクップクップと出し入れし、内側で指を開いてクパァと口を拡げた。
「ひ、拡げるなっ!
わ、馬鹿!んなトコに舌ッッ……うぁ……あ、んぁン…」
「ガイン本人よりも身体の方が、俺を良く知っているみたいだね。
こんなに早く馴染んで、俺を早く欲しいとおねだりして…内側の肉ヒダが指先にやらしく絡み付いて来る。」
指を咥え込んだまま強弱を付けて収縮する後孔の淵にツゥと舌先を這わせ、キリアンはガインの内側の一部を集中して擦り、タンタンと叩いて刺激を与える。
「ナカっ…ソコ、ソコ擦ったら…駄目だ、イく!」
「さっきから既にお漏らし状態じゃないか。
部屋の中、ガインのやらしいオス汁のニオイでいっぱいだし。
なのにまた、主の俺を差し置いて先にイくの?
お尻振って、まるで発情中の淫乱なメス猫みたい。」
「だって!だってよ、キリアンに触れられてんのが気持ち良くてっ…たまんないんだって…!
もぉ…もぉ!キリアンの熱いのでナカを激しくほじくられたい…!」
「そんな、はしたないおねだりしちゃうんだ。
分かってるよね、俺、止まらなくなるよ?
ガインもアンアン声あげるの止まらなくなるよね。
ミーシャにも聞こえちゃうけど…いいんだね?」
「そ、それはヤだ…!ヤだけど…!けどっ…!
嫌なんだけど…!」
「ガイン、そこはかしこまりましたって言って貰わないとね。
ふふっ、もう自分でも止められないんだね。
お望み通り、よがり声が止まらなくなる程に掻き回してあげるよ。」
━━━━い……いたたまれない。━━━━
ガインの私室の隣、ミーシャの部屋を訪問中のノーザンは、この場から逃げ出したい衝動に駆られていた。
薄い壁の向こう側から聞こえてくる、尊敬する上官の━━やがては義理の父となる婚約者の父親の、あられもない声を聞き続けている事に罪悪感の様な物を感じずには居られない。
とは言え、このまま婚約者であるミーシャと共に部屋に居続けたい気持ちも強く腰は重いのだが、ノーザンはどんな態度でこの場に居るのが正しいのかも分からずに困惑状態だ。
当のミーシャはと言うと、いつも通りのぬぼーんとした顔で、平然と菓子を頬張っている。
ミーシャは口の中の菓子を流し込む様にグイッと茶を一気飲みすると、テーブルの向かい側で茶にも菓子にも手を付けずに固まっているノーザンの顔をジッと見た。
「ノーザン様どうしました?
お茶も菓子も手を付けずに黙り込んだままで。」
「いや…あの…」
この居たたまれない気持ちを、まるで何事も無いかの様に平然としているミーシャに何と説明したら良いかと言いあぐねているノーザンに、ミーシャがサラッと返す。
「私と一緒にお茶をしたいから訪問なさったのかと。
特に用が無いのでしたら、お仕事に戻って頂いて結構ですわよ?」
嫌味でも皮肉でも無く通常通り、あっさり塩対応なミーシャにノーザンの方が少なからずショックを受けてしまった。
今までノーザンに猛アピールしてきた女性達の様に、甘えたり縋ったりを一切しないミーシャだからこそ、女性に対する苦手意識が働かずに好きになったのだが、今はそれが寂しくなりつつある。
「いや、貴女と御一緒させて頂きたいと思っておりました!
た、ただ…何と言いますか…隣が…あの…仲がよろしいのは大変結構なのですが…。
こう…例えばなんですが、シーツにくるまって外に声が漏れない様に互いに愛を囁き合うとか…
もっと慎ましやかに愛し合えば良いのになと…思うと言いますか…。」
隣室がある壁の方に目をやったノーザンはゴニョゴニョと小声で言いながら顔を赤くし、ぬるくなった茶の入ったカップに口を付けた。
コクリと一口茶を口に含むが、喉が詰まってすぐには飲み込めない。
少し間を空けて、やっとやっとで口の中の茶を飲み込んだ。
「キリお兄ちゃんは全てをさらけ出させたいと、そういう愛し方をする人ですし、パパもそれに満足してるんだから、それでいいんじゃないですか。」
「そういうものなのでしょうか……。
私の知る、愛の営みというものとは違い過ぎて…」
性経験の無いノーザンにとって、性行為は未知の分野である。
性行為についてを記した書物等から得た多少の知識はあっても、こればかりは実体験が無ければ何も分からない。
「ノーザン様は、ベッドの上でしか見られない『私』を知りたいとか思いません?
ノーザン様が触れる事でしか見る事の出来ない、ノーザン様以外は誰も知る事のない私の姿を。」
「……!そ、それは……」
テーブルに頬杖を付いて意味有りげに微笑むミーシャの言葉に、あられもない姿のミーシャを想像をしてしまったノーザンだが、いかんせん情報と想像力が乏しく、ノーザンの頭に描かれたベッドの上のミーシャは飾り気も透け感も無いネグリジェを着たまんま、色気も無くぬぼーんと横たわった状態だった。
━━━……なんてことだ!
妄想すら理性が箍を外す邪魔をするっ!
いや、私の想像力がそこまで追い付かない!━━━
ノーザンの心の中では残念な思考を悔やむ自分と、思考の中でまでも理性を保った紳士的な自分を誇らしく思う気持ちがせめぎ合う。
いや…変な妄想をしなかった事を紳士的だと褒められたいってのもおかしな話だ。
と言うより、目の前のミーシャはむしろ妄想してみろと言わんばかりにノーザンを見てニヤリと笑う。
「わ、私は…その時が来るまでは、頭の中とは言えどミーシャ殿のあで姿を想像するのは気が引けます…。」
「あら私は、ベッドの上の私だけが知り得るノーザン様を見たいと思いますわよ。
だからいつも想像してみたりしていますわ。
理性が飛んだノーザン様は、どうなってしまうのか…
性欲旺盛なケダモノになってしまうのか、イジメられたくて乱れるタイプなのか……
私の想像と違うのか、越えていくのか…暴きたいです。
あ、コレがキリお兄ちゃんが言う答え合わせなのでしょうね。」
ミーシャが言う様に、ノーザンは自分がキリアンの様なケダモノになるとか、ガインの様に乱れるとか想像もつかない。
しかも例えが両極端過ぎる気もする。
「期待を裏切る様で申し訳ありませんが、私は私のままで変わらない気がします。
ベッドの上では、いつもの私ではない私になるとか…
そんな事、想像もつきません。」
ミーシャとの会話に変な緊張をしたノーザンは、乾いた口を潤す為に茶を口に含んだ。
「でしたら、初夜は勝負ですわね。
私、ノーザン様も知らないノーザン様を暴き出しますので覚悟を。」
「ブハッ!!!」
ノーザンは思わず口から茶を噴いた。
夫婦が初めて情を交わす神聖なる初夜が、なぜかバトルステージに。
「お互いに未経験ですから、勝率は五分五分ですわね。うふふ…楽しみにしていて下さいね。」
━━━五分五分?な、何が!?
受け入れる女性側が勝つとは、どういう意味だ?
え、まさか私を隊長みたいに乱れる側にしたいって事か!?
ミーシャ殿がリードしていく感じで??━━━
「…………お手柔らかにお願い致します。」
互いに初めての経験、スマートにこなせる自信などあるはずも無く、花嫁が自らリードしたいと言うのならば、それはそれで悪くないかも知れない━━そんな考えが浮かんでしまったノーザンは濡れた口元をナプキンで拭いながら小さく呟いた。
が、ひとつの懸念も浮かぶ。
━━━初夜当日に、花嫁が私の尻を責めたりなんてこと……無いよな……?━━━
「さぁガイン、主の俺を受け入れて、もっと淫らな姿を見せてくれ。」
「かしこまりました…!だからっ…だから…!
ワタクシのはしたない、この孔に…!」
箍が外れ掛けたガインは思考が停滞してしまい、導かれた状況に簡単に自我を染めてゆく。
ガイン的には意味不明だった主と執事というシチュエーションを無意識下で受け入れ、そこに自分を落とし込んでゆく。
ガインは仰向けになり大きく足を開いて腰を浮かせ、キリアンを迎え入れたい淫口を晒した。
「いい子だガイン、ミーシャの事を忘れる程に激しく乱れてくれ。」
キリアンは既に臨戦態勢の凶器の様な巨樹を出し、晒されたガインの淫らな口に切っ先を宛てがった。
が、キリアンの口から手放し掛けた理性を引き戻す名前を聞いたガインはビクッと身体も表情も強張らせ、キリアンの雄茎から逃れる様に浮かせた腰を下に下げた。
が、口に切っ先を宛てがったキリアンは位置を変えたガインを気にする様子も無く、そのままズブズブと巨樹の幹を挿し込んでゆく。
「ちょっと…!ま、待てっ!やっぱり、この場では…!んぁッ!」
「今さら何を言ってるんだ、ガイン。
もう、しっかりと咥え込んでいるだろう。」
「頼むから一回抜け!でないと俺は………」
「俺は?大声出してよがり狂うのを止められない?
いいじゃないか、俺に感じてくれるんだろ?
最高だよ。」
ガインの上に覆い被さったキリアンは、ガインの胸の粒を舌先でつつきながら、緩く腰を前後に動かした。
「ンっ…!や、動くなっ…!」
「皆に知られた、ミーシャにも既に知られている。
これ以上、何を隠して守ろうとしているんだ?」
キリアンは、ガインが自身の痴態をミーシャに知られたくないと強く思っているのを知っている。
キリアンは、ミーシャに痴態を知られまいと理性を保ち普段の自分を維持しようとするガインのガワを一枚ずつ剥がしてゆき、やがて箍の外れたガインの剥き出しの本心が現れた時の達成感にも似た感覚が好きなのだが……。
今日に限って言うならば、この期に及んでまだ自分よりもミーシャに対して意識が向くガインが面白くない。
「ガイン自ら俺の物であると暴露したんだ。
もう、諦めて皆に全てを知って貰おう。
ミーシャにも、だ。」
キリアンは繋がったガインの下肢をグイッと上げながら上体を壁の方に近付けた。
ガインの腰がキリアンの腿に乗り、繋がりが深くなるとガインが「ンッ…」と声を漏らしクンと顎を上げた。
キリアンはガインの頭の上にある壁に手をつき拳を握り、コンコンと壁をノックした。
「キリアン!?ナニしてんだ!!」
自身の頭上でミーシャの部屋とガインの部屋とを隔てる壁がノックされ、ガインが焦った様にキリアンのノックした右手首を掴んで制止した。
キリアンはガインに右腕を掴まれたまま、さほど大きくはない声で壁に向かって問い掛ける。
「ミーちゃん、今からガインを激しく愛してしまうけど、いいかな?」
コンコン
壁の向こう側からノックが返って来た。
その後に
『どーぞー』
少し遠いが確実にミーシャだと分かる声で返事が返って来た。
「!!!!!!!!!!!!!」
大きな口を開いて今にも悲鳴に似た雄叫びをあげそうなガインだが、声は出せず。
口と同様に大きく開いた目はまばたきすら忘れ。
両足を大きく開かせたおむつ交換の際の赤ん坊みたいな態勢のまま、ガインが完全に停止した。
「……………と、いう事だ。
ガイン、もう諦めろ。
これからは、俺とガインがどんなに愛し合っているかを皆に知らしめなければならないのだから。」
キリアンの下で石像の様に微動だにしなくなったガインを見下ろし、キリアンがクスリとほくそ笑む。
「ショックを受け過ぎて意識が何処かへ飛んじゃったか……まぁ……すぐに連れ戻してあげるんだけどね。
次は理性だけ飛ばして、俺の大好きなふしだらなガインになって貰わないとな。」
キリアンは手首を掴んだままのガインの手に口付けた後に軽く歯を立て甘咬みし、ゆっくりと腰を動かし始めた。
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番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。