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追暮篇(おいぐらしへん)
神様からの忠告
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「私、そんなに強いの?」
「...吃驚するくらい強くなってる」
漸く動けるようになった僕は、扉の前で立っていることしかできなかった。
恐らく、昨夜聞いたことを部分的に話しているのだろう。
『あの子は私が人柱だったことを知らない。大半の人間には隠されていたことだったみたいだったから』
『ただ...話を聞く限り、力が強すぎるみたい。何とかできるかは分からないけど、できる限りのことはする』
美桜さんは七海のことが本当に大好きで、自分や周りが傷つかないように気をつけているのが分かる。
言葉を選ぶのが上手くて、一言一言に気遣いや哀しみが見え隠れしているようだ。
勝手に開けるのは申し訳なかったが、入れずに困っている黒い翼が目に入る。
「...ノワール、ごめん」
神様の結界...ましてや信仰心ではなく強い絆で結ばれているような相手がいるような存在の強いものを破るようなことはノワールにはできない。
「...起きていたなら、食事を運んでくればよかった」
「ごめんなさい、勝手に窓を開けて...僕の友だちを中に入れたかったんだ」
腕に止まらせた烏を、その神様は優しい瞳で見つめる。
それから自分の手をそっと前に出して頭を撫でた。
はじめは恐る恐るといった様子だったが、慣れてきたのか綺麗な指先が何度も触れる。
ノワールの方も怖がらずに気持ち良さそうに撫でられていた。
「木葉、体は大丈夫なの?」
「僕は平気だよ。心配してくれてありがとう」
クレールを飲んだことを言わずに、そのまま話を続ける。
「...その子、怪我をしているの?」
「これは手紙。多分ラッシュさんからだと思うけど...。それから、この子はノワール。
僕の友人なんだ」
「つやつやで綺麗な毛、羨ましい...」
足にくくりつけられていた手紙には、そろそろシェリが退院するかもしれないと書かれていた。
...それから、遠くに行くなら連絡くらいはしてくれとも。
「美桜さん、僕たちは1度住んでいる街に帰らないといけないんだ。
...このお社を運ぶのは難しそうだから、少しだけ考えさせて」
「私も一緒にいていいの?」
「七海の近くにいられれば安心でしょ?何か方法を考えてみるよ。
それまでは、僕が彼女をここまで連れてくる」
「木葉...」
七海を不安にさせてしまうのは嫌だが、こればかりは仕方がない。
「美桜さん、またお話ししようね」
「...うん。待ってる」
「ここにはノワールを飛ばすから、もし何か必要なものがあれば何でもいいから紙をに書いて足に結んで」
美桜さんは小さく頷くと、僕にだけ聞こえる声でそっと耳打ちした。
「言わないでくれてありがとう。...七海をお願い」
僕は首を縦にふり、短い言葉をかけた。
「こちらこそ、手当てしてくれてありがとう」
何も言わずにいれば、きっと七海に怪しまれてしまう。
その神様を独りにするのは危険なことでもあったが、名残惜しそうにする彼女の手を引いて山道を下りる。
「木葉、ありがとう」
「僕も楽しかったよ」
お社に関する問題はふたつ。
ひとつは大きすぎること、もうひとつは近くに誰かの気配がすること。
前者はさておき、後者は何とかしなければならない。
...ノワールに探ってもらうしかなさそうだ。
「美桜さんと話したいこと話せた?」
「うん。まだちょっと話し足りないから、手紙を書いてもいいかな...?」
「大丈夫だよ。ね、ノワール」
かあ、とひと鳴きして僕の左肩に止まる。
空はからっと晴れていて、少しだけ日差しがきつかった。
「...吃驚するくらい強くなってる」
漸く動けるようになった僕は、扉の前で立っていることしかできなかった。
恐らく、昨夜聞いたことを部分的に話しているのだろう。
『あの子は私が人柱だったことを知らない。大半の人間には隠されていたことだったみたいだったから』
『ただ...話を聞く限り、力が強すぎるみたい。何とかできるかは分からないけど、できる限りのことはする』
美桜さんは七海のことが本当に大好きで、自分や周りが傷つかないように気をつけているのが分かる。
言葉を選ぶのが上手くて、一言一言に気遣いや哀しみが見え隠れしているようだ。
勝手に開けるのは申し訳なかったが、入れずに困っている黒い翼が目に入る。
「...ノワール、ごめん」
神様の結界...ましてや信仰心ではなく強い絆で結ばれているような相手がいるような存在の強いものを破るようなことはノワールにはできない。
「...起きていたなら、食事を運んでくればよかった」
「ごめんなさい、勝手に窓を開けて...僕の友だちを中に入れたかったんだ」
腕に止まらせた烏を、その神様は優しい瞳で見つめる。
それから自分の手をそっと前に出して頭を撫でた。
はじめは恐る恐るといった様子だったが、慣れてきたのか綺麗な指先が何度も触れる。
ノワールの方も怖がらずに気持ち良さそうに撫でられていた。
「木葉、体は大丈夫なの?」
「僕は平気だよ。心配してくれてありがとう」
クレールを飲んだことを言わずに、そのまま話を続ける。
「...その子、怪我をしているの?」
「これは手紙。多分ラッシュさんからだと思うけど...。それから、この子はノワール。
僕の友人なんだ」
「つやつやで綺麗な毛、羨ましい...」
足にくくりつけられていた手紙には、そろそろシェリが退院するかもしれないと書かれていた。
...それから、遠くに行くなら連絡くらいはしてくれとも。
「美桜さん、僕たちは1度住んでいる街に帰らないといけないんだ。
...このお社を運ぶのは難しそうだから、少しだけ考えさせて」
「私も一緒にいていいの?」
「七海の近くにいられれば安心でしょ?何か方法を考えてみるよ。
それまでは、僕が彼女をここまで連れてくる」
「木葉...」
七海を不安にさせてしまうのは嫌だが、こればかりは仕方がない。
「美桜さん、またお話ししようね」
「...うん。待ってる」
「ここにはノワールを飛ばすから、もし何か必要なものがあれば何でもいいから紙をに書いて足に結んで」
美桜さんは小さく頷くと、僕にだけ聞こえる声でそっと耳打ちした。
「言わないでくれてありがとう。...七海をお願い」
僕は首を縦にふり、短い言葉をかけた。
「こちらこそ、手当てしてくれてありがとう」
何も言わずにいれば、きっと七海に怪しまれてしまう。
その神様を独りにするのは危険なことでもあったが、名残惜しそうにする彼女の手を引いて山道を下りる。
「木葉、ありがとう」
「僕も楽しかったよ」
お社に関する問題はふたつ。
ひとつは大きすぎること、もうひとつは近くに誰かの気配がすること。
前者はさておき、後者は何とかしなければならない。
...ノワールに探ってもらうしかなさそうだ。
「美桜さんと話したいこと話せた?」
「うん。まだちょっと話し足りないから、手紙を書いてもいいかな...?」
「大丈夫だよ。ね、ノワール」
かあ、とひと鳴きして僕の左肩に止まる。
空はからっと晴れていて、少しだけ日差しがきつかった。
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