101 / 258
隠暮篇(かくれぐらしへん)
ふたりだけのワルツ
しおりを挟む
「やっぱり似合うな、お嬢さん」
その声はとても優しいけれど、普段自分では選ばない洋服な分恥ずかしさもある。
「少しだけ、休んでもいいですか...?」
「木葉なら多分寝てるだろうし、お嬢さんのおかげでやっぱり進み具合がいい。
側にいて、起きた瞬間驚かせてやってくれ」
「...ありがとうございます」
全部を言わなくても分かってしまったのはどうしてだろう。
そう思いながらもラッシュさんに一礼して、音をたてないようにしながら部屋に入る。
近くにあった椅子を拝借して、すやすやと眠る木葉の側に座った。
(...それにしても)
自分が着ている服を見て、思わず息を吐いてしまう。
自分では絶対に選ばない類いの服...ふりふりのブラウスに、レースがついたズボン。
まるでお伽噺の主人公のような服装に、やっぱり戸惑いを隠せない。
ラッシュさんは笑顔でまた手伝ってもらうこともあるだろうからとくれたけれど、お礼なんて気にしないでほしいというのが本音だ。
(でも、私に合わせて作られた服なら他の人は着られないだろうし...)
そのとき、ばさっと羽音がしてそちらを向く。
そこには木葉の友人がとまっていた。
「...ノワール?」
ノワールは私の方に飛んできて、伸ばした腕にぴたっととまる。
移動してくる瞬間さえも微笑ましくて、そっと頭を撫でた。
「起こしちゃうといけないから、静かにね」
これだけ眠ったままの木葉も珍しい。
きっと彼にも私が知らない何かがあって、疲れてしまっているのだろう。
「...話してほしいと思うのは、我儘かな」
何かを隠していることは分かっている。
それでも、訊いていいかどうかは分からずにあと1歩が踏み出せない。
「七海...?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「...その格好、可愛いね」
「あ、ありがとう」
眩しいくらいの笑顔でそう言ってもらえるのは嬉しいけれど、木葉のそれの破壊力はすさまじい。
「折角だから、ちょっとだけ踊ってみない?」
「神楽や剣舞なら」
「そうじゃなくて...こういうの」
立ちあがった木葉に体をぐっと引き寄せられて、そのまま倒れこんでしまいそうになる。
「どうすればいいの?」
「大丈夫。そのまま体を預けてて」
されるがまま躍り続けて、だんだん楽しくなってくる。
最後にターンをすると、部屋の中に拍手が響き渡った。
「おまえら、本当に仲がいいな」
「ら、ラッシュさん...」
「人がいる部屋に入るときはノックするのがマナーじゃない?」
恥ずかしくて何も言えなくなってしまう私と、ラッシュさんにむかって不機嫌そうに話す木葉。
そんな私たちを交互に見て、ラッシュさんはにやりと笑った。
「別にいいだろ、仲がいいのは本当のことなんだからよ。それより...折角だから木葉の分も作らせてくれ」
「いいの?」
「その代わり、この部屋の掃除を頼む」
ほとんど散らかっていないその場所を私たちはふたりで片づける。
時々窓から入ってくる夕陽が目に滲みた。
その声はとても優しいけれど、普段自分では選ばない洋服な分恥ずかしさもある。
「少しだけ、休んでもいいですか...?」
「木葉なら多分寝てるだろうし、お嬢さんのおかげでやっぱり進み具合がいい。
側にいて、起きた瞬間驚かせてやってくれ」
「...ありがとうございます」
全部を言わなくても分かってしまったのはどうしてだろう。
そう思いながらもラッシュさんに一礼して、音をたてないようにしながら部屋に入る。
近くにあった椅子を拝借して、すやすやと眠る木葉の側に座った。
(...それにしても)
自分が着ている服を見て、思わず息を吐いてしまう。
自分では絶対に選ばない類いの服...ふりふりのブラウスに、レースがついたズボン。
まるでお伽噺の主人公のような服装に、やっぱり戸惑いを隠せない。
ラッシュさんは笑顔でまた手伝ってもらうこともあるだろうからとくれたけれど、お礼なんて気にしないでほしいというのが本音だ。
(でも、私に合わせて作られた服なら他の人は着られないだろうし...)
そのとき、ばさっと羽音がしてそちらを向く。
そこには木葉の友人がとまっていた。
「...ノワール?」
ノワールは私の方に飛んできて、伸ばした腕にぴたっととまる。
移動してくる瞬間さえも微笑ましくて、そっと頭を撫でた。
「起こしちゃうといけないから、静かにね」
これだけ眠ったままの木葉も珍しい。
きっと彼にも私が知らない何かがあって、疲れてしまっているのだろう。
「...話してほしいと思うのは、我儘かな」
何かを隠していることは分かっている。
それでも、訊いていいかどうかは分からずにあと1歩が踏み出せない。
「七海...?」
「ごめん、起こしちゃった?」
「...その格好、可愛いね」
「あ、ありがとう」
眩しいくらいの笑顔でそう言ってもらえるのは嬉しいけれど、木葉のそれの破壊力はすさまじい。
「折角だから、ちょっとだけ踊ってみない?」
「神楽や剣舞なら」
「そうじゃなくて...こういうの」
立ちあがった木葉に体をぐっと引き寄せられて、そのまま倒れこんでしまいそうになる。
「どうすればいいの?」
「大丈夫。そのまま体を預けてて」
されるがまま躍り続けて、だんだん楽しくなってくる。
最後にターンをすると、部屋の中に拍手が響き渡った。
「おまえら、本当に仲がいいな」
「ら、ラッシュさん...」
「人がいる部屋に入るときはノックするのがマナーじゃない?」
恥ずかしくて何も言えなくなってしまう私と、ラッシュさんにむかって不機嫌そうに話す木葉。
そんな私たちを交互に見て、ラッシュさんはにやりと笑った。
「別にいいだろ、仲がいいのは本当のことなんだからよ。それより...折角だから木葉の分も作らせてくれ」
「いいの?」
「その代わり、この部屋の掃除を頼む」
ほとんど散らかっていないその場所を私たちはふたりで片づける。
時々窓から入ってくる夕陽が目に滲みた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる