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日常篇
僕が知っていること
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「七海、一生懸命書いてたもんね」
どれだけの時間と労力を使ってきたのか、僕はよく知っている。
それでも、彼女が納得がいく結果にはならなかったのだ。
『ば、化け物だ...』
『違うよ、僕はただ、』
『近寄るな!』
...それがどれだけ辛いことか、想像することはできる。
らしくもなく昔のことを思い浮かべてしまえるほどには、しっかりとイメージできてしまうのだ。
「だけど...悔しいって思うのは、それだけ七海が必死に書いた証拠だと思う。
あの物語、僕の中では1番面白い物語だよ」
あんまり得意じゃない、そう言いつつ彼女が書きあげたのは推理小説だった。
主人公は自らの友人が死んでしまった真相を追いかけ、その間に様々な人との出会いによって成長していく...それは、七海にしか書けない物語だったように思う。
僕は専門家ではない。
だが、面白かったことは事実なのだ。
「それに、七海が沢山頑張ってたことを僕はちゃんと知ってるよ」
「そんなこと、ない...」
「誰が何と言おうと、七海はいつだって真剣に取り組んでた」
熱で倒れるまで書き続けたり、人ごみが苦手なのに街で人間観察をしたり...とにかく書くのに必要なことを片っ端から勉強していた。
本だけではなく、周りにあるもの全てを使って書いていたのだ。
「...自分が真剣にやってきたものを否定する必要なんてないんだよ」
「木葉、ごめんなさい。弱くて、ごめ...っ」
ゆるゆると背中に回されていた腕の力が強くなるのを感じる。
僕はその力よりも、強く強く抱きしめかえした。
「弱い?ずっと我慢しようとしてたのに?それに、誰かに頼ることって悪いことなのかな...?」
「こんなことで、泣いてたら...」
「君が生命を吹きこんだ物語は、こんなものとかこんなことなんて言葉で表せるものじゃない。
渡瀬さんだっけ。...担当さんも言ってたんじゃない?」
七海ははっとしたように顔をあげる。
1人で抱えこんでは限界がきてひたすら泣いて...そういう一面を知っているから、ちゃんと言葉をかけたい。
そう思うのに、結局上手く言えなくてどうすれば伝わるのか悩んでしまう。
「...大丈夫。ちゃんと頑張ってるんだから、もっと自信を持って。
君が落ちこんだときは、いつだって側にいるから」
「ありがとう...」
僕はよく知っている。
七海がどれだけ頑張っているのかも、抱えこんでしまうことも。
だからこそ、いつだってこうして側にいて支えたいと思うのだ。
どれだけの時間と労力を使ってきたのか、僕はよく知っている。
それでも、彼女が納得がいく結果にはならなかったのだ。
『ば、化け物だ...』
『違うよ、僕はただ、』
『近寄るな!』
...それがどれだけ辛いことか、想像することはできる。
らしくもなく昔のことを思い浮かべてしまえるほどには、しっかりとイメージできてしまうのだ。
「だけど...悔しいって思うのは、それだけ七海が必死に書いた証拠だと思う。
あの物語、僕の中では1番面白い物語だよ」
あんまり得意じゃない、そう言いつつ彼女が書きあげたのは推理小説だった。
主人公は自らの友人が死んでしまった真相を追いかけ、その間に様々な人との出会いによって成長していく...それは、七海にしか書けない物語だったように思う。
僕は専門家ではない。
だが、面白かったことは事実なのだ。
「それに、七海が沢山頑張ってたことを僕はちゃんと知ってるよ」
「そんなこと、ない...」
「誰が何と言おうと、七海はいつだって真剣に取り組んでた」
熱で倒れるまで書き続けたり、人ごみが苦手なのに街で人間観察をしたり...とにかく書くのに必要なことを片っ端から勉強していた。
本だけではなく、周りにあるもの全てを使って書いていたのだ。
「...自分が真剣にやってきたものを否定する必要なんてないんだよ」
「木葉、ごめんなさい。弱くて、ごめ...っ」
ゆるゆると背中に回されていた腕の力が強くなるのを感じる。
僕はその力よりも、強く強く抱きしめかえした。
「弱い?ずっと我慢しようとしてたのに?それに、誰かに頼ることって悪いことなのかな...?」
「こんなことで、泣いてたら...」
「君が生命を吹きこんだ物語は、こんなものとかこんなことなんて言葉で表せるものじゃない。
渡瀬さんだっけ。...担当さんも言ってたんじゃない?」
七海ははっとしたように顔をあげる。
1人で抱えこんでは限界がきてひたすら泣いて...そういう一面を知っているから、ちゃんと言葉をかけたい。
そう思うのに、結局上手く言えなくてどうすれば伝わるのか悩んでしまう。
「...大丈夫。ちゃんと頑張ってるんだから、もっと自信を持って。
君が落ちこんだときは、いつだって側にいるから」
「ありがとう...」
僕はよく知っている。
七海がどれだけ頑張っているのかも、抱えこんでしまうことも。
だからこそ、いつだってこうして側にいて支えたいと思うのだ。
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