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隠暮篇(かくれぐらしへん)
束の間の来訪者
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それは突然だった。
「け、ケイト様...!」
「そんなに勢いよく起きあがらなくても大丈夫よ。
この時間帯はあまり人が来ないとラッシュに聞いていたのだけれど...お邪魔だったみたいね」
木葉の表情から見ても、自分の母親の登場は意外だったようだ。
そういえばシェリは広いお屋敷で使用人として働いているとだけ聞いていたけれど、それが誰のものなのかまでは訊いていなかった。
(ケイト様ってことは、やっぱりこの人が住んでいる場所で働いているってことだよね...)
相変わらず不思議な雰囲気を持ったその人に、私はただ一礼することしかできない。
「あなたもそんなに畏まらないで。ごめんなさい、出直した方がよさそうね」
「...いいえ。私はこのままで大丈夫です。何だか楽しそうだから」
「3人が納得しているなら、僕も全然構わないよ」
ケイトさんが出直すと話した瞬間、シェリは寂しそうな表情をした。
それを見ておいて帰ってくださいなんて言うわけにはいかない。
(それに、お屋敷に住んでいるということはそれだけ忙しい人ということだから)
次がいつになるか分からない人...ましてや少し寂しそうにしている人を放っておきたくない。
「それなら、もう少しだけいさせてもらおうかしら」
シェリのほっとした様子を見ていると、なんだか微笑ましく感じる。
「あの、寧ろ私たちの方がお邪魔なのでは...」
「急ぎの用があって来たわけではないから、どうか気を遣わないで。
七海さん、だったかしら。...そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「すみません。あまりにも綺麗で見とれてしまいました」
人間とは別格の美しさ、と表現するべきだろうか。
ケイトさんは木葉と瓜二つで、親子というよりは姉弟にしか見えない。
どんなことを話していいか迷っていると、木葉が話題をふってくれる。
「うちにノワールが来たのはいいんだけど、もしかして何かトラブルがおこったの?」
「あの子はシェリにとてもなついていたから、他の者がご飯をあげても食べてくれないの。
ある意味緊急事態というところだったから、荷物を届けてもらうついでにあなたのところに行ってもらうことにしたの。
...迷惑だったかしら」
「そんなことないよ。3人で暮らすのも楽しいなって思ってる。
何かあった訳じゃないならよかったけど...荷物の中に砂糖が入っていたのはどうして?」
病室には沈黙が流れた。
まさかそんなものまで入っていたなんて、私は知らなかったので何も言えずにただ固まる。
(どんな答えが返ってくるんだろう)
そんなことを考えていると、ケイトさんはふふ、と笑ってただ淡々と告げた。
「ごめんなさい、間違えて紛れこんじゃったみたい」
「え?」
「...ケイト様、荷物を、するときは、」
「そうよね、気をつけないといけなかったのに...やっちゃった」
ツボに入ってしまったのか、ケイトさんは笑い続けていた。
本当にお茶目な人だと感じる。
木葉はため息を吐いて袋を渡していた。
「これがないと料理が作れなくて困るでしょ?」
「そうね、ごめんなさい。...いけない、そろそろ行かないと」
ケイトさんは立ちあがると、シェリの頭を優しく撫でた。
「また来るわね。木葉と七海さんも、また会いましょう」
風のように現れて、風のように去っていく。
そんな言葉がぴったりな女性の背中を見送っていると、木葉がほっと息を吐いた。
「け、ケイト様...!」
「そんなに勢いよく起きあがらなくても大丈夫よ。
この時間帯はあまり人が来ないとラッシュに聞いていたのだけれど...お邪魔だったみたいね」
木葉の表情から見ても、自分の母親の登場は意外だったようだ。
そういえばシェリは広いお屋敷で使用人として働いているとだけ聞いていたけれど、それが誰のものなのかまでは訊いていなかった。
(ケイト様ってことは、やっぱりこの人が住んでいる場所で働いているってことだよね...)
相変わらず不思議な雰囲気を持ったその人に、私はただ一礼することしかできない。
「あなたもそんなに畏まらないで。ごめんなさい、出直した方がよさそうね」
「...いいえ。私はこのままで大丈夫です。何だか楽しそうだから」
「3人が納得しているなら、僕も全然構わないよ」
ケイトさんが出直すと話した瞬間、シェリは寂しそうな表情をした。
それを見ておいて帰ってくださいなんて言うわけにはいかない。
(それに、お屋敷に住んでいるということはそれだけ忙しい人ということだから)
次がいつになるか分からない人...ましてや少し寂しそうにしている人を放っておきたくない。
「それなら、もう少しだけいさせてもらおうかしら」
シェリのほっとした様子を見ていると、なんだか微笑ましく感じる。
「あの、寧ろ私たちの方がお邪魔なのでは...」
「急ぎの用があって来たわけではないから、どうか気を遣わないで。
七海さん、だったかしら。...そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
「すみません。あまりにも綺麗で見とれてしまいました」
人間とは別格の美しさ、と表現するべきだろうか。
ケイトさんは木葉と瓜二つで、親子というよりは姉弟にしか見えない。
どんなことを話していいか迷っていると、木葉が話題をふってくれる。
「うちにノワールが来たのはいいんだけど、もしかして何かトラブルがおこったの?」
「あの子はシェリにとてもなついていたから、他の者がご飯をあげても食べてくれないの。
ある意味緊急事態というところだったから、荷物を届けてもらうついでにあなたのところに行ってもらうことにしたの。
...迷惑だったかしら」
「そんなことないよ。3人で暮らすのも楽しいなって思ってる。
何かあった訳じゃないならよかったけど...荷物の中に砂糖が入っていたのはどうして?」
病室には沈黙が流れた。
まさかそんなものまで入っていたなんて、私は知らなかったので何も言えずにただ固まる。
(どんな答えが返ってくるんだろう)
そんなことを考えていると、ケイトさんはふふ、と笑ってただ淡々と告げた。
「ごめんなさい、間違えて紛れこんじゃったみたい」
「え?」
「...ケイト様、荷物を、するときは、」
「そうよね、気をつけないといけなかったのに...やっちゃった」
ツボに入ってしまったのか、ケイトさんは笑い続けていた。
本当にお茶目な人だと感じる。
木葉はため息を吐いて袋を渡していた。
「これがないと料理が作れなくて困るでしょ?」
「そうね、ごめんなさい。...いけない、そろそろ行かないと」
ケイトさんは立ちあがると、シェリの頭を優しく撫でた。
「また来るわね。木葉と七海さんも、また会いましょう」
風のように現れて、風のように去っていく。
そんな言葉がぴったりな女性の背中を見送っていると、木葉がほっと息を吐いた。
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