ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
84 / 258
隠暮篇(かくれぐらしへん)

傷の理由

しおりを挟む
もうここまで話したのだから、理由も正直に話してしまおう。
「ラッシュさんから貰っている分で計算しながら飲まなくちゃいけないからっていうのと...本当なら、人間にばれたらいけないから」
「ごめんなさい、私...」
「大丈夫だよ。これから先も七海と一緒にいたいから、話さないといけないなって思っていたんだ。
それから...あの抑え方は母親に教えてもらったんだよ」
ラッシュさんも母も、人間の相手がいた人たちだ。
それならばとまずはラッシュさんに訊いてみたが『いい方法が分からない、俺とおまえではタイプが違うしな』という言葉を受けた。
そして結局、魔界付近に住んでいる母の元を訪ねることにしたのだ。
『相手の方と一生一緒にいる覚悟はあるの?』
その問いに僕は即答した。
軽い気持ちしか持っていなかったなら、きっと話してはもらえなかっただろう。
「ケイトさんもそうやって抑えて会いに行ってたってこと?」
「そうだよ。...僕の父親にね」
父親なんて呼んでみても、やはり分からないことだらけだ。
どうしても顔が出てこないせいなのか、それとも欠けている幼い頃の記憶に関係しているのか...今となってはもう分からない。
「木葉、大丈夫?」
「ごめん、なんでもないんだ。それから、クレールを使えなかったのにはまだ理由があって...」
「聞かせて」
「最近、原料の花の数が少なくなってきてるらしいんだ。それに、限界寸前の喉の渇きは抑えられない。
クレールはあくまで一時しのぎ、そのあとくる渇きは何倍も増幅して自分にかえってくる。そうなったらもう...」
血液をもらうしかない、そう伝えようとすると七海に抱きつかれた。
腕を回していいか迷っていると、更に強く抱きしめられる。
「そんなに申し訳なさそうな顔をしないで。...デート中、何回も我慢させちゃってごめんなさい。
それから、私のお願いを沢山叶えてくれてありがとう。これからも大好きだよ」
どこかに行ってしまうのではないか、なんて不安はその言葉で吹き飛んでしまった。
ただ、然り気無く服の袖を捲られてしまったのは失態だ。
「...こんなに自分を傷つけてまで一緒にいたいって思ってくれたんだって、そう信じてもいい?」
「僕は七海と一緒に生きたい。...他の人となんて考えられないんだ」
「それならせめて、傷の手当てをさせてくれる?」
「僕にも頬の傷の手当てをさせて」
ふたりで笑いあって、分からないことは補って。
ずっとこんなふうに側にいたい。
「痛っ...」
「ごめん、もうちょっとだけ我慢してね。...いっ!?」
「木葉ももう少しだけ動かないで」
お互いを支えて、お互いに寄り添って...これが僕たちの理想の形だ。
包帯だらけになった後、ふたりで笑いあう。
こんな僕のことを受け入れてくれる七海を幸せにしたい。
たとえ蕀の道が待っていたとしても、乗り越えていこう...空に瞬く星々にそう誓った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...