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隠暮篇(かくれぐらしへん)
不穏な影
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外が冷えたと感じるようになってきたある日、ふたりで昼食を摂っていると七海が口を開いた。
「木葉、今日はラッシュさんのところに行くんだけど...一緒に行かない?」
まさかそんな誘いを受けるとは思っていなかったので、どんな反応を返せばいいのか分からなずその場で固まる。
「僕が行っても邪魔にならないかな?」
「『寧ろ一緒にくればいい』って、ラッシュさんから連絡がきた」
はじめは理解しきれていなかったが、その言葉で納得した。
万が一七海が1人でいるときに襲われればひとたまりもない。
だが、いきなり僕がついていくと彼女に余計な不安を持たせてしまう...。
ラッシュさんはそこまで考えて、僕が一緒に行ける口実を作ってくれたのだと察する。
「...後でお礼を言わないと」
「木葉?」
「ごめん、なんでもない」
まだ本調子ではないとはいえ、これでも護衛くらいはできるはずだ。
あまり働いていない頭を回転させながら、なんとか準備を整える。
いつもの道順で向かうと、予想していたよりもずっと早く辿り着いた。
「おう、ふたりともよく来たな。...木葉は仮眠室に行け」
そのとき、鋭い眼光と猛毒のような殺気を感じる。
然り気無く辺りを見回してみたものの、不振人物を見つけることはできなかった。
「おまえさん、やっぱり体調がよくないんじゃないか?」
「...そうかも。ありがとう、ラッシュさん」
「後でお嬢さんのファッションショーを見てもらうから、それまでは休んでろ」
「そうさせてもらうね」
ラッシュさんからも動揺は感じられないし、七海は僕のことを心配そうに見つめるだけだった。
もしかすると、気のせいだったのかもしれない。
今だけはそう思いたいというのもあるが、思考がまとまらない状態で判断するのは危険だ。
大人しく仮眠用のベッドに横にならせてもらっていると、部屋の外から音が聞こえてくる。
「こ、これは私には...」
「大丈夫だよ。お嬢さんは絶対こういうの似合うから、騙されたと思って着てみてくれ」
「わ、分かりました」
こういうとき、純血種のなかでも類い稀なる体力や能力を持っているラッシュさんや母のことが羨ましくなる。
体が弱いのは人間が生きる世界でも魔族たちの世界でも変わらないのが僕の弱点だと思う。
だからこそ、こんな僕にでもできることは全てやりたい。
「...ノワール」
仮眠室の窓を少しだけ開き、外にいたその子を招き入れる。
「他の人間たちに見つからないようにしながら、七海たちの様子を見ててほしいんだ。
...何かあったらすぐに起こして」
ノワールはひと鳴きしてすぐに飛び立つ。
その姿は僕よりも身軽そうで、やはりどこまでも美しかった。
そこで限界がきて、重い瞼をそっとおろす。
大切な恋人に何もできないというのがここまで辛いのは、正直予想外だった。
「木葉、今日はラッシュさんのところに行くんだけど...一緒に行かない?」
まさかそんな誘いを受けるとは思っていなかったので、どんな反応を返せばいいのか分からなずその場で固まる。
「僕が行っても邪魔にならないかな?」
「『寧ろ一緒にくればいい』って、ラッシュさんから連絡がきた」
はじめは理解しきれていなかったが、その言葉で納得した。
万が一七海が1人でいるときに襲われればひとたまりもない。
だが、いきなり僕がついていくと彼女に余計な不安を持たせてしまう...。
ラッシュさんはそこまで考えて、僕が一緒に行ける口実を作ってくれたのだと察する。
「...後でお礼を言わないと」
「木葉?」
「ごめん、なんでもない」
まだ本調子ではないとはいえ、これでも護衛くらいはできるはずだ。
あまり働いていない頭を回転させながら、なんとか準備を整える。
いつもの道順で向かうと、予想していたよりもずっと早く辿り着いた。
「おう、ふたりともよく来たな。...木葉は仮眠室に行け」
そのとき、鋭い眼光と猛毒のような殺気を感じる。
然り気無く辺りを見回してみたものの、不振人物を見つけることはできなかった。
「おまえさん、やっぱり体調がよくないんじゃないか?」
「...そうかも。ありがとう、ラッシュさん」
「後でお嬢さんのファッションショーを見てもらうから、それまでは休んでろ」
「そうさせてもらうね」
ラッシュさんからも動揺は感じられないし、七海は僕のことを心配そうに見つめるだけだった。
もしかすると、気のせいだったのかもしれない。
今だけはそう思いたいというのもあるが、思考がまとまらない状態で判断するのは危険だ。
大人しく仮眠用のベッドに横にならせてもらっていると、部屋の外から音が聞こえてくる。
「こ、これは私には...」
「大丈夫だよ。お嬢さんは絶対こういうの似合うから、騙されたと思って着てみてくれ」
「わ、分かりました」
こういうとき、純血種のなかでも類い稀なる体力や能力を持っているラッシュさんや母のことが羨ましくなる。
体が弱いのは人間が生きる世界でも魔族たちの世界でも変わらないのが僕の弱点だと思う。
だからこそ、こんな僕にでもできることは全てやりたい。
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仮眠室の窓を少しだけ開き、外にいたその子を招き入れる。
「他の人間たちに見つからないようにしながら、七海たちの様子を見ててほしいんだ。
...何かあったらすぐに起こして」
ノワールはひと鳴きしてすぐに飛び立つ。
その姿は僕よりも身軽そうで、やはりどこまでも美しかった。
そこで限界がきて、重い瞼をそっとおろす。
大切な恋人に何もできないというのがここまで辛いのは、正直予想外だった。
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