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追暮篇(おいぐらしへん)
慣れない難しいこと
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「七海、ごめん...」
「やっぱり日中沢山歩いたのがいけなかったのかもしれないね」
帰ってきてすぐ、木葉は倒れこむように横になってしまった。
ぐったりとソファーで横になっている頭をそっと撫でると、いつもより弱々しい笑顔がかえってくる。
「...今夜、どうしても出掛けないといけないんだ」
「お仕事はお休みのはずじゃ...」
「仕事じゃなくて、シェリが退院するんだって。...予定は空いてる?」
「私の仕事は早めに片づけておいたから、全然大丈夫だよ」
渡瀬さんからメッセージがきていないということは、まだ原稿を読んでくれている最中ということだ。
それなら私にできることは、普段やっていることだけ...。
(1日1超短篇...帰りの電車で書き終わったし、特に急ぎの仕事も入ってない)
ただ、退院祝いとなると手ぶらで行くわけにはいかない。
何がいいだろうと考えていると、お土産屋さんの広告が目に入る。
「シェリは甘いものって好きかな?」
「プリンとかパフェとか、あとは金平糖なら食べてるところを見たことがあるよ」
「...それなら、このお菓子の詰め合わせと花にしようかな」
「全部任せっきりで、本当にごめん...」
「私の我儘を叶えてもらってばかりだし、私もシェリに何か贈りたいから謝らないで。
夕方になったら起こすね」
「ありがとう...」
怠そうな声が聞こえて、それは穏やかな寝息に変わった。
山道をのぼって、苦手なお昼に過度な運動をしたのだから余程疲れてしまったのだろう。
起こさないようにブランケットをかけた手のひらを見つめる。
「...神子の力って、どうすれば抑えられるんだろう」
不安でいっぱいになった私は、早速美桜さん宛に手紙を書いてみる。
伝えたいことは沢山あるのに、それが上手くまとまってくれない。
何度も書き直しては千切ってを繰り返して、結局完成させられないままでいた。
(あった出来事や質問を書くことがこんなにも難しいなんて...)
物語は、経験したことがないものでも想像と創造を繰り返していくものだ。
だからこそ頭を使うことが多かったり、上手くまとめられなかったりする。
けれど私には現実にあったことを紙にしたためる方が難しいらしい。
(...どうしても感情が入りこみすぎてしまうから上手くいかないのかも。
でも、出来事だけだとそれはもう日記と変わらないし...)
もやもやしていると、空が茜色に染まっていることに気づく。
「木葉、もうすぐ夜だよ」
「ごめん...!僕、どのくらい寝てた?」
「多分2時間くらいかな」
体を起こした木葉は、微笑ましそうな表情で訊いてくる。
「手紙を書いてたの?」
「うん。でも思っていたより苦戦してて...」
「お見舞いから帰ったら、僕も一緒に書いていい?」
「勿論。ありがとう」
手紙も完成させたいけれど、今はシェリのところに行くのが先だ。
久しぶりに会える友人は、どんな表情をするだろうか。
...想像するだけで楽しみだ。
「やっぱり日中沢山歩いたのがいけなかったのかもしれないね」
帰ってきてすぐ、木葉は倒れこむように横になってしまった。
ぐったりとソファーで横になっている頭をそっと撫でると、いつもより弱々しい笑顔がかえってくる。
「...今夜、どうしても出掛けないといけないんだ」
「お仕事はお休みのはずじゃ...」
「仕事じゃなくて、シェリが退院するんだって。...予定は空いてる?」
「私の仕事は早めに片づけておいたから、全然大丈夫だよ」
渡瀬さんからメッセージがきていないということは、まだ原稿を読んでくれている最中ということだ。
それなら私にできることは、普段やっていることだけ...。
(1日1超短篇...帰りの電車で書き終わったし、特に急ぎの仕事も入ってない)
ただ、退院祝いとなると手ぶらで行くわけにはいかない。
何がいいだろうと考えていると、お土産屋さんの広告が目に入る。
「シェリは甘いものって好きかな?」
「プリンとかパフェとか、あとは金平糖なら食べてるところを見たことがあるよ」
「...それなら、このお菓子の詰め合わせと花にしようかな」
「全部任せっきりで、本当にごめん...」
「私の我儘を叶えてもらってばかりだし、私もシェリに何か贈りたいから謝らないで。
夕方になったら起こすね」
「ありがとう...」
怠そうな声が聞こえて、それは穏やかな寝息に変わった。
山道をのぼって、苦手なお昼に過度な運動をしたのだから余程疲れてしまったのだろう。
起こさないようにブランケットをかけた手のひらを見つめる。
「...神子の力って、どうすれば抑えられるんだろう」
不安でいっぱいになった私は、早速美桜さん宛に手紙を書いてみる。
伝えたいことは沢山あるのに、それが上手くまとまってくれない。
何度も書き直しては千切ってを繰り返して、結局完成させられないままでいた。
(あった出来事や質問を書くことがこんなにも難しいなんて...)
物語は、経験したことがないものでも想像と創造を繰り返していくものだ。
だからこそ頭を使うことが多かったり、上手くまとめられなかったりする。
けれど私には現実にあったことを紙にしたためる方が難しいらしい。
(...どうしても感情が入りこみすぎてしまうから上手くいかないのかも。
でも、出来事だけだとそれはもう日記と変わらないし...)
もやもやしていると、空が茜色に染まっていることに気づく。
「木葉、もうすぐ夜だよ」
「ごめん...!僕、どのくらい寝てた?」
「多分2時間くらいかな」
体を起こした木葉は、微笑ましそうな表情で訊いてくる。
「手紙を書いてたの?」
「うん。でも思っていたより苦戦してて...」
「お見舞いから帰ったら、僕も一緒に書いていい?」
「勿論。ありがとう」
手紙も完成させたいけれど、今はシェリのところに行くのが先だ。
久しぶりに会える友人は、どんな表情をするだろうか。
...想像するだけで楽しみだ。
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