ハーフ&ハーフ

黒蝶

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追暮篇(おいぐらしへん)

挨拶

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お社なんて初めて入ったけど、まさかここまで広いとは思っていなかった。
つい見回してしまいそうになるのを堪え、目の前の女性に視線を投げる。
あれから僕は美桜さんに手当てをしてもらって、すぐに動ける状態になった。
「あの、ありがとうございます」
「元はといえば私がつけた傷なのに、あなたは私が怖くないの?」
「...?どうして怖がる必要があるんですか?」
彼女は確かに容赦なく攻撃を繰り出してきた。
それでも、『寂しい』とずっと叫び続けていたのを聞いていなかったわけではない。
「お社があんなふうに粗末に扱われていたら、神様は狂気を持つこともあるというのは知っています。
...それに、独りが寂しいのはとてもよく分かりますから」
「変な人」
「よく言われます」
美桜さんの笑顔はこの世のものとは思えないほど綺麗で、思わずじっと見つめてしまう。
すると、七海が少しむくれた表情で僕の腕を引く。
「...美桜さんは綺麗だけど、私のことも忘れないでほしいな」
「ごめん!神様に会うのは初めてだから、礼儀とか作法とか全然分からなくて...」
「礼儀や作法なんて必要ない。あなたは私の恩人。敬語もやめてほしい。
...七海、眠くないの?」
「眠くないよ。もう5歳じゃないから、夜更かしもできる」
「そう。大きくなったし、無事でよかった」
ふたりの会話に仲睦まじさが滲み出ていて、僕はただ何も言わずにその様子を見守る。
数年会っていなければ積もる話もあるだろう。
それを邪魔しないようにと思っていると、美桜さんに声をかけられる。
「そういえば、あなたの名前を知らない」
「あ、えっと...中津木葉です。七海さんの恋人です。
ふたりのことを邪魔するつもりはないから、僕のことは気にしないで」
お社から出ようとすると、七海に腕を掴まれる。
「流石に夜中に出歩いたら危ないよ。それに...美桜さんは木葉の話も聞きたそうにしてるし」
「僕の?」
「怪我が悪化するかもしれないから、大人しくしていたほうがいい。
それに...私は、もう長い間人と話したことがない。だから、七海たち以外の話も聞いてみたい」
目をきらきらさせて言われてしまうと断れない。
その場に座りなおしてふたりを交互に見る。
...もし僕の予想が当たっていれば、ふたりの関係はどうなってしまうのだろう。
「七海、あなたはもう寝た方がいい。体調が悪そう...奥の部屋を使って」
「ありがとう、美桜さん。木葉は大丈夫?」
「僕は平気だよ。おやすみ」
その場で迷っているような様子を見せる七海に、その神様は微笑んだ。
「そんなに不安がらなくても、あなたの大切な人を奪ったりはしない。...だから、安心して眠って」
「...うん」
七海は安心しきった表情で奥の部屋へと入っていく。
それを見送り終わった後、美桜さんは儚げな笑顔を向けた。
「木葉は、人間だけど人間じゃないの?」
「...ヴァンパイアと人間のハーフなんだ。勿論七海も知ってるよ。...あの、もしかして美桜さんは元・人間?」
「見破られるとは思わなかった」
「敬称で分かっただけだよ。さんって呼ぶ神様は人柱だった場合が多いってたまたま知ってただけなんだ」
美桜さんは納得した様子でこくこくと頷く。
そしてもうひとつ、僕にはどうしても訊きたいことがあった。
「...ねえ、美桜さん。七海が神子ということは、彼女は半分神様なの?だからあんな力が使えるの...?」
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