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日常篇
閑話『私の世界』(後篇)
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「あ、あの...」
「風邪、引かなかった?」
「は、はい」
右側の女性とぎこちない会話が続いていくのを、木葉様が左側から見ている。
七海様というらしいこの方は木葉様の恋人だった。
そして、少々普通の人間とは違う素質があるらしいことも自覚しているようだ。
ふたりと一緒にやってきたのは、可愛らしい食べ物が沢山あるお店。
私はマナーを間違えたり、色々迷惑をかけてしまった。
「申し訳、ありません...」
「誰にだって失敗はあるから」
敬語を外すように言われて戸惑ったけれど、木葉様が助け舟を出してくれたおかげで普通に話せた。
様づけもやめて、七海とお友だちになって...ふたりとも私の手を離さないでくれている。
お店を出てしばらく歩いていると、可愛らしいぬいぐるみが見えた。
「...」
「ここ、入ろうか」
「え、でも、」
「僕も賛成!飲み物も売ってるみたいだし、ちょっと寄り道しよう」
ふたりとも優しくしてくれて、私は初めてのゲームセンターというものを楽しんだ。
「そのぬいぐるみ、もうひとつ獲ろうか」
「いいの?」
木葉様が飲み物を買いに行っている間に、七海は笑顔で話し掛けてくれる。
「それ、誰かにあげる為に獲ったんでしょう?それなら、シェリの分も別のを手に入れよう。
...私のと色違いのでいい?」
どうして何も話していないのに分かったんだろう。
そんなことを思いつつ、首を縦にふってみせた。
「よし、ゲット...。この子もふわふわだから、きっと寂しくないよ」
「あ、ありがとう」
「私ね、友だちがいないんだ。人とか変わるのが苦手で...。だから、私の友人はシェリだけだよ。
上手く言えないけど、思い出を作りたかったんだ。もし迷惑だったらすぐ言ってね」
友だち...私が?
そんなことを言われたのは初めてだった。
殴ったり蹴ったり、怖いことしかないと思っていたのに...私の世界に新しい色がついたような気がする。
「ありがとう...」
「シェリは本当に綺麗だね。心が綺麗だから、それが見た目にも表れているのかもしれないね」
「七海さ...七海は、優しい」
「私はただ、私がやりたいようにしているだけだよ」
ふたりで盛りあがっていると、木葉様が飲み物を持ってきてくれた。
「ありがとう、ございます」
「どういたしまして」
「いただきます」
飲み終わってからも沢山遊んで...気づいたときにはもう帰らないといけない時間になっていた。
「シェリ」
「...?」
「またね」
「...うん」
七海に手をふって、そのまま来た道を戻っていく。
「ただいま、戻りました」
「あら、おかえりなさい。...どうだった?」
「お友だちが、できました」
「それはよかったわ」
お屋敷ではケイト様と他の使用人たちがご飯を食べている時間で、みんなからの視線がきらきらに満ちていた。
「楽しめた?」
「はい。それから、あの、お土産を...」
「え、お土産!?」「律儀ね、シェリは...」「ありがたい、美味しそうなお菓子...」
使用人は私も含めて7人。
私より年下なのは1人だけで、あとはみんないい先輩だ。
「...これ、いる?」
「いいんですか?」
「ぬいぐるみ、好きでしょ?」
「ありがとうございます、シェリ様!」
元気な女の子の声で、その場は更に和やかな雰囲気に包まれる。
「疲れたでしょう?今夜はもう休みなさい。また明日、話を聞かせて頂戴ね」
ケイト様の言葉に頷いて、自分の部屋に戻る。
気づかないうちに疲れていたのか、ネグリジェに着替えてすぐにシーツの海に飛びこんだ。
「あ...」
ケイト様から以外何も届くことがなかった携帯電話が音をたてる。
《今日はありがとう。また一緒にお出掛けしようね》
その文章を読んだだけで、なんだか胸がいっぱいになる。
私にとっての世界はこのお屋敷だけだと思っていたのに、今日だけで一気に彩づいた。
もう人間ではないのにこんなふうに関わりを持ってもいいのか不安はある。
けれどもし、次のお休みに予定が合ったら...また会いたいな。
「風邪、引かなかった?」
「は、はい」
右側の女性とぎこちない会話が続いていくのを、木葉様が左側から見ている。
七海様というらしいこの方は木葉様の恋人だった。
そして、少々普通の人間とは違う素質があるらしいことも自覚しているようだ。
ふたりと一緒にやってきたのは、可愛らしい食べ物が沢山あるお店。
私はマナーを間違えたり、色々迷惑をかけてしまった。
「申し訳、ありません...」
「誰にだって失敗はあるから」
敬語を外すように言われて戸惑ったけれど、木葉様が助け舟を出してくれたおかげで普通に話せた。
様づけもやめて、七海とお友だちになって...ふたりとも私の手を離さないでくれている。
お店を出てしばらく歩いていると、可愛らしいぬいぐるみが見えた。
「...」
「ここ、入ろうか」
「え、でも、」
「僕も賛成!飲み物も売ってるみたいだし、ちょっと寄り道しよう」
ふたりとも優しくしてくれて、私は初めてのゲームセンターというものを楽しんだ。
「そのぬいぐるみ、もうひとつ獲ろうか」
「いいの?」
木葉様が飲み物を買いに行っている間に、七海は笑顔で話し掛けてくれる。
「それ、誰かにあげる為に獲ったんでしょう?それなら、シェリの分も別のを手に入れよう。
...私のと色違いのでいい?」
どうして何も話していないのに分かったんだろう。
そんなことを思いつつ、首を縦にふってみせた。
「よし、ゲット...。この子もふわふわだから、きっと寂しくないよ」
「あ、ありがとう」
「私ね、友だちがいないんだ。人とか変わるのが苦手で...。だから、私の友人はシェリだけだよ。
上手く言えないけど、思い出を作りたかったんだ。もし迷惑だったらすぐ言ってね」
友だち...私が?
そんなことを言われたのは初めてだった。
殴ったり蹴ったり、怖いことしかないと思っていたのに...私の世界に新しい色がついたような気がする。
「ありがとう...」
「シェリは本当に綺麗だね。心が綺麗だから、それが見た目にも表れているのかもしれないね」
「七海さ...七海は、優しい」
「私はただ、私がやりたいようにしているだけだよ」
ふたりで盛りあがっていると、木葉様が飲み物を持ってきてくれた。
「ありがとう、ございます」
「どういたしまして」
「いただきます」
飲み終わってからも沢山遊んで...気づいたときにはもう帰らないといけない時間になっていた。
「シェリ」
「...?」
「またね」
「...うん」
七海に手をふって、そのまま来た道を戻っていく。
「ただいま、戻りました」
「あら、おかえりなさい。...どうだった?」
「お友だちが、できました」
「それはよかったわ」
お屋敷ではケイト様と他の使用人たちがご飯を食べている時間で、みんなからの視線がきらきらに満ちていた。
「楽しめた?」
「はい。それから、あの、お土産を...」
「え、お土産!?」「律儀ね、シェリは...」「ありがたい、美味しそうなお菓子...」
使用人は私も含めて7人。
私より年下なのは1人だけで、あとはみんないい先輩だ。
「...これ、いる?」
「いいんですか?」
「ぬいぐるみ、好きでしょ?」
「ありがとうございます、シェリ様!」
元気な女の子の声で、その場は更に和やかな雰囲気に包まれる。
「疲れたでしょう?今夜はもう休みなさい。また明日、話を聞かせて頂戴ね」
ケイト様の言葉に頷いて、自分の部屋に戻る。
気づかないうちに疲れていたのか、ネグリジェに着替えてすぐにシーツの海に飛びこんだ。
「あ...」
ケイト様から以外何も届くことがなかった携帯電話が音をたてる。
《今日はありがとう。また一緒にお出掛けしようね》
その文章を読んだだけで、なんだか胸がいっぱいになる。
私にとっての世界はこのお屋敷だけだと思っていたのに、今日だけで一気に彩づいた。
もう人間ではないのにこんなふうに関わりを持ってもいいのか不安はある。
けれどもし、次のお休みに予定が合ったら...また会いたいな。
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