ハーフ&ハーフ

黒蝶

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日常篇

気分転換

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木葉は私が泣き止むまでずっと背中をさすってくれていた。
その後はなんだか気まずくて、何を話していいのか迷ってしまう。
「七海、ちょっと一緒に来てほしい場所があるんだけど...いい?」
「私はいいけど、木葉は大丈夫なの?お仕事はお休み?」
「うん。明日はあるけどね」
「...一緒に行ってもいい場所なら、行きたい」
「それじゃあ出掛ける準備をして?その間に...冷蔵庫の中のもの、使わせてもらうね」
あんなに雨が降っていた空はいつの間にか茜色に染まっていて、どれだけの時間木葉に抱きしめてもらっていたのだろうと思うと恥ずかしくなってくる。
(...もっとしっかりしないと)
「何か作るなら、私にやらせて。...多分上手く作れると思うから」
「分かった。それじゃあ僕は、交通手段の確保だね」
少し時間がたった頃、木葉がヘルメットを持ってやってきた。
「もしかしなくても、バイク...?」
「うん。ふたり乗りできるやつ、運転できるから」
木葉の後ろで少し冷たい風を浴びながら、子どもみたいにわくわくしている自分がいる。
そして、ある場所で停まった。
「着いたよ」
「ここって...」
シーズンが終わっているうえに時間が遅いのもあって、誰もいない海。
まるで世界でふたりきりになったかのような感覚に陥りながら、どうしてこの場所なんだろうと疑問を抱く。
「ここ、僕のお気に入りの場所なんだ」
波の音だけが響いて、それが妙に心地いい。
ぼんやりと見つめていると、木葉がレジャーシートを用意してくれた。
「ここ、座って?」
「ありがとう」
(いつも抜かりないな...)
木葉の目はどうしてか寂しそうだ。
本当は来たくなかったんじゃないだろうかと思ったとき、彼はゆっくりと話しはじめた。
「七海と出会う前はよくここに来てたんだ。独りでいた方が楽だと思っていたし...誰にも見つからないから」
作ってきたサンドイッチをふたりで食べながら、そのまま話は続けられる。
「ずっと独りだったんだ。誰かがいても、僕の半分は人間じゃないんだからって思うと不安になるばかりで...」
「木葉はハーフだけど、ただそれだけでしょ?」
木葉の言葉に、私は即答した。
「確かに半分はヴァンパイアだけど...半分は人間でしょ?
それに、そんなの関係ない。木葉は木葉だから」
誰の血が流れていようが、どんな種族だろうが関係ない。
私は中津木葉という人自身を好きになったのだから。
「...七海らしいね」
木葉の表情は晴れ渡り、いつもの明るい笑顔を向けてくれる。
──そのことが堪らなく嬉しかった。
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