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美しい皇帝の苛烈な一面より恐ろしく感じたのは通常運転。
言葉は肯定をしているが内心では不服でしかないとあからさまに冷え切った表情で此方を見るキリアンに、爺やが思わずたじろぐ。
凍て付くような冷たい視線を上から向けられれば、それは自分を見下し蔑むような眼差しにも似て見え、爺やは思わずキリアンから目を逸らした。
「ベルゼルトの血は絶やさないよ。
だって…………ケンヴィーが居るじゃないか。ね!」
冷たい表情から一転してパァっと明るくにこやかな笑顔を見せたキリアンに、凍て付いた空気が緩和されたと感じた爺やはホッと安堵の溜め息をつき、目線を逸らして俯かせた顔をにこやかに綻ばせて上げた。
「おお、ケンヴィー様はやはり生きておられましたか!
して、ケンヴィー様は今どちらに?」
「なんで、そんな事聞くの?」
キリアンは幼く無邪気な笑顔で、横に腰を折って背の低い爺やの近くに顔を持っていった。
爺やは、にこやかな笑顔のキリアンに薄ら寒い物を感じ、自身が何か間違った言葉の選択をしたのでは無いかと考えを巡らせつつ、キリアンの逆鱗に触れないように次の言葉を探す。
「それは…ケンヴィー様がご存命でいらしたのなら…城にお迎えし…いや、やはり、義弟君と言えど先の戦争では敵であったケンヴィー様を城に迎えるのは……」
しどろもどろになりながらキリアンの落としどころを模索する爺やに、腰を曲げ顔を近付けたキリアンが微笑って答えた。
「違うよ爺や俺が聞いたのは…………
王族が有事に遭った際に避難する場所、それをなんで聞くのかなって。
その場所を決めたのは爺や本人なのに。」
耳の側で甘い声で囁くように告げられた言葉は死刑宣告に等しく、爺やはヒュッと息を吸い込んで呼吸を止めた。
「戦争が終わった辺りから、違和感はずっと感じていたんだよ。
でも俺には一刻も早くガインをモノにす…
とにかく何よりも優先すべき事があって、確認は後回しにしていたんだよね。」
「違和感…そっそれは…!!ぅぎゃああ!」
弁解せねばと吸い込んだ息を吐き出す勢いに乗せた言葉は、すぐに自身の悲鳴に遮られた。
斬り落とされた肘から先の片腕がゴトと音を立て床に転がり、爺やも血が飛ぶ切断面を押さえながら床を転げ回る。
「違和感が確信に変わったのは戴冠式の次の日。
食堂を出た後…爺やは俺が自分を『俺』と呼ぶ事を、今まで知らなかったと……そう呟いたよね。」
屈めた身体を起こしたキリアンは足元でのたうち回る男を虫でも見下ろすかの様に蔑んだ目で見た。
キリアンの背後には黒い装束に身を包んだ男がおり、その手には血が滴る剣が握られている。
血を纏った剣の刃から滴る血が、噛み付く瞬間を待つ獣の唾液のように垂れポタポタと床に血溜まりを作り、血を滴らせた刃先は爺やと名乗る男に向けられ鈍く光る。
「ひ、ヒィい!」
「俺の教育係でもあった爺やは昔、俺が自分を「俺」と呼んだ時に「皇太子ともあろう方が何という言葉遣いを」と烈火の如く怒ってさ…2度と言うなと言った。
だから知らない筈は無いし、そもそも爺やは俺がどんなに激高したって俺に対して怯むなんて絶対に無いんだよね。」
「へ、陛下!陛下!弁明をさせて下さい!
わ、私は…!兄の…急逝した兄に代わりに城に参りました!
国を愛するがゆえ、兄に代わって陛下の御力になれればと愚考し…!決して!
決して陛下を謀ろうとしたのでは御座いません!」
飛び散る鮮血に染まった床にうずくまった男は切断面を押さえながら情に訴え、命を請うように早口でキリアンに訴えかけた。
その姿を見たキリアンは思案するように少し首を傾げてから、背後の黒装束の男に何かを囁いた。
黒装束の男はキリアンに対し小さく頷いてから辺りに向け合図を送る。
すると喚ばれたかのように物陰から2人の黒装束の男が現れ、2人の男達は腕を切断された男の手当てを始めた。
この場でこのまま処刑されるかもと怯えていた男は、手当てが施された事で訴えが効いたのだと僅かに安堵した。
「兄ねぇ…爺やが父に愚痴っていたのをチラッと聞いた事があったよ。
家族の恥だからと幼い俺には隠していたけど、金を奪って家を飛び出した破落戸みたいな愚かな弟が居るって言ってたな。
まさか、実兄を殺害して成りすました上に母国を売り物にするほど莫迦だとは思わなかったけど。」
手当てを施されて出血多量で死ぬ事を免れた男の前に、にこやかな笑みを湛えたキリアンが少女のようにしゃがんで両手で頬杖をつき、男と視線を合わせた。
「わ、私は兄を殺してなど…!母国を裏切ったりもしてはおりません!私は兄も、この国も!愛しております!」
男はキリアンが自分をこの場で殺さなかったのは、疑念を持っていてもまだ確信が持てないからだと考えた。
情に訴え続けてこの場をやり過ごし、何とか生き延びる策を…
「んふふふ、爺やを殺害した事も若い内から国を捨てリスクィート国の間者に成り下がっていた事も、もうね全部調べはついていて、お前から得る情報なんて何にも無いんだぁ。
だから処刑しちゃってもいいんだけど、祖父代わりに俺を可愛がってくれた爺やの事を思うと俺の気がすまないんだよね。
だから死ぬより辛い思いを、たくさんして貰うんだぁ。」
ニコニコと笑うキリアンの前で、床に座ったまま硬直したように体が動かなくなった男を、手当てを済ませた2人の黒装束の男は無理矢理立たせた。
男の前にしゃがんでいたキリアンは身体を起こし、男を支える2人の黒装束の男に指示を出す。
「目と耳と声帯は最後まで残しといて。
削られていく自分の姿を見て、叫んで、その声を自分の耳で聞いてもらって。
きっと早い内に殺してくれって懇願するようになるよ。
まぁ、それでも長く生かしておいてね。」
2人の黒装束の男は無言のままコクと頷いた。
それを見た男の顔は土気色になり、乾き切った唇をパクパクと数回動かしてからかすれた声を上げる。
「ま、ま、待っ…!待って下さい!陛下!陛下!
話を…話を聞いて下さ…!嫌だ、嫌だぁあ!!!」
2人の黒装束の男に引きずられて行く男に、最期の別れだとキリアンは笑顔でヒラヒラと手の平を振った。
男の姿が見えなくなり、血の海のようになった廊下にはキリアンと男の腕を斬った黒装束の男が残った。
「…これ、どうしよ…誰かを呼んで説明するのも面倒…」
血溜まりを見て困ったような呟きを漏らすキリアンを他所に、黒装束の男が何かしらの合図を送ると、物陰から掃除道具を持った侍女が数人現れて無言で床を磨き始めた。
「……………一体、何人俺の城に紛れ込んでるんだよ。
ヴィーヴルの者は。」
キリアンは自分の城において自分自身が把握しきれていない状況がある事に不満気な表情をして黒装束の男を睨んだ。
キリアン自身がヴィーヴル国の暗部にベルゼルト皇国での仕事を依頼をし、それに応え配属されたのは亡き母の実弟であるセドリックの率いる部隊だった。
隊長のセドリック本人がリスクィートへと行っておりベルゼルトには不在だが、彼の部隊の者の半数は城におりキリアンの元で働いている。
だが、キリアン自身が把握していない所でも既にヴィーヴルとの契約がなされており、ヴィーヴル国王直属の部隊が動いていたという。
それを最近、知らされたばかりのキリアンは、不満を隠せない。
━━まんまと、してやられた━━
そんな気がしてしまう。
そんなキリアンの表情を見た黒装束の男は顔を覆った黒い布を外し、眉尻を下げ少し微笑みながら困った顔を見せた。
「それは…国に報告に帰ったり、代わりの者が来たりと流動的ですので何とも…それでも100人以上は常に、この城に居るでしょうか。」
黒装束の頭巾の下から人の腕を斬り落とした者とは思えないほど穏やかな顔を見せた青年に対し、キリアンはムスッとした仏頂面をした。
地味ではあるが人懐っこい柔和な顔つきの青年は、キリアンにとっては非常に腹立たしい思いをさせられ、かつ自身が酷く悩んでいた時に現状を打開するきっかけともなった男。
「まさか、貴方がヴィーヴル国王直属部隊を率いている隊長とは知らなかったよ。
……兵舎の食堂で料理人見習いをしていた貴方がね。」
彼はガインが頭をポンポンと撫でた事で、キリアンが強く嫉妬した相手。
あの時の事を思い出すだけでも再び嫉妬の種火が点きそうになるが、料理人見習いの青年に嫉妬した事がきっかけとなったからこそ、無理矢理にではあったがガインと結ばれたのも事実。
憎らしく思うのも感謝するのも可笑しな話であり、キリアンは複雑な面持ちで男を見た。
「頼りない若造…に見えておりましたでしょう?
さすがに、ガイン殿に頭を撫でられた時は一瞬、戸惑いましたが。」
「ヴィーヴルには変装を得意とする者もいるとは聞いていたけど…料理人見習いの若造が、ガインより10歳も年上だとは思わなかったよ。」
「ガイン殿も気付いておりませんでしたね。
ヴィルムバッハ伯爵邸の本邸では、幼いガイン殿にも何度かお会いしたので、もしや気付かれたりと……
まぁ…30年近く昔の話ですしね。」
男の言葉にキリアンの眼が、種火に油を注いだように一瞬でギャランっと強く輝いた。
男が一瞬「え?」と身構える。
キリアンは男ににじり寄り、逃げないようにと男の手首をガシッと掴んだ。
自分が知らないガインの姿を男が知っている事に嫉妬もするが、それ以上に『幼い頃のガイン』という今まで知り得なかったガインの情報が手に入る機会を逃せない。
新たな脳内妄想図鑑のページが増えるチャンスなのだ。
「そこ!詳しく!幼い頃のガインって!
どんな!?どんなのだった!?」
「え、ガイン殿の幼い頃…ですか?
ごく普通の少年…ですが…」
「もっと具体的な何かあるだろう!?
体格は!?髪型は!?普段の表情は、服装は、言葉遣いは!?」
キリアンの鬼気迫る程の詰め寄り方に、感情を表情に出さない事を常とし、黙々と掃除をしていた侍女達の顔が「…ぇ。」と僅かに引いた表情になった。
それでも彼女達は表情を無に戻し、密かに耳をそばだてながら黙々と仕事をこなす。
「え…私がヴィーヴルの精鋭部隊の者として駆け出しの頃、お邸にて…数回ご挨拶をさせて頂いただけで…」
「もっと掘り下げて何か分かる事、あるだろう!?
ちょ、駄目だ、これは俺だけじゃ暴き切れない。
ミーちゃんも交えて話をさせて貰うとしよう。
当時の見た目も詳しく知りたいし…スケッチが必要だな…よし、ノーザンも俺の執務室に呼べ!!」
男は、これは尋問ではないのか?と錯覚を起こすほどに、今のキリアンの姿に背筋が寒くなった。
爺やに対してキリアンが違和感を感じた時には既にヴィーヴルの直属部隊は動いており、早々に裏を取って報告をしたのだが、爺やが殺害されたと話したその時でさえキリアンはこんなに感情を昂らせたりしなかったのだが…。
キリアンに手首を掴まれたまま引っ張られた男は、この黒装束の姿のまま城内を歩く事は出来ないからとキリアンを宥めて一度解放して貰った。
改めて執務室に向かう約束をし、一度キリアンと別れた男は「ふぅ」と細い溜め息をつく。
「有能な部下のギャリーも変人だが、陛下も……」
不敬に当たるので、あえて口にはしなかったが想像以上の変人だと男は思った。
ヴィーヴルの『目』はあらゆる場所にあり、キリアンのガインへの執着心が度を過ぎている事も勿論知ってはいたのだが、その狂愛ぶりを直に目の当たりにすると、それは想像以上に恐怖だった。
━━頭ポンポンで、殺されていたかも知れない…━━
ガインの父親である先代ヴィルムバッハ伯爵と、キリアンの祖父である先々代ヴェルゼルト皇帝サニエン、そしてヴェルゼルト国の城にて爺やと呼ばれていたトマソンの3人は旧くからの盟友であった。
3人が若かりし頃は大陸内での戦が絶えず、ベルゼルトもまた戦火に曝されていた。
ヴィルムバッハ伯爵は皇帝の命に従い、多くの兵を率いて正義を掲げた絶対的な暴力をもって小競り合いを続ける周辺の国を叩き伏せていった。
ベルゼルト皇国は獅子が兎を喰らうように、周辺の国々を吸収して国土を拡げていった。
絶対的な強者の前に、抗う事はせずに和解や同盟を求める国もあり、最終的にはキリアンが治める現在と同じ国土となった。
戦火が収まり一時訪れた平和な時代。
ヴィルムバッハ伯爵は将軍と呼ばれ、防衛の要となり得る隣国との国境を有する領地を預かる身となった。
ベルゼルト皇国はヴィルムバッハ伯爵領の近隣の領地を与える貴族に、ヴィルムバッハに次ぐ軍人気質な者を配置した。
王都にてヴェルゼルト皇国という大国を操舵してゆくサニエン皇帝の傍らには、後の爺やとなるトマソンが側近として従う。
3人は「今」が恒常的なものだとはないとし、子々孫々の繁栄の為にと準備をしてきた。
その際に、トマソンは有事の際の皇族の避難先としてヴィルムバッハの名を挙げた。
この時期にサニエン皇帝は、少人数の護衛のみを連れ国交のあった小国ヴィーヴル国へと自ら足を運び、当時のヴィーヴルの国王がサニエン皇帝を気に入り、友国となる。
余談となるが、友好国となったヴィーヴル国に短期留学をしていたベルゼルト皇太子グレアムは、ヴィーヴル国王の姪にあたるセレスティーヌを見て一目惚れしをし、後に求婚した。
その2人の愛息子がキリアンである。
「ヴェルゼルトに派遣されたヴィーヴル国王直属部隊は、先々代サニエン皇帝陛下の代からメンバーを変えながら常にベルゼルト皇国の内部におりました。
我々は国外からの攻撃に対しベルゼルト皇国を護る為に存在しており、ヴィルムバッハ将軍と同様に国内での戦には関与しません。」
キリアンの執務室では今、キリアンが座している執務室の机前の椅子にガインとノーザンが腰掛けており、テーブルを挟んで向かい側の長椅子には、料理人見習いの青年が座っていた。
「私は4代目の隊長を任命され、2年前から料理人見習いとしてこの城に常駐しておりました。
名は……フーと申します。」
真剣な面持ちながら、何処か疲れた様子のフーとノーザン。
部屋に呼ばれて間もないガインは、かつて「坊主」感覚で応援の意味を込め、頭をポンポンと叩いてやった青年が自分の父親の知り合いであり、しかも年上という事実に面食らって口が半開きになっていた。
「……いや…いやっいやいや、ウチ(本邸)に来ていたって?30年近く昔に?
しかも、俺より年上?10歳も?え?」
「あの頃の私の主な仕事は連絡で…当時の隊長から預かった報告を遠方のヴィルムバッハに届けるのが………
すみません、水を……」
喋り続けて唇がカサカサな状態のフーは、グラスを手に取り唇を濡らすようにして水を飲んだ。
ガインが部屋に呼ばれる直前まで、この部屋は尋問部屋だった。
尋問内容は全て、幼い日のガインに関する事ばかり。
キリアンとミーシャによりフーは、脳内のガインに関する記憶を無理矢理吐き出させられた。
ガインに関する記憶が空になっても激しい追及が続いたので、やむを得ずフーは無理矢理掘り下げ多少脚色も加えて、キリアンが納得するまで「幼いガイン」を語った。
そしてノーザンも、よく分からないスケッチを強いられ続けていた。
2人は既に満身創痍である。
「それにしても、若いお前さんが俺の父親の知人とは…
いや、すまん、いや、すみません…年上でしたね…」
見た目と情報が一致しないガインは混乱したまま話を続けようとし、話の本題が疎かになっている。
今、話すべき事は見た目云々の話ではないのだ。
と、知欲を満たしたばかりで肌艶の良いキリアンは椅子から立ち上がった。
「リスクィートの間諜だった爺やの弟を捕らえたとは言え、ケンヴィーの居所は既にリスクィートに伝わっている恐れもある。1分1秒が惜しい。
こうしている間にもリスクィートは義母上を操る為にケンヴィーを奪還しようと動くだろう。
急ぎヴィルムバッハに連絡し、万全の守りを!」
━━1分1秒を争う時に、ガイン殿の情報を搾り出す事に時間を費やしていたのは…誰なんです!?━━
そう言いたいのを堪えるフーに、ノーザンが目で訴える。
━━これが陛下の通常運転なんです━━
凍て付くような冷たい視線を上から向けられれば、それは自分を見下し蔑むような眼差しにも似て見え、爺やは思わずキリアンから目を逸らした。
「ベルゼルトの血は絶やさないよ。
だって…………ケンヴィーが居るじゃないか。ね!」
冷たい表情から一転してパァっと明るくにこやかな笑顔を見せたキリアンに、凍て付いた空気が緩和されたと感じた爺やはホッと安堵の溜め息をつき、目線を逸らして俯かせた顔をにこやかに綻ばせて上げた。
「おお、ケンヴィー様はやはり生きておられましたか!
して、ケンヴィー様は今どちらに?」
「なんで、そんな事聞くの?」
キリアンは幼く無邪気な笑顔で、横に腰を折って背の低い爺やの近くに顔を持っていった。
爺やは、にこやかな笑顔のキリアンに薄ら寒い物を感じ、自身が何か間違った言葉の選択をしたのでは無いかと考えを巡らせつつ、キリアンの逆鱗に触れないように次の言葉を探す。
「それは…ケンヴィー様がご存命でいらしたのなら…城にお迎えし…いや、やはり、義弟君と言えど先の戦争では敵であったケンヴィー様を城に迎えるのは……」
しどろもどろになりながらキリアンの落としどころを模索する爺やに、腰を曲げ顔を近付けたキリアンが微笑って答えた。
「違うよ爺や俺が聞いたのは…………
王族が有事に遭った際に避難する場所、それをなんで聞くのかなって。
その場所を決めたのは爺や本人なのに。」
耳の側で甘い声で囁くように告げられた言葉は死刑宣告に等しく、爺やはヒュッと息を吸い込んで呼吸を止めた。
「戦争が終わった辺りから、違和感はずっと感じていたんだよ。
でも俺には一刻も早くガインをモノにす…
とにかく何よりも優先すべき事があって、確認は後回しにしていたんだよね。」
「違和感…そっそれは…!!ぅぎゃああ!」
弁解せねばと吸い込んだ息を吐き出す勢いに乗せた言葉は、すぐに自身の悲鳴に遮られた。
斬り落とされた肘から先の片腕がゴトと音を立て床に転がり、爺やも血が飛ぶ切断面を押さえながら床を転げ回る。
「違和感が確信に変わったのは戴冠式の次の日。
食堂を出た後…爺やは俺が自分を『俺』と呼ぶ事を、今まで知らなかったと……そう呟いたよね。」
屈めた身体を起こしたキリアンは足元でのたうち回る男を虫でも見下ろすかの様に蔑んだ目で見た。
キリアンの背後には黒い装束に身を包んだ男がおり、その手には血が滴る剣が握られている。
血を纏った剣の刃から滴る血が、噛み付く瞬間を待つ獣の唾液のように垂れポタポタと床に血溜まりを作り、血を滴らせた刃先は爺やと名乗る男に向けられ鈍く光る。
「ひ、ヒィい!」
「俺の教育係でもあった爺やは昔、俺が自分を「俺」と呼んだ時に「皇太子ともあろう方が何という言葉遣いを」と烈火の如く怒ってさ…2度と言うなと言った。
だから知らない筈は無いし、そもそも爺やは俺がどんなに激高したって俺に対して怯むなんて絶対に無いんだよね。」
「へ、陛下!陛下!弁明をさせて下さい!
わ、私は…!兄の…急逝した兄に代わりに城に参りました!
国を愛するがゆえ、兄に代わって陛下の御力になれればと愚考し…!決して!
決して陛下を謀ろうとしたのでは御座いません!」
飛び散る鮮血に染まった床にうずくまった男は切断面を押さえながら情に訴え、命を請うように早口でキリアンに訴えかけた。
その姿を見たキリアンは思案するように少し首を傾げてから、背後の黒装束の男に何かを囁いた。
黒装束の男はキリアンに対し小さく頷いてから辺りに向け合図を送る。
すると喚ばれたかのように物陰から2人の黒装束の男が現れ、2人の男達は腕を切断された男の手当てを始めた。
この場でこのまま処刑されるかもと怯えていた男は、手当てが施された事で訴えが効いたのだと僅かに安堵した。
「兄ねぇ…爺やが父に愚痴っていたのをチラッと聞いた事があったよ。
家族の恥だからと幼い俺には隠していたけど、金を奪って家を飛び出した破落戸みたいな愚かな弟が居るって言ってたな。
まさか、実兄を殺害して成りすました上に母国を売り物にするほど莫迦だとは思わなかったけど。」
手当てを施されて出血多量で死ぬ事を免れた男の前に、にこやかな笑みを湛えたキリアンが少女のようにしゃがんで両手で頬杖をつき、男と視線を合わせた。
「わ、私は兄を殺してなど…!母国を裏切ったりもしてはおりません!私は兄も、この国も!愛しております!」
男はキリアンが自分をこの場で殺さなかったのは、疑念を持っていてもまだ確信が持てないからだと考えた。
情に訴え続けてこの場をやり過ごし、何とか生き延びる策を…
「んふふふ、爺やを殺害した事も若い内から国を捨てリスクィート国の間者に成り下がっていた事も、もうね全部調べはついていて、お前から得る情報なんて何にも無いんだぁ。
だから処刑しちゃってもいいんだけど、祖父代わりに俺を可愛がってくれた爺やの事を思うと俺の気がすまないんだよね。
だから死ぬより辛い思いを、たくさんして貰うんだぁ。」
ニコニコと笑うキリアンの前で、床に座ったまま硬直したように体が動かなくなった男を、手当てを済ませた2人の黒装束の男は無理矢理立たせた。
男の前にしゃがんでいたキリアンは身体を起こし、男を支える2人の黒装束の男に指示を出す。
「目と耳と声帯は最後まで残しといて。
削られていく自分の姿を見て、叫んで、その声を自分の耳で聞いてもらって。
きっと早い内に殺してくれって懇願するようになるよ。
まぁ、それでも長く生かしておいてね。」
2人の黒装束の男は無言のままコクと頷いた。
それを見た男の顔は土気色になり、乾き切った唇をパクパクと数回動かしてからかすれた声を上げる。
「ま、ま、待っ…!待って下さい!陛下!陛下!
話を…話を聞いて下さ…!嫌だ、嫌だぁあ!!!」
2人の黒装束の男に引きずられて行く男に、最期の別れだとキリアンは笑顔でヒラヒラと手の平を振った。
男の姿が見えなくなり、血の海のようになった廊下にはキリアンと男の腕を斬った黒装束の男が残った。
「…これ、どうしよ…誰かを呼んで説明するのも面倒…」
血溜まりを見て困ったような呟きを漏らすキリアンを他所に、黒装束の男が何かしらの合図を送ると、物陰から掃除道具を持った侍女が数人現れて無言で床を磨き始めた。
「……………一体、何人俺の城に紛れ込んでるんだよ。
ヴィーヴルの者は。」
キリアンは自分の城において自分自身が把握しきれていない状況がある事に不満気な表情をして黒装束の男を睨んだ。
キリアン自身がヴィーヴル国の暗部にベルゼルト皇国での仕事を依頼をし、それに応え配属されたのは亡き母の実弟であるセドリックの率いる部隊だった。
隊長のセドリック本人がリスクィートへと行っておりベルゼルトには不在だが、彼の部隊の者の半数は城におりキリアンの元で働いている。
だが、キリアン自身が把握していない所でも既にヴィーヴルとの契約がなされており、ヴィーヴル国王直属の部隊が動いていたという。
それを最近、知らされたばかりのキリアンは、不満を隠せない。
━━まんまと、してやられた━━
そんな気がしてしまう。
そんなキリアンの表情を見た黒装束の男は顔を覆った黒い布を外し、眉尻を下げ少し微笑みながら困った顔を見せた。
「それは…国に報告に帰ったり、代わりの者が来たりと流動的ですので何とも…それでも100人以上は常に、この城に居るでしょうか。」
黒装束の頭巾の下から人の腕を斬り落とした者とは思えないほど穏やかな顔を見せた青年に対し、キリアンはムスッとした仏頂面をした。
地味ではあるが人懐っこい柔和な顔つきの青年は、キリアンにとっては非常に腹立たしい思いをさせられ、かつ自身が酷く悩んでいた時に現状を打開するきっかけともなった男。
「まさか、貴方がヴィーヴル国王直属部隊を率いている隊長とは知らなかったよ。
……兵舎の食堂で料理人見習いをしていた貴方がね。」
彼はガインが頭をポンポンと撫でた事で、キリアンが強く嫉妬した相手。
あの時の事を思い出すだけでも再び嫉妬の種火が点きそうになるが、料理人見習いの青年に嫉妬した事がきっかけとなったからこそ、無理矢理にではあったがガインと結ばれたのも事実。
憎らしく思うのも感謝するのも可笑しな話であり、キリアンは複雑な面持ちで男を見た。
「頼りない若造…に見えておりましたでしょう?
さすがに、ガイン殿に頭を撫でられた時は一瞬、戸惑いましたが。」
「ヴィーヴルには変装を得意とする者もいるとは聞いていたけど…料理人見習いの若造が、ガインより10歳も年上だとは思わなかったよ。」
「ガイン殿も気付いておりませんでしたね。
ヴィルムバッハ伯爵邸の本邸では、幼いガイン殿にも何度かお会いしたので、もしや気付かれたりと……
まぁ…30年近く昔の話ですしね。」
男の言葉にキリアンの眼が、種火に油を注いだように一瞬でギャランっと強く輝いた。
男が一瞬「え?」と身構える。
キリアンは男ににじり寄り、逃げないようにと男の手首をガシッと掴んだ。
自分が知らないガインの姿を男が知っている事に嫉妬もするが、それ以上に『幼い頃のガイン』という今まで知り得なかったガインの情報が手に入る機会を逃せない。
新たな脳内妄想図鑑のページが増えるチャンスなのだ。
「そこ!詳しく!幼い頃のガインって!
どんな!?どんなのだった!?」
「え、ガイン殿の幼い頃…ですか?
ごく普通の少年…ですが…」
「もっと具体的な何かあるだろう!?
体格は!?髪型は!?普段の表情は、服装は、言葉遣いは!?」
キリアンの鬼気迫る程の詰め寄り方に、感情を表情に出さない事を常とし、黙々と掃除をしていた侍女達の顔が「…ぇ。」と僅かに引いた表情になった。
それでも彼女達は表情を無に戻し、密かに耳をそばだてながら黙々と仕事をこなす。
「え…私がヴィーヴルの精鋭部隊の者として駆け出しの頃、お邸にて…数回ご挨拶をさせて頂いただけで…」
「もっと掘り下げて何か分かる事、あるだろう!?
ちょ、駄目だ、これは俺だけじゃ暴き切れない。
ミーちゃんも交えて話をさせて貰うとしよう。
当時の見た目も詳しく知りたいし…スケッチが必要だな…よし、ノーザンも俺の執務室に呼べ!!」
男は、これは尋問ではないのか?と錯覚を起こすほどに、今のキリアンの姿に背筋が寒くなった。
爺やに対してキリアンが違和感を感じた時には既にヴィーヴルの直属部隊は動いており、早々に裏を取って報告をしたのだが、爺やが殺害されたと話したその時でさえキリアンはこんなに感情を昂らせたりしなかったのだが…。
キリアンに手首を掴まれたまま引っ張られた男は、この黒装束の姿のまま城内を歩く事は出来ないからとキリアンを宥めて一度解放して貰った。
改めて執務室に向かう約束をし、一度キリアンと別れた男は「ふぅ」と細い溜め息をつく。
「有能な部下のギャリーも変人だが、陛下も……」
不敬に当たるので、あえて口にはしなかったが想像以上の変人だと男は思った。
ヴィーヴルの『目』はあらゆる場所にあり、キリアンのガインへの執着心が度を過ぎている事も勿論知ってはいたのだが、その狂愛ぶりを直に目の当たりにすると、それは想像以上に恐怖だった。
━━頭ポンポンで、殺されていたかも知れない…━━
ガインの父親である先代ヴィルムバッハ伯爵と、キリアンの祖父である先々代ヴェルゼルト皇帝サニエン、そしてヴェルゼルト国の城にて爺やと呼ばれていたトマソンの3人は旧くからの盟友であった。
3人が若かりし頃は大陸内での戦が絶えず、ベルゼルトもまた戦火に曝されていた。
ヴィルムバッハ伯爵は皇帝の命に従い、多くの兵を率いて正義を掲げた絶対的な暴力をもって小競り合いを続ける周辺の国を叩き伏せていった。
ベルゼルト皇国は獅子が兎を喰らうように、周辺の国々を吸収して国土を拡げていった。
絶対的な強者の前に、抗う事はせずに和解や同盟を求める国もあり、最終的にはキリアンが治める現在と同じ国土となった。
戦火が収まり一時訪れた平和な時代。
ヴィルムバッハ伯爵は将軍と呼ばれ、防衛の要となり得る隣国との国境を有する領地を預かる身となった。
ベルゼルト皇国はヴィルムバッハ伯爵領の近隣の領地を与える貴族に、ヴィルムバッハに次ぐ軍人気質な者を配置した。
王都にてヴェルゼルト皇国という大国を操舵してゆくサニエン皇帝の傍らには、後の爺やとなるトマソンが側近として従う。
3人は「今」が恒常的なものだとはないとし、子々孫々の繁栄の為にと準備をしてきた。
その際に、トマソンは有事の際の皇族の避難先としてヴィルムバッハの名を挙げた。
この時期にサニエン皇帝は、少人数の護衛のみを連れ国交のあった小国ヴィーヴル国へと自ら足を運び、当時のヴィーヴルの国王がサニエン皇帝を気に入り、友国となる。
余談となるが、友好国となったヴィーヴル国に短期留学をしていたベルゼルト皇太子グレアムは、ヴィーヴル国王の姪にあたるセレスティーヌを見て一目惚れしをし、後に求婚した。
その2人の愛息子がキリアンである。
「ヴェルゼルトに派遣されたヴィーヴル国王直属部隊は、先々代サニエン皇帝陛下の代からメンバーを変えながら常にベルゼルト皇国の内部におりました。
我々は国外からの攻撃に対しベルゼルト皇国を護る為に存在しており、ヴィルムバッハ将軍と同様に国内での戦には関与しません。」
キリアンの執務室では今、キリアンが座している執務室の机前の椅子にガインとノーザンが腰掛けており、テーブルを挟んで向かい側の長椅子には、料理人見習いの青年が座っていた。
「私は4代目の隊長を任命され、2年前から料理人見習いとしてこの城に常駐しておりました。
名は……フーと申します。」
真剣な面持ちながら、何処か疲れた様子のフーとノーザン。
部屋に呼ばれて間もないガインは、かつて「坊主」感覚で応援の意味を込め、頭をポンポンと叩いてやった青年が自分の父親の知り合いであり、しかも年上という事実に面食らって口が半開きになっていた。
「……いや…いやっいやいや、ウチ(本邸)に来ていたって?30年近く昔に?
しかも、俺より年上?10歳も?え?」
「あの頃の私の主な仕事は連絡で…当時の隊長から預かった報告を遠方のヴィルムバッハに届けるのが………
すみません、水を……」
喋り続けて唇がカサカサな状態のフーは、グラスを手に取り唇を濡らすようにして水を飲んだ。
ガインが部屋に呼ばれる直前まで、この部屋は尋問部屋だった。
尋問内容は全て、幼い日のガインに関する事ばかり。
キリアンとミーシャによりフーは、脳内のガインに関する記憶を無理矢理吐き出させられた。
ガインに関する記憶が空になっても激しい追及が続いたので、やむを得ずフーは無理矢理掘り下げ多少脚色も加えて、キリアンが納得するまで「幼いガイン」を語った。
そしてノーザンも、よく分からないスケッチを強いられ続けていた。
2人は既に満身創痍である。
「それにしても、若いお前さんが俺の父親の知人とは…
いや、すまん、いや、すみません…年上でしたね…」
見た目と情報が一致しないガインは混乱したまま話を続けようとし、話の本題が疎かになっている。
今、話すべき事は見た目云々の話ではないのだ。
と、知欲を満たしたばかりで肌艶の良いキリアンは椅子から立ち上がった。
「リスクィートの間諜だった爺やの弟を捕らえたとは言え、ケンヴィーの居所は既にリスクィートに伝わっている恐れもある。1分1秒が惜しい。
こうしている間にもリスクィートは義母上を操る為にケンヴィーを奪還しようと動くだろう。
急ぎヴィルムバッハに連絡し、万全の守りを!」
━━1分1秒を争う時に、ガイン殿の情報を搾り出す事に時間を費やしていたのは…誰なんです!?━━
そう言いたいのを堪えるフーに、ノーザンが目で訴える。
━━これが陛下の通常運転なんです━━
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