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隠暮篇(かくれぐらしへん)
頬の傷
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それから数日、ほとんど何も変わらない日々を送っていた。
けれど、ガーゼを交換する度に木葉が申し訳なさそうな表情をしているのが目にはいっている。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない。...はい、終わったよ」
いつ訊いてみても、返ってくる答えは同じだった。
それが逆に気になって仕方がない。
だから今日だけは、答えてもらえるまでとことん話してみようと決めていた。
「...なんでもなかったら、そんな顔はしないと思う。私には言えないことなの?」
「そういう訳じゃないんだけど...」
「それなら今ここで思ってることを話して。何も分からないままは嫌なの」
のらりくらりとかわそうとする木葉に何度も訊いて、やっと答えが出た。
「...傷、残らないか心配なんだ」
そっと私の怪我をしていない方の頬に触れながら、その視線はさっき包帯を換え終わった反対側に注がれている。
「もし残ったら、傷がある私は嫌?」
「そんなことない。傷があってもなくても、七海は七海だから」
「...そうだよ。だから私は大丈夫。木葉が側にいてくれるならそれでいいの」
たとえ傷が残っても、それは誰のせいでもない。
ただ少し意見が合わなかっただけで、きっとあの場にいた人たちが悪いわけではないのだ。
「木葉」
「どうし、」
目の前の体を抱きしめながら、語りかけるようにありったけの想いを言葉にのせる。
「たとえ傷痕になっちゃったとしても、それは木葉のせいじゃないから」
「...まさかそこまで読まれているとは思ってなかった」
表情は確認できなかったけれど、強い力で抱きしめ返してくれた。
自分を責めないでほしい...その気持ちはちゃんと伝わっただろうか。
木葉は優しいから、今までもきっとそうして自分のせいだと哀しむことがあったのだろう。
(そんなことを思ってほしくない)
心からの祈りを込めて、少し離れた距離を一気に零にする。
「...!」
「それから、噛みたいときは噛んでいいんだからね」
「それもばれてたんだ」
キスよりもきっと血がほしいはずだ。
今の木葉の瞳は、欲求に耐えるようにゆらゆらと揺れている。
そのまま1人で我慢なんかさせたくない...そう思った結果、口から自然と言葉が出た。
「ごめん。それじゃあ今夜少しだけ噛んでもいい?」
「勿論」
何故今夜なんて言い方をするのか不思議だったけれど、聞こえてきた声で理解した。
「...ノワールも仲間に入れてほしいみたい」
「抱きしめたら羽を潰してしまいそうでちょっと危ないかも」
「腕に留まらせてあげて」
言われたとおりにやってみると、ノワールは羽をたたんでどこか満足げだ。
そんな姿に、ふたりで顔を見あわせて笑いあった。
こうして穏やかに過ごせるのは、決して当たり前じゃない。
その事を噛みしめながら、今日も私は木葉の手を離さないでいよう。
そんな想いも繋いだ手から伝わってしまわないかと少しだけ思った。
けれど、ガーゼを交換する度に木葉が申し訳なさそうな表情をしているのが目にはいっている。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない。...はい、終わったよ」
いつ訊いてみても、返ってくる答えは同じだった。
それが逆に気になって仕方がない。
だから今日だけは、答えてもらえるまでとことん話してみようと決めていた。
「...なんでもなかったら、そんな顔はしないと思う。私には言えないことなの?」
「そういう訳じゃないんだけど...」
「それなら今ここで思ってることを話して。何も分からないままは嫌なの」
のらりくらりとかわそうとする木葉に何度も訊いて、やっと答えが出た。
「...傷、残らないか心配なんだ」
そっと私の怪我をしていない方の頬に触れながら、その視線はさっき包帯を換え終わった反対側に注がれている。
「もし残ったら、傷がある私は嫌?」
「そんなことない。傷があってもなくても、七海は七海だから」
「...そうだよ。だから私は大丈夫。木葉が側にいてくれるならそれでいいの」
たとえ傷が残っても、それは誰のせいでもない。
ただ少し意見が合わなかっただけで、きっとあの場にいた人たちが悪いわけではないのだ。
「木葉」
「どうし、」
目の前の体を抱きしめながら、語りかけるようにありったけの想いを言葉にのせる。
「たとえ傷痕になっちゃったとしても、それは木葉のせいじゃないから」
「...まさかそこまで読まれているとは思ってなかった」
表情は確認できなかったけれど、強い力で抱きしめ返してくれた。
自分を責めないでほしい...その気持ちはちゃんと伝わっただろうか。
木葉は優しいから、今までもきっとそうして自分のせいだと哀しむことがあったのだろう。
(そんなことを思ってほしくない)
心からの祈りを込めて、少し離れた距離を一気に零にする。
「...!」
「それから、噛みたいときは噛んでいいんだからね」
「それもばれてたんだ」
キスよりもきっと血がほしいはずだ。
今の木葉の瞳は、欲求に耐えるようにゆらゆらと揺れている。
そのまま1人で我慢なんかさせたくない...そう思った結果、口から自然と言葉が出た。
「ごめん。それじゃあ今夜少しだけ噛んでもいい?」
「勿論」
何故今夜なんて言い方をするのか不思議だったけれど、聞こえてきた声で理解した。
「...ノワールも仲間に入れてほしいみたい」
「抱きしめたら羽を潰してしまいそうでちょっと危ないかも」
「腕に留まらせてあげて」
言われたとおりにやってみると、ノワールは羽をたたんでどこか満足げだ。
そんな姿に、ふたりで顔を見あわせて笑いあった。
こうして穏やかに過ごせるのは、決して当たり前じゃない。
その事を噛みしめながら、今日も私は木葉の手を離さないでいよう。
そんな想いも繋いだ手から伝わってしまわないかと少しだけ思った。
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