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母は違えど、どこか似ている兄弟。
「ねえルンルン、僕と恋をしようよ。
僕、男女どちら役でもイケそうな気がするんだ。」
「はー?しませんよ。
ナニつまらない冗談ほざいてやがります?」
1日の仕事を終えクタクタになったルンルンが夕食が入ったバスケットを手に提げ自室のドアを開けば、部屋に勝手に侵入していたケンヴィー皇子から部屋に入るなり、いきなりそう提案された。
ケンヴィー皇子の勝手な訪問も唐突な言動も毎度の事であり、ルンルンはつまらない冗談とばかりに気だるそうに答えると、机と椅子をケンヴィーに占領されたためにやむなく『やれやれ』と呟きながらベッドに腰を下ろした。
「本気だよ、冗談なんかじゃないんだけど。」
「だったらヴィーは、正気でとんでもなく頭のおかしい事を言ってるんですね。
ヴィーの頭も心配ですが、仕事が終わったばかりで疲れてるんですよー。
メシ食って早く休みたいんですって。」
部屋から出て行って欲しいと暗にほのめかしつつ、ルンルンは隣に置いたバスケットからパンを取り出して渋い顔をしながら口に咥え、味わうでもなく作業のようにモッモッとパンを食んでいく。
「ルンルンは女の子ウケが良いのに誰とも付き合おうとしないよね。
だからコッチの趣味かもとか思ったんだけど。」
ケンヴィーは机の方を向いていた椅子をベッドの方に向け、パンを咥えるルンルンの顔を覗き込む。
ルンルンはケンヴィーの視線をさほど気にする様子もなく、ケンヴィーに見られながら淡々と食事を進めていった。
「極論が過ぎやしませんかー?女の子と付き合ってないから男色家だろうとか。
毎度言ってますよねー?恋愛には興味無いんですって。
それより、どちらもイケるって言ってたけどヴィーにはそんな趣味ありましたっけ。」
「無いよ。僕もまだ誰ともお付き合いした事がないし。
だけどルンルンとなら上手くいきそうな気がする!」
「根拠も無く言ってみただけですか。
でも、こちらにも選ぶ権利はありますからねー。」
『ハイハイ』的におざなりな返事をし、パンを食べ終えたルンルンはバスケットから蓋付きの容器に入ったひよこ豆のトマト煮を取り出して食べ始めた。
「ねえ、ガルバンゾーのトマト煮はパンに挟んで食べた方が美味しいよ。」
「……言われなくても知ってますが……ヴィーが変な事を言うから先にパン食べてしまいましたしねぇ……。」
食事も要らぬお節介も不毛な会話もさっさと終わらせて早く休みたい。それだけなのに━━
1日をほぼ邸の中で過ごすケンヴィーには、寝る前のこの時間が友人とおしゃべりが出来るもっとも楽しい時間なのだ。
そう分かっているルンルンは、気だるそうにでもケンヴィーの話し相手をするのが1日を締めくくる日課でもある。
「えー?僕じゃルンルンの趣味に合わないって事?
じゃあ仕方ないなぁ…ルンルンと愛情を育むのは諦めて、深い友情とまりで我慢しとくかぁ。」
ケンヴィーは残念そうに言いながら首を傾け、ルンルンの顔をジッと見つめ続けた。
ルンルンは何かを問うようなケンヴィーの視線をスルーしながら淡々と食事を進め、語調も態度も変えずに返事をする。
「いや趣味どうこう以前に恋愛はしないと何度も言ってますよー。
それに、ヴィーの事を友人だとは思ってはいますけどー…俺はあくまでヴィーの従者で護衛。
そこに深い友情があるかは分かりませんよね。」
「どうして?恋愛はともかく、僕はルンルンの事を大親友だと思っているよ。
まだ会ってそんなに経ってないけど、ルンルンは僕の大切な人だよ。ルンルンはそう思ってくれてないの?」
ルンルンは食べ終えた容器をバスケットに戻し、水で喉を潤してからバスケットを床に置いた。
ふぅと溜め息をつき濡れた口元を手の甲でグイッと拭ってから、やっとケンヴィーの視線に自分の視線を合わせた。
「あのですねーヴィーは皇子さまでしょ。
俺はただのしがない伯爵家の雇われ剣士。身分が違うし親友なんて呼ぶには、おこがましいですって。」
「ルンルンだって元々が王子様だったじゃないか。
僕だって今は国賊な上に逃亡者だし。死人扱いかもだし。」
ケンヴィーは椅子から立ち上がり、ルンルンの左隣にやって来てトスンとベッドに腰を下ろした。
人懐っこさから距離感を無視し、互いの腿を合わせるようにピッタリくっついて来るケンヴィーに、ルンルンは二人の間に枕を挟んで壁を作り距離を取った。
「だから近いんですって。
ヴィーは人との距離感がおかしいんですよ。
もう少し警戒心ってものを持って人を見ないと。
ヴィーは氷の姫君と呼ばれた常時無感情なカリーナ様のご子息とは思えないほどの博愛精神ですよね。
誰にでも懐くし、すぐ打ち解けるし…
だから変な輩に付け入られたりするんですよ。
祀り上げられた挙げ句に欲しくもない皇帝の座なんか巡って戦争なんかさせられたり。」
「リスクィート国で生まれ育った母上には隙を見せないよう誰にも感情を見せない事が必要だったんだよ。
ベルゼルトで生まれ育った僕には、八方美人でも良いから、みんなから愛されるような人になりなさいって母上がよく言っていた。
あと、返ってくる善意の意図を測りなさいともね。」
ケンヴィーは二人の間に置かれた枕を掴んでポイっと後方に投げると、再びルンルンとの距離をズイッと詰めた。
ベッドの縁で、二人寄り添うようにくっついて並んでいる状態に、ルンルンが半ば諦めたように溜め息をつく。
「それでもヴィーは誰にでも良い顔をしすぎだと。」
「言っとくけど全てに心を許してるわけではないよ。
僕は誰にでも甘い顔をするけど、それは警戒心を無くさせて本心を探るためだからね。
ルンルンは僕が今まで会って来た中で、もっとも信頼を置ける友だと思っているよ。
むしろ、なんだかんだと壁を作ろうとするのはルンルンの方だよね。」
ルンルンの左側に座り恋人のように密着し、顔を間近で覗き込むケンヴィーに、ルンルンが首を伸ばして顎先を上げ、顔だけでも距離を取ろうとする。
「そりゃ、壁のひとつも作りたくなるでしょ。
距離感がエグいんですって。肉体的にも精神的にも。
俺、あまり人と密接な関係を築きたくないんですー。」
「僕はルンルンが大好きだから、もっと密接な関係になりたいと思ってるよ。
このお邸から出れるようになった時には、ルンルンにも一緒に来て貰いたいし近くに居て欲しい。
ねえ、やっぱり試してみない?僕との恋愛。」
「だから!試してみませんって!
百歩譲って恋愛をする事にしたとしても、男を相手には絶対にしませんて!ちょ…!意外と強いな!」
懲りないケンヴィーにルンルンが思わず語調を強めた。
しなだれかかるように左側にいるケンヴィーがグイグイとルンルンの身体を押してくる。
体格、腕力ともにルンルンの方が確実にまさっているのに、気圧されたせいかルンルンの身体の方が右側に段々と折れてゆく。
「僕と恋愛が出来たら、きっと女の子とも恋愛が出来るようになるよ。
恋も出来ないなんて勿体ない、ルンルンには幸せになって欲しいから、色んな人に愛されて欲しいんだ。」
「ヴィーだって恋愛経験が無いんですよね!
人の事を言えないんでしょーが!余計なお世話なんですってば!」
「うん、だから僕もルンルンと恋が出来たら、女の子とも恋が出来るかなって。一緒に勉強しよ?
僕はルンルンを愛しても、ルンルンを独占しようとか束縛しようとか思わないから大丈夫だよ!」
ベッドに横倒しになったルンルンは、先ほどケンヴィーがベッドの後ろに投げ捨てた枕を盾代わりにしてケンヴィーの猛攻から必死で自身を防御する。
「何にも大丈夫じゃない!博愛精神にもほどがある!
怖すぎですって!」
「まぁ何事も経験でしょ?
まずは初めてのキスからしてみない?」
「しませんッッてば!!」
ケンヴィーが口にした言葉は全て本心であり、ルンルンに人を愛し愛される事の温かさを知って貰いたいとの考えがあった。
その相手が自分である必要は無いのだが、冗談半分でグイグイと迫っていってみれば、いつもは気だるげなルンルンが焦って慌てふためいた。
珍しい反応があまりにも楽しく、ケンヴィーの方も気持ちが止まらなくなってしまう。
「まぁまぁ、嫌なら途中でやめればイイんだし。」
「最初っから嫌なんですってば!
それにキスの途中ってソレ既にキス、やっちゃってますよね!
キスの経験自体をしたくないって言ってるんで…!
ちょ!マジでヴィー強い!」
ルンルンは横倒しにベッドに押さえ込まれ、枕を挟んでケンヴィーにのしかかられた。
まったく色気の無いじゃれ合うような枕を挟んでの攻防がしばらく繰り広げられたが、枕の下でジタバタともがく様に抵抗して暴れていたルンルンの動きがピタッと急に止まった。
「ん?覚悟が出来たの?じゃあ、んー。」
枕を挟んで下にいる抵抗の無くなったルンルンに向け、唇を尖らせるように突き出したケンヴィーの身体がブワッとベッドに投げ出された。
「バカヴィー、それどころじゃない。
邸に侵入者だ。」
「え?」と投げ出されたベッドの上でムクッと身体を起こしたケンヴィーは、改めて聞き耳を立ててみた。
非常時に鳴らすのか、かすかに笛のようなか細い音が聞こえる。
ルンルンは腹の上にあった枕をポイっとケンヴィーに投げるとベッドから立ち上がり、机の脇に置いた剣を手にしてケンヴィーの方を振り返った。
「賊はおそらくヴィーの部屋に向かったんでしょう。
いつもは鬱陶しいけど、今夜に関してはここに来ていて正解でしたね。
ヴィーはここでおとなしくしていて下さいよ。」
ベッドの上で枕を抱いたケンヴィーは侵入者と聞いても不安がるでもなく、むぅとむくれた表情を見せながら頷いた。
「いつもは鬱陶しいって思ってんの?
さっきまで、あんなにイイ雰囲気だったのに。」
『どこが』と言いたげな顔をしたルンルンがクスリと小さく笑い、そのまま部屋を出て行った。
大国であるベルゼルト皇国には他国の密偵が多く紛れ込んでいる。
皇国の軍力の一端を握る力を持つヴィルムバッハ領も例外ではなく領内にも他国からの密偵はいたが、直接何らかの害が無ければと全て泳がせていた。
だが領主邸に侵入して来た賊となると征伐対象となり、その国の正体も明らかにし、国ごと敵として認定する。
ベッドの上で枕を抱いたケンヴィーがボソッと呟いた。
「リスクィートだよね。
僕の偽物を用意して殺して死んだ事にしたとパイマスから聞いたし。
本物が生きてちゃマズイから殺しに来たのか…それか僕をさらいに来たのか…。」
ちなみにパイマスとは━━
友人の1人でありベルゼルトに居た文通相手。
ルンルンの弟分でもある、おっパイマスターのギャリーの事である。
「ガハハハハ!生きて邸から出られると思うなよ!
この下郎どもめがーッ!!」
遠い場所からもハッキリと聞こえる将軍の咆哮が邸内に響く。
同時に剣戟や断末魔の叫び声もケンヴィーの耳に届いた。
「将軍、楽しそうだな。
これじゃ賊と将軍のどっちが悪者だか分かんないね。」
ルンルンのベッドの上で、抱いた枕に顎を乗せて「ふぅ」と溜め息をついたケンヴィーの前で、いきなりバンっとドアが開いた。
開かれたドアの先には男が立っており、ケンヴィーと目が合った。
怪我を負い逃げて来たのだろうか。
将軍たちからの逃げ場を探してたまたまドアを開いたのか、血だらけの男はケンヴィーの姿を目にすると人が居た事に驚いたように剣を構えた。
「わ、おめでとう!
君は運がいいねー数あるドアの中から、僕が居るこの部屋を探し当てるなんて!」
「!?まさか、ケンヴィー皇子か!覚悟を………!」
「でも残念だね。運を使い果たしちゃったのかな。
君は与えられた仕事を成し遂げる事は出来ないよ。」
剣を構えた男は、ケンヴィーの前でビクンと身体を跳ねさせてからガクンッと床に崩れ落ち、そのまま事切れた。
崩れ落ちた男の背後に、血にまみれた剣を手にしたルンルンが立つ。
「死んじゃう人間に、おめでとうは無いでしょー。」
「死ぬ前にちゃんと僕を見つけられたんだから、おめでとうでしょ。」
ルンルンはトラウザーズのポケットから布を取り出し、血で汚れた剣の刃を拭いてから鞘に治めた。
男の遺体の襟首を掴んで部屋の外に引っ張り出し廊下に出したルンルンは、改めてベッドに座るケンヴィーに近付いた。
「無事…ですよね。えーと大丈夫ですかー?」
ルンルン的に、怪我はしてなくとも目の前で人が殺された事に、誰にでも愛想を振り撒くような博愛主義のケンヴィーがショックを受けていたりしないかと少しばかりの心配をし、覗き込むように顔を近付けた。
一応、心配なんで━━という名の油断をしてしまった無防備なルンルンの口に、ケンヴィーの唇がチュッと軽く押し付けられる。
「……ッヴィー!!なにするんですかっ!」
子どもの児戯のような軽いキスだったがルンルンには相当な驚きだったようで、唇を手で隠すように覆いながら大袈裟なほど大きくケンヴィーから後ずさった。
「本物の王子様だったよルンルン!カッコよかった!
森の中で名前も知らない貴族たちに囲まれた僕を助け出してくれた時もカッコよかったし。
僕を2度も守ってくれたルンルンは、やっぱり僕の王子様だよね!
そりゃ、お姫様はありがとうのキスくらいするよ!」
「自分でお姫様とか言うッすか…?
ただの、やべーやつとしか思えませんて…」
ルンルンは汚いモノを拭き取るように、これでもかというほど唇を両手の甲で交互にぬぐった。
「殿下!ここに居ましたか!いやぁ、無事ですわな!」
開いたドアを背にして唇を拭っていたルンルンの後ろに、部屋を覗き込むように立つ血だらけのヴィルムバッハ将軍が居た。
「うん、無事だよ。将軍、血だらけだね…お邸の中も結構血で汚れたんじゃない?
明日の朝、起きたらみんなでキレイにしよ?
僕も手伝うから。」
さずがに血まみれで部屋に入るのは出来ないのか、ケンヴィーは部屋の前で立ちんぼ状態の将軍に尋ねながらベッドから降りて将軍の元に近付いた。
ルンルンの部屋から出て邸の廊下を見れば、賊の死体が2体と、おびただしい血の痕が廊下の先に続く。
「実は、階下はもっとヒドくて…死体も4つほど。
しかし殿下にモップ掛けとかさせるワケには!」
「手伝うって言ってるんだから手伝ってもらえばいいじゃないですか。
ところで、将軍。
派手に血しぶきあげる場所ばっかり斬りつけるのはヤメて下さいって何度も言ってますよね。
明日の掃除、将軍は床に這いつくばって雑巾がけをして下さい。」
ルンルンは廊下に立つ将軍にさらりと冷たく言い放つと、悲しげな顔を見せた将軍を完全無視した。
「ええンっ!?わし、おじいちゃんなのに!」
「労るべきおじいちゃんてのは、嬉々として侵入者を斬り歩いたりしません。
とりあえず俺はもう寝ますんで、将軍はヴィーを部屋まで送ってあげて下さい。
じゃあ、おやすみなさい。」
ケンヴィーが部屋から出たので、ルンルンは部屋のドアを閉めた。
ドアが閉まる直前、ケンヴィーがこちらを向き投げキッスしたのを見て「うげぇ」と思ったルンルンは、「うげぇ」な表情を隠しもせずにケンヴィーに向けた。
ドアを閉め暗い部屋に1人きりになったルンルンは、やっと一息つけるとベッドに腰を下ろし、そのまま横になった。
「油断したなーそういえば…
ヴィーは、目の前で人が殺されたくらいで怯えるようなタマじゃなかった。」
独り言ちながらベッドに横たわったルンルンは、先ほどケンヴィーにベッドに押さえ込まれた事を思い出して何とも言えない苦々しい顔をして身体を起こした。
身体を起こせば、先ほどの投げキッスの事まで思い出されてしまい、ルンルンは思わず身震いした。
「あー…面倒な奴に狙われたなぁ……。」
僕、男女どちら役でもイケそうな気がするんだ。」
「はー?しませんよ。
ナニつまらない冗談ほざいてやがります?」
1日の仕事を終えクタクタになったルンルンが夕食が入ったバスケットを手に提げ自室のドアを開けば、部屋に勝手に侵入していたケンヴィー皇子から部屋に入るなり、いきなりそう提案された。
ケンヴィー皇子の勝手な訪問も唐突な言動も毎度の事であり、ルンルンはつまらない冗談とばかりに気だるそうに答えると、机と椅子をケンヴィーに占領されたためにやむなく『やれやれ』と呟きながらベッドに腰を下ろした。
「本気だよ、冗談なんかじゃないんだけど。」
「だったらヴィーは、正気でとんでもなく頭のおかしい事を言ってるんですね。
ヴィーの頭も心配ですが、仕事が終わったばかりで疲れてるんですよー。
メシ食って早く休みたいんですって。」
部屋から出て行って欲しいと暗にほのめかしつつ、ルンルンは隣に置いたバスケットからパンを取り出して渋い顔をしながら口に咥え、味わうでもなく作業のようにモッモッとパンを食んでいく。
「ルンルンは女の子ウケが良いのに誰とも付き合おうとしないよね。
だからコッチの趣味かもとか思ったんだけど。」
ケンヴィーは机の方を向いていた椅子をベッドの方に向け、パンを咥えるルンルンの顔を覗き込む。
ルンルンはケンヴィーの視線をさほど気にする様子もなく、ケンヴィーに見られながら淡々と食事を進めていった。
「極論が過ぎやしませんかー?女の子と付き合ってないから男色家だろうとか。
毎度言ってますよねー?恋愛には興味無いんですって。
それより、どちらもイケるって言ってたけどヴィーにはそんな趣味ありましたっけ。」
「無いよ。僕もまだ誰ともお付き合いした事がないし。
だけどルンルンとなら上手くいきそうな気がする!」
「根拠も無く言ってみただけですか。
でも、こちらにも選ぶ権利はありますからねー。」
『ハイハイ』的におざなりな返事をし、パンを食べ終えたルンルンはバスケットから蓋付きの容器に入ったひよこ豆のトマト煮を取り出して食べ始めた。
「ねえ、ガルバンゾーのトマト煮はパンに挟んで食べた方が美味しいよ。」
「……言われなくても知ってますが……ヴィーが変な事を言うから先にパン食べてしまいましたしねぇ……。」
食事も要らぬお節介も不毛な会話もさっさと終わらせて早く休みたい。それだけなのに━━
1日をほぼ邸の中で過ごすケンヴィーには、寝る前のこの時間が友人とおしゃべりが出来るもっとも楽しい時間なのだ。
そう分かっているルンルンは、気だるそうにでもケンヴィーの話し相手をするのが1日を締めくくる日課でもある。
「えー?僕じゃルンルンの趣味に合わないって事?
じゃあ仕方ないなぁ…ルンルンと愛情を育むのは諦めて、深い友情とまりで我慢しとくかぁ。」
ケンヴィーは残念そうに言いながら首を傾け、ルンルンの顔をジッと見つめ続けた。
ルンルンは何かを問うようなケンヴィーの視線をスルーしながら淡々と食事を進め、語調も態度も変えずに返事をする。
「いや趣味どうこう以前に恋愛はしないと何度も言ってますよー。
それに、ヴィーの事を友人だとは思ってはいますけどー…俺はあくまでヴィーの従者で護衛。
そこに深い友情があるかは分かりませんよね。」
「どうして?恋愛はともかく、僕はルンルンの事を大親友だと思っているよ。
まだ会ってそんなに経ってないけど、ルンルンは僕の大切な人だよ。ルンルンはそう思ってくれてないの?」
ルンルンは食べ終えた容器をバスケットに戻し、水で喉を潤してからバスケットを床に置いた。
ふぅと溜め息をつき濡れた口元を手の甲でグイッと拭ってから、やっとケンヴィーの視線に自分の視線を合わせた。
「あのですねーヴィーは皇子さまでしょ。
俺はただのしがない伯爵家の雇われ剣士。身分が違うし親友なんて呼ぶには、おこがましいですって。」
「ルンルンだって元々が王子様だったじゃないか。
僕だって今は国賊な上に逃亡者だし。死人扱いかもだし。」
ケンヴィーは椅子から立ち上がり、ルンルンの左隣にやって来てトスンとベッドに腰を下ろした。
人懐っこさから距離感を無視し、互いの腿を合わせるようにピッタリくっついて来るケンヴィーに、ルンルンは二人の間に枕を挟んで壁を作り距離を取った。
「だから近いんですって。
ヴィーは人との距離感がおかしいんですよ。
もう少し警戒心ってものを持って人を見ないと。
ヴィーは氷の姫君と呼ばれた常時無感情なカリーナ様のご子息とは思えないほどの博愛精神ですよね。
誰にでも懐くし、すぐ打ち解けるし…
だから変な輩に付け入られたりするんですよ。
祀り上げられた挙げ句に欲しくもない皇帝の座なんか巡って戦争なんかさせられたり。」
「リスクィート国で生まれ育った母上には隙を見せないよう誰にも感情を見せない事が必要だったんだよ。
ベルゼルトで生まれ育った僕には、八方美人でも良いから、みんなから愛されるような人になりなさいって母上がよく言っていた。
あと、返ってくる善意の意図を測りなさいともね。」
ケンヴィーは二人の間に置かれた枕を掴んでポイっと後方に投げると、再びルンルンとの距離をズイッと詰めた。
ベッドの縁で、二人寄り添うようにくっついて並んでいる状態に、ルンルンが半ば諦めたように溜め息をつく。
「それでもヴィーは誰にでも良い顔をしすぎだと。」
「言っとくけど全てに心を許してるわけではないよ。
僕は誰にでも甘い顔をするけど、それは警戒心を無くさせて本心を探るためだからね。
ルンルンは僕が今まで会って来た中で、もっとも信頼を置ける友だと思っているよ。
むしろ、なんだかんだと壁を作ろうとするのはルンルンの方だよね。」
ルンルンの左側に座り恋人のように密着し、顔を間近で覗き込むケンヴィーに、ルンルンが首を伸ばして顎先を上げ、顔だけでも距離を取ろうとする。
「そりゃ、壁のひとつも作りたくなるでしょ。
距離感がエグいんですって。肉体的にも精神的にも。
俺、あまり人と密接な関係を築きたくないんですー。」
「僕はルンルンが大好きだから、もっと密接な関係になりたいと思ってるよ。
このお邸から出れるようになった時には、ルンルンにも一緒に来て貰いたいし近くに居て欲しい。
ねえ、やっぱり試してみない?僕との恋愛。」
「だから!試してみませんって!
百歩譲って恋愛をする事にしたとしても、男を相手には絶対にしませんて!ちょ…!意外と強いな!」
懲りないケンヴィーにルンルンが思わず語調を強めた。
しなだれかかるように左側にいるケンヴィーがグイグイとルンルンの身体を押してくる。
体格、腕力ともにルンルンの方が確実にまさっているのに、気圧されたせいかルンルンの身体の方が右側に段々と折れてゆく。
「僕と恋愛が出来たら、きっと女の子とも恋愛が出来るようになるよ。
恋も出来ないなんて勿体ない、ルンルンには幸せになって欲しいから、色んな人に愛されて欲しいんだ。」
「ヴィーだって恋愛経験が無いんですよね!
人の事を言えないんでしょーが!余計なお世話なんですってば!」
「うん、だから僕もルンルンと恋が出来たら、女の子とも恋が出来るかなって。一緒に勉強しよ?
僕はルンルンを愛しても、ルンルンを独占しようとか束縛しようとか思わないから大丈夫だよ!」
ベッドに横倒しになったルンルンは、先ほどケンヴィーがベッドの後ろに投げ捨てた枕を盾代わりにしてケンヴィーの猛攻から必死で自身を防御する。
「何にも大丈夫じゃない!博愛精神にもほどがある!
怖すぎですって!」
「まぁ何事も経験でしょ?
まずは初めてのキスからしてみない?」
「しませんッッてば!!」
ケンヴィーが口にした言葉は全て本心であり、ルンルンに人を愛し愛される事の温かさを知って貰いたいとの考えがあった。
その相手が自分である必要は無いのだが、冗談半分でグイグイと迫っていってみれば、いつもは気だるげなルンルンが焦って慌てふためいた。
珍しい反応があまりにも楽しく、ケンヴィーの方も気持ちが止まらなくなってしまう。
「まぁまぁ、嫌なら途中でやめればイイんだし。」
「最初っから嫌なんですってば!
それにキスの途中ってソレ既にキス、やっちゃってますよね!
キスの経験自体をしたくないって言ってるんで…!
ちょ!マジでヴィー強い!」
ルンルンは横倒しにベッドに押さえ込まれ、枕を挟んでケンヴィーにのしかかられた。
まったく色気の無いじゃれ合うような枕を挟んでの攻防がしばらく繰り広げられたが、枕の下でジタバタともがく様に抵抗して暴れていたルンルンの動きがピタッと急に止まった。
「ん?覚悟が出来たの?じゃあ、んー。」
枕を挟んで下にいる抵抗の無くなったルンルンに向け、唇を尖らせるように突き出したケンヴィーの身体がブワッとベッドに投げ出された。
「バカヴィー、それどころじゃない。
邸に侵入者だ。」
「え?」と投げ出されたベッドの上でムクッと身体を起こしたケンヴィーは、改めて聞き耳を立ててみた。
非常時に鳴らすのか、かすかに笛のようなか細い音が聞こえる。
ルンルンは腹の上にあった枕をポイっとケンヴィーに投げるとベッドから立ち上がり、机の脇に置いた剣を手にしてケンヴィーの方を振り返った。
「賊はおそらくヴィーの部屋に向かったんでしょう。
いつもは鬱陶しいけど、今夜に関してはここに来ていて正解でしたね。
ヴィーはここでおとなしくしていて下さいよ。」
ベッドの上で枕を抱いたケンヴィーは侵入者と聞いても不安がるでもなく、むぅとむくれた表情を見せながら頷いた。
「いつもは鬱陶しいって思ってんの?
さっきまで、あんなにイイ雰囲気だったのに。」
『どこが』と言いたげな顔をしたルンルンがクスリと小さく笑い、そのまま部屋を出て行った。
大国であるベルゼルト皇国には他国の密偵が多く紛れ込んでいる。
皇国の軍力の一端を握る力を持つヴィルムバッハ領も例外ではなく領内にも他国からの密偵はいたが、直接何らかの害が無ければと全て泳がせていた。
だが領主邸に侵入して来た賊となると征伐対象となり、その国の正体も明らかにし、国ごと敵として認定する。
ベッドの上で枕を抱いたケンヴィーがボソッと呟いた。
「リスクィートだよね。
僕の偽物を用意して殺して死んだ事にしたとパイマスから聞いたし。
本物が生きてちゃマズイから殺しに来たのか…それか僕をさらいに来たのか…。」
ちなみにパイマスとは━━
友人の1人でありベルゼルトに居た文通相手。
ルンルンの弟分でもある、おっパイマスターのギャリーの事である。
「ガハハハハ!生きて邸から出られると思うなよ!
この下郎どもめがーッ!!」
遠い場所からもハッキリと聞こえる将軍の咆哮が邸内に響く。
同時に剣戟や断末魔の叫び声もケンヴィーの耳に届いた。
「将軍、楽しそうだな。
これじゃ賊と将軍のどっちが悪者だか分かんないね。」
ルンルンのベッドの上で、抱いた枕に顎を乗せて「ふぅ」と溜め息をついたケンヴィーの前で、いきなりバンっとドアが開いた。
開かれたドアの先には男が立っており、ケンヴィーと目が合った。
怪我を負い逃げて来たのだろうか。
将軍たちからの逃げ場を探してたまたまドアを開いたのか、血だらけの男はケンヴィーの姿を目にすると人が居た事に驚いたように剣を構えた。
「わ、おめでとう!
君は運がいいねー数あるドアの中から、僕が居るこの部屋を探し当てるなんて!」
「!?まさか、ケンヴィー皇子か!覚悟を………!」
「でも残念だね。運を使い果たしちゃったのかな。
君は与えられた仕事を成し遂げる事は出来ないよ。」
剣を構えた男は、ケンヴィーの前でビクンと身体を跳ねさせてからガクンッと床に崩れ落ち、そのまま事切れた。
崩れ落ちた男の背後に、血にまみれた剣を手にしたルンルンが立つ。
「死んじゃう人間に、おめでとうは無いでしょー。」
「死ぬ前にちゃんと僕を見つけられたんだから、おめでとうでしょ。」
ルンルンはトラウザーズのポケットから布を取り出し、血で汚れた剣の刃を拭いてから鞘に治めた。
男の遺体の襟首を掴んで部屋の外に引っ張り出し廊下に出したルンルンは、改めてベッドに座るケンヴィーに近付いた。
「無事…ですよね。えーと大丈夫ですかー?」
ルンルン的に、怪我はしてなくとも目の前で人が殺された事に、誰にでも愛想を振り撒くような博愛主義のケンヴィーがショックを受けていたりしないかと少しばかりの心配をし、覗き込むように顔を近付けた。
一応、心配なんで━━という名の油断をしてしまった無防備なルンルンの口に、ケンヴィーの唇がチュッと軽く押し付けられる。
「……ッヴィー!!なにするんですかっ!」
子どもの児戯のような軽いキスだったがルンルンには相当な驚きだったようで、唇を手で隠すように覆いながら大袈裟なほど大きくケンヴィーから後ずさった。
「本物の王子様だったよルンルン!カッコよかった!
森の中で名前も知らない貴族たちに囲まれた僕を助け出してくれた時もカッコよかったし。
僕を2度も守ってくれたルンルンは、やっぱり僕の王子様だよね!
そりゃ、お姫様はありがとうのキスくらいするよ!」
「自分でお姫様とか言うッすか…?
ただの、やべーやつとしか思えませんて…」
ルンルンは汚いモノを拭き取るように、これでもかというほど唇を両手の甲で交互にぬぐった。
「殿下!ここに居ましたか!いやぁ、無事ですわな!」
開いたドアを背にして唇を拭っていたルンルンの後ろに、部屋を覗き込むように立つ血だらけのヴィルムバッハ将軍が居た。
「うん、無事だよ。将軍、血だらけだね…お邸の中も結構血で汚れたんじゃない?
明日の朝、起きたらみんなでキレイにしよ?
僕も手伝うから。」
さずがに血まみれで部屋に入るのは出来ないのか、ケンヴィーは部屋の前で立ちんぼ状態の将軍に尋ねながらベッドから降りて将軍の元に近付いた。
ルンルンの部屋から出て邸の廊下を見れば、賊の死体が2体と、おびただしい血の痕が廊下の先に続く。
「実は、階下はもっとヒドくて…死体も4つほど。
しかし殿下にモップ掛けとかさせるワケには!」
「手伝うって言ってるんだから手伝ってもらえばいいじゃないですか。
ところで、将軍。
派手に血しぶきあげる場所ばっかり斬りつけるのはヤメて下さいって何度も言ってますよね。
明日の掃除、将軍は床に這いつくばって雑巾がけをして下さい。」
ルンルンは廊下に立つ将軍にさらりと冷たく言い放つと、悲しげな顔を見せた将軍を完全無視した。
「ええンっ!?わし、おじいちゃんなのに!」
「労るべきおじいちゃんてのは、嬉々として侵入者を斬り歩いたりしません。
とりあえず俺はもう寝ますんで、将軍はヴィーを部屋まで送ってあげて下さい。
じゃあ、おやすみなさい。」
ケンヴィーが部屋から出たので、ルンルンは部屋のドアを閉めた。
ドアが閉まる直前、ケンヴィーがこちらを向き投げキッスしたのを見て「うげぇ」と思ったルンルンは、「うげぇ」な表情を隠しもせずにケンヴィーに向けた。
ドアを閉め暗い部屋に1人きりになったルンルンは、やっと一息つけるとベッドに腰を下ろし、そのまま横になった。
「油断したなーそういえば…
ヴィーは、目の前で人が殺されたくらいで怯えるようなタマじゃなかった。」
独り言ちながらベッドに横たわったルンルンは、先ほどケンヴィーにベッドに押さえ込まれた事を思い出して何とも言えない苦々しい顔をして身体を起こした。
身体を起こせば、先ほどの投げキッスの事まで思い出されてしまい、ルンルンは思わず身震いした。
「あー…面倒な奴に狙われたなぁ……。」
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