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隠暮篇(かくれぐらしへん)
運ばれてきたもの
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【少し遅れて大掃除をしたら懐かしいものが出てきたので送ります】と書かれた紙と一緒に出てきたのは、初めて自作したオルゴールだった。
「すごい、売り物みたい...」
「僕が作ったんだ」
「え、そうなの?やっぱり木葉は器用だね」
「そんなことないよ。粗削りになっちゃった部分も多いし...。
だけど、こんなに重いものならノワールに運ばせるんじゃなくて宅配を使ってくれればよかったのに」
もしこれがもっと重かったら、ノワールは飛べなくなってしまうかもしれない。
翼が折れてしまったらどうするのだ、そんなことを考えていると疑問が止まらなくなってしまった。
...そうだ、何故ノワール経由できたんだ。
速達の手紙なら確かにノワールに届けてもらった方が速い。
だが、こういったものなら急ぐわけでもないのだから小包として送ってもよかったはずだ。
「...七海、ちょっとシェリに連絡してもらってもいい?」
「それはいいけど、何か気がかりなことでもあるの?」
「うん、ちょっとね」
七海は分かったとだけ言って、そのまま電話をかけてみてくれる。
シェリの弱々しい声が漏れ出ていたけれど、残念ながら何を話しているのかまでは分からなかった。
「...何か言ってた?」
もしかすると、母が...そんなことを考えていると、返ってきた言葉は予想外だった。
「ノワールが遊びに行きたがってたけど、何も持たずに行くと心配をかけるんじゃないかって思ったんだって。
だから、丁度大掃除して出てきたオルゴールをお土産に持たせて、ノワールをよろしくって手紙にも書いてあるはずだって言ってたけど...」
手紙をよく見てみると折り目が複数あって、【屋敷だとシェリに1番なついているけど、どこぞの者に傷つけられて車椅子なのにお世話をお願いするわけにはいかないから...申し訳ないけどしばらくお願いね】と綴られていた。
「お母さん...」
「ケイトさんってチャーミングな方だよね」
「ちょっと大雑把だから時々こういうことがあって困るんだ。
もう少し丁寧に書いてくれたらすぐ気づいたのに...」
「ユーモアがあって面白いと思う」
「そういうもの?」
ふたりで話していると、こちらに向けられる視線を感じる。
そこにはノワールがとまっていて、目のやり場に困っているような反応をした。
「ノワールはどんなものを食べるの?」
「その子は雑食だから、残飯とかよく食べてたよ」
「それじゃあ...はい」
七海がむいたばかりの蜜柑を渡すと、お行儀よく食べはじめた。
「ノワールは蜜柑が好きなんだね」
「...ノワールにも部屋を貸してあげる。ケージとか狭いところは苦手だもんね」
かあ、と一言鳴いて、ノワールは僕に蜜柑を差し出す。
「むいてってこと?」
「...多分、これ食べてってことなんじゃないかな?」
どうやら七海が言ったことが正解らしい。
ノワールとの付き合いは長いのに、まだまだだなと内心苦笑しながら皮をむく。
ふたりにひと欠片ずつあげて、残りをほおばる。
それはとても甘く、今の時間のようだ。
「...木葉、後でオルゴールを聴いてみてもいい?」
「勿論。後で一緒に聴こうね」
もう一口食べた蜜柑の味は、先程のものより甘くなっているような気がした。
「すごい、売り物みたい...」
「僕が作ったんだ」
「え、そうなの?やっぱり木葉は器用だね」
「そんなことないよ。粗削りになっちゃった部分も多いし...。
だけど、こんなに重いものならノワールに運ばせるんじゃなくて宅配を使ってくれればよかったのに」
もしこれがもっと重かったら、ノワールは飛べなくなってしまうかもしれない。
翼が折れてしまったらどうするのだ、そんなことを考えていると疑問が止まらなくなってしまった。
...そうだ、何故ノワール経由できたんだ。
速達の手紙なら確かにノワールに届けてもらった方が速い。
だが、こういったものなら急ぐわけでもないのだから小包として送ってもよかったはずだ。
「...七海、ちょっとシェリに連絡してもらってもいい?」
「それはいいけど、何か気がかりなことでもあるの?」
「うん、ちょっとね」
七海は分かったとだけ言って、そのまま電話をかけてみてくれる。
シェリの弱々しい声が漏れ出ていたけれど、残念ながら何を話しているのかまでは分からなかった。
「...何か言ってた?」
もしかすると、母が...そんなことを考えていると、返ってきた言葉は予想外だった。
「ノワールが遊びに行きたがってたけど、何も持たずに行くと心配をかけるんじゃないかって思ったんだって。
だから、丁度大掃除して出てきたオルゴールをお土産に持たせて、ノワールをよろしくって手紙にも書いてあるはずだって言ってたけど...」
手紙をよく見てみると折り目が複数あって、【屋敷だとシェリに1番なついているけど、どこぞの者に傷つけられて車椅子なのにお世話をお願いするわけにはいかないから...申し訳ないけどしばらくお願いね】と綴られていた。
「お母さん...」
「ケイトさんってチャーミングな方だよね」
「ちょっと大雑把だから時々こういうことがあって困るんだ。
もう少し丁寧に書いてくれたらすぐ気づいたのに...」
「ユーモアがあって面白いと思う」
「そういうもの?」
ふたりで話していると、こちらに向けられる視線を感じる。
そこにはノワールがとまっていて、目のやり場に困っているような反応をした。
「ノワールはどんなものを食べるの?」
「その子は雑食だから、残飯とかよく食べてたよ」
「それじゃあ...はい」
七海がむいたばかりの蜜柑を渡すと、お行儀よく食べはじめた。
「ノワールは蜜柑が好きなんだね」
「...ノワールにも部屋を貸してあげる。ケージとか狭いところは苦手だもんね」
かあ、と一言鳴いて、ノワールは僕に蜜柑を差し出す。
「むいてってこと?」
「...多分、これ食べてってことなんじゃないかな?」
どうやら七海が言ったことが正解らしい。
ノワールとの付き合いは長いのに、まだまだだなと内心苦笑しながら皮をむく。
ふたりにひと欠片ずつあげて、残りをほおばる。
それはとても甘く、今の時間のようだ。
「...木葉、後でオルゴールを聴いてみてもいい?」
「勿論。後で一緒に聴こうね」
もう一口食べた蜜柑の味は、先程のものより甘くなっているような気がした。
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