26 / 258
日常篇
気分転換
しおりを挟む
木葉は私が泣き止むまでずっと背中をさすってくれていた。
その後はなんだか気まずくて、何を話していいのか迷ってしまう。
「七海、ちょっと一緒に来てほしい場所があるんだけど...いい?」
「私はいいけど、木葉は大丈夫なの?お仕事はお休み?」
「うん。明日はあるけどね」
「...一緒に行ってもいい場所なら、行きたい」
「それじゃあ出掛ける準備をして?その間に...冷蔵庫の中のもの、使わせてもらうね」
あんなに雨が降っていた空はいつの間にか茜色に染まっていて、どれだけの時間木葉に抱きしめてもらっていたのだろうと思うと恥ずかしくなってくる。
(...もっとしっかりしないと)
「何か作るなら、私にやらせて。...多分上手く作れると思うから」
「分かった。それじゃあ僕は、交通手段の確保だね」
少し時間がたった頃、木葉がヘルメットを持ってやってきた。
「もしかしなくても、バイク...?」
「うん。ふたり乗りできるやつ、運転できるから」
木葉の後ろで少し冷たい風を浴びながら、子どもみたいにわくわくしている自分がいる。
そして、ある場所で停まった。
「着いたよ」
「ここって...」
シーズンが終わっているうえに時間が遅いのもあって、誰もいない海。
まるで世界でふたりきりになったかのような感覚に陥りながら、どうしてこの場所なんだろうと疑問を抱く。
「ここ、僕のお気に入りの場所なんだ」
波の音だけが響いて、それが妙に心地いい。
ぼんやりと見つめていると、木葉がレジャーシートを用意してくれた。
「ここ、座って?」
「ありがとう」
(いつも抜かりないな...)
木葉の目はどうしてか寂しそうだ。
本当は来たくなかったんじゃないだろうかと思ったとき、彼はゆっくりと話しはじめた。
「七海と出会う前はよくここに来てたんだ。独りでいた方が楽だと思っていたし...誰にも見つからないから」
作ってきたサンドイッチをふたりで食べながら、そのまま話は続けられる。
「ずっと独りだったんだ。誰かがいても、僕の半分は人間じゃないんだからって思うと不安になるばかりで...」
「木葉はハーフだけど、ただそれだけでしょ?」
木葉の言葉に、私は即答した。
「確かに半分はヴァンパイアだけど...半分は人間でしょ?
それに、そんなの関係ない。木葉は木葉だから」
誰の血が流れていようが、どんな種族だろうが関係ない。
私は中津木葉という人自身を好きになったのだから。
「...七海らしいね」
木葉の表情は晴れ渡り、いつもの明るい笑顔を向けてくれる。
──そのことが堪らなく嬉しかった。
その後はなんだか気まずくて、何を話していいのか迷ってしまう。
「七海、ちょっと一緒に来てほしい場所があるんだけど...いい?」
「私はいいけど、木葉は大丈夫なの?お仕事はお休み?」
「うん。明日はあるけどね」
「...一緒に行ってもいい場所なら、行きたい」
「それじゃあ出掛ける準備をして?その間に...冷蔵庫の中のもの、使わせてもらうね」
あんなに雨が降っていた空はいつの間にか茜色に染まっていて、どれだけの時間木葉に抱きしめてもらっていたのだろうと思うと恥ずかしくなってくる。
(...もっとしっかりしないと)
「何か作るなら、私にやらせて。...多分上手く作れると思うから」
「分かった。それじゃあ僕は、交通手段の確保だね」
少し時間がたった頃、木葉がヘルメットを持ってやってきた。
「もしかしなくても、バイク...?」
「うん。ふたり乗りできるやつ、運転できるから」
木葉の後ろで少し冷たい風を浴びながら、子どもみたいにわくわくしている自分がいる。
そして、ある場所で停まった。
「着いたよ」
「ここって...」
シーズンが終わっているうえに時間が遅いのもあって、誰もいない海。
まるで世界でふたりきりになったかのような感覚に陥りながら、どうしてこの場所なんだろうと疑問を抱く。
「ここ、僕のお気に入りの場所なんだ」
波の音だけが響いて、それが妙に心地いい。
ぼんやりと見つめていると、木葉がレジャーシートを用意してくれた。
「ここ、座って?」
「ありがとう」
(いつも抜かりないな...)
木葉の目はどうしてか寂しそうだ。
本当は来たくなかったんじゃないだろうかと思ったとき、彼はゆっくりと話しはじめた。
「七海と出会う前はよくここに来てたんだ。独りでいた方が楽だと思っていたし...誰にも見つからないから」
作ってきたサンドイッチをふたりで食べながら、そのまま話は続けられる。
「ずっと独りだったんだ。誰かがいても、僕の半分は人間じゃないんだからって思うと不安になるばかりで...」
「木葉はハーフだけど、ただそれだけでしょ?」
木葉の言葉に、私は即答した。
「確かに半分はヴァンパイアだけど...半分は人間でしょ?
それに、そんなの関係ない。木葉は木葉だから」
誰の血が流れていようが、どんな種族だろうが関係ない。
私は中津木葉という人自身を好きになったのだから。
「...七海らしいね」
木葉の表情は晴れ渡り、いつもの明るい笑顔を向けてくれる。
──そのことが堪らなく嬉しかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる