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隠暮篇(かくれぐらしへん)
初めての初詣
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「木葉、起きられそう?」
「...七海、おはよう」
「おはよう...」
珍しく腕のなかで恥ずかしそうにいる恋人に話しかけると、くすぐったそうにしていた。
「耳許で話されるとくすぐったいよ...」
「ごめんね。でも、可愛いから離してあげられそうにない。
...ところで、今日は七海も遅くまで寝てたの?」
「そうみたい。もうお昼だね」
七海は苦笑しながら、いつものように話し掛けてくれる。
その言葉に、まだ頭が冴えていない僕はただ頷くことしかできなかった。
「こんなに沢山人が集まるんだね...」
結局家を出たのは午後3時前、神社に着いたのはそれから30分後のことだった。
波のようにうねる人に埋もれたからか、七海の顔色が少し悪いような気がする。
「大丈夫?」
「うん。平気だよ」
そう答える唇はいつもより青いような気がして、濁流のように押し寄せる人々から避けるようにしつつ端の方に座った。
「ここで少し休もうか」
「ごめん、私が弱いばかりに...」
「そんなことないよ。丁度僕も休みたかっただけだから」
七海は人の感情に敏感な方だ。
人混みがどうしても苦手なのはよく知っているし、正直僕もまだ本調子ではない。
もう少し遅い時間に来るべきだったと少しだけ後悔しながら陽が沈むのを待つ。
空が茜色に染まる頃、ようやく人がまばらになってきた。
「今からなら行けそう?」
「うん。心配してくれてありがとう」
そう話す七海は本当に大丈夫そうで少しだけ安心した。
何をするのかも全く知らない僕は、とにかく彼女に教えてもらって覚えていくしかない。
「これで、お参りは終わり?」
「そうだよ。それで、そっちでおみくじを引いたり御守りを買ったりするんだ」
「おみくじ...」
「引いてみよう」
手を引かれるままに向かってみると、そこにはいくつものおみくじが並べられていた。
本当は僕のような不浄な者が紛れていいはずはないのだが、こうして七海の側にいる間だけは人間の部分も出せているような気がする。
「木葉、どうだった?」
「小吉。もっと周りをよく見てみなさいって。七海は?」
「吉。中身は...仕事がはかどるでしょうだって」
「ということは、僕たちに恋愛の心配はないんだね」
ふたりで見つめあって微笑みあう。
神様やら占いなんて信じていない。
だが、気になる文字が並んでいたことは確かで...僕はそれを隠した。
(【迫る狂敵に注意せよ】、なんて...あながち間違ってないな)
強敵ではなく、狂敵。七海を狙う輩たちを呼ぶにはその方がふさわしい。
「木葉、最後に絵馬にお願いを書いて帰ろうか」
七海の提案に僕はすぐ頷く。
神様なんか信じていない、信じられない。
だが...今だけは、縋れるものにはなんでも縋りたかった。
「...七海、おはよう」
「おはよう...」
珍しく腕のなかで恥ずかしそうにいる恋人に話しかけると、くすぐったそうにしていた。
「耳許で話されるとくすぐったいよ...」
「ごめんね。でも、可愛いから離してあげられそうにない。
...ところで、今日は七海も遅くまで寝てたの?」
「そうみたい。もうお昼だね」
七海は苦笑しながら、いつものように話し掛けてくれる。
その言葉に、まだ頭が冴えていない僕はただ頷くことしかできなかった。
「こんなに沢山人が集まるんだね...」
結局家を出たのは午後3時前、神社に着いたのはそれから30分後のことだった。
波のようにうねる人に埋もれたからか、七海の顔色が少し悪いような気がする。
「大丈夫?」
「うん。平気だよ」
そう答える唇はいつもより青いような気がして、濁流のように押し寄せる人々から避けるようにしつつ端の方に座った。
「ここで少し休もうか」
「ごめん、私が弱いばかりに...」
「そんなことないよ。丁度僕も休みたかっただけだから」
七海は人の感情に敏感な方だ。
人混みがどうしても苦手なのはよく知っているし、正直僕もまだ本調子ではない。
もう少し遅い時間に来るべきだったと少しだけ後悔しながら陽が沈むのを待つ。
空が茜色に染まる頃、ようやく人がまばらになってきた。
「今からなら行けそう?」
「うん。心配してくれてありがとう」
そう話す七海は本当に大丈夫そうで少しだけ安心した。
何をするのかも全く知らない僕は、とにかく彼女に教えてもらって覚えていくしかない。
「これで、お参りは終わり?」
「そうだよ。それで、そっちでおみくじを引いたり御守りを買ったりするんだ」
「おみくじ...」
「引いてみよう」
手を引かれるままに向かってみると、そこにはいくつものおみくじが並べられていた。
本当は僕のような不浄な者が紛れていいはずはないのだが、こうして七海の側にいる間だけは人間の部分も出せているような気がする。
「木葉、どうだった?」
「小吉。もっと周りをよく見てみなさいって。七海は?」
「吉。中身は...仕事がはかどるでしょうだって」
「ということは、僕たちに恋愛の心配はないんだね」
ふたりで見つめあって微笑みあう。
神様やら占いなんて信じていない。
だが、気になる文字が並んでいたことは確かで...僕はそれを隠した。
(【迫る狂敵に注意せよ】、なんて...あながち間違ってないな)
強敵ではなく、狂敵。七海を狙う輩たちを呼ぶにはその方がふさわしい。
「木葉、最後に絵馬にお願いを書いて帰ろうか」
七海の提案に僕はすぐ頷く。
神様なんか信じていない、信じられない。
だが...今だけは、縋れるものにはなんでも縋りたかった。
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