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追暮篇(おいぐらしへん)
複雑神様
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「これ、もしよかったら使って」
戻ってきた美桜さんの手には、大量の薬草が握られていた。
いつの間に育てはじめたのか、大量の作物も一緒に運ばれてくる。
「た、大量...」
「私にできることはあんまりない。でも、元気になってくれるならどんなことでもする」
通常の神様なら、きっと農作業なんてしなかっただろう。
だが、彼女はやはり元々人間なのだ。
七海は他の神という存在を知らないのだから、今だってきっと気づいていない。
僕からは約束どおり何も言わないでおくつもりだが、美桜さんがきちんと話す日はくるのだろうか。
「木葉、あの...」
「大丈夫だよ。僕が淹れるからふたりで話しながら待ってて」
ありがとうと言ってもらえるのはすごく嬉しい。
ふたりで楽しそうに話をしているのを見ていると、なんだか微笑ましくてずっと見守っていたくなる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
美桜さんが持ってきてくれたもののなかに、見たことがないものが紛れていた。
「ねえ、美桜さん。これって何?」
「それは傷薬。そっちのものは解毒剤で、そっちは湿布みたいなもの」
「薬学に詳しいんだね」
七海はいつものように優しく笑いながら、美桜さんに視線を向ける。
「別に普通だと思う」
「僕も詳しいんだなって思った。それより、どうして山から降りてこようと思ったの?」
「...ラッシュが教えてくれた」
美桜さんは何故か気まずそうにそんな言葉を発する。
首をかしげていると、その神様は小さく呟いた。
「...寂しいと思ったら会いに行ってみればいい、ふたりは喜んでくれるって」
ラッシュさんらしい言葉とは思うが、彼女にそれは難しいのではないだろうか。
何年も独りで過ごしてきたにも関わらず、いきなり人に頼ったり甘えたりすることはできない。
...僕も同じだったからその気持ちはなんとなく分かるような気がするのに、どんな言葉をかければいいか分からなかった。
「今日は帰る」
「美桜さ...」
七海の制止をふりきり、そのまま帰っていってしまった。
美桜さんはどうやってここまできたのか...そんな疑問もあったが、まだ湯気があがっている湯呑みをぼんやりと見つめる。
「...もっとちゃんとお礼を言いたかったのに」
「七海...」
「私、嫌われちゃったかな?」
「それは絶対にない」
僕は即答した。
神様は絶対に嫌いになんてならない。
ただ、言葉が上手く出てこなかっただけ。
本当にどうすればいいのか、どう接するのが正解か分からない...きっと単純にそれだけなのだ。
「...明日の夜、久しぶりにお社へ行ってみようか」
「いいの?」
「七海のことは僕が絶対に連れていくよ。だから、そんな不安そうな表情をしないで」
戻ってきた美桜さんの手には、大量の薬草が握られていた。
いつの間に育てはじめたのか、大量の作物も一緒に運ばれてくる。
「た、大量...」
「私にできることはあんまりない。でも、元気になってくれるならどんなことでもする」
通常の神様なら、きっと農作業なんてしなかっただろう。
だが、彼女はやはり元々人間なのだ。
七海は他の神という存在を知らないのだから、今だってきっと気づいていない。
僕からは約束どおり何も言わないでおくつもりだが、美桜さんがきちんと話す日はくるのだろうか。
「木葉、あの...」
「大丈夫だよ。僕が淹れるからふたりで話しながら待ってて」
ありがとうと言ってもらえるのはすごく嬉しい。
ふたりで楽しそうに話をしているのを見ていると、なんだか微笑ましくてずっと見守っていたくなる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
美桜さんが持ってきてくれたもののなかに、見たことがないものが紛れていた。
「ねえ、美桜さん。これって何?」
「それは傷薬。そっちのものは解毒剤で、そっちは湿布みたいなもの」
「薬学に詳しいんだね」
七海はいつものように優しく笑いながら、美桜さんに視線を向ける。
「別に普通だと思う」
「僕も詳しいんだなって思った。それより、どうして山から降りてこようと思ったの?」
「...ラッシュが教えてくれた」
美桜さんは何故か気まずそうにそんな言葉を発する。
首をかしげていると、その神様は小さく呟いた。
「...寂しいと思ったら会いに行ってみればいい、ふたりは喜んでくれるって」
ラッシュさんらしい言葉とは思うが、彼女にそれは難しいのではないだろうか。
何年も独りで過ごしてきたにも関わらず、いきなり人に頼ったり甘えたりすることはできない。
...僕も同じだったからその気持ちはなんとなく分かるような気がするのに、どんな言葉をかければいいか分からなかった。
「今日は帰る」
「美桜さ...」
七海の制止をふりきり、そのまま帰っていってしまった。
美桜さんはどうやってここまできたのか...そんな疑問もあったが、まだ湯気があがっている湯呑みをぼんやりと見つめる。
「...もっとちゃんとお礼を言いたかったのに」
「七海...」
「私、嫌われちゃったかな?」
「それは絶対にない」
僕は即答した。
神様は絶対に嫌いになんてならない。
ただ、言葉が上手く出てこなかっただけ。
本当にどうすればいいのか、どう接するのが正解か分からない...きっと単純にそれだけなのだ。
「...明日の夜、久しぶりにお社へ行ってみようか」
「いいの?」
「七海のことは僕が絶対に連れていくよ。だから、そんな不安そうな表情をしないで」
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