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隠暮篇(かくれぐらしへん)
ずれた歯車の音
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「それじゃあかけるよ...」
木葉はノワールを部屋に案内してから、ゆっくりとネジを回す。
そこから聞こえてきたのは、この世のものとは思えないほど綺麗な音色だった。
「すごく綺麗な音...クラシック?」
「これを作ったときは洋楽ばかり聞いていたから、悩んだ末に結局『ホームスイート・ホーム』っていう曲にしたんだ。
ちょっと古いけど、喜んでもらえたならよかった」
楽しそうに話す木葉を見ているだけで、私は楽しかった。
ふたりで微笑みあいながら曲を聴いていると、ばちんと厭な音がする。
それと同時に美しい音色も止まってしまった。
「どうかしたの?」
「...中の歯車が飛んじゃったのかもしれない」
木葉は残念そうに呟いて、それから箱を少しずつ解体し始めた。
「多分この辺りに何かが飛んだんだと思うんだけど...」
「...そこの小さい歯車、噛み合ってないように見える」
木葉が持つピンセットの先より少し左の位置...そこには、どう考えてもおかしな方向に曲がった歯車が存在した。
「あれ、本当だ。七海は見つけるのが上手いんだね」
「たまたまだよ...。でも、そう言ってもらえるとすごく嬉しい」
やっぱり褒めてもらえるのはすごく嬉しい。
どんな些細なことでも、木葉は必ず見つけて私が嬉しくなる魔法をかけてくれる。
けれど、私は木葉に幸せをもらった分だけ何かを返せているのだろうか。
気にしないでなんて言われてしまいそうだけれど、どうしても気になって仕方がない。
「七海、何か考え事?」
「ごめん、なんでもない。ノワールのことがちょっとだけ気になっただけだよ」
「あの子はいい子だから、きっと部屋で大人しく遊んでる...はず」
かちかちと音がして、部屋には再び美しい音色が流れはじめた。
「もう直し終わったの?」
「うん。単純なずれだったから...」
「やっぱり木葉はすごいね」
そう話すと、きゅっと手を握られる。
どうすればいいのか分からずに固まっていると、唇に優しいキスがおとされた。
「き、急にどうし、」
「...いつもより自信なさげに見えるのは、何かあったから?」
「それ、は」
「僕には話せないこと?」
哀しそうな声でそう訊かれて、私は言葉を詰まらせる。
木葉に言えないことではないけれど、話してしまえば甘えてしまいそうで勇気が出ない。
(...覚悟を決めよう)
「先月末のコンテストの結果がきたんだ。でも、全然駄目でちょっと気持ちを立て直せてなくて...」
「それで朝からちょっと様子がおかしかったの?」
私はただ俯くことしかできない。
それなのに、木葉はまた優しい言葉をくれた。
「一生懸命書いてたもんね。...僕は七海の話、すごく好きだよ」
やっぱり我慢できなくなって、木葉にしがみついて泣いてしまう。
歯車のようにぼろぼろと崩れていた心が組みあがっていくような気がした。
木葉はノワールを部屋に案内してから、ゆっくりとネジを回す。
そこから聞こえてきたのは、この世のものとは思えないほど綺麗な音色だった。
「すごく綺麗な音...クラシック?」
「これを作ったときは洋楽ばかり聞いていたから、悩んだ末に結局『ホームスイート・ホーム』っていう曲にしたんだ。
ちょっと古いけど、喜んでもらえたならよかった」
楽しそうに話す木葉を見ているだけで、私は楽しかった。
ふたりで微笑みあいながら曲を聴いていると、ばちんと厭な音がする。
それと同時に美しい音色も止まってしまった。
「どうかしたの?」
「...中の歯車が飛んじゃったのかもしれない」
木葉は残念そうに呟いて、それから箱を少しずつ解体し始めた。
「多分この辺りに何かが飛んだんだと思うんだけど...」
「...そこの小さい歯車、噛み合ってないように見える」
木葉が持つピンセットの先より少し左の位置...そこには、どう考えてもおかしな方向に曲がった歯車が存在した。
「あれ、本当だ。七海は見つけるのが上手いんだね」
「たまたまだよ...。でも、そう言ってもらえるとすごく嬉しい」
やっぱり褒めてもらえるのはすごく嬉しい。
どんな些細なことでも、木葉は必ず見つけて私が嬉しくなる魔法をかけてくれる。
けれど、私は木葉に幸せをもらった分だけ何かを返せているのだろうか。
気にしないでなんて言われてしまいそうだけれど、どうしても気になって仕方がない。
「七海、何か考え事?」
「ごめん、なんでもない。ノワールのことがちょっとだけ気になっただけだよ」
「あの子はいい子だから、きっと部屋で大人しく遊んでる...はず」
かちかちと音がして、部屋には再び美しい音色が流れはじめた。
「もう直し終わったの?」
「うん。単純なずれだったから...」
「やっぱり木葉はすごいね」
そう話すと、きゅっと手を握られる。
どうすればいいのか分からずに固まっていると、唇に優しいキスがおとされた。
「き、急にどうし、」
「...いつもより自信なさげに見えるのは、何かあったから?」
「それ、は」
「僕には話せないこと?」
哀しそうな声でそう訊かれて、私は言葉を詰まらせる。
木葉に言えないことではないけれど、話してしまえば甘えてしまいそうで勇気が出ない。
(...覚悟を決めよう)
「先月末のコンテストの結果がきたんだ。でも、全然駄目でちょっと気持ちを立て直せてなくて...」
「それで朝からちょっと様子がおかしかったの?」
私はただ俯くことしかできない。
それなのに、木葉はまた優しい言葉をくれた。
「一生懸命書いてたもんね。...僕は七海の話、すごく好きだよ」
やっぱり我慢できなくなって、木葉にしがみついて泣いてしまう。
歯車のようにぼろぼろと崩れていた心が組みあがっていくような気がした。
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