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追暮篇(おいぐらしへん)
渡したかったもの
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翌朝、木葉が眠っているうちに私はあるものの準備を始める。
昨日は手紙を書いてからすぐに寝てしまったからか、いつもは眩しすぎるくらいの朝陽が気持ちいい。
「...よし」
無心で刻んだチョコレートを湯煎にかけて、そのまま料理を続ける。
行程をひととおり終えて、チョコレートと生クリームを仕舞おうとした瞬間、冷蔵庫の異変に気づく。
(...クレールがすごく減ってるような気がする)
きっと気のせいじゃない。
昨日も噛みたいのを我慢して、今日もまたそうするつもりなのだろう。
...そんな危険なことはさせられない。
「熱っ...」
じんじんと痛む指を冷やしながら、朝食兼昼食の準備も済ませる。
いつもならもう起こす時間なのだけれど、今日はもう少し寝て休んでほしかった。
(...よし、そろそろ固まったはず)
あとはこれを包丁で等分に切って、ラッピングをすれば完成だ。
喜んでもらえるといいのだけれど、全く自信がない。
独りだった頃は、お菓子を人に振る舞うことなんてなかったからだ。
誰かに美味しいと言ってもらえることには相変わらず慣れなくて、美味しいと言ってもらえないと不安になる。
「ん...もうお昼?」
「おはよう。ご飯、食べられそう?」
ふらふらとこちらへ歩いてくる様子を窺いながら、お茶碗にご飯をよそう。
「ねえ、なんだか甘いにおいがするみたいだけど...何か作ってたの?」
「あの、これ...もしよかったら、ご飯食べた後で食べられそうなら食べてみて」
私が作ったのは単純な生チョコだ。
創作料理が得意ではない私は、レシピどおりのつまらないものしか作れない。
それでも、木葉は目を輝かせて喜んでくれた。
「ありがとう!チョコレートをもらってこんなに嬉しかったのって初めてだよ」
「大したものは作れなかったから、そんなに喜んでもらえたのは完全に予想外」
「こんなに美味しそうなのに...」
白米を一口いれてしばらく考えていたけれど、意を決して木葉に訊いてみることにした。
「...噛みたい?」
「急にどうしたの?」
「もうずっと我慢しているんじゃないかと思ったから。冷蔵庫の中、見たから分かるよ」
「そ、れは...」
「...お願い、噛んで」
ヴァンパイアの飢餓状態というのはかなり恐ろしいものなのだろうと想像することはできる。
だからこそ、やっぱり我慢してほしくない。
「それじゃあ今夜噛んでもいい?」
「うん。折角のバレンタインだし、私にできることは何でもしたい」
「そんな可愛いことを言うのは、ちょっと狡いよ...」
唇が重なって、そのぬくもりをいつも以上に強く感じる。
ご飯なんてそっちのけで何度も熱を分けあう。
「...早くチョコレートが食べたいな」
「ご飯、温めなおすね」
すっかり冷めてしまったそれを集めた私の体は熱を持っていて、木葉が頬を真っ赤に染めているところを見ているだけでますます火照ってしまうのだった。
昨日は手紙を書いてからすぐに寝てしまったからか、いつもは眩しすぎるくらいの朝陽が気持ちいい。
「...よし」
無心で刻んだチョコレートを湯煎にかけて、そのまま料理を続ける。
行程をひととおり終えて、チョコレートと生クリームを仕舞おうとした瞬間、冷蔵庫の異変に気づく。
(...クレールがすごく減ってるような気がする)
きっと気のせいじゃない。
昨日も噛みたいのを我慢して、今日もまたそうするつもりなのだろう。
...そんな危険なことはさせられない。
「熱っ...」
じんじんと痛む指を冷やしながら、朝食兼昼食の準備も済ませる。
いつもならもう起こす時間なのだけれど、今日はもう少し寝て休んでほしかった。
(...よし、そろそろ固まったはず)
あとはこれを包丁で等分に切って、ラッピングをすれば完成だ。
喜んでもらえるといいのだけれど、全く自信がない。
独りだった頃は、お菓子を人に振る舞うことなんてなかったからだ。
誰かに美味しいと言ってもらえることには相変わらず慣れなくて、美味しいと言ってもらえないと不安になる。
「ん...もうお昼?」
「おはよう。ご飯、食べられそう?」
ふらふらとこちらへ歩いてくる様子を窺いながら、お茶碗にご飯をよそう。
「ねえ、なんだか甘いにおいがするみたいだけど...何か作ってたの?」
「あの、これ...もしよかったら、ご飯食べた後で食べられそうなら食べてみて」
私が作ったのは単純な生チョコだ。
創作料理が得意ではない私は、レシピどおりのつまらないものしか作れない。
それでも、木葉は目を輝かせて喜んでくれた。
「ありがとう!チョコレートをもらってこんなに嬉しかったのって初めてだよ」
「大したものは作れなかったから、そんなに喜んでもらえたのは完全に予想外」
「こんなに美味しそうなのに...」
白米を一口いれてしばらく考えていたけれど、意を決して木葉に訊いてみることにした。
「...噛みたい?」
「急にどうしたの?」
「もうずっと我慢しているんじゃないかと思ったから。冷蔵庫の中、見たから分かるよ」
「そ、れは...」
「...お願い、噛んで」
ヴァンパイアの飢餓状態というのはかなり恐ろしいものなのだろうと想像することはできる。
だからこそ、やっぱり我慢してほしくない。
「それじゃあ今夜噛んでもいい?」
「うん。折角のバレンタインだし、私にできることは何でもしたい」
「そんな可愛いことを言うのは、ちょっと狡いよ...」
唇が重なって、そのぬくもりをいつも以上に強く感じる。
ご飯なんてそっちのけで何度も熱を分けあう。
「...早くチョコレートが食べたいな」
「ご飯、温めなおすね」
すっかり冷めてしまったそれを集めた私の体は熱を持っていて、木葉が頬を真っ赤に染めているところを見ているだけでますます火照ってしまうのだった。
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