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二人っきりの逃避行
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あの日…案内人さんはこう言った。
一度転生したら、1000回転生し続ける、って。つまり、私はこれからも生き続ける。それを、蒼玉にも適用できたなら…
成功するかどうかなんて、わからない。でも、このまま狙われ続けて、国民に犠牲を出し続けるくらいなら…
宮廷から漏れ出る光が見えなくなったくらいで、私は立ち止まった。
ラノベでよく見るダンジョンみたい。普段の私ならテンション上がってたと思う。
さて…遠くから足音が近づいてきた。
「蒼玉さまっ!」
姿をあらわした蒼玉に、駆け寄る。肩で息をしてるあたり、相当無理したんだろうけど、今は労っていられない。
「ひとつ、提案があります。私、逃げたくないです。」
蒼玉が、目を見開いて…こく、とうなずいた。
私の提案は、簡単に言えば心中、だ。この争いは、私と蒼玉を狙って起こってる。私たちがいなくなれば、穀雨宮だって諦めるだろうし、白露宮も落ち着くだろう。
…そう。冷静になれば、仲良くできるはずなんだ。もともとそうしてたんだし、春林さんみたいな人だっているんだから。
心中、の単語に、蒼玉は顔色ひとつかえなかった。
「私、信じてもらえないかもしれないですけど、転生するときに言われたんです。1000回、転生し続ける、って。蒼玉さまのこと、私、絶対離しません。絶対、死なせません。一緒に、違う世界で、生きませんか?」
蒼玉が転生できるなんて保証、ない。最悪私だけ転生、なんてことになるかもしれない。そうなったら私は、1000回の転生中、ずっと苦しむことになると思う。それでも…
「…分かった。それが、最もいい方法だろう。よもぎがそれでいいなら、だがな。」
…っ!蒼玉の目は、驚くほど静かな色をしていた。
生きてる世界が、私とは違う。ちょっと飲まれながら、私は頷いた。
「よもぎ。」
気がついたら、まばたきしたらまつ毛が触れそうなキョリに美麗な顔があった。少しだけ、その目が潤んでいる。
きゅううっと、息が苦しくなった。ダメ。今は。
色々ありすぎる衝動を抑えて、私は勢いよく立ち上がった。
「行きましょう!やっぱりみんなに私たちが確実に死んだって分からせないとダメですよねっ!どこか、エレガントでスピーディーで、パフォーマンスちっくな死に方できるとこ、ありませんか?」
「よくわからんが、一つあるな。」
なんとなく不機嫌そうな蒼玉に手を引かれて、私たちは地下道を走り出した。
つながれた右手が熱い。
いくつもの分かれ道を、曲がる。さっきまでの道より、ずっと古そうな道に出たとき、ふっと目の前が晴れた。
「崖…」
文字通り、切り立った崖。ふと上を見ると、騒ぎ続ける群衆の姿があった。
一度転生したら、1000回転生し続ける、って。つまり、私はこれからも生き続ける。それを、蒼玉にも適用できたなら…
成功するかどうかなんて、わからない。でも、このまま狙われ続けて、国民に犠牲を出し続けるくらいなら…
宮廷から漏れ出る光が見えなくなったくらいで、私は立ち止まった。
ラノベでよく見るダンジョンみたい。普段の私ならテンション上がってたと思う。
さて…遠くから足音が近づいてきた。
「蒼玉さまっ!」
姿をあらわした蒼玉に、駆け寄る。肩で息をしてるあたり、相当無理したんだろうけど、今は労っていられない。
「ひとつ、提案があります。私、逃げたくないです。」
蒼玉が、目を見開いて…こく、とうなずいた。
私の提案は、簡単に言えば心中、だ。この争いは、私と蒼玉を狙って起こってる。私たちがいなくなれば、穀雨宮だって諦めるだろうし、白露宮も落ち着くだろう。
…そう。冷静になれば、仲良くできるはずなんだ。もともとそうしてたんだし、春林さんみたいな人だっているんだから。
心中、の単語に、蒼玉は顔色ひとつかえなかった。
「私、信じてもらえないかもしれないですけど、転生するときに言われたんです。1000回、転生し続ける、って。蒼玉さまのこと、私、絶対離しません。絶対、死なせません。一緒に、違う世界で、生きませんか?」
蒼玉が転生できるなんて保証、ない。最悪私だけ転生、なんてことになるかもしれない。そうなったら私は、1000回の転生中、ずっと苦しむことになると思う。それでも…
「…分かった。それが、最もいい方法だろう。よもぎがそれでいいなら、だがな。」
…っ!蒼玉の目は、驚くほど静かな色をしていた。
生きてる世界が、私とは違う。ちょっと飲まれながら、私は頷いた。
「よもぎ。」
気がついたら、まばたきしたらまつ毛が触れそうなキョリに美麗な顔があった。少しだけ、その目が潤んでいる。
きゅううっと、息が苦しくなった。ダメ。今は。
色々ありすぎる衝動を抑えて、私は勢いよく立ち上がった。
「行きましょう!やっぱりみんなに私たちが確実に死んだって分からせないとダメですよねっ!どこか、エレガントでスピーディーで、パフォーマンスちっくな死に方できるとこ、ありませんか?」
「よくわからんが、一つあるな。」
なんとなく不機嫌そうな蒼玉に手を引かれて、私たちは地下道を走り出した。
つながれた右手が熱い。
いくつもの分かれ道を、曲がる。さっきまでの道より、ずっと古そうな道に出たとき、ふっと目の前が晴れた。
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文字通り、切り立った崖。ふと上を見ると、騒ぎ続ける群衆の姿があった。
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