ハーフ&ハーフ

黒蝶

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隠暮篇(かくれぐらしへん)

プチファッションショー

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「ふたりともぴったりだな」
恥ずかしそうにしながら部屋に入ってきた木葉とは対照的に、いつも以上に明るく振る舞うラッシュさん。
(...何かあったのかな)
空元気というわけではなさそうだけれど、本当に元気があるのかと言われれば違うような気がする。
「木葉、かっこいいね」
「あんまり言わないで...」
やっぱりラッシュさんの反応が少しおかしい。
いつもならここでからかってくるはずなのに、ただ笑っているだけだった。
(疲れているのかな...)
「お嬢さん?」
「あ、えっと、どれを着たらいいでしょうか?」
「そうだな...」
ラッシュさんから服を受け取ろうとすると、横から手が伸びてくる。
そして、またもや自分では選ばないであろうデザインのものを渡された。
「僕はこれが似合うと思うな...」
「なんだ木葉、やきもちか?」
「そうだよ。...七海、もっとこっちおいで」
さらりと受け流されてしまったけれど、木葉がやきもちを妬くところなんて初めて見たかもしれない。
恋人になる前、渡瀬さんのことを彼氏だと勘違いされたことはあったけれどそれだけだ。
「着替えたら教えてね」
「あ、うん...」
フリルがついた洋服なんて絶対に着ないけれど、今日はそういう類いの洋服ばかり貰っているような気がする。
少し息を吐きながら、アンティーク調のブラウスの袖に手をとおした。
「できました」
「流石彼氏が選んだ服だな...よく似合ってる」
「ありがとうございます」
「七海、すごく綺麗...!いつも綺麗だけど、今日はもっと輝いて見える」
「そこまで言われると、流石に恥ずかしいよ...」
そんな話をしていると、突然扉が開かれる。
「あの、店長!今日中に洋服を仕上げてほしいとお客様、が...」
その店員さんは木葉の方をじっと見つめる。
(ううん、私のことも見てる...?)
「おふたりとも、とっても素敵!これから少しだけ手伝っていただけませんか?」
「おいおい、こいつらは俺の個人的な手伝いをしてくれてるんだ。...お客の件は大体把握したが、手伝えっていうのは、」
私は木葉に視線をおくる。
彼はゆっくり頷いて、店員さんに声をかけた。
「あの、僕たちに手伝えることがあるなら言ってもらえれば...」
「安請け合いしない方がいいと思うが...まあ、本人たちがそう言うなら仕方ない」
ラッシュさんの言葉の意味を、このあと私たちはすぐに知ることになる。
「い、いらっしゃいませ...」
「押さないで、ちゃんと並んでください」
私たちは今、半分接客半分モデルのような状態になっていた。
というのも、店員さんたちが宣伝させてほしいとお願いしてきたのだ。
それを断ることもできず、ラッシュさんが作った洋服を着たままで広告を配ったりしている。
「私、ちゃんとできてたかな?」
「大丈夫だよ。一緒に歩こう」
木葉がいてくれたおかげでなんとか乗りきることができたけれど、周りの好奇の目に少しだけ目眩がしてきた。
「...このまま掴まっててね」
女性たちの黄色い歓声を聞きながら、木葉が私を横抱きにして歩き出す。
それはまるで、ランウェイの上を通っているようだった。
「まるでファッションショーみたいだったね。...平気?」
「ごめんね、木葉」
「気にしないで。実は僕も、あれだけの人に注目されたのって初めてだから...すごく緊張した」
ふたりだけになった控え室のような場所、ほっと息を吐く。
次回以降しっかり内容を聞いてから決めるようにしよう、そんなことを考えながら差し入れだと置かれていた水を一気に飲んだ。
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