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追暮篇(おいぐらしへん)
ラッシュさんの恋の話
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「初めて会ったときのアイリーンは、ぼろぼろの服装だった」
「それはハーフだったから?」
「...そうだ」
あのあとラッシュさんは全員分の飲み物を買ってきてくれて、みんなで美味しくいただきながら話を聞くことにしている。
美桜さんはお社から離れても意外と体力が続くのか楽しそうにしているが、七海は元気がないままだ。
「人間同士でも差別なんてものが存在するのかと思うと、若干哀しくなったな。
...俺たちみたいなものだけが排除されてると思ってたからよ」
人間が、人間を蔑む。
残念なことにそういったことは現代社会でもよくおこることだ。
だが、それを見て見ぬふりすることは僕にもできない。
正義感が強いラッシュさんなら、尚のこと放っておけなかったのだろう。
「ラッシュは人間に何かされたことがあるの?」
「俺の友人がトラブルに見舞われてな。...まあ、色々あった」
その友人が誰なのか、直感的に理解する。
...母に連絡して直接確認してみるしかないけど。
「だから、はじめは人間なんかって思ってたんだ。恩を仇で返されて傷つくくらいなら、関わらずにいればいい。
...けど、あいつ相手にはできなかったんだ」
それからラッシュさんは当時自分が住んでいた場所で匿ったこと、だんだん心配以外の想いが芽生えはじめたことを話してくれた。
「あ、の...」
「おう、どうした?」
いつの間にか顔をあげた七海が真っ直ぐな瞳で見つめながら訊いた。
「本当に大切だったんですね。...そんなふうに愛してもらえたなら、アイリーンさんは幸せだったと思います」
「お嬢さんにそう言ってもらえたら自信がつくな。...ありがとう」
迷った挙げ句、僕は口を開いた。
「その、アイリーンっていう人には自分がヴァンパイアだっていつ話したの?」
前に話を聞いたときには、そのあたりを上手くかわされてしまった。
...今なら教えてくれるだろうか。
「おまえと一緒だよ。先に明かして、怖がるよう仕向けた。
なのにアイリーンは、そんなの関係ないって近づいてきたんだ」
「え...?」
「裏切られるくらいならはじめから突き放そうと思ったのに、いつの間にか離れるのが怖くなっていたんだ」
相手のことを想っているからこそ、言えないこともあるとは思う。
嫌われてしまうかもしれない...そんなことを考えたのは僕だけだと思っていたのに、いつも大人なラッシュさんにもそんなことがあったのかとただ驚いた。
「ラッシュが無垢」
「おまえ、然り気無く失礼なこと言ってくるよな」
「早く治せって言ってきた人と同じ人だとはとても思えない」
「おまえな...あのときは必死だったんだよ」
ふたりのやりとりを微笑ましく思っていると、隣に座っている七海と目が合う。
自然と笑みを深めた僕たちは、寄り添うようにして目を閉じる。
気づけば朝焼けが目に滲みるような時間で、体がどんどん重くなっていく。
結局それに抗いきれず、深い眠りに落ちてしまった。
「それはハーフだったから?」
「...そうだ」
あのあとラッシュさんは全員分の飲み物を買ってきてくれて、みんなで美味しくいただきながら話を聞くことにしている。
美桜さんはお社から離れても意外と体力が続くのか楽しそうにしているが、七海は元気がないままだ。
「人間同士でも差別なんてものが存在するのかと思うと、若干哀しくなったな。
...俺たちみたいなものだけが排除されてると思ってたからよ」
人間が、人間を蔑む。
残念なことにそういったことは現代社会でもよくおこることだ。
だが、それを見て見ぬふりすることは僕にもできない。
正義感が強いラッシュさんなら、尚のこと放っておけなかったのだろう。
「ラッシュは人間に何かされたことがあるの?」
「俺の友人がトラブルに見舞われてな。...まあ、色々あった」
その友人が誰なのか、直感的に理解する。
...母に連絡して直接確認してみるしかないけど。
「だから、はじめは人間なんかって思ってたんだ。恩を仇で返されて傷つくくらいなら、関わらずにいればいい。
...けど、あいつ相手にはできなかったんだ」
それからラッシュさんは当時自分が住んでいた場所で匿ったこと、だんだん心配以外の想いが芽生えはじめたことを話してくれた。
「あ、の...」
「おう、どうした?」
いつの間にか顔をあげた七海が真っ直ぐな瞳で見つめながら訊いた。
「本当に大切だったんですね。...そんなふうに愛してもらえたなら、アイリーンさんは幸せだったと思います」
「お嬢さんにそう言ってもらえたら自信がつくな。...ありがとう」
迷った挙げ句、僕は口を開いた。
「その、アイリーンっていう人には自分がヴァンパイアだっていつ話したの?」
前に話を聞いたときには、そのあたりを上手くかわされてしまった。
...今なら教えてくれるだろうか。
「おまえと一緒だよ。先に明かして、怖がるよう仕向けた。
なのにアイリーンは、そんなの関係ないって近づいてきたんだ」
「え...?」
「裏切られるくらいならはじめから突き放そうと思ったのに、いつの間にか離れるのが怖くなっていたんだ」
相手のことを想っているからこそ、言えないこともあるとは思う。
嫌われてしまうかもしれない...そんなことを考えたのは僕だけだと思っていたのに、いつも大人なラッシュさんにもそんなことがあったのかとただ驚いた。
「ラッシュが無垢」
「おまえ、然り気無く失礼なこと言ってくるよな」
「早く治せって言ってきた人と同じ人だとはとても思えない」
「おまえな...あのときは必死だったんだよ」
ふたりのやりとりを微笑ましく思っていると、隣に座っている七海と目が合う。
自然と笑みを深めた僕たちは、寄り添うようにして目を閉じる。
気づけば朝焼けが目に滲みるような時間で、体がどんどん重くなっていく。
結局それに抗いきれず、深い眠りに落ちてしまった。
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