ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
132 / 258
追暮篇(おいぐらしへん)

私宛のもの

しおりを挟む
ノワールが自分の部屋に入っていくのを見届けて、私はそっと封を切る。
どんなことが書かれているのかわくわくしているのが半分、もし迷惑がられていたらという不安が半分だ。
(美桜さん、寂しがってないかな...)
《拝啓

七海がどんな暮らしをしているのか、手紙でなんとなく分かりました。
楽しそうでよかった。本当に安心した》
温かい言葉が沢山並んでいて、少しだけほっとする。
もしまたたったひとりで寂しさと戦っていたら...そういう不安もあったけれど、暴走しているわけではなさそうだ。
《烏さんが色々教えてくれた。...随分仲良しなんだね》
美桜さんは神様なのだから、ノワールと話せても全然不思議ではない。
(でも、何を話したのかはすごく気になる...)
「...お茶でも淹れようかな」
木葉が帰ってくるまでに読みきってしまおう、そのつもりで数枚の便箋と向き合う。
《必要そうなものを送っておきます。
足りなかったらまた会えた日に渡す》
そこには、綺麗な扇に小刀が入っていた。
(扇はさておき、小刀は銃刀法違反になるんじゃ...)
内心苦笑しながら手紙に混ざっていた古い紙を見てみると、きちんとした本物の携帯許可証だった。
《それはあなたのお母さんが持っていたものだったけれど、その紙がないと駄目なんだって言っていたからそれも一緒に入れておく》
「お母さん...」
名義はしっかり私になっていて、全てのものを抱きしめる。
ノワールが運ぶのに苦戦しただろうなと思いつつ、懐かしいことを少しだけ思い出した。
『美桜さん、七海も上手にできたらおかあさんにほめてもらえる?』
『...多分。今でも充分上手いような気はするけれど』
『じゃあ、美桜さんもいっしょにほめてもらおう!』
...どうしてこんなに大切なことを忘れてしまっていたのだろう。
その後色々な場所を転々とすることになっても耐えられたのはこの想い出たちがあったからなのに、どうしてか日に日に思い出せなくなっていた。
ただ単に私がどこかで忘れてしまっていただけなのか、美桜さんの影響なのか...。
(簡単に訊けるようなことではないけど、気にはなる)
《怪我、早く治るといいね》
やたら治りが遅いことに疑問を感じつつ、早く治したいとは思っている。
毎日木葉にガーゼを換えてもらわないといけないのは申し訳ないし、心臓が持たない。
「ただいま」
「木葉...おかえりなさい」
「手紙、読み終わったの?」
「木葉も?」
そんな話をしながら、なんだか木葉の様子がおかしいことに気づく。
「どうかしたの?」
「...頬のガーゼ、換えさせて」
「あ、ありがとう...」
甘い雰囲気が流れるなか、木葉の表情は苦々しいものだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...