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追暮篇(おいぐらしへん)
僕宛のもの
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「こんばんは」
他の人たちとひととおり挨拶をすませ、鞄の中に入れておいた封筒を取り出す。
かなり古風なものだが、きちんと使いこなしているのが美桜さんらしいような気がした。
《拝啓
ご機嫌如何、なんて送るのは変な気もする。
私はついさっきまで料理をしていました。ノワール?にもあげると、喜んでくれたみたい。
体に毒になるようなものはあげてないから心配しないで》
なかなか面白い文章だと思いながら、続きを読んでみる。
《ノワールから色々な話を聞いたけれど、あなたたちは本当に仲良しみたいで安心した。
色々な話を聞けて楽しかった》
ノワールは一体何を話したのだろう。
それが気になりながらも、そこまでで一旦読むのを止めた。
「...久しぶり」
「柊...!」
ここ最近、柊はずっと仕事を休んでいるようだった。
それだけ死者が多かったのか、それとも...。
「思ったより元気そうでよかった」
「僕は風邪をひいたりはしない。...死神は病にかかることは滅多にないから心配しなくていい」
少し表情が明るくなったような気がして、あまり気にしなくても大丈夫そうだと理解する。
「さっき読んでいた手紙は誰からのもの?」
「最近できた友人から。ちょっと事情があって、ここから離れた場所に住んでいるから...」
「手紙って、人と話すのに向く手段?」
「余程急ぎの用じゃないとき、気持ちを伝えるのはやっぱり手書きのものなんじゃないかな」
死神だから感情はない...そう話していた友人がそんなことを気にするのは、一緒にいる最早恋人に近い女性の為だろうか。
「そういうことなら試してみることにする。ありがとう」
「柊が気持ちをこめたものなら、きっと相手に伝わるよ」
仕事終わり、友人はそのままどこかへ行ってしまう。
移動するのが速すぎていつも追いつけない。
...そもそも、追いつけるものなのだろうか。
店主に電気は消しておくからと約束して、僕は手紙を読み進めることにした。
《ただ、あなたが心配。七海に心配をかけたくないのは分かるけど、我慢のしすぎはよくない。
私みたいになってしまうかもしれない》
孤独を呑みこみ続けてきた美桜さんのことを思い出すと、胸と傷を負った腕が痛む。
たしかに今の僕は、暴走しないとは言い切れない状態なのかもしれない。
だが、それよりも美桜さんの方が心配だ。
《傷薬諸々を一緒に送ります。
早く怪我が治るといいのだけれど...本当にごめんなさい。
七海の頬の傷にも効くと思うから塗ってあげてほしい》
文字が滲んでいるのが気になって仕方がない。
...寂しい気持ちを押しこめている証拠だ。
手紙を元通りにして鞄に仕舞い、そのまま家路を急ぐ。
夜に七海をひとりにしたくなくて、早く七海に会いたくてただひたすら走り続けた。
他の人たちとひととおり挨拶をすませ、鞄の中に入れておいた封筒を取り出す。
かなり古風なものだが、きちんと使いこなしているのが美桜さんらしいような気がした。
《拝啓
ご機嫌如何、なんて送るのは変な気もする。
私はついさっきまで料理をしていました。ノワール?にもあげると、喜んでくれたみたい。
体に毒になるようなものはあげてないから心配しないで》
なかなか面白い文章だと思いながら、続きを読んでみる。
《ノワールから色々な話を聞いたけれど、あなたたちは本当に仲良しみたいで安心した。
色々な話を聞けて楽しかった》
ノワールは一体何を話したのだろう。
それが気になりながらも、そこまでで一旦読むのを止めた。
「...久しぶり」
「柊...!」
ここ最近、柊はずっと仕事を休んでいるようだった。
それだけ死者が多かったのか、それとも...。
「思ったより元気そうでよかった」
「僕は風邪をひいたりはしない。...死神は病にかかることは滅多にないから心配しなくていい」
少し表情が明るくなったような気がして、あまり気にしなくても大丈夫そうだと理解する。
「さっき読んでいた手紙は誰からのもの?」
「最近できた友人から。ちょっと事情があって、ここから離れた場所に住んでいるから...」
「手紙って、人と話すのに向く手段?」
「余程急ぎの用じゃないとき、気持ちを伝えるのはやっぱり手書きのものなんじゃないかな」
死神だから感情はない...そう話していた友人がそんなことを気にするのは、一緒にいる最早恋人に近い女性の為だろうか。
「そういうことなら試してみることにする。ありがとう」
「柊が気持ちをこめたものなら、きっと相手に伝わるよ」
仕事終わり、友人はそのままどこかへ行ってしまう。
移動するのが速すぎていつも追いつけない。
...そもそも、追いつけるものなのだろうか。
店主に電気は消しておくからと約束して、僕は手紙を読み進めることにした。
《ただ、あなたが心配。七海に心配をかけたくないのは分かるけど、我慢のしすぎはよくない。
私みたいになってしまうかもしれない》
孤独を呑みこみ続けてきた美桜さんのことを思い出すと、胸と傷を負った腕が痛む。
たしかに今の僕は、暴走しないとは言い切れない状態なのかもしれない。
だが、それよりも美桜さんの方が心配だ。
《傷薬諸々を一緒に送ります。
早く怪我が治るといいのだけれど...本当にごめんなさい。
七海の頬の傷にも効くと思うから塗ってあげてほしい》
文字が滲んでいるのが気になって仕方がない。
...寂しい気持ちを押しこめている証拠だ。
手紙を元通りにして鞄に仕舞い、そのまま家路を急ぐ。
夜に七海をひとりにしたくなくて、早く七海に会いたくてただひたすら走り続けた。
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