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追暮篇(おいぐらしへん)
抱えてきたもの
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話し終えた後の七海には、疲労の色が濃く見えた。
衝動的に体を抱き寄せ、そのままソファーに横たわらせる。
「大変だったね...」
「...もし私の記憶が正しければ、母がいた神社は数年前に燃えた。
美桜さんにはそれっきり会えていないって、最近思い出したの」
「最近まで、記憶があやふやだったってこと?」
「...ミサンガを作っていて思い出した。その前から何度も思い出しそうにはなっていたんだけど、ちゃんとは分からなくて...」
あまりに辛そうな表情で、とても見ていられない。
いつもより優しい力で頭を撫で、そのまま寝かしつける。
「大丈夫。今は休んで」
「ありがとう...」
幼い頃に母親が亡くなり、父親は生まれたときからいなかった。
そういったことは聞いてはいたものの、まさかそこに神なんてものが関わっていたのは予想外だ。
それに僕は美桜さんという存在についても、神子についてもそれほど知識がない。
ただひとつ言えるのは、七海と僕の立ち位置は似ているのかもしれないということだけだ。
「...それが狙われる理由?」
それにしても、まさか七海の血に神の部分があるとは思っていなかった。
彼女の家にはきっとそんな話は伝わっていない。
半分は人間であることに変わりないからなのか、犠牲の果てにそうなったからなのか...どちらもあり得てしまうのが人間だ。
「...木葉?」
「七海、起きられそう?」
「うん。...ごめんね、ぐっすり寝ちゃってたみたいで」
あたりは真っ暗になっていたが、そんなことはどうでもいい。
「私、美桜さんに会いたい。呼ばれているような気がする」
「美桜さん探し、僕も手伝っていい?」
「いいの...?」
「七海の恋人として、ちゃんと挨拶したいんだ」
それに、敬称がさん付けになっているということはきっと...。
今はとにかく、七海の負担を少しでも軽くしたかった。
「駄目かな?」
七海の深い悲しみを半分でいいから僕に持たせてほしい。
様々な願いを抱えながら真っ直ぐ彼女を見つめると、とても嬉しそうに笑った。
大変な思いをしてきたはずなのに、それを感じさせないような表情にさらに胸が締めつけられる。
「ありがとう」
「でも、住んでいる場所が分かりづらいなら探すのは難しいかもしれないね...」
「私、どうやって暮らしてきたのかいまひとつ記憶がないんだ。
やっぱり難しい、よね」
「...普通ならね」
ぱっと顔をあげる七海に向かって笑ってみせる。
僕が普通だったら無理だろう。
だが、幸い普通ではないからこそできることがある。
「...ノワール、この場所への最短ルートを教えて」
「それって...」
「この壬生神社っていうところだよね?さっき少し調べてみたんだ。
神主さんの名字が同じだから、もしかしたらって思ったんだけど...」
その新聞記事には、『凄惨な死を遂げた巫女』という見出しがばっちり載っていた。
沢山の場所を飛び回っているノワールなら、ここまでの道だってすぐに分かるはずだ。
予想どおり、すぐに戻ってきて知らせてくれる。
「...そっか、ありがとう」
「どうしたの?」
「これから特急列車に乗れば間に合うって。...行ってみよう」
衝動的に体を抱き寄せ、そのままソファーに横たわらせる。
「大変だったね...」
「...もし私の記憶が正しければ、母がいた神社は数年前に燃えた。
美桜さんにはそれっきり会えていないって、最近思い出したの」
「最近まで、記憶があやふやだったってこと?」
「...ミサンガを作っていて思い出した。その前から何度も思い出しそうにはなっていたんだけど、ちゃんとは分からなくて...」
あまりに辛そうな表情で、とても見ていられない。
いつもより優しい力で頭を撫で、そのまま寝かしつける。
「大丈夫。今は休んで」
「ありがとう...」
幼い頃に母親が亡くなり、父親は生まれたときからいなかった。
そういったことは聞いてはいたものの、まさかそこに神なんてものが関わっていたのは予想外だ。
それに僕は美桜さんという存在についても、神子についてもそれほど知識がない。
ただひとつ言えるのは、七海と僕の立ち位置は似ているのかもしれないということだけだ。
「...それが狙われる理由?」
それにしても、まさか七海の血に神の部分があるとは思っていなかった。
彼女の家にはきっとそんな話は伝わっていない。
半分は人間であることに変わりないからなのか、犠牲の果てにそうなったからなのか...どちらもあり得てしまうのが人間だ。
「...木葉?」
「七海、起きられそう?」
「うん。...ごめんね、ぐっすり寝ちゃってたみたいで」
あたりは真っ暗になっていたが、そんなことはどうでもいい。
「私、美桜さんに会いたい。呼ばれているような気がする」
「美桜さん探し、僕も手伝っていい?」
「いいの...?」
「七海の恋人として、ちゃんと挨拶したいんだ」
それに、敬称がさん付けになっているということはきっと...。
今はとにかく、七海の負担を少しでも軽くしたかった。
「駄目かな?」
七海の深い悲しみを半分でいいから僕に持たせてほしい。
様々な願いを抱えながら真っ直ぐ彼女を見つめると、とても嬉しそうに笑った。
大変な思いをしてきたはずなのに、それを感じさせないような表情にさらに胸が締めつけられる。
「ありがとう」
「でも、住んでいる場所が分かりづらいなら探すのは難しいかもしれないね...」
「私、どうやって暮らしてきたのかいまひとつ記憶がないんだ。
やっぱり難しい、よね」
「...普通ならね」
ぱっと顔をあげる七海に向かって笑ってみせる。
僕が普通だったら無理だろう。
だが、幸い普通ではないからこそできることがある。
「...ノワール、この場所への最短ルートを教えて」
「それって...」
「この壬生神社っていうところだよね?さっき少し調べてみたんだ。
神主さんの名字が同じだから、もしかしたらって思ったんだけど...」
その新聞記事には、『凄惨な死を遂げた巫女』という見出しがばっちり載っていた。
沢山の場所を飛び回っているノワールなら、ここまでの道だってすぐに分かるはずだ。
予想どおり、すぐに戻ってきて知らせてくれる。
「...そっか、ありがとう」
「どうしたの?」
「これから特急列車に乗れば間に合うって。...行ってみよう」
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