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隠暮篇(かくれぐらしへん)
七海の祈り
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「どうしよう。何を書こうかな...」
今日の木葉は少しだけ様子がおかしい...ような気がする。
ただの勘でしかないけれど、まるで何かを抱えて悩んでいるような...とにかく嫌な予感がするのだ。
(...訊いてもいいのかな)
「木葉、今何か悩んでる?」
「急にどうしたの?何も悩みなんてないよ。強いて言うなら、これから絵馬に書くことがまだ決まらなくて迷ってる」
その言葉に、私は少し素っ気なくなりながらそうなんだと返した。
嘘だ。木葉は嘘を吐いている。
多分半分は本当なのだろうけれど、わざと言わなかったことがあるはずだ。
もし本当に絵馬のことだけ考えているなら、あんな深刻そうな表情をするわけがない。
(私には言えないこと、なのかな...)
「七海、大丈夫?」
「体調のことなら、今は平気。私も何を書こうか決めかねているだけだよ」
「それならいいけど...」
まだガーゼで保護している頬の傷を触りながら、今の祈りをこめようと覚悟を決める。
突然始まった渡瀬さんのストーカーとの戦いは一瞬で終わった。
けれど、まだシェリを酷い目に遭わせた犯人が分かっていない。
これから先、傷つける意思を持った人たちが現れないとは限らないのだ。
できれば楽観的に考えたかったけれど、そうもいかないらしい。
(それなら、私が祈るのはこれだけだ...)
ゆっくりとペンをはしらせてみると、思ったよりはすらすらと進めることができた。
【みんなが怪我や病気になりませんように。それから、もっと恋人の悩みに気づけるようになりたいです】
なんとか狭い枠におさめて、それをこっそり掛けに行こうとする。
けれど木葉に腕を掴まれてそれは叶わなかった。
「どんなことを書いたの?」
「人に見せたら叶わなくなっちゃうから、内緒。その代わり、私も木葉のを見たりしない」
「ええ...」
しゅんとしてしまった彼の手に手を重ねて、恥ずかしさを堪えながら語りかけるように話す。
「木葉のことが好きだから、絶対に叶えたいお願いなの」
「そんな可愛いことを言われたら、見せてなんて言えない...狡い」
周りを盗み見たかと思うと、優しいキスをしてくれた。
そして耳許で囁かれる。
「それならこれで我慢するよ。...僕もお願い叶ってほしいしね」
「待って、くすぐったい...」
ガーゼを撫でるようにしながら、もう1度キスが降ってくる。
「せめて人がいないところで、」
「それまで待てない」
危険な熱が孕んだ瞳を向けられながら微笑まれて、その場から動けない。
嫌なわけではないけれど人目が気にならないと言えば嘘になる。
ただ、今は木葉のお願いを聞きたい。
──神様なんていうものがいるなら、私の祈りだって届くかもしれないから。
今日の木葉は少しだけ様子がおかしい...ような気がする。
ただの勘でしかないけれど、まるで何かを抱えて悩んでいるような...とにかく嫌な予感がするのだ。
(...訊いてもいいのかな)
「木葉、今何か悩んでる?」
「急にどうしたの?何も悩みなんてないよ。強いて言うなら、これから絵馬に書くことがまだ決まらなくて迷ってる」
その言葉に、私は少し素っ気なくなりながらそうなんだと返した。
嘘だ。木葉は嘘を吐いている。
多分半分は本当なのだろうけれど、わざと言わなかったことがあるはずだ。
もし本当に絵馬のことだけ考えているなら、あんな深刻そうな表情をするわけがない。
(私には言えないこと、なのかな...)
「七海、大丈夫?」
「体調のことなら、今は平気。私も何を書こうか決めかねているだけだよ」
「それならいいけど...」
まだガーゼで保護している頬の傷を触りながら、今の祈りをこめようと覚悟を決める。
突然始まった渡瀬さんのストーカーとの戦いは一瞬で終わった。
けれど、まだシェリを酷い目に遭わせた犯人が分かっていない。
これから先、傷つける意思を持った人たちが現れないとは限らないのだ。
できれば楽観的に考えたかったけれど、そうもいかないらしい。
(それなら、私が祈るのはこれだけだ...)
ゆっくりとペンをはしらせてみると、思ったよりはすらすらと進めることができた。
【みんなが怪我や病気になりませんように。それから、もっと恋人の悩みに気づけるようになりたいです】
なんとか狭い枠におさめて、それをこっそり掛けに行こうとする。
けれど木葉に腕を掴まれてそれは叶わなかった。
「どんなことを書いたの?」
「人に見せたら叶わなくなっちゃうから、内緒。その代わり、私も木葉のを見たりしない」
「ええ...」
しゅんとしてしまった彼の手に手を重ねて、恥ずかしさを堪えながら語りかけるように話す。
「木葉のことが好きだから、絶対に叶えたいお願いなの」
「そんな可愛いことを言われたら、見せてなんて言えない...狡い」
周りを盗み見たかと思うと、優しいキスをしてくれた。
そして耳許で囁かれる。
「それならこれで我慢するよ。...僕もお願い叶ってほしいしね」
「待って、くすぐったい...」
ガーゼを撫でるようにしながら、もう1度キスが降ってくる。
「せめて人がいないところで、」
「それまで待てない」
危険な熱が孕んだ瞳を向けられながら微笑まれて、その場から動けない。
嫌なわけではないけれど人目が気にならないと言えば嘘になる。
ただ、今は木葉のお願いを聞きたい。
──神様なんていうものがいるなら、私の祈りだって届くかもしれないから。
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