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隠暮篇(かくれぐらしへん)
忘れかけていたこと
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気持ちを伝える言葉をぶつけあうことはあっても、愛の言葉を伝えることはあまりなくなっていたとはっとする。
「...僕も負けないくらい愛してる」
言葉にきちんと想いをのせ、そっと口づける。
それはいつもより甘いような気がして、少しだけ危うさが含まれているのを察知した。
「それじゃあ、そのまま横になっててね」
「木葉...?」
僕は夕飯の支度をしながら、何とか雑念を払おうとした。
だが、どうしても噛みたい衝動が襲ってくるのを抑えきれない。
七海に見られないように気をつけながら、そっとクレールをひと瓶握る。
本当はあまり多用しない方がいいのだろうが仕方がない。
「おまたせ。焼きうどんにしてみたんだけど食べられそう?」
「すごく美味しそう...!ありがとう」
「どういたしまして」
ふたりで両手をあわせ、そのままうどんを口に運ぶ。
口の中にはクレール独特の甘味が広がったままで、残念ながら料理を楽しむことはできそうにない。
「どう?美味しい?」
「さっぱりしていてすごく食べやすい」
「喜んでもらえてよかった」
地味な料理だったにも関わらず、七海は黙々と食べてくれた。
しばらく静寂が続いた後、七海の不安げな声がその場に響く。
「...木葉、やっぱり疲れてるんじゃない?」
「どうしてそう思うの?」
「勘。あとは、なんだか元気がないように見えるから」
七海の真っ直ぐな視線に耐えられなくて、そのまま合わせることなく目を逸らしてしまった。
「図星なんだね」
ゆっくり頷くと、七海はただ手を握ってくれた。
「迷惑をかけてごめんなさい。それから...護ってくれてありがとう」
「七海のことならどこにいたって助けに行くよ」
ふたりで笑いあう時間が妙に心地よくて、そのまま時が止まってくれないかなんて考えてしまう。
少しずつ喉の渇きがおさまっていくのを感じながら、やはり僕は普通にはなれないのだと思い知る。
七海と一緒にいるのは楽しいが、無理をさせたいわけではない。
「七海、」
「私も木葉のことを沢山助けられるように頑張る」
そう意気ごむ彼女を見ているだけで、だんだん幸福というものを感じる。
今までずっと護るのが当たり前だと思っていたが、お互いに護りあうのもいいのかもしれない。
「人間相手の時はお願いしようかな」
「それ以外は?」
「できれば僕に任せてほしいな」
「ぜ、善処します...」
照れると何故か敬語になってしまうところは久しぶりに見たような気がして、それが堪らなく愛しい。
「やっぱり七海は可愛いね」
「...そういうことをいきなり言うのは狡い」
顔を背けられてしまったが、耳まで真っ赤になっているのが目にはいる。
その姿に、鼓動が高鳴りはじめた。
このまま好きが膨れ上がってしまったら、僕は一体どうなってしまうのだろう。
そんな不安を隠すように、ただ笑顔を向けることしかできなかった。
...暴走して傷つけてしまうかもしれないことを、いつでも忘れないようにしなければならない。
「...僕も負けないくらい愛してる」
言葉にきちんと想いをのせ、そっと口づける。
それはいつもより甘いような気がして、少しだけ危うさが含まれているのを察知した。
「それじゃあ、そのまま横になっててね」
「木葉...?」
僕は夕飯の支度をしながら、何とか雑念を払おうとした。
だが、どうしても噛みたい衝動が襲ってくるのを抑えきれない。
七海に見られないように気をつけながら、そっとクレールをひと瓶握る。
本当はあまり多用しない方がいいのだろうが仕方がない。
「おまたせ。焼きうどんにしてみたんだけど食べられそう?」
「すごく美味しそう...!ありがとう」
「どういたしまして」
ふたりで両手をあわせ、そのままうどんを口に運ぶ。
口の中にはクレール独特の甘味が広がったままで、残念ながら料理を楽しむことはできそうにない。
「どう?美味しい?」
「さっぱりしていてすごく食べやすい」
「喜んでもらえてよかった」
地味な料理だったにも関わらず、七海は黙々と食べてくれた。
しばらく静寂が続いた後、七海の不安げな声がその場に響く。
「...木葉、やっぱり疲れてるんじゃない?」
「どうしてそう思うの?」
「勘。あとは、なんだか元気がないように見えるから」
七海の真っ直ぐな視線に耐えられなくて、そのまま合わせることなく目を逸らしてしまった。
「図星なんだね」
ゆっくり頷くと、七海はただ手を握ってくれた。
「迷惑をかけてごめんなさい。それから...護ってくれてありがとう」
「七海のことならどこにいたって助けに行くよ」
ふたりで笑いあう時間が妙に心地よくて、そのまま時が止まってくれないかなんて考えてしまう。
少しずつ喉の渇きがおさまっていくのを感じながら、やはり僕は普通にはなれないのだと思い知る。
七海と一緒にいるのは楽しいが、無理をさせたいわけではない。
「七海、」
「私も木葉のことを沢山助けられるように頑張る」
そう意気ごむ彼女を見ているだけで、だんだん幸福というものを感じる。
今までずっと護るのが当たり前だと思っていたが、お互いに護りあうのもいいのかもしれない。
「人間相手の時はお願いしようかな」
「それ以外は?」
「できれば僕に任せてほしいな」
「ぜ、善処します...」
照れると何故か敬語になってしまうところは久しぶりに見たような気がして、それが堪らなく愛しい。
「やっぱり七海は可愛いね」
「...そういうことをいきなり言うのは狡い」
顔を背けられてしまったが、耳まで真っ赤になっているのが目にはいる。
その姿に、鼓動が高鳴りはじめた。
このまま好きが膨れ上がってしまったら、僕は一体どうなってしまうのだろう。
そんな不安を隠すように、ただ笑顔を向けることしかできなかった。
...暴走して傷つけてしまうかもしれないことを、いつでも忘れないようにしなければならない。
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