166 / 258
追暮篇(おいぐらしへん)
神様のお見舞い
しおりを挟む
いつもどおり早く起きて、杖で歩く練習をする。
痛みは少しずつ引いてきてはいるものの、やっぱり1歩踏み出す度に体中に響くような感覚に陥ってしまう。
「痛っ...」
思わず膝をついてしまいそうになるけれど、どうしても木葉を起こしたくなくて自力でふんばった。
そのとき、インターホンが鳴り響く。
(...?)
こんな時間に来客があるとは思えない。
ただ、もし急ぎの用事なら出なかったことを後悔する。
恐る恐る扉を開けると、そこには見覚えのある女性が呆然と立ち尽くしていた。
「お邪魔しま...」
発していた言葉は途中で止まり、青ざめた顔を私に向けてきた。
「どうしてそんな怪我、酷い...」
「...美桜さん」
少し不便な生活を送りはじめて数日、その神様は真っ青な顔で私を見つめた。
そして、冷たい言葉を言い放つ。
「いつの時代も、人間は野蛮」
「そんな人ばかりじゃないんだよ。一緒にお仕事をしている人もそうだし、町でただ一言話しただけの人だって...」
そう、悪い人間ばかりではない。
分かってはいるけれど、どうしても割り切れないことがある。
私より長く生きている美桜さんなら、人間の嫌な部分も沢山見てきているのだろう。
「それも分からない訳ではない。でも、やっぱり人間は怖い」
「美桜さん...」
「私にできることはある?」
「それじゃあ、一緒に話をしない?」
「話?」
「最近、全然お社に行けてなかったから...」
「...あなたの呑気さは、少し心配」
そんなことを言いながらも、美桜さんは私のくだらない話を真剣に聞いてくれる。
「舞のおかげで木葉を助けられたんだ。だから、ありがとう美桜さん」
「それはあなたの実力で、私は何もできていない」
「そんなことないよ。教えてもらったからちゃんとできたんだし...」
しばらく話していると、木葉がゆっくりと起きてくる。
「おはよ...あれ、美桜さん?」
「お邪魔してます。...あなたは怪我しなかったの?」
「僕は平気だよ。でも、僕のせいで七海が傷ついた」
木葉はやっぱり自分自身を責めている。
今の発言だけで、それだけははっきりした。
「もう少ししたらまたくる」
美桜さんが帰っていった後、私は木葉にはっきりと告げた。
「誰かのせいじゃない。私の怪我は私のものだし、誰かのせいになんかしたくない」
「...ごめん」
「言ったでしょ、無茶をしないでくれるならそれでいいって。...もう離れないでね」
「ありがとう」
木葉とふたり、美桜さんがくるまでの間食事をしながらゆっくり過ごす。
こんな時間も好きだと、沁々と感じたのだった。
痛みは少しずつ引いてきてはいるものの、やっぱり1歩踏み出す度に体中に響くような感覚に陥ってしまう。
「痛っ...」
思わず膝をついてしまいそうになるけれど、どうしても木葉を起こしたくなくて自力でふんばった。
そのとき、インターホンが鳴り響く。
(...?)
こんな時間に来客があるとは思えない。
ただ、もし急ぎの用事なら出なかったことを後悔する。
恐る恐る扉を開けると、そこには見覚えのある女性が呆然と立ち尽くしていた。
「お邪魔しま...」
発していた言葉は途中で止まり、青ざめた顔を私に向けてきた。
「どうしてそんな怪我、酷い...」
「...美桜さん」
少し不便な生活を送りはじめて数日、その神様は真っ青な顔で私を見つめた。
そして、冷たい言葉を言い放つ。
「いつの時代も、人間は野蛮」
「そんな人ばかりじゃないんだよ。一緒にお仕事をしている人もそうだし、町でただ一言話しただけの人だって...」
そう、悪い人間ばかりではない。
分かってはいるけれど、どうしても割り切れないことがある。
私より長く生きている美桜さんなら、人間の嫌な部分も沢山見てきているのだろう。
「それも分からない訳ではない。でも、やっぱり人間は怖い」
「美桜さん...」
「私にできることはある?」
「それじゃあ、一緒に話をしない?」
「話?」
「最近、全然お社に行けてなかったから...」
「...あなたの呑気さは、少し心配」
そんなことを言いながらも、美桜さんは私のくだらない話を真剣に聞いてくれる。
「舞のおかげで木葉を助けられたんだ。だから、ありがとう美桜さん」
「それはあなたの実力で、私は何もできていない」
「そんなことないよ。教えてもらったからちゃんとできたんだし...」
しばらく話していると、木葉がゆっくりと起きてくる。
「おはよ...あれ、美桜さん?」
「お邪魔してます。...あなたは怪我しなかったの?」
「僕は平気だよ。でも、僕のせいで七海が傷ついた」
木葉はやっぱり自分自身を責めている。
今の発言だけで、それだけははっきりした。
「もう少ししたらまたくる」
美桜さんが帰っていった後、私は木葉にはっきりと告げた。
「誰かのせいじゃない。私の怪我は私のものだし、誰かのせいになんかしたくない」
「...ごめん」
「言ったでしょ、無茶をしないでくれるならそれでいいって。...もう離れないでね」
「ありがとう」
木葉とふたり、美桜さんがくるまでの間食事をしながらゆっくり過ごす。
こんな時間も好きだと、沁々と感じたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる