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隠暮篇(かくれぐらしへん)
過労
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翌日目を覚ますと、時計はお昼過ぎを指していた。
いつもより少し遅い時間だったが、なんとなく家の雰囲気がおかしいことに気づく。
「七海...?」
いつもなら七海が起こしてくれる時間なのに、今日は全く気配がしない。
どうしようかと頭を悩ませていると、かあ、と鳴く声がした。
「ノワール...?」
ノワールが鳴いているのは、七海の部屋の扉の前。
...嫌な予感しかしなかった。
「七海?開けるよ」
扉の向こうでは、真っ青な顔をした七海がぐったりと横たわっていた。
「七海!」
「騒がないで、私まだ、頑張れる...」
「病院行こう」
ぐっと抱きあげ、そのまま目的地を目指してひたすら走る。
走って、走って、走って...ようやく辿り着いたのは、ラッシュさんの知り合いの診療所だ。
「すみません、彼女の具合が悪そうで...」
「おまえ、ラッシュの知り合いの...取り敢えずその子をそのベッドに横にならせろ」
言われたとおりにすると、すぐに診察がはじまった。
もし何かあったら、もし手遅れになるような病気だったら...悪い想像ばかりしてしまい、その場から動けない。
「...彼女は寝不足気味だったんじゃないか?」
「食欲がないみたいでした。少し食べる量が減ってて、」
「もう分かった。...大丈夫、過労だ。栄養があるものを食べて休んでたらよくなる。
この点滴が終わったら帰っていい」
「ありがとうございます」
すっと頭を下げると、その医者は不思議そうな表情を浮かべて僕を見つめていた。
「あの...?」
「自分を責めなくていい。少なくともおまえさんのせいじゃない」
「そんな顔、してましたか?」
「してる。...昔のあいつによく似てるな。人間と付き合っていくのは苦労するだろうが、本気で相手が好きならとことん向き合え」
この医者について、ラッシュさんの古い知り合いということしか知らなかった。
もしかすると、僕が知らないところで彼も苦労してきたのかもしれない。
「...はい」
医者は満足そうな表情をした後、そのまま颯爽と別室へ行ってしまった。
診察代を払わなければ...そう思っていると、ぼそぼそと声が聞こえてくる。
「おか、さ...行か...で」
「...七海」
ベッドに近づくと、その言葉がはっきりと聞こえた。
「お母さん、置いていかないで...」
七海の家庭は複雑だ。
彼女は生まれたときから父親を知らず、母親は...
「七海、大丈夫だよ」
「...木葉?ごめん、私、」
「過労だって。もう少しで点滴が終わるから、それから帰ろう」
「うん...」
今度は悪夢を見ないように祈りながら、目を閉じる七海の頭を撫でる。
こんなときでも、僕はこうして側にいることしかできない。
それがものすごくもどかしく感じた瞬間だった。
いつもより少し遅い時間だったが、なんとなく家の雰囲気がおかしいことに気づく。
「七海...?」
いつもなら七海が起こしてくれる時間なのに、今日は全く気配がしない。
どうしようかと頭を悩ませていると、かあ、と鳴く声がした。
「ノワール...?」
ノワールが鳴いているのは、七海の部屋の扉の前。
...嫌な予感しかしなかった。
「七海?開けるよ」
扉の向こうでは、真っ青な顔をした七海がぐったりと横たわっていた。
「七海!」
「騒がないで、私まだ、頑張れる...」
「病院行こう」
ぐっと抱きあげ、そのまま目的地を目指してひたすら走る。
走って、走って、走って...ようやく辿り着いたのは、ラッシュさんの知り合いの診療所だ。
「すみません、彼女の具合が悪そうで...」
「おまえ、ラッシュの知り合いの...取り敢えずその子をそのベッドに横にならせろ」
言われたとおりにすると、すぐに診察がはじまった。
もし何かあったら、もし手遅れになるような病気だったら...悪い想像ばかりしてしまい、その場から動けない。
「...彼女は寝不足気味だったんじゃないか?」
「食欲がないみたいでした。少し食べる量が減ってて、」
「もう分かった。...大丈夫、過労だ。栄養があるものを食べて休んでたらよくなる。
この点滴が終わったら帰っていい」
「ありがとうございます」
すっと頭を下げると、その医者は不思議そうな表情を浮かべて僕を見つめていた。
「あの...?」
「自分を責めなくていい。少なくともおまえさんのせいじゃない」
「そんな顔、してましたか?」
「してる。...昔のあいつによく似てるな。人間と付き合っていくのは苦労するだろうが、本気で相手が好きならとことん向き合え」
この医者について、ラッシュさんの古い知り合いということしか知らなかった。
もしかすると、僕が知らないところで彼も苦労してきたのかもしれない。
「...はい」
医者は満足そうな表情をした後、そのまま颯爽と別室へ行ってしまった。
診察代を払わなければ...そう思っていると、ぼそぼそと声が聞こえてくる。
「おか、さ...行か...で」
「...七海」
ベッドに近づくと、その言葉がはっきりと聞こえた。
「お母さん、置いていかないで...」
七海の家庭は複雑だ。
彼女は生まれたときから父親を知らず、母親は...
「七海、大丈夫だよ」
「...木葉?ごめん、私、」
「過労だって。もう少しで点滴が終わるから、それから帰ろう」
「うん...」
今度は悪夢を見ないように祈りながら、目を閉じる七海の頭を撫でる。
こんなときでも、僕はこうして側にいることしかできない。
それがものすごくもどかしく感じた瞬間だった。
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